味方良介×石田明×北野日奈子「全て
が見どころの熱い公演」~『蒲田行進
曲完結編 銀ちゃんが逝く』インタビ
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演出家・つかこうへいの十三回忌となる2022年、紀伊國屋ホールにて『つかこうへいLonely 13 Blues』と銘打った最後の追悼公演が行われている。上演されるのは『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』と『初級革命講座 飛龍伝』の2作品だ。『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』で主演の銀ちゃんこと倉岡銀四郎を演じるのは、紀伊國屋ホールの春の恒例公演『熱海殺人事件』で5年連続木村伝兵衛を担当し、つかこうへい作品に欠かせない存在となっている味方良介。銀ちゃんのために命をかける大部屋俳優ヤスは石田明(NON STYLE)。ヒロインの小夏は、今春乃木坂46を卒業し、今回が女優として初の出演となる北野日奈子が務める。開幕を直前に控えた三人に話を聞いた。
ーー2020年の公演が朗読劇に変更になり、2年越しの公演です。意気込みを教えてください。
味方良介:2020年は僕だけが出演していました。世の中が今より大変な時期だったので本来の形ではないけれど、とにかく上演できたことがありがたかった……ただ舞台に立てるというのが感慨深い時期でした。今回は本来の形で、つかさんの命日である7月10日に紀伊國屋ホールで公演ができるということで感謝や感激……覚悟・越えなければいけない壁を感じています。暗い気持ちになることも多い世の中ですが、この作品を通して生きる希望や明日に立ち向かう力を届けられたらと思いながら稽古をしています。
味方良介
石田明:元々、味方くんとこの作品をやりたいね、蒲田をやらないと俺たちは卒業できないよって話をよくしていたんです。2020年に植ちゃん(植田圭輔)が出ていた朗読劇も観に行って、すごい長文の感想を送ってしまいましたね。「くそ! 俺もやりたいのに!」って(笑)。今回は舞台として、全然違う形で届けられるのが嬉しいです。前回と比べるものじゃないですが、あの時、客席で観て悔しがっていた自分を悔しがらせられるような作品にしたいと思っています。
北野日奈子:舞台自体5年ぶりですし、今までグループ(乃木坂46)の舞台にしか出演したことがありませんでした。初めてのソロの舞台がすごく熱量のある作品です。この話をしてくださったスタッフさんに「これは絶対に出たほうがいい」と念押しをされたんですが、その時は自信を持って「やりたいです」と言えませんでした。でも、スタッフさんに背中を押してもらい、自分にとってとても大きな一歩を踏み出しました。キャストの皆さんも演出の岡村(俊一)さんもその他のスタッフさんも、作品にかける熱量がすごいんです。皆さんが気持ちを込め、一丸となって舞台を作っているので、私もその熱量に応えられるように頑張りたいと思っています。尊敬する皆さんの大切な時間に傷を付けないよう、一生懸命舞台に立ちたいと思っています。
ーー今回は完結編にして完全版の上演とのことです。見どころはどこですか。
石田:味方くんがここまでちゃんと人間として負ける、格好悪い姿を見せるっていうのは珍しいと思います。悔しいけど、稽古を見ていて泣きそうになりますね。あとは殺陣もここまでやるのは初めてじゃないかな。僕も味方くんもたくさん殺陣をやってます。北野ちゃんに関しては、初めてのソロの舞台でよくこれだけ食らいついてるなと思うので、そこが見どころです。
味方:2時間全部が見どころ、濃厚すぎて観る方も大変じゃないかな。息つく間も気を抜く暇もないし、人間の人生を2時間見続けるだけでも相当ハードなのに、何人分もの人生がぎゅっと詰まっていますから。ひとつのシーン毎が壮大なので食らいつきながら、観てもらえるといいですね。
北野:1秒も見逃さないでほしいですね。ピックアップされるのが多いのは銀ちゃんと小夏とヤス、それから(細貝 圭演じる)中村屋喜三郎の人生。でも、監督や他の大部屋メンバーなど、大きくスポットライトが当たらないキャラクターからも色々なものが伝わってくるんです。みんなのストーリーが伝わるからこそ銀ちゃんがより輝くし、輝いている銀ちゃんをヤスと小夏が大好きになる。本当にみんなで力を合わせてこの舞台を作り上げていると感じます。来てくださる皆さんの人生の中で、大きな思い出のある1日になればいいなと思っています。
ーーヤスも小夏も、銀ちゃんに振り回されつつ彼に心酔しています。皆さんから見た銀ちゃんの魅力とは。
石田:なかなか一言で言えませんが、最近味方くんと話したのは求心力。「つかさんだからみんなついていく」みたいなことってあると思うんです。銀ちゃんは求心力の塊で、間違っていても「この人が言うから正解」になる。すごく崇高なものを見せられているような気持ちになります。だって、ドMでもないのに殴られて嬉しいんですよ。例えばですが、僕が23歳くらいの時、萩本欽一さんに頭を叩かれたんです。めっちゃニヤニヤしてしまいました(笑)。欽ちゃんに突っ込まれるってなかなかないから。収録が終わった後に欽ちゃんから「あれ笑っちゃダメだよ」ってダメ出しされて、「ほんまに嬉しかったんです」って(笑)。なんでもないことも喜びに変えてしまうような人間力が、銀ちゃんが持っているものなのかなと思います。
石田明
味方:“愛”って言葉で言うのは簡単だけど、全てに対して敬意と愛情を持って接するし、だからこそ暴力的な言動もある。決して人が嫌いなわけではなく、好きだからこそ言っている、伝えようとしているんですよね。劣等感やコンプレックスもある。人間の良いところと悪いところを全部詰め込んだのが銀ちゃんなのかなと。僕はそういう人間でありたいと考えながら銀ちゃんを構築しています。
北野:私から見た銀ちゃんは、嵐みたいな人です。
石田:ジャニーズの? 5人分詰まってる(笑)?
味方:踊れないよ(笑)?
北野:違います、台風のほう(笑)。人を巻き込んで感情を揺さぶる、台風の目みたいな人ですけど、銀ちゃんみたいな嵐が来ないとみんなの人生が進んでいかない。銀ちゃんが発言して行動するからこそ、みんなの中に感情が生まれて、それぞれの人生が良くも悪くも豊かになっているんじゃないかなと思います。
ーー味方さん、石田さんはつか作品で何度も共演されています。改めて、お互いの印象はいかがでしょう。
石田:バケモンです。
一同:(笑)。
味方:そっくりそのままお返ししますよ(笑)。
石田:本当にこういうこと言う奴嫌いなんですけど、言わせてください。こいつ宇宙人です! じゃないと説明がつかない。僕は人間の中で奮闘してますけど、味方くんは宇宙人のくせに全力出してくる。最悪です。勝てるわけないじゃないですか。
味方:(笑)。大先輩だし色々なことに対してスキルも上なんですけど、なによりも、なんて人に優しい人なんだろうと毎度驚かされます。僕らの温度感に合わせてくれるし、これだけハードな稽古をしながら他の仕事もして、その上僕らと何時まででも飲んでくれる(笑)。ありがたいですよね。尊敬できる部分もたくさんあって、人間として憧れています。僕はそんな飲まなくてもいいでしょってくらい飲むんですけど。
石田:(味方は)変なんですよ。本当に。
味方:いやいや(笑)。同じでしょ!
石田:僕はもう眠たいのに「次行きましょう」って言うから「まだ行くの!? もう外明るいですよ?」って(笑)。
味方:最近のご時世でそういうことはめっきり減りましたけど、たくさん話してきたからこそ今がありますね。嘘をつかずに向き合える関係が舞台上でもできています。
(左から)石田明、北野日奈子、味方良介
ーー北野さんはグループを卒業して初の女優のお仕事。心境に変化はありましたか。
北野:グループにいる頃から、誰かが一緒じゃないとダメなタイプだったんです。乃木坂は結構みんなひとりでも行動できる子が多い中、私はトイレに行くにも歯磨きに行くにも誰かいないとダメで。周りをすごくよく見て行動していたんですが、カンパニーは皆さん男性ですし、トイレもひとりで行かなきゃいけなくて……。
石田:一緒に行こか?
味方:言ってくれれば行くよ(笑)。
北野:(笑)。ひとりの心細さを実感していたんですけど、最近だんだん人見知りが解消され、皆さんの談笑を聞いてひとりでくすくす笑ってたりしています。
石田:入ってこいや!
味方:(笑)。
北野:マスクしてるんで、笑っててもバレないかなって思って笑ってます。
一同:(笑)。
北野:9年間いたグループを離れてみんなにも全然会ってないし、誰かと一緒にいるのが好きだったのにそれがなくなってしまって寂しく感じていました。でも、今こうやって熱い舞台を皆さんと一緒に作ることで、新しい仲間ができた気分です。公演が終わって別れるのがすごく寂しいんだろうなと予想して、毎日大変だけど、どうにか時間が遅く進めばいいなと思いながら大事に過ごしています。
北野日奈子
石田:大丈夫。公演が終わっても、関係って終わらないよ。新内ちゃん(新内眞衣)とか菅井ちゃん(菅井友香)は今でも連絡とるし、木﨑ゆりあは僕の家に入り浸ってるから。僕よりも僕の家にいる(笑)。
一同:(笑)。
ーー最後に、読者へメッセージをお願いします。
北野:私を前から応援してくださっている方には、すごく挑戦している姿を見てもらえると思います。今まで恋愛模様を演じたことがなかったし、そういう雰囲気もなかったので動揺するかもしれません。でも、北野日奈子としてじゃなく、ちゃんと小夏さんとして舞台に立つことができれば違和感はないだろうし。すごくいい作品ですし、この作品に携わっている皆さんがものすごい人たちだと感じるので、とりあえずバスタオルを用意して劇場に来てほしいなと思います。
味方:バスタオルなんだ。
北野:タオルじゃ多分足りないので。
石田:体調が悪い方や寝不足の方にはオススメしません。万全の状態で来てもらえたら楽しめると思いますね。あと、本当に何もできなくなると思うので、帰りに予定は入れないでおいてください!
味方:つかさんが残したこの作品を、どれだけの人が観てくださるかは分かりません。でも、観に来てくれた人たちに「つかこうへいってやっぱ生きてるんだな」と思ってもらえたらいいな。演劇の力ってすごいよな、つかこうへいってすごいよなって。こんな人がいるから、僕らは生きていられるんだと、観にきてくれた人にも思ってもらえたら嬉しいです。
『蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く』は紀伊國屋ホールにて、7月8日(金)~7月18日(月・祝)まで上演。7月23日(土)~7月25日(月)は『初級革命講座 飛龍伝』が上演される。
(左から)石田明、北野日奈子、味方良介
取材・文=吉田沙奈  撮影=iwa

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