タイの注目俳優、アイス・ナッタラッ
トが語る出演映画『プアン』で挑んだ
即興演技への不安「自分の方法が間違
っていないかプレッシャーがあった」

『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』(2017年)で知られるバズ・プーンピリヤ監督、そして『恋する惑星』(1994年)などのウォン・カーウァイ監督が製作総指揮をつとめた、8月5日(金)公開の映画『プアン/友だちと呼ばせて』。同作で、白血病による余命宣告を受けるウードに扮したのが、『DIARY OF TOOTSIES 1・2』(2016、17)のアイス・ナッタラット。元恋人に別れを告げるため、旧友のボスを連れて旅をするウードの心情を、明暗を交えながら好演している。今回はアイスに、バズ監督から求められた即興の演技などについて話を訊いた。
アイス・ナッタラット
――ウードは「死ぬまでにやりたいこと」として、かつての恋人に会いにいきますが、その行動から何を感じ取りましたか。
自分も、もし死の間際になったら今まで関わってくれた人たちと話をすると思います。ウードに関しては、「なぜ彼はそういった行動にでるのか」とその理由を考え、実際にリサーチもおこないました。そのなかで、私より年上のがん患者の方と出会ったんです。
――その方とはどんなお話を?
その方には元恋人が3人いました。「元恋人に会ってみたいか」と聞くと、納得できる答えが返ってきたんです。そして、それを演技に活かすことができました。良い意味で会うことへの期待感があり、そして「サヨナラ」を告げたいと話していらっしゃいました。
アイス・ナッタラット
――ウードには、親しい人たちに別れを告げたい理由があるんですよね。
そうなんです。彼は、父親に別れを告げられなかった後悔を持っている。それに基づいての行動です。もし死が間近に迫った状況になったとき、やっぱり誰にも別れを告げないで亡くなるのは良くない。たとえ自分の心の傷に触れたとしても、ちゃんとお別れをした方が良いですよね。
――ウードの元恋人は、ダンサー、役者、フォトグラファーというクリエイティブな職業に就いている人ばかり。そこからもウードの性質を感じられる気がします。
海外で仕事をしているタイ人は、夢を持ってそこで暮らしている方が多い。特に、ウードたちがかつて暮らしたニューヨークはクリエイティブな人たちをたくさん受け入れる街ですよね。しかもレベルが高い。ニューヨークのタイ人のコミュニティも、やはりアーティスト職が多い印象です。ただ、ウードがそういった職業の人に引きつけられたのは偶然だと思っています。すべてはボスの紹介で知り合っているので。一方で、3人の元恋人を時間軸で紐解いてみると、おもしろいことが分かるんです。1人目の恋人であるフォトグラファーはウードより年上、次のダンサーは年下、最後のアリスが同世代。つまり世代によって学ぶことが違って、その関係性を次の出会いに活かしているんです。
アイス・ナッタラット
――その時々を象徴する劇中音楽も印象的です。アイスさんにとって自分の気持ちをあらわすような楽曲はありますか。
私は、歌詞がなくて音だけのものが好きなんです。特に、坂本龍一さんの楽曲、自分自身と向き合う大切さに気付かされ、そして自分について理解できるような気持ちになるんです。
――演技面では、バズ監督からアドリブの芝居をいくつか求められたそうですね。たしかにナチュラルさを感じさせる場面がたくさんありました。
実は「即興の演技をやる」と聞いたとき、今までやったことがなかったので、すごくプレッシャーに感じたんです。自分の方法が間違っていないか、あとでカットされるんじゃないか、映画として効果を生まないんじゃないかなど、いろんな不安がありました。でもバズ監督が見守ってくれたので、安心して即興の演技に臨めました。監督のおかげで正しい方向へと持っていけたんです。4、5シーンくらいチャレンジしたら、そのあとは馴染むことができました。
――バズ監督は、アジアのみならず世界中で注目を集めている作り手ですね。そういった監督との仕事は大きな経験になったのではないですか。
バズ監督の作品に参加できたのは、キャリアでも予想外の出来事でした。国内でもトップクラスの作り手で、タイの俳優は誰もが「一緒に仕事がしたい」と願う方。しかもプロデューサーは、ウォン・カーウァイさん。すばらしいおふたりとご一緒することができました。自分が役者として成長できたと実感できる作品になったので、ぜひご覧いただきたいです。
アイス・ナッタラット
取材・文=田辺ユウキ

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