鈴木拡樹×宮崎秋人『アルキメデスの
大戦』インタビュー~「僕たちならき
っと良い関係が描ける自信がある」 

2年前に全公演中止となった舞台『アルキメデスの大戦』が、2022年10月ついに上演される。原作は三田紀房のマンガ。第二次世界大戦時の日本海軍を題材に、海軍主計少佐として、戦艦建造計画の不正を暴こうと奮闘する数学の天才・櫂直(かい・ただし)の活躍が描かれる。2019年夏には菅田将暉主演で映画化され、その年に最もファンの支持を得たスケールの大きな作品に贈られる石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催)を受賞した。舞台化の原案となるのは、山崎貴が監督・脚本をつとめたこの映画版だ。

7年ぶりの共演となる櫂直役の鈴木拡樹と、櫂をサポートする田中正二郎役の宮崎秋人に、ふたたび相まみえる意気込みを聞いた。
7年前からの成長を感じられるのが楽しみ
ーー2年越しの上演ですね。
鈴木:2020年の予定でしたが、もう2年経ちました。当時はすでに取材も受けていて、「このまま出発するんだなぁ」という気合いだったんです。でも結局、コロナの影響で稽古すらできない状態で、完全燃焼できない未消化のままで終わった。それがこうして2年の時を経て、ほぼ同じメンバーが揃いました。リベンジする価値のある作品だと思いますし、ぜひこの作品を全公演完遂したいです。
宮崎:2年の間があいて、こうしてまた集まってこの公演が打てるという嬉しさと、2年前では考えられなかった世界情勢……ウクライナとロシアのことなど、よりこの作品が近く感じることになってしまう悲しさもあります。でも、一昨年ではそこまで持ち得なかった使命感のようなものをより強く持って10月の公演に挑むことができるので、責任を持ってしっかりとお届けできればなと思います。
(左から)宮崎秋人、鈴木拡樹
ーー7年ぶりの共演ですが、お互いに変化は感じますか?
宮崎:俳優としては稽古が始まってみないとわからない部分の方が多いですが、久しぶりに会った時の自分のテンションの上がり方がなにも変わってないなって思いました(笑)。顔を合わせた瞬間に手を振り合って「あー! あー!」って興奮しちゃったんだけど、そんな自分にびっくりしましたもん。
ーー「あの頃の自分」に戻っちゃうんですね。
宮崎:そうなんです。僕は今年で32歳になるから、もうちょっと落ち着いた感じで「あ、拡樹君、お疲れさまです」みたいにいられるかと思っていたら、無意識に「あー! 拡樹君!」って叫んじゃって(笑)。
鈴木:嬉しかったですね。
宮崎:やっぱり何年経っても20代の頃と変わらないですね。
鈴木:久しぶりだとしても会った瞬間に当時を思い出せる。嬉しいですよねぇ。だからこそ、稽古場で一緒に稽古した時にはより成長を感じられるんだろうな。「こういう引き出しを身につけたんだ」みたいな感動がきっとあるんだろうなと思うと楽しみです。逆に変わったことと言えば、7年前に共演していた頃より体のラインがガッシリしたよね。
宮崎:確かにそうですね。
鈴木:昔から筋肉がつきやすいんだろうなとは思っていたけど、本当にガッチリしてる。2年前に(『アルキメデスの大戦』の)取材で会った時にも思ったけど。
鈴木拡樹
ーー2年前におふたりに取材させていただいた時は「軍隊の役作り」と言っていましたが、今回も役作りのための筋トレですか?
宮崎:はい。今も2年ぶりにジムに通って筋トレしています。軍隊が似合うようにならなきゃなぁって思っています。脱ぐシーンはないんですけどね。
鈴木:たしかに、脱がないのに(笑)。
宮崎:拡樹君が細身ですから、ほぼ背丈の同じ僕が隣りに立った時に細身だったら「君たち本当に海軍かい?」ってなっちゃうかなと。だからパッと見で拡樹君より大きくなることを目指していますね。そこにいるだけで軍人であるという説得力が欲しいので、それは最低限作りこもうとしています。
ーー前回の共演は『弱虫ペダル』で競技シーンも多かったですが、今回は会話劇ですね。共演の楽しみは?
鈴木:たしかに『弱虫ペダル』とは役としてのやりとりの仕方もずいぶん違うでしょうね。『弱虫ペダル』では競技しながら喋っていたので、風の影響で声を張らないと前に届かない……みたいな状態での会話でした。今回は、お互いの関係の変化を作っていけるのが楽しみですね。
宮崎:僕の演じる田中の目線で言うと、櫂を徐々に認めていくという変化が見えるシーンが楽しみですね。好きなら好き、嫌いなら嫌い、とわかりやすいわけじゃなくて、そのグラデーションが描かれている作品です。もし2年前なら苦戦しただろうな。もちろん今回も気持ちや関係の変化のグラデーションを見せることには苦戦すると思うんですけど、成立させられるんじゃないかな。だから稽古も楽しみですね。
宮崎秋人
ーー2年空いたことで、芝居にとって良い影響もありそうなんですね。
宮崎:もちろん楽しみにしてくださっていたお客様に、チケットを手放させて悲しい思いをさせてしまったことは重々承知しています。同時に、時間が空いたからこそ表現できることがとても大きいというプラスの面がありますので、そこはぜひ楽しんでいただけると嬉しいです。
ーー鈴木さんは、今作での共演の楽しみはどんなところにありますか?
鈴木:やっぱり変化ですね。出会った時の反応からの、僕とお嬢様との関係をちゃかすようになるまでにふたりが辿る道筋とか、立場が逆転したりとか、気になるところがたくさんあって楽しみです。どんな舞台になるんだろうね。
宮崎:ほんとにね!
鈴木:セリフのやりとりが、一般的なリアルな会話のようにすることもできるし、演劇的な表現にすることもできる。それは作品の流れや、僕たちが築いた関係によると思うので、いろいろな可能性があって楽しみですね。
宮崎:そうそう。拡樹君と僕のふたりの間にすでに絆があることが大きいです。もし初めて共演する人だったら、なにも無いところから作っていくという新しい作業が必要でした。でも僕たちなら、きっと良い関係が描けるという自信があります。
(左から)宮崎秋人、鈴木拡樹
ーーではお互い以外に、共演が楽しみな方はどなたですか?
宮崎:僕は近藤頌利。初めて共演するんですよ。
鈴木:そうなんだ!
宮崎:事務所の後輩で面識はあるので、決まった時に「ようやく秋人君と共演できて嬉しいです。頑張ります」みたいな連絡が来て、「僕も初めてだからガッカリされないように頑張ります」と送って(笑)。ちょっとね、かっこいいところを見せられたらなと思います。頌利もすごく良い役だし。
鈴木:熱い男が2人います。秋人君と、頌利君と。頌利君とは一度共演しているので楽しみにしています。あとは、すごく絡みがあるので神保悟志さんのオーラに負けないように頑張っていきたいですね。
数学、戦艦──舞台版での表現に期待
ーー作品の魅力はどんなところに感じますか?
鈴木:時代背景は史実に基づいているんですけれど、日本国内の造船に対する賛否によって争う、という作品は他にはなかなかないと思います。とても珍しく楽しんでいただけるんじゃないかな。
鈴木拡樹
宮崎:戦争映画に触れるなかで「戦艦大和」って象徴や希望となる面もあると捉えていたんですが、それを否定する立場の人物も出てくる作品。やっぱり角度が変われば意見は全然違っている。彼らの正義、両者の正義、最後に残るもの……もともと自分が持っている考え方を再度考え直させてくれる作品だなと感じました。
ーー台本を読んで、舞台版の面白さはどんなところに感じましたか?
宮崎:自分の心情を吐露するシーンが皆にあって、舞台ならではだなぁと思いましたね。田中の場合は、人前では「軍人として居る」ということを意識している人間なので、内心で考えていることを口にする時がひとりの人間として存在する瞬間だと思う。そこでどういう男が見えてくるのか、僕自身も楽しみですね。あとはやっぱり舞台で「どうやってやるんだろう?」と思いますね。
鈴木:ね(笑)。僕は、時系列がテレコになっていたりするので、なんとなく「こういう未来になっていくんだろうな」とわかるなかでお客様にお話を伝えていく、というスタイルは原作とは違う。櫂にとっては、数学を越える感情がうまれる瞬間があって、そういう部分の演出はどうなるんだろうと楽しみですね。
ーー演出に期待したいことはありますか?
宮崎:日澤さんは、この題材(数学)の見せ方が気になったりはしますけど、それよりも中身。役と役や、そこで何が生まれるかをすごく大切にされる方だなと思います。役者をやっているうえでロマンを感じているのは、自分が役を育てて、相手の育てた役とぶつかっている実感がお芝居の醍醐味だなということ。そこをすごく丁寧に一緒に積み上げることができる演出家さんだなと感じているので、その作業が楽しみですね。
宮崎秋人
鈴木:僕は今の段階で気になるのは、巨大な戦艦をどういうふうに表現するのかな? と。今の時代はマッピングとかの技術もすごく発達していますからそういうもので描くこともできますし、それとも実物をまったく見せずに芝居で「でかい!」と言えば無限大に拡大することもできます。
宮崎:(笑)。
鈴木:まぁこれは極端な話でしたけど。あとは、会議室やデスクなど、どこまでが舞台上に実際に置いてあるのか、どこまでが想像で作っていく作業なのか、ということは楽しみではありますね。
宮崎:それによって演じる側はまったく変わりますよね。
鈴木:そうなんですよね(笑)。
ーー上演が楽しみです。延期から2年を経たことでの変化や意気込みを聞かせてください。
鈴木:最近やった舞台が約半年ぶりで、やっぱり舞台に戻ってくると不思議な感覚だったんですが、あらためて「ああ、舞台って楽しいな」とすごく実感しましたし「コロナで公演自体が難しかったけど、お客様がいよいよ帰ってきてくれたんだなあ」と。演劇をやれるありがたみというか、すごく健全で良い空間だなと感じました。
宮崎:今回リベンジできることは良かったです。この2年でいろんな方々と出会って、ご一緒してみたかった方々とお仕事をすることができた。だからきっと2年前では到底できなかった田中が演じられるのではないかと自分に期待しています。あと、久しぶりに拡樹君と共演できることには特別な思いがあります。20代前半の若い頃、拡樹君と共演した時にはつねに支えてもらっていましたから。
鈴木:しっかりしてましたけどね。
宮崎:いやいやいや(笑)。僕が初めて座長をやった作品の時はもうふらふらでカーテンコールで立っていられなくて、拡樹君に肩を担がれて舞台に上がっていったりしたんです。そういう個人的な思いもあるんで、いろんな経験を経てまた拡樹君の横に立つことについては思い入れが強めです(笑)。
ーー演出家の日澤さんの言葉を借りるなら「バディ」としての2人の共演を楽しみにしています。ありがとうございます。
(左から)宮崎秋人、鈴木拡樹

■鈴木拡樹
ヘアメイク:AKI
スタイリスト:中村美保
衣装クレジット:
・シャツ amok/Karaln ¥26,400- 問:Karaln/03 6231 9091
・パンツ Iroquois/Karaln ¥27,500- 問:Karaln/03 6231 9091
・靴 ASICS RUNWALK ¥26,400- 問:アシックスジャパン株式会社 お客様相談室
0120-068-806
■宮崎秋人
ヘアメイク:野中真紀子(é clat)
スタイリスト:青木紀一郎

取材・文=河野桃子   撮影=池上夢貢

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