ALI 苦難の時期にも下を向かず、音
楽のパワーを信じ続けたバンドがたど
り着いた大きな第一歩

さあ、ショウタイムの始まりだ。ALIの活動再開後第二弾配信シングル「SHOW TIME feat.AKLO」は、新生ALIのテーマ曲と呼ぶにふさわしい強烈なファンクチューンだ。アニメ『呪術廻戦』エンディング曲として大ヒットした「LOST IN PARADISE feat.AKLO」に続き、二度目のタッグとなるラッパーのAKLOとのコラボレーションは、さらに緊密さを増した。昨年、バンドを休止せざるをえなかった時期の心境を入れ込みつつ、ALIの楽曲を入場曲として使い続けた大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンジェルス)への思いも乗せた、歌詞のメッセージはどこまでもポジティブ。苦難の時期にも下を向かず、音楽のパワーを信じ続けたバンドがたどり着いた、これは強く大きな第一歩だ。LEO(Vo)、CESAR(Gt)、LUTHFI(Ba)の今の想いを訊いた。(※CESARの正式表記はEにアキュートアクセントがつきます)
――6月の中旬に、サウジアラビアのアニメフェスに行ってきたそうですね。オーディエンスの反応はどうでしたか。
LEO:めちゃくちゃ良かったです。スターでしたよ、オレら(笑)。
CESAR:向こうは、アニメがめちゃくちゃ人気あるみたいで、日本語を全然知らないタクシーの運転手とか、飲食店のアルバイトとか、アニメの名前を出しただけで“おっ、マジか?”みたいな反応をしてくれるんで。もう共通言語ですね。
――特に、ALIがエンディング曲「LOST IN PARADISE feat.AKLO」を提供した『呪術廻戦』は、世界的なビッグコンテンツですから。
LUTHFI:インドネシアでも『呪術廻戦』がNetflixで放送されてて、エンドロールで僕の名前も出て、“インドネシア人がいるぞ”ということが話題になって。会ったこともない同級生から連絡が来て、“覚えてる?”って言われたりとか(笑)。すごいですね。
――いいコンテンツに巡りあえました。
LEO:そうですね。本当に、感謝です。
LEO(Vo)
大谷選手がオレらの曲を使い続けてくれて、日本ではかからない中、L.A.の球場ではかかり続けるという経験は、お金を払ってもできることじゃないと思った。(LEO)
――今回、その「LOST IN PARADISE feat.AKLO」に続いて、AKLOさんと2回目のタッグが実現しました。新曲「SHOW TIME feat.AKLO」はどんな想いが詰まった曲でしょうか?
LEO:AKLOくんはずっと憧れの人で、「LOST IN PARADISE feat.AKLO」で一緒にやれて、世界中の人に届けられたんですけど、オレらがそのあといろいろあって、休まなきゃいけなくなって。その間、大谷翔平選手を含め、奇跡のようなことが重なって。なんとか音楽をもう一回できることになったんですけど、その間ずっとAKLOくんも連絡を取ってくれて……大谷選手がオレらの曲を使い続けてくれて、日本ではかからない中、L.A.の球場ではかかり続けるという経験は、お金を払ってもできることじゃないと思ったんですよ。その気持ちをしっかりと形に残したいなと思って、その間に作っていた曲の中からこれを選びました。「SHOW TIME」は、大谷選手の「It’ s SHO TIME!」とかけていて、本当は「SHOWTIME」って間をあけちゃいけないんだけど、このほうが面白いかなと思って「SHOW TIME」にしました。
――すごく意味深い曲になったと思います。
LEO:正式に言うと、これが復帰第一弾なんですね、謹慎中に作っていた曲としては。「TEENAGE CITY RIOT feat.R-指定」(2022年2月配信リリース)は、本当はその前にできてた曲なんで。ミックスとかも含めると、あれが復帰第一弾でいいんですけど、オレらとしては、去年踏み込もうとした領域にやっと踏み込める。やっぱりそこはAKLOくんしかいないだろうし、AKLOくんとしかできないし、ということですね。
――そもそも、LEOさんの頭の中では、どういう曲にしようという構想があったのか。
LEO:ALIはファンクバンドとして始めていて、ファンクって日本語では合う言葉がないんですけど、オレはずっと“団結”という意味でとらえていて。肌の色も人種も含めて、いろんな人を集めてファンクバンドとして歌ってきたんですけど、去年ああいうことが起きて、全部の楽曲が一回消えて、今までの曲もこの先出せないかもということになって。だからこそ今、ファンクという、僕がやりたかったことのベーシックな部分を出したかったんですね。ピュアなファンクチューンというものを、今まであんまり出してなかったんで、“今回はちゃんとファンクしよう”と思って、これが本当に最初の、ゼロ枚目の曲だという意識で作りました。それと、今まで音楽をやったり、聴いたりする中で、外国の(音楽の)カルチャーには親、息子、孫というつながりがあるな、という関係性を感じてたわけですよ。たとえばおじいちゃんとしてブルース、ジャズがあって、その息子としてファンク、ソウル、ロックやディスコがあって、孫としてヒップホップが来て。ヒップホップの中にもブルースがあるし、ヒップホップの中にもジャズがあるし、今のヒップホップを聴いても、全世代が歴史としてちゃんと伝わってる。それがすごくうらやましくて、オレもそこに参加したいというか、音楽の中ではそれができるから。どこ生まれとか関係なく。 だからオレなりに、日本の東京からのファンクに対する返答でありつつ、ファンクという歴史を一歩前進させたくて、こういうサウンドのアプローチになりました。
CESAR(Gt)
(ライブは)マジで、パンクだと思います。本当に命を燃やす感じでやってるし、このステージで死んでもいいと思ってやってるんで。(CESAR)
――ギターのカッティングはジェームス・ブラウンっぽいフレージングで、かつグルーヴそのものはとても現代的。原点と今とがつながってる曲だと思います。
LEO:今の時代にそれをピュアにやれるのがうれしいし、メジャーでそれをできたこと、しかも復帰してできたことがまた、すごい尖ってていいなと思います。 “オレらはやったぜ”という達成感を、しっかり出せて良かったなということに尽きます。
――CESARさんとLUTHFIさんの、楽器のアプローチはどんなふうに?
CESAR:僕はとにかく土着的に、“ザ・ファンク”という感じでギターを弾きたいと思ってました。この曲は全部が分数コードになっていて、浮遊感がずっとあって、そういう部分は正統派ファンクではないんですけど、ギターはちゃんとファンクのルーツを守って弾き続ける感じで。さっき言ってくれたJBとかも、サンプリングに近いぐらい取り入れて、ギターだけはレトロな感じになってます。でも楽曲は意外とモダンな感じだし、AKLOさんが入ってくれることで、接着剤的な要素もあって、若い世代の人にも新鮮な耳で聴いてもらえる感じに仕上がったんじゃないかなと。世代が上の人は、懐かしいと思ってもらいながら聴けるのかなと思いますけど、僕にとってはむちゃくちゃ新しい曲です。LEOさんが言った通り、ALI以外絶対にできない曲だなと思ってます。
LUTHFI:ベースラインは、LEOからリファレンス(参考曲)をもらって、昔のレコードから“こういう感じで弾いて”ということがあったので。もともとこの曲はすごく速くて、うまく弾けなかったんですけど、そこからさらにテンポアップしているので、自分の中でもすごいチャレンジになった曲です。ファンクって、そんなに速くないじゃないですか。ALIのテンポはすごく速いけど、それはそれですごい好きです。ALIらしいって感じ。
――そこが新しさを感じるところだと思います。ちなみにファンクといえば、サビの《Funk you》っていう表現、これって英語でもともとある言葉でしたっけ。
LUTHFI:確か、スライ(スライ&ザ・ファミリー・ストーン/Sly & the Family Stone)が言ってるんですよね。
LEO:ブルーノ・マーズ(Bruno Mars)も言ってる。けっこう昔からある言葉で、ダブルミーニングじゃないですか。これ(ピースサインを裏返すポーズ)って、イギリスでは“F**k you”の意味ですけど、ひっくり返すとこっち(表のピースサイン)の意味にもなる。あの時は本当に大変だったんで、心の底から“Funk you”という意味もあります(苦笑)。
――ああそうか、バンドが止まってしまった当時の気持ちも、そこに入っている。
LEO:入ってます。それと、大谷翔平を表す言葉として、ということもあります。二刀流で、あらゆる常識を打ちのめしてくれたんで、“ハンパじゃねえぜ”という意味を込めて。
――ちなみに、歌詞の冒頭の《The light is making speeches you》って、どんな意味ですか。
LEO:光がおまえに問いかけて行く、です。イメージですけど、教会なり、スポットライトなり、暗いところから、ポッと光が差してくる感じです。
――本当に、ポジティブなワードで貫かれてますね。
LEO:そうです。全体的に超ポジティブです。オレらにとって音楽というものは、最後の柱というか、暗闇の底から上に登って行ける唯一の柱だったんで、音楽に対する愛情というか、純粋なものに対してどう賛美していくか、みたいな気持ちが基本にあって。そういう、人の純粋さに対するメッセージというテーマがあるんですよね。大谷選手も、日々どういうふうに過ごしているか?といったら、大きい目標を決めたら、あとは日々を大切に大切にしていくだけ、ということをインタビューで言っていて。一打席一打席、ホームランを目指すというよりも、丁寧に一つずつ、その積み重ねが結果になるということを言っているのを見て、本当にピュアにやっているんだなと。
――いい言葉です。
LEO:そこでピュアにやり続けるっていうのは、自分をどう飽きさせずに楽しませて、なおかつ永遠に楽しめるかどうか?が大事だと思うんですよ。死ぬまで一つのことを、いかに楽しめるか。オレは今35歳なんですけど、今までは、音楽と出会って本当に楽しく、飽きることも一切なく、ひたすらに神様をあがめるかのように邁進して来れたんですけど、この先もそういうふうにやっていきたいなという祈りも入りつつ、AKLOくんにもそういうことを話して出来上がった歌詞ですね。
――歌詞で気に入ってるフレーズはありますか?
LEO:難しい質問ですね(笑)。歌詞はたぶん、LUTHFIと半分半分くらいで書いたのかな。
――《Work it out for purity》って好きなんですけど、ここは?
LEO:そこはオレです。でも《Your legacy’ s just begun》は、LUTHFIが書いてる。
LUTHFI:LEOが言いそうなことで、LEOが(言葉が)浮かばないこと。日本語でよく言ってる、“うちらの伝説作ろうぜ”っていうのを英語にして、LEOが言いそうなことを書いてます。
LUTHFI(Ba)
ALIのテンポはすごく速いけど、それはそれですごい好きです。ALIらしいって感じ。(LUTHFI)
――LEOさんが全部書いたのかなと思ってました。最近はそんな感じですか。
LEO:時間がない時と、ある時によりますね。「LOST IN PARADISE」みたいに、オレが全部バーッと書く時と、文法の間違いだけLUTHFIに直してもらう時と。でも最近は半分ずつぐらいで、LUTHFIのほうが多いかもしれない。任せてます。
LUTHFI:二人とも映画が好きなので、“こういう映画のこの風景のイメージで”とか言い合って、書いたものをLEOに見せて、違うと言われたら直して。結果的にLEOが歌うので、LEOが“これがいい”というものを二人で作ってる感じです。
LEO:行ったり来たりしながらね。
――メロディは、基本LEOさん?
LEO:今回は、全部そうですね。
――CESARさんは、曲作りにはどういう参加の仕方を?
CESAR:「SHOW TIME」で言うと、最初にLEOさんが弾き語りで持ってきて、スタジオでみんなで弾きながら、LEOさんのイメージをどんどん形にしていく感じですね。みんなでプリンスとか聴きながら、リファレンスに近づけていく作業をしました。
LUTHFI:コード、めちゃくちゃ難しかった。
LEO:オレが作る曲って、変なんですよ(笑)。
LUTHFI:普通だったらベースがルーツ(基音)を弾くんですけど、僕が分数コードを弾いて、ルーツはずーっと真逆のことをやってる。
LEO:オレの弾き語りをどう再現するか?みたいなところで、二人で頑張ってくれました。
――3人だから、それぞれの責任というか、役割が大きくなったんじゃないですか。いい意味で。
LEO:そうですね。バンドっぽくなったなと思います。
――数が減って、むしろバンドっぽい意識になったというのは、すごく面白いです。サウンドも、ALIの場合、正式メンバーの数がどうあれ、生のバンドサウンドを追求しているし。
LEO:演奏してる人数は変わってないですからね、メンバーが抜けても。ただ今回は、よりトラックっぽいところも多々入れているので、そこは今回からの実験というか、もう一歩踏み込みたいんですよ。より、一番最高の今をとらえるために。だって、ALIを始めた時よりも、オレらっぽいバンドが増えてきたんで、ちょっとむかつくなと思ってて。
LUTHFI:ふふふ。確かに。
LEO:半分本当で、半分ジョークですけど(笑)。今は、メジャー1stアルバムに向けて、より一歩前進したいと思ってます。
できるだけ日々の人生を素敵に生きて、嘘はなく、演出はなく、素直にかっこよく(音楽を)出していきたい。(LEO)
――次の目標はそこですか。メジャー1stフルアルバム。
LEO:そうですね。ALIは、世界中の人と音楽を一緒に作りたいという気持ちがあってスタートしたんですけど、最近は海外のアーティストとコミュニケーションを取ったり、それこそサウジアラビアに行けたり、徐々に具現化しつつあるので。海外で通用するかどうか、オレはずっと信じ切ってやってきて、たまには不安になりながらも、基本はずっと自信を持ってきたんですけど、実際サウジアラビアでは、たぶん大丈夫そうかな?っていうリアクションをもらえたので。よりポジティブにその経験を生かしながら、今年は日本のフェスとか、いろんな人の前でライブができるようになってきてるし、より一層世界中に届けるためにも、オレらのメッセージを表現できたらいいなと思ってます。
――頼もしいです。
LEO:謹慎中に思っていたのは、100%のうち5%ぐらいしか、オレはまだ音楽的に表現できてないなということで。まだ95%ぐらい、やりたいことがオレの中にあるんですよ。だから急がないと、と思います。たくさん作りたいし、たくさん出したい。そのために、ちゃんとヒットを出して、しっかり結果を出して、世界中に好きな音楽を届けられるように、頑張りたいなと思ってます。
――期待してます。個人的には、ALIにはフィーチャリング曲が多くて、ヒップホップ、レゲエ、ジャズとか、様々なミュージシャンが往来している、そこにALIの音楽の多様性があって、ハブ(結節点)みたいな面白い存在だなあと思うんですね。
LEO:それは、オレがそういうところで生まれて育ったということが、たぶんあると思います。まだまだ、みんなの力を借りてばっかりなところもあるんですけど、今後はもっと、より一層ハードコアに行きたいですね。そのためには、できるだけ日々の人生を素敵に生きて、嘘はなく、演出はなく、素直にかっこよく(音楽を)出していきたいんで、そのためにはかっこよく生きなきゃいけないから。自分の人生を鍛えれば、音楽もかっこよくなるし、音楽をかっこよくしていけば、人生も豊かになるだろうし、その二つを常に気を付けながら、かといってなかなかうまくいかずに迷いながら、頑張って生きていこうかな、みんなと同じように。と思ってます。
――それって、責任持って仕事と人生をまっとうしようとする、すべての人の共感を呼ぶ言葉だと思います。ライブ、また行かせてください。
LEO:来てください。ぜひ。
――まだALIのライブを観たことのない人へ。最後にメッセージをもらえますか。
CESAR:まったく観たことのない人は、たぶんびっくりするんじゃないですかね。マジで、パンクだと思います。本当に命を燃やす感じでやってるし、このステージで死んでもいいと思ってやってるんで、お客さんにもそれが伝わるんじゃないかなと思ってます。それぐらい、熱いライブをやってます。絶対、観たほうがいいと思いますよ。本当はオレが客席から観たいけど、できないんで(笑)。だから、観れる人は観てほしいなと思いますね。ぜひ一回観に来てください。それで、また来たいかどうか、判断してください。
――あとひとつ、聞き忘れてました。この話をしている時点では、「SHOW TIME feat.AKLO」のミュージックビデオはまだ完成していないですけど、どんな感じになりそうですか。
LEO:頭の長い女の人がいて、その頭が爆発するんですよ。そうするとレコードが回ってて、音楽とALIに恋していく、というMVです。
――ええと。つまり、見なきゃわかんないということで(笑)。
LEO:その通りです(笑)。
――なんか、かなりシュールでぶっとんだやつを想像しますけど。
LEO:でも、真実ですよ。音楽に恋する、というのは。ぜひ楽しみにしていてください。ALIは“LOVE,MUSIC DANCE”というスローガンでやってるんですけど、ようやくDANCEの部分が少しずつ、表現でき始めたんじゃないかなと思いつつ。まだまだ始まったばかりですけど、ようやく一歩挑戦できたかなと思います。
取材・文=宮本英夫 撮影=森好弘

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