6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

MORRIE、SUGIZO、
嘉多山信らが出演した、
足立“YOU”祐二の
三回忌追悼公演のレポートが到着

DEAD ENDのYOUこと足立祐二が急逝してから2年――。去る2022年6月16日に東京・渋谷Spotify O-EASTにて、縁のある仲間たちが集い、『足立“YOU”祐二 三回忌追悼コンサート』が開催された。DEAD ENDがいかに後続のアーティストに影響を与えたバンドであるのかは、2013年にリリースされた『DEAD END Tribute -SONG OF LUNATICS-』に参加した錚々たる顔触れを見るだけでも明らかだが、その多くのマテリアルを作曲し、個性溢れる情感豊かなフレーズを聴かせてきたギタリストがYOUである。

ただ、実際のところ、YOUがすでにこの世に存在しないことに現実味を感じられなかった人がほとんどだろう。折からのコロナ禍もあり、ファンを対象にした、いわゆるお別れの会なども行われていなかった。この日、会場には献花台が設置され、多くの観客が花を手向けていたが、それは受け入れ難かった事実と各々が改めて対峙した瞬間でもあったかもしれない。言わずもがな、その様子は厳粛なものであり、YOUとの思い出が如実に想起される時間でもあった。

もちろん、今も悲しさは計り知れないが、音楽家としての類稀な才能を持った彼の功績を再確認しながら、YOUの朗らかな人柄に呼応するよう盛大に送り出すべく企画されたのが今回の追悼コンサートだったことは、出演したミュージシャンたちの演奏や言葉から自ずから伝わってくるものだった。

最初に登場したのは、YOUがDEAD END加入以前に在籍していたTERRA ROSAの楽曲を演奏する、この日のために組まれたLegend Of TERRA ROSAだった。メンバーは、YOUが10代の頃からの付き合いであり、特に親しい間柄だったリーダーの岡垣“Jill”正志(Key)、YOUとは高校時代からの友人で、彼の仲介もあってTERRA ROSAに加入したエピソードを持つ鈴木広美(Gu)、YOU-VALメロンというユニットで活動していた長井“VAL”一郎(Ds/ARK STORM)、DEAD ENDと同じく1980年代半ばのインディー・シーンを賑わせたREACTIONの反町“YUKI”哲之(Ba)、YOUとは幾度となくセッションしていた荒木真為(Vo/STARLESS、APHRODITE)の5人だ。
6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

セットリストはYOUが在籍していた頃の楽曲のみで構成。2016年にTERRA ROSAは時限的再結成を果たし、東名阪ツアーを行ったが(その模様を収めたライヴ盤『TERRA ROSA LIVE FROM CODA』もリリースされた)、その発案をしたのはYOUだった。彼にとっては、それほど思い入れのあるバンドだったと言っていいだろう。作曲者としてクレジットされている「Do Work」「Friday’s Free Fair」「The Endless Basis」、初期TERRA ROSAを象徴する「A Hell Ray」「Battle Fever」等、その一つ一つに真摯な思いが載せられていく。

岡垣が口にした逸話を始め、メンバー個々が語るYOUの横顔は場内を和ませるものばかりで、それも興味深かったが、やはり説得力があったのは、この歌と演奏こそだ。在りし日の姿に思い起こさせるというよりも、まさに追悼の意味を体現したパフォーマンスだった。
6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

6月16日@Spotify O-EAST(Legend Of TERRA ROSA)

YOUが河村隆一のツアーで知り合った嘉多山信と組んだユニット・ぽんぽんにゃんのステージは、まず驚きから始まった。嘉多山がアコースティック・ギターを奏でる一方で、聞こえてきたのは、まさにYOUの音。ステージにはYOUのギターとアンプが置かれ、マニピュレーターの大塚秀記が、本人の録音データをリアンプして鳴らすという、現代のテクノロジーならではのプロダクションが組まれていたのである。ソロ・アルバム『YOUCOUSTIC』(2020年)がそのまま再現されたような恰好だが、その生々しさは、YOUがその場で弾いているかのような錯覚さえ感じるほどだった。
6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

エレキ・ギターとアコースティック・ギターによる「7」と「Flippper」を経て、「KISS KISS」では、菊地英二(Ds/THE YELLOW MONKEY)と長谷川淳(Ba/GERARD)を擁する丸ノ内線の会★NEOが加わり、その後は丸ノ内線の会★NEOのみのパフォーマンスへ。こちらは『MANIAC LOVE STATION』(2013年)と『ANDROMEDIA』(2019年)の収録曲を並べつつ、音源化されていなかった「伊豆ライナー Episode3」も披露。トリオというシンプルなバンド編成によるアンサンブルが、プログレッシヴなセンスも交えながら心地よいグルーヴを作り出す。TERRA ROSAやDEAD ENDとはまた異なる、YOUのインストゥルメンタル作品の魅力がこの場で具現化されたのも意義深いものだった。
6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)

DEAD END SESSIONはおそらく誰もが特に注目していたものだったことだろう。足立祐二という不世出のギタリストが広く世に知れ渡るきっかけになったのがDEAD ENDである。MORRIE(Vo)は、YOUと関係の深いFIRE(Ba)と下田武男(Ds)をリズム隊に迎え、YOUをリスペクトするHIRO(Gu/La’cryma Christi)、咲人(Gu/NIGHTMARE)、SUGIZO(Gu/LUNA SEA、X JAPAN)が順にギターの座につく布陣でこの日のステージを敢行した。DEAD ENDは2015年以降はライヴを行っていなかったため、MORRIEがバンド形態ですべてDEAD ENDの楽曲を歌うステージは約7年ぶりということになる。
6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

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それまでほぼ着席したまま観覧していたオーディエンスも、MORRIEに導かれて総立ちになった。リリース当時に賛否両論を巻き起こした『ZERO』から「I Want Your Love」で幕を開け、再始動後の初ライヴの際にも先行して届けられた「Dress Burning」へ。そして「今日はありがとうございます。思う存分、楽しんでもらえたらと思います」(MORRIE)と挨拶した後は「Embryo Burning」。意表をつく流れである。YOUを意識したHIROのプレイにも安心感があった。ここでギタリストが咲人にチェンジ。初期4作品の頃にはギターなど弾いていなかった彼のような世代にも、DEAD ENDの凄さが伝わっていることは感慨深い。予期せぬ機材トラブルに見舞われたものの、「摩天楼ゲーム」「I Can Hear The Rain」で魅せた好演に咲人のポテンシャルの高さを認めた人は少なくなかったはずだ。
6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

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ここでMORRIEがSUGIZOを呼び込む。YOUに影響を受けつつ、独自のスタイルを築き上げたギタリストの代表格だが、それは「Serafine」や「Danse Macabre」でもわかる。オリジナルのフレーズを完全にコピーしながら、彼ならではの響きで聴かせる。続く「Psychomania」も同様だが、ライヴでのDEAD ENDを蘇らせるプレイだ。ストラトキャスターを手にし、サングラスをかけたSUGIZO。これもYOUに対する憧憬の念を表したものだった。ラストは岡垣と菊地を招き入れた6人編成で「So Sweet So Lonely」をセッションするという予想だにしていなかった展開でセットを締めくくった。
6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)

エンディングでは全出演者がステージに並び、改めてYOUを追悼する。MORRIEと岡垣が期せずしてDEAD ENDとTERRA ROSAの因縁話を繰り広げたり、菊地がかつての自身を振り返りつつ、MORRIEと同じステージに立つことになった不思議さに思いを巡らすなど、場内は温かな空気に包まれていく。再び呼び寄せられた縁と新たに生まれた縁。しかし、悲しいかな、その起源は足立祐二である。MORRIEは「実際に(この日の公演を)やって楽しかったけど、本人はいない……」と、ふと思いを吐露したが、彼にとって歴代のマスターピースを次々と歌うことは、意識せずとも、YOUと過ごした日々が浮かんでは消えていく脳内作業を伴うものでもあったに違いない。

最後には全員で1分間の黙祷を行った。共に活動したミュージシャン、関わりのあったスタッフ、彼の音楽に心酔してきたファン。思いは十人十色だろう。残された者にとっての使命は、足立祐二が生み出した作品の素晴らしさを後世に伝えていくことである。

個人的には、10代のときに『DEAD LINE』(1986年)でDEAD ENDに魅了されて以来のファンであり、特にDEAD ENDが再始動して以降は、ミュージシャンとインタビュアーという関係で足立祐二とは比較的多く接してきた立場である。ただ、周りを見渡してみると、同じような境遇の人はいない。だからこそ、担うべき役割もあるのかもしれないとも思う。音楽メディアに携わる一人として、これから様々なアイディアを熟考していきたいところだ。

なお、9月7日にリリースされるMORRIEのソロ・アルバム『Ballad D』は、既報のとおり、DEAD ENDの楽曲をセルフ・カヴァーした作品だが、新たなアレンジを通しても、やはりYOUのフレーズは生き生きとしている。彼の普遍性とでも言うべき要素が通奏低音として存在することをぜひ確認してほしい。また、一時、耳の不調で表舞台から姿を消していたYOUが、2003年に活動再開してレコーディングに全面的に参加したJill’s Projectの1stアルバム『Last Contract』も、長らく入手困難だったものの、この7月27日にリマスタリング再発されることになった。こちらはTERRA ROSA解散後の岡垣が描いた理想の音世界をYOUが共に作り上げている。
Live photo by 柴田恵理
Text by 土屋京輔

【セットリスト】
■Legend Of TERRA ROSA
1.A Hell Ray
2.I Will Love You Again
3.Holy Ones Holy Vice
4.Do Work
5.Friday’s Free Fair
6.The Endless Basis
7.Battle Fever

■ぽんぽんにゃん/丸ノ内線の会★NEO
1.7
2.Flipper
3.KISS KISS
4.Hard Tension
5.Crush Man
6.Worry Rat
7.Magical Arms Episode2
8.伊豆ライナー Episode3
9.Bionic Zone
※1〜2……ぽんぽんにゃん
※3……ぽんぽんにゃん&丸ノ内線の会★NEO
※4〜9……丸ノ内線の会★NEO

■DEAD END SESSION
1.I Want Your Love
2.Dress Burning
3.Embryo Burning
4.摩天楼ゲーム
5.I Can Hear The Rain
6.Serafine
7.Danse Macabre
8.Psychomania
9.So Sweet So Lonely
6月16日@Spotify O-EAST(DEAD END SESSION)
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6月16日@Spotify O-EAST(ぽんぽんにゃん)
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OKMusic編集部

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