L→R リアド偉武(Dr)、磯部寛之(Ba&Cho)、川上洋平(Vo&Gu)、白井眞輝(Gu)

L→R リアド偉武(Dr)、磯部寛之(Ba&Cho)、川上洋平(Vo&Gu)、白井眞輝(Gu)

【[Alexandros] インタビュー】
ロックなアルバムになるだろう
という予感があった

一曲入魂で目の前の曲を
どう仕上げるかに集中する

「空と青」の温かみや切なさなどがない交ぜになったエモーションは、そこから来ているんですね。続いて、プレイ面について話しましょう。みなさん今作を録るにあたって、プレイ面や音作りなどでこだわったことは?

リアド
僕はこのバンドに入ってアルバムを出すのは初めてなので、すごくピュアに取り組みました。自分を出しつつ、みんなからの影響もどっぷり受けつつ、さっき話が出たように一曲入魂で目の前の曲をどう仕上げるかに集中する…録っている時もそういうマインドで取り組みましたね。プレイ面で印象が強いのは「Baby's Alright」で、新しい感じのドラムが叩けた実感があります。一曲の中で結構激しくコントラストが展開していく中で、それにうまくドラムをかませた結果、今まで聴いたことがないような曲に仕上がったので、楽曲的にもドラム的にも満足しています。

「Baby's Alright」もそうですが、速いフィルをバババッ!と入れ込むアプローチがモダンな疾走感を生んでいます。それに、一曲入魂することで驚くほどレンジの広いドラムになっていますね。

リアド
そうですね。今までやったことがないアプローチ…例えば「クラッシュ」の最後のサビはドラムとヴォーカルだけになっていて、歌うようなドラムを意識したりとか。あと、「awkward」のドラム録りは面白くて…この曲はドラムを2回録ったんですよ。ダブリングといってヴォーカルとかギターではレコーディングでよく使われる手法ですけど、プロデューサーのゲイブ・ワックスがドラムをダブルにしてみようと言い出して、最初は“何を言っているんだ?”と理解できなかったけど、やってみたらすごく良かった(笑)。だから、この曲はドラムが2個鳴っているんです。キックは両方真ん中で鳴っていて、それ以外は左右に振っているという。そういうアプローチをするのは初めてだったから、すごく面白かったです。
磯部
ベースの面で印象が強いのは「どーでもいいから」ですね。僕は9割9分指弾きなんですけど、この曲はピック弾きで、わりとガシガシ弾いているんですよ。結構いいフレーズを思いついたし、ピックでこんなに気持ち良く弾けることを初めて知りました。ピック弾きに慣れていないから、途中でダウンピッキングとアップピッキングが反転してしまったんです。でも、それはそれでいいかもと思って、そのまま弾き続けたんですよね。弾いたあとに“実は途中で反転しちゃっているんで、変だったら直すけど”とみんなに言ったら、“分からないよ。いいんじゃない?”という感じだったから“じゃあ、OKで!”って(笑)。そういうことも含めて「どーでもいいから」は新鮮だったし、楽しかったです。

そこで直してしまうと、どこかこじんまりした音楽になってしまう気がします。ベースは全体的に、楽曲に寄り添ったアプローチを採られていますね。

磯部
近年は意識して楽曲に寄り添っていくようにしている部分はありますね。そういう中でも今作はわりと自由にやっている曲も多くて、特に「日々、織々」はベースソロがあって…それはまーくん(白井眞輝の愛称)の発案なんですが、新しい扉だったと思いますね。あと、「空と青」も基本はドードッ・ドードッというパターンだけど、洋平にちょっとファンクっぽいノリでやってみてと言われて、“こういうのはどう?”って細かいフレーズを入れてみたりしました。そういう遊びも今作はふんだんに入っていますね。

その結果、楽曲に寄り添うといっても決して地味なベースではなくて、磯部さんの個性も味わえるベースになっています。

磯部
洋平のメロディーとか、リアドが作ったリズム、まーくんが作ったフレーズとかが入ってきた時、そこに対して自分の中で思い浮かんだことというのは、なるべく素直に、何のフィルターも通さずにドォーンと入れて、そこから“ちょっとやりすぎだぞ”とか“そこはもうちょっと抜こうよ”みたいな意見を聞くようにしています。僕はずっとそうなんですが、“気持ち良いのはどこだろう?”ということを意識していて、そこはまだできていないと思うんですよ。もっともっと極めたいというところで、今回も楽しみつつ一番気持ち良いところを探していきました。

続いて、ギターはどうでしょう?

白井
ギターも全体を見るといろいろあって、どこから話そうかなという感じですけど…例えば「クラッシュ」のサビ頭のコードがE♭なんですよ。そのE♭一発の感じが、絶妙なニュアンスで出せたと思っていて。
全員
ピンポイントでくるね(笑)。
白井
あははは。自己満足くらいの話になりますけど、こういうジャーン!を出せる今の自分っていいなと思ったんです。リスナーにそこを理解してもらったり、“他の人とはちょっと違うねぇ”みたいに感じてもらうのは難しい部分だとは思うけど、僕はそこにギタリストとしての大きな幸福を感じることができる…そういう瞬間なんです。もうちょっと分かりやすいところで言うと、「we are still kids & stray cats」のサビの音作りですね。そこは新しいことをしているんですが…ゲイブ・ワックスと一緒に作業をしたのがこの曲を作る直前で、彼は僕のエフェクターを使って音作りをするんですけど、それが新しいというか、“なるほど! そういう使い方があるのか”と思ったんです。それを経た先で「we are still kids & stray cats」は彼の技術を活かしつつ、自分で音を作れたことに手応えを感じています。

確かに、音の質感やゲイン感などが絶妙です。白井さんは楽曲の世界観を深めるアプローチを軸とした上で、「Rock The World」の高速タッピングリフのようなテクニカルな面も発揮されていますね。

白井
テクニカルなことはあまりやらないほうで、あとからついてくるんですよ。バンドとしてテクニカルなことをやってほしいという要望だったりが先にあって、それに合わせて技術をついていかせるタイプなので。タッピングもそう。「Rock The World」のイントロは鍵盤のオートアルペジオみたいなフレーズが浮かんできて、そういう音になるエフェクターがあればと思ったけど、なかったんです。だから、タッピングでやるしかなくて練習しました。いつもそういう感じですね。ギターを持ってあれこれやるんじゃなくて、先に頭の中で鳴らすことが大事だと思うんですよ。自分ができることの中から探してしまうと、新しいものは出てこないので。それを「Rock The World」でもうまく活かせたと思います。

ヴォーカルについてはいかがですか?

川上
歌に関しては押しつけがましくしならないようにしようというのは、なんとなく思っていました。それ以外は特に考えていないですね。

「Baby's Alright」や「クラッシュ」などは曲調に合わせてロックな歌でいくかと思いきやアンニュイな歌になっていて、それが独自の魅力を生んでいますね。

川上
僕がそういう歌を好きだというところに帰結しますね。ウワァーッ!という激しい音の中で100パーセントでいきたくないというか、どこかでそれをちょっと冷めた目でとらえているほうが好きなんです。だから、「Baby's Alright」のヴォーカルはちょっと抜けた感じで…なんならちょっと甘いくらいの感じで歌っていて。「クラッシュ」もそうですよね。ただ、それは今回から始めたことではなくて、わりと自分の特徴だと思います。

川上さんは声量がありますし、ハイトーンもいけるので、ロック感のある歌も歌えますよね。でも、そうしないことで轟音の中で澄んだ光が輝いているようなイメージの音楽になっていて。

川上
ありがとうございます。それが僕のシグネチュアモデルです(笑)。歌唱面で印象が強い曲を挙げるなら、「空と青」はちょっと難しかったですね。僕は低いほうが難しいので得意なキーというのがあって、「空と青」は若干低いんですよ。アコギ1本で歌うならうまく歌えるけど、バンドでやるとなると柔らかすぎるとダメなので。レコーディングは早く終わったけど、みんなが楽器を録ったりしている間にこっそり練習していました。

OKMusic編集部

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