『レビュー in Kyoto』開幕、創立10
0周年のOSK日本歌劇団が3年ぶりに登
場した京都の南座公演を写真たっぷり
にレポート

OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー in Kyoto」 2022.7.9(SAT)〜7.19(MON) 南座
7月9日(土)、京都・南座にて『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー in Kyoto」』が幕を開けた。大阪松竹座、新橋演舞場と上演してきた創立100周年記念公演の集大成となる同公演。第一部「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」(「☆」は五芒星が正式表記、以下、「陰陽師」)と第二部「INFINITY」を上演する。
左から千咲えみ、楊琳、舞美りら
OSKにとって南座は3年ぶり。公演初日は南座の正面入り口で館前行事が行われ、「陰陽師」で安倍晴明を演じる男役トップスターの楊琳(やんりん)と、茨木童子をWキャストで演じる娘役トップスター、舞美りら(まいみりら)と千咲えみ(ちさきえみ)が登場。生き生きとした笑顔を見せる楊、「私たちOSK日本歌劇団、3年ぶりの京都・南座、本日より開幕します! 皆様、どしどし観にいらしてください!」と元気な声で呼びかけた。
瓜生山学園京都芸術大学の学生が手がけた看板
第一部の「陰陽師」は夢枕獏の小説「陰陽師」を原作とし、作・演出の北林佐和子がOSKのために「闇の貴公子」、「続・闇の貴公子」として上演。今回、「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」と新たなタイトルを得て、安倍晴明のゆかりの地でもある京都で21年ぶりの上演がった。
魔物退治に悪戦苦闘する源博雅(翼和希)
安倍晴明(楊)と源博雅(翼)
<第一場 百鬼夜行>の場面から幕が上がる。不穏な光と音が南座を包みこみ、観客を平安時代へといざなう。蠢く魔物の前に颯爽と現れたのは翼和希(つばさかずき)勤める源博雅だ。魔物退治に悪戦苦闘する博雅を救ったのが楊の安倍晴明。花道から堂々たる足取りで舞台へと向かう楊、凛々しく、頼もしい姿にくぎ付けだ。この晴明と博雅の出会いが、晴明の運命と、都の行く末に大きく関わるのだった。
藤原道長(愛瀬光)と倫子(遥花ここ)
炎を鎮める雫(朝香櫻子)
茨木童子の舞美と千咲、松の式神 常盤の城月れい(きづきれい)、文殊菩薩の使い 維摩の虹架路万(にじかけろまん)、藤原道長の愛瀬光(まなせひかる)、倫子の遥花ここ(はるかここ)など上級生の活躍はもちろん、翼をはじめ蘆屋道満の登堂結斗(とうどうゆいと)、酒呑童子の椿りょうつばきりょう)、藤の式神 密虫をWキャストで勤める実花もも(みはなもも)、唯城ありす(ゆしろありす)など若手の活躍も目覚ましい。また、特別専科の朝香櫻子(あさかさくらこ)も雫役で登場した。
蘆屋道満(登堂結斗、中央)、茨木童子(舞美りら、左)、酒呑童子(椿りょう、右)
左から維摩(虹架路万)、晴明(楊)、常盤(城月れい)
レビューの多いOSKには珍しいミュージカル作品。歌は冒頭から楊の独唱「闇の貴公子」が堪能でき、その深く芳醇な歌声に聴き入ってしまう。式神たちの優雅で美しい舞いにうっとりする一方、魔物たちとの戦いではスピーディーな立廻りに目を見張る。晴明と博雅の友情も物語のキーとなっており、そのバディ感も見ごたえありだ。全体を通して雅な平安の世界観ながらも、虹架による維摩の現代感覚が観客を引っ張ってゆく。初めて同作品を観る人も気軽に物語を楽しめるはずだ。
楊琳
荻田浩一作・演出による第二部「INFINITY」は、大阪松竹座、新橋演舞場の『春のおどり』に続き、南座でも上演。OSK100年の歴史をたっぷりと詰め込んだ内容に加え、同公演で退団する虹架、愛瀬、遥花へのはなむけのレビューとなった。
「青のINFINITY」
第一章は「OSKといえばラテン」を体現したナンバー「青のINFINITY」から始まる。弾むようなパーカッションの音が鳴り響くと、南座は高揚感でいっぱいに。そしてラテンガールの娘役スターが舞台に飛び出し、男役スターが花道を埋め尽くす。拍手で迎える観客、早くもステージと客席が一つになった。
遥花ここ
アイコンタクトを取る虹架と愛瀬、華月
ラテン・スターの楊の歌唱に導かれるようにエネルギッシュな熱い波が次から次へと押し寄せ、翼、華月奏(はなづきそう)、愛瀬、虹架が歌い継いでゆく。伝統曲「ビバ!OSK」では千咲が「踊る男」たちを引き連れてステージへ。颯爽と踊る男役スターたち、MR.OSKこと楊とのデュエットも聴きごたえある。曲中、愛瀬と虹架がアイコンタクトで笑顔を交わしていたのも印象的だった。
「群衆」のラストでソロを踊る唯城ありす
第二章は第1回公演でも上演された「アルルの女」から「ファランドール」と情熱的な楽曲が続く。「群衆」のラストは唯城がソロでダンスを披露。操り人形のように一心不乱に踊る姿にくぎ付けとなった。
「My Blue Heaven~恋のステップ~」
第三章の舞台はパリ。黒燕尾の紳士の中に一人、黒燕尾の淑女の舞美が人目を惹く。舞台の上に古風な破風がある南座とパリを彷彿させる舞台美術、その相性は抜群で南座ならではの世界へと導いた。実花が歌う「花の馬車に乗って」ではラインダンスを、続く第四章の「My Blue Heaven~恋のステップ~」ではタップダンスとラインダンスを披露と息つく暇なくステージを展開した。
同期コンビ 登堂結斗(左)と天輝レオ(右)が連載で話していたシーン
圧倒的存在感を放つ桐生麻耶
登堂がソロで歌う「Moonlight Serenade」では、デライトの男に楊、ライラックの女に千咲、トワイライトの男に華月、天輝レオ(あまきれお)、りつき杏都(りつきあんと)、壱弥ゆう(いちやゆう)が登場。「どぅレオ」コンビで人気の登堂と天輝のデュエットダンスも披露された。続く「Blue Moon」では真打登場と言わんばかりに特別専科の朝香と桐生麻耶(きりゅうあさや)がステージへ。圧倒的な存在感でぐっと引き締めた。
「光のINFINITY」
第五章の伝統曲「ジャストダンス」をエネルギッシュに魅せ、第六章の「望郷の鳩」から未来へと向かっていくOSK。ロックナンバーの「光のINFINITY」は、まるでOSKの不屈の精神を表しているかのようなサウンドとダンスだ。遥花、虹架、愛瀬も弾けるような笑顔を見せた。
98期生を紹介する楊
「虹色の彼方へ」のパレードの後には楊による挨拶もあり「ついに3年ぶりに京都・南座での初日がやってまいりました。こんなに喜ばしいことはございません。そしてこんなにたくさんのお客様に観ていただいて、私たちは本当に幸せものです。ありがとうございます」と謝辞を述べた。そしてこの『レビュー in Kyoto』で初舞台を踏んだ98期生の凰寿旭(おうじゅあさひ、ひより芽依(ひよりめい)、鼓珀響(こはくひびき)を紹介。こうしてまたOSKの歴史が受け継がれてゆく。
「桜咲く国」
最後はもちろん、昭和5年より歌い継がれるOSKのテーマソング「桜咲く国」を。劇団員総出演による桜パラソルで京都・南座に満開の花を咲かせた。
取材・文=Iwamoto.K 撮影=ハヤシマコ

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