Mrs. GREEN APPLEは「フェーズ2」開
幕を告げる2年半振りのライブで何を
みせたのか

Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia” 2022.7.8 ぴあアリーナMM
Mrs. GREEN APPLEの活動再開後初となるアリーナ公演『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”』 が、ぴあアリーナMMにて行われた。
2020年7月8日に「フェーズ1完結」を宣言し、活動休止期間へと突入したMrs. GREEN APPLE。あれから2年。最新ミニアルバム『Unity』のリリースと、2年半振りとなる今回のライブを以て、いよいよ「フェーズ2」が幕開けとなった。休止期間中にメンバー脱退という大きな変化を迎えたMrs. GREEN APPLEが、新体制としてどんなライブを行うのか? 期待だけでない様々な想いが行き交う満員の会場に入ると、前方のスクリーンにはピンク色の木々が風を受けて揺らぐ映像が流れ、小鳥のさえずりや、水が流れる清らかな音が会場を満たしていた。その空気に触れた時、一気に心の緊張がほぐれた気がしたし、それは、「Utopia=理想郷」の世界観を構築する為の演出であると同時に、こちらの気持ちをフラットな状態にしてくれる心遣いのようにも感じた。
会場が暗転し、バックスクリーンに大きく映った扉が開くと、大森元貴(Vo/Gt)、藤澤涼架(Key)、若井滉斗(Gt)のシルエットが登場。オーディエンスの興奮を煽る中、オープニング映像とBGMが止まり、静寂が訪れる。そして、大森がふっと息を吸った次の瞬間、「Attitude」を歌う彼の声が会場に届く――その時の会場の「ああ、この瞬間を待っていたんだ!」と言わんばかりの空気は、筆舌に尽くしがたいほどに美しかった。線香花火の最後を彩る火花のような、その時をひたすら待っていた者にしか分からない感動が、広大な会場にめいっぱい満ちたのを感じた。そこから大森が「いけるか、Utopia!」とコールし、「CHEERS」でテンションを思いっきり上げていく。<生ぬるいjuiceで乾杯>のフレーズに合わせてハンズアップするオーディエンスが身に着けていたライトバンドと連動し、会場内は高揚感とカラフルな灯りで埋め尽くされる。その中でも、バンド名を象徴するグリーンは、ひと際輝いて見えた。さらにそこから、「L.P」をプレイ。イントロが鳴った時には、会場の至るところから「まさかこの曲が!」という感情が溢れたような歓声が上がった。ライブアレンジが加わり、静と動のコンビネーションに胸が高鳴る。
2年半振りのライブに対して「ちょっと感極まっちゃっています(大森)」「こうやってライブで久々にお会いすることができて本当に嬉しいです!(藤澤)」「ただいま! 本当に、みんなに会いたかったんです(若井)」とそれぞれの想いを伝えつつ、希望に満ちた「アボイドノート」をプレイ。さらに「やっとこさ幕開けだ」というトップフレーズがいつも以上に強く響いた「StaRt」では、オーディエンスのクラップを追い風にしながらステージを自由に行き交いつつ、花道の先に用意されたサブステージに移動した若井と藤澤も、元気いっぱいにオーディエンスとのコミュニケーションを図る。「PRESENT」では、ネオンライトを彷彿とさせるビビッドな照明の中、大森が英語バージョンと日本語バージョンを交えつつ、ソウルフルな歌声でオーディエンスの身体を揺らしていく。ライトバンドの効果もあって、様々なシーンで視覚的な共鳴が生まれており、声出しのできないコロナ禍中のライブをアイデアで乗り越えていくという、ミセスの心意気を感じたシーンでもあった。そんな陽的雰囲気から一転、雄大なメロディだけれど、人の弱さに優しく触れるようなロックバラード「嘘じゃないよ」では、普段は怯え隠している自らの心と対峙するように、オーディエンスは音と言葉、ひとつひとつとじっと向き合っていた。
そしてここで、サポートメンバーの森夏彦(Ba)と神田リョウ(Dr)を紹介しつつ、疾走感溢れる「In the Morning」、ゲストとしてasmiを迎えた「ブルーアンビエンス」を披露! 大森とasmiが掛け合いながら歌い合うことで、大人になればなるほど感じる、恋愛における他者と他者の意思疎通の難しさや歪さ、そしてその中にある純な気持ちを表現していく。さらにそこから、幻想的な風景をバックに、豊かに、それでいて寂しげに歌い上げる「月とアネモネ」へと続ける。この曲の<全部全部 私が悪いから/解ってるから/気づいているから/ごめんね 全部は背負いきれないや>という歌詞に、活動休止期間を過ごしてきた彼らの心境を重ねてしまった。
その後、緑色の炎と激しいストロボが楽曲の世界観を強く印象付けるハードな「延々」、最新アルバムから「君を知らない」へと繋がっていったのだが、立て続けにプレイされたこの3曲からは、曲調の違いはあれど、一貫して喪失感がもたらす憂いを感じ、胸が締め付けられる思いがした。大森は「君を知らない」の<でももはやこれは素晴らしい/そう信じなきゃやっていけないな>というフレーズを、声が掠れるのも気にせずに力を込めて歌い上げた。何本もの白いレーザーライトが複雑に交差した照明の下で、そんな大森の歌と同様に、若井のギターも藤澤が弾く鍵盤も、ラストに向けてどんどんと熱を帯びてくその様子を見て、アルバムタイトルとなっている「Unity」という言葉を思い出す。レーザーライトのように、一本一本が真っ直ぐに突き抜けているけれど、全部が同じ性質を持って進んでいる訳ではないということ。それでも、それらが組み合わさることで可能性は生まれ、美しさが増すということ。それは人間関係だけでなく、別々の人間が集う「バンド」という共同体にも言えることだし、そうした憂いの中に垣間見える希望の光を、楽曲のみならず、ライブだからこそ成し得る演出からも感じることができた。
約2年間の休止期間中に、藤澤と若井は共同生活を営みつつ、お互いのご飯を作り合っていたというエピソードを交えながら、Mrs. GREEN APPLEのストリーミング総再生回数が20億回を超えたことについても触れ、大森は「休止期間中に拡大していっているのがすごい不思議な感じだったんですよ。みんなが、めちゃくちゃ曲を愛してくれているんだなと思いました」と感激しきりの様子だった。久々のライブということもあり、「ミセスごっこをしているみたい」だと笑っていたが、そこから、雄大なランドスケープの中で<ああ、なんて素敵な日だ>と悦びを歌う「僕のこと」からは、今日という日をMrs. GREEN APPLEとして迎えられたという3人の喜びと、会場にいるオーディエンス、ライブ・ビューイングやテレビでの生中継、ストリーミングにてライブに参加しているファンへの莫大な感謝を感じた。
そこから、「夏が始まったんじゃないの!?」の一声から一気に駆けあがっていくサマーチューン「青と夏」、連発される炎柱が猛々しさをフォローする「インフェルノ」、さらに無数のレーザーの中で妖艶なダンスとソリッドなプレイで魅了する刺激的なダンスロックチューン「うブ」と、盛り上がり必至のナンバーを連続投下! さらにそこから、ポップな「ロマンチシズム」、8人のダンサーと共に大森がキレッキレのダンスを披露した「ダンスホール」へと続ける。若井の情熱的なギターソロから、藤澤の煌びやかなピアノソロ、森と神田の頼もしいプレイを経て、大森はダンスソロを披露。さらに曲のラストには金テープが噴射し、まさに夢のような輝かしい時間だった。
そうして現実を忘れさせるかのような豪華なライブで楽しませてくれた彼らは、改めて新体制について触れ、大森は「凄く大きな衝撃を与えてしまったと思うし、すごく寂しかったです。でも、色んな不安の中、フェーズ2をこうして走り出せて、今日、これだけの人たちが集まってくださったことが信じられないというか。どういうMCをしたらいいのか分からないくらいの気持ちになっています」と、率直な想いを述べた。さらに、「今の僕は、変な世界線にいるようで、ずっと夢を見ているみたいな感覚なんです。フェーズ1のことを語るのはセンシティブなものがあるけれど、僕は本当にフェーズ1が大好きだし、すっげぇ楽しかったよ。……青春でした」と振り返った。
未曽有の事態を乗り越えたという経験は、美談として語られることが多い。けれどそれは、結果論でもある。その渦中にいる時の不安や寂しさ、焦燥感、虚脱感は計り知れないし、未来どころか、明日を考えることすら辛いと思う日々を、彼らは一体どれだけ過ごしてきたのだろうか。けれど、それでも彼らは、こうしてステージに立ち、過去の曲も今の曲も、最高の形で届けてくれている。それがどれほど尊いことなのかを改めて思い知ると同時に「僕らにとっての青春ソングです」と届けられたのは、未来への希望を歌う「Theater」と、最新アルバムから「Part of me」だった。
ここで、一曲目を飾った「Attitude」の話に戻る。姿勢、心構え、心持ちという意味を持つ「Attitude」を「フェーズ2」の始まりの曲に持ってきたということ。<書き綴られた歌は/私のそう、遺言>と締め括られるその楽曲から始めたことは、彼らにとっての決意表明なのだろう。そしてこの日、厳かな雰囲気の中、壮大なスケールでラストに演奏された「Part of me」は、<本当に僕が消えるその日まで/君にたくさん伝えておきたいんだ>という歌詞から始まる、大森自身が抱える孤独や寂しさ、人間が持つ無情さとただひたすら向き合った、独白に近い楽曲である。何事も、いつかは終わる。それを分かった上で、自分は何をして、何を残すために生きるのか? それを何度も自問し、幾度の悲しみをも超えていく。そうして不安に苛まれる日が続いたとしても、愛を実感できる奇跡のような日は、きっと訪れる――彼らにとっても、私たちにとっても、その日が2022年7月8日であったことは間違いない。
熱望されたアンコールでは、インディーズ時代からの代表曲「我逢人」を勢いよくプレイ。途中、涙を滲ませている若井に対し、大森が「若井、いってこい」とギターソロ前に声を掛けるシーンもあった。MCでは、3人それぞれが今回のライブに対する気持ちをコメント。若井は「休止期間というものは、自分たちだけじゃ乗り越えられないものだったと思っています。正直、辛い時もありました。でも、たくさんの方がサポートしてくれて、今日を迎えられたことが本当に嬉しいです」と語り、藤澤は「活動休止期間が2年間もあったので、みんなが本当に待っていてくれているのかな?という不安もありました。だから、今日こうやって、ライブでみんなと楽しい時間を過ごせることは本当に本当に、幸せなことだと思います」と感謝を告げた。
最後に大森は、怖さや不安に苛まれる中で、沢山の人に支えられている実感があることを伝えつつ、ここまでステージの上では見せてこなかった涙を見せた。その上で「毎日生きるのが大変な人の味方でありたいし、味方でいてほしいです。みんなで明日を、毎日越えていきましょう。頑張ろう」と、自らにも言い聞かせるようにエールを贈り、最後に「ニュー・マイ・ノーマル」を届けた。計り知れないほどの不安を越えて、この日を迎えたMrs. GREEN APPLEの未来が、どうか今まで以上に輝かしいものになりますように。そう願わずにはいられない、素晴らしい門出だった。
そして、この日には、Mrs. GREEN APPLEにとって初となるZeppツアー『ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~』の開催もアナウンスされた。インディーズ以前より続けてきた自主企画のタイトルを冠した次なるツアーで、フェーズ2をいよいよ歩み出した彼らに会えることを楽しみにしていたい。

取材・文=峯岸利恵 撮影=上飯坂一

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