【カノエラナ インタビュー】
“アニソンを歌いたいです!”という
自己紹介盤みたいなものにもなった
さまざまなアニメを観ながら得た“オープニング、エンディングを作ったらどうなるんだろう?”というインスピレーションをもとにして制作されたアルバム『歌楽的イノセンス』。作風と歌唱法が多彩なカノエラナの魅力が存分に発揮された作品となった。
アニソン感覚って
私の中にあるかもしれない
“カノエラナ的アニメオープニング主題歌集”をテーマとしたアルバムですね。
はい。どんなアルバムにするかという話し合いの中で出てきたテーマなんです。私は前にアニソンカバーアルバム(2020年4月発表のアルバム『「尊い」~解き放たれし二次元歌集~』)を出したことがあったので、そういう方面の色をもっと出していけたらという話になり、“カノエラナがアニメのオープニング、エンディングを作ったらどうなるんだろう?”というアイディアをいただきました。私もノリノリで“めっちゃ面白そうじゃないですか!?”ってなったのが、そもそもの制作のスタートでしたね。
アニソンが好きだというのは前からよくおっしゃっていましたしね。
「キンギョバチ」はアニメ『永遠の831』のオープニングテーマですが、それ以外は“このアニメだったらこういう曲を作りたい”と考えて架空のアニソンを作っていったということでしょうか?
実際にいろいろなアニメを観て、その感想として書き上げたのが新録の7曲になります。なので、ちゃんともととなっている作品があるんですよ。アニメが好きな人は“あの作品だな”って分かるかもしれないですね。
アニメや映画とかが好きなミュージシャンは“自分だったらこういう主題歌を作るな”と想像することが結構あるんでしょうね。
そうだと思います。私はいろいろな曲を書くのが好きなので、今回も“楽しい〜!”ってなりながら作っていました(笑)。
アニソンならではの魅力として何か感じていることはありますか?
アニソンはキャラクターソング、アーティストさんが作った曲、声優さんが歌う曲とか、いろいろありますけど、自由度の高さを感じますね。その作品のキャラクター像、アニメとしてのイメージを踏まえればどこに向かってもいいんで、私もリスナーとして、そこが面白いとずっと思っていました。
おっしゃるとおり、アニソンは多様ですよね。
そうなんです。私はひとりのアーティストさんを掘り下げて聴いたことがなくて、いろんな方々の曲を聴くというスタイルでずっときたので、カノエラナもそうなりたいんです。“本当にひとりで歌っているの?”ってなるくらいいろんな声で、いろんな曲を歌いたいと思っています。
カノエさんが多彩な声で表現できるシンガーだというのは、このアルバムを聴くとよく分かります。
それぞれの曲に主人公がいるので、“この主人公はどんな声なんだろう?”って想像しながらレコーディングをしました。私の中には“いろんなキャラクターになって歌いたい!”っていう想いがずっとあるので、それはこれからも探求していきたいところです。
「キンギョバチ」の前にアニソンを書き下ろしたことはありましたっけ?
なかったんですよ。アニメ『永遠の831』の分厚い資料を送っていただいて、それを見ながら作っていくのが楽しかったです。その資料にはキャラクターの細かい動きとかも書いてあって、“あぁ、設定資料集見てるー!”っていうファン目線もありました(笑)。『永遠の831』の世界観にどうにかして寄り添いたいと思いながら曲を作りました。
『永遠の831』の主人公の浅野スズシロウは時間を止める能力の持ち主だから、「キンギョバチ」も時間に関する描写が盛り込まれているんですね?
はい。過去の出来事にとらわれているスズシロウくんの怒りをトリガーとして世界が動いたり止まったりするので、この歌もサビで急に止まったような空気が流れて、途中から一気に動き出すイメージになっています。アニメの映像を想像しながら作るのが本当に楽しかったです。私は“こういう曲を作ってください”って、ある程度イメージをいただいた上で作るのが好きなんですよ。そういう意味でも“アニソンって私に合っているな〜”と思いました。そういうアーティストになるのが小さい頃からの夢だったので、ようやく一歩を踏み出せる感じがあります。
今回のアルバムは夢を実現に近づけるための作品になるかもしれないですね。
そうなったら嬉しいですね。“カノエラナ的アニメオープニング主題歌集”というのもありつつ、裏のテーマは“今までと作り方とは変えてみる”だったんです。新しい挑戦をしながら、先を見据えたトレーニングもすることができました。
このアルバムが完成したことによって、“カノエラナというアーティストは作品に沿ったこういう曲を書けるんですよ”とスタッフのみなさんもアニメ業界の各方面にアピールしやすくなるかも。
そうですね(笑)。“アニソン歌いたいです!”っていう自己紹介盤みたいなものにもなったと思います。
アニソンは番組で流れる時は90秒、厳密には頭と最後に0.5秒ずつの余白を作って89秒に仕上げる職人的な技を求められる世界でもありますよね。“89秒の枠にバシッとハマると達成感がすごくあります”とクリエイターの方々がよくおっしゃっていて。
その感じ分かります! 私は“30秒弾き語り動画”というのをずっとやってきていて、秒数に合わせるのが好きなんです。iPhoneで録音して、30秒ぴったりになった瞬間に“きたっ!”ってなりますから。
偶然なのかもしれないですけど、今作の大半の曲は1コーラスが89秒の枠にうまくはまりそうな構成なんですよね。
“このテンポ感だったら主人公は今どこにいるのかな?”ってアニメの映像を想像して、それこそ起承転結も考えながら曲を作ったんですよ。いつもアニメを観ている感じで書けたのかもしれないですね。
体内時計にアニソンのテンポ感、構成、尺が染みついているんですかね?
染みついていますね(笑)。アニソン感覚って、私の中にあるかもしれないです。
今作の曲をアニソンの尺に編集して自作の絵で映像を作ってみたら面白いかも。動画投稿の『歌ってみた』『踊ってみた』もあるわけですから、『作ってみた』もありですよ。
『作ってみた』『描いてみた』ですね。それは面白そうです。
今の時代は動画投稿からプロになる人がいますから、このアルバムの『描いてみた』から素晴らしい才能が世に出るかもしれないし。