[Alexandros]川上洋平、イーサン・ホ
ーク主演の以心電信サイコスリラー『
ブラック・フォン』について語る【映
画連載:ポップコーン、バター多めで
 PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、イーサン・ホーク主演の以心電信サイコスリラー『ブラック・フォン』について語ります。
『ブラック・フォン』
――『ブラック・フォン』はどうでした?
ちょうど良かったですね〜(笑)。イーサン・ホーク出演のホラーサスペンスは良作多いですよね。なのでゆるく期待はしてました。あくまでゆるく。『フッテージ』とか『パージ』とか秀逸だったもんね。なんかひとクセ違うんだよな。
――確かに。
監督のスコット・デリクソンは『ドクター・ストレンジ』の監督もやってるんですね。確かに前半はサスペンス要素あるかもな。(検索して)えっ、『地球が静止する日』も監督してるんだ! あれは不気味な映画だったなー。リメイクですよね。キアヌ・リーブス主演で。あんまり興行振るわなかったけど好きだったな。それと『NY心霊捜査官』も邦題の割に意外と面白かった。確か昔レビュー書いた気がする。こうして見ると、やっぱなんかいい意味で一癖あるホラー感が魅力の監督なんですね。
――そうですよね。
そして、『ブラック・フォン』ですが、イーサン・ホーク出てるし、一風変わったスパイスみたいなものがまぶされてるんだろうなあと思って観てみたらその通りで。やっぱイーサン・ホークとブラムハウスの映画って大外しはしないんだなって。
――なるほど。
突っ込みどころはあるし、チープな箇所が割とあるのも否めないけど。さっき話に出た『NY心霊捜査官』もそうだけど、CGとかの特殊効果系のチープさがわざとか本気かのギリギリのラインなんですよね。
――確かに、ちょこちょこ突っ込みどころはあるような。
でもそれがこの監督の味かも。あと、ところどころ『IT』だったよね(笑)。主人公のフィニーの妹が、雨の中黄色いレインコートを着て自転車で走るシーンなんてまさにだし。でも、監督的には「あの時代の子どものレインコートは黄色が多かったから偶然だ」って言ってるみたいですけど。
――『ブラック・フォン』は原作がスティーヴン・キングの息子のジョー・ヒルの短編集に収められている「黒電話」なんですよね。
で、『IT』の原作はスティーヴン・キングですもんね。その息子さんっていうことで偶然似たのか、実はオマージュなのか……真相はいかに。
『ブラック・フォン』より
■殺されると自分の名前を忘れるという設定に儚さを感じた
――少年フィニーがイーサン・ホーク演じる誘拐犯に地下室にとじ込められて、そこにある断線してるはずの黒電話に過去に誘拐された少年たちからのメッセージが届き、それをヒントに脱出を試みる話なわけですが……怖かったですか?
んー(笑)。地下室には懇切丁寧なアイテムが置いてあるわけですけど、「いや、外しとけよ!」っていう大きなツッコミ箇所でもあり、タイトルにもなってる一番大事なアイテムでもあって。でも、なぜかちゃんと不気味でしたね。この映画は幽霊と殺人鬼が出てくるけど、幽霊の方は味方で、殺人鬼の方が悪者。イーサン・ホークがその殺人鬼を演じてるんだけど、さすがでした。上裸で待ち構えてるところとか気味悪かったな。
――確かに。
殺された少年たちが自分の名前を忘れるという設定は好きでした。断片的な記憶はあるんだけど、肝心の名前、つまり自分の存在を消されてしまった感じに「殺されること」の儚さが伝わってきました。
――成仏できずに彷徨ってる感というか。
地縛霊みたいな。結局イーサン・ホークがなぜ子供を監禁するのかっていうオチの部分には少し弱さを感じたけど、あのお面キャラ自体にはドキドキしましたね。
――『ブラック・フォン』の舞台は1978年のコロラド州デンバーの北部で、スコット・デリクソン監督の幼少期にあたる70年代は子供の誘拐事件や殺人事件が多発していて、そこに対して恐怖感を抱いていたっていうのも今作を作る動機だったとか。
確かに。時代背景を上手に絡めてますよね。ハリウッド映画はそういうの多い。アメリカは時代によって、印象的な猟奇殺人事件が起きていて、その犯人をキャラクター化した映画も多く描かれてますけど。『ブラック・フォン』でイーサン・ホークが演じる誘拐犯も、モデルがいるんだろうな。
――結構癖の強いキャラクターですしね。
そう。日本だと、そういう実際の犯人をモチーフにするっていうのは不謹慎なものとして捉えられそうで、やってもかなりぼかす事が多いですよね。例えば酒鬼薔薇聖斗とかも、映画でキャラクターとして君臨させるようなアプローチはしないでしょう。
――そうですよね。連想はさせるけど、ぐらいで。
ハリウッドはそこら辺が大胆ですよね。それはさておき、『ブラック・フォン』はホラーだけじゃなく、冒険的な要素もあってそこが好みの分かれ道かも。『グーニーズ』じゃないけど。
『ブラック・フォン』より
■観てみたら意外と面白かったっていう流れを自ら作る方がいい
――冒険を通しての子供の成長物語みたいな要素も強いですよね。
そうそう。あ、あと主人公の男の子がイケメンでしたね。
――そうですね。美少年でした。
『ベニスに死す』のあの子を彷彿とさせる。
――ああ、『ミッドサマー』の老人として話題になった。
そう。あの飛び降りちゃうおじいちゃん役の。あと、『ターミネーター2』のエドワード・ファーロングとか。
――そういう儚い雰囲気がありますよね。
ね。それと対照的に妹がちょっとおてんばで腕っぷしが強くて、兄を守る勇敢さがあって。
――果敢にいじめっ子と対決したりしますからね。
そう。でもお父さんには虐待されていたりするんだよな。
――そのお父さんは、奥さんが亡くなってしまった喪失感を紛らわせたくてアルコールに溺れてて。でも頑張って子供ふたりを育てようとしているという。
そこに共感しないわけではないんですけどね。ちょっとホラー映画の要素が薄れる瞬間でもあるかも。だから凄まじいまでの怖さを期待してた人は拍子抜けするかもしれないけど、僕はゆるくしか期待してなかった分、楽しめました(笑)。こういう映画って期待し過ぎしないほうがいい。「60~70点くらいかな?」って思って観てみたら意外と面白かったっていう流れを自ら作る方がいい。私ぐらいになると、予告を観れば大体そこのさじ加減がわかります(笑)。
――(笑)『ブラック・フォン』は予告では何点の予想だったんですか?
まさに60……70点いったらいいなくらいに思ってたんだけど、実際観たら全然超えてました。
――80点ぐらいとか?
80はいかない。ギリギリ80くらいかな。
――なるほど(笑)。
でもだから雰囲気づくりはすごく上手い。さすがブラムハウス。チープに感じるところもあったけど、全体のクオリティが低い作品ではないから、この連載でおすすめして、「川上、金返せ」って言われるレベルではないはずです。
――そうだと思います(笑)。
久々にちょっとピリッとする映画でした。美味しいうな重に付いてくる山椒みたいな。褒め言葉ですからね! 最良の暇つぶし映画だと思います。

『ブラック・フォン』より

■ぽつんと上映されてる映画が心に残ることが多い
――イーサン・ホークっていうと、2020年のカワカミー賞のベストアクターを『ハイウェイの彼方に』で受賞しています。
『ハイウェイの彼方に』は日本では劇場では公開されずに配信だけなんだよな。カワカミー賞は、あまり人が賞賛しなさそうな映画を選びがちで(笑)。映画館でバーッて人が集まってる映画をかいくぐって、ぽつんと上映されてるような映画が僕は心に残ることも多くて。そういう戦い方をしてきた映画っていうところも素敵だなって思う。
――次回、8月22日公開回は2022年上半期カワカミ―賞ですので。
そうか! 僕は最近だと『X エックス』を観ましたね。
――あの映画、すごくないですか?(笑)。
結構痛快でした(笑)。痛快といえば、『炎のデス・ポリス』っていうタランティーノぽい映画あるじゃないですか。あれも楽しみですね。やっぱり、ああいうちょっと今の時代をかいくぐるような映画が好きなんですよね。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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