つらいことを全部忘れられる、そんな
瞬間にしたい! MARiA『MUSIC LAN
D 2022 -Moments- 』レポート

GARNiDELiA のボーカリストMARiAのソロライブ『MUSICLAND2022-Moments-』が2022年7月3日に開催された。2021年5月にソロアルバム『うたものがたり』をリリースし、その翌月にはアルバムを引っ提げてのソロライブ『うたものがたり』を開催。2021年11月にはGARNiDELiAとしてアルバム『Duality Code』をリリースすると、そこからライブツアーを走り切り、2022年6月にはソロアルバム『Moments』をリリース。そしてアルバムリリースの翌月である2022年7月に今回のライブ開催に至る。このエネルギッシュな活動には驚かさせられずにはいられない。
勢い止まるところを知らないMARiA。果たして今回はいかなるステージを私たちに見せてくれるのだろうか? その一部始終を見届けるべく、SPICEではライブレポートを決行した。

今回のライブ会場となったEXTHEATERROPPONGIの前には多くのファンが集まっていた。その人集りを抜け、会場に踏み入るとまず目に入ったのは紫色のベール。どことなく艶かしさを感じさせられる。そのアダルトな空気の中にバンド隊が姿を表すと、そこに力強い打ち込みのビートが流れる。観客とバンド隊がその力強い低音に手拍子で応えると、そこに歌声が聴こえてくる。
「時が来たのね」
ライトが点灯すると、舞台中央にMARiAが立っている。そこに6人のダンサーが入場し、一曲目に披露したのは「Star Rock」。そのダンサブルなサウンドに会場中が体を揺らす。そこから間髪を入れずに「君といたい」が続く。ソロアルバム『Moments』リリース時のインタビューで話した通り、曲に合わせて手をふるMARiA。客席はそれにサイリウムを振って応える。開始早々に会場内は煌びやかなパーティフロアへと変貌を遂げた。
勢いはまだまだ止まらない。ビートは激しさを増し、フロアの熱気がここで一段階高揚する。「Heartbreaker」の激しいサウンドに会場のボルテージは加速していく。間奏ではMARiA自身もダンサーと共にダンスを披露。その熱いパフォーマンスに会場は飲み込まれた。
三曲を終えると早くもタオルの出番がやってくる。温まりきった会場内に投下されたのは「Galastic Wind」。会場にいるすべての人々が力の限りタオルを振り回す。開始からたった4曲。しかし会場が熱気の渦に包まれるのに4曲は充分すぎる時間だった。ここまでを歌い終えたMARiAが高く拳を天に掲げる。その力強い姿は見るものの目に強く焼き付けられた。
ここで改めてMARiAから挨拶。今回のライブタイトル『MUSIC LAND』に込めた思いを観客に向けて発信する。「つらいことを全部忘れられる、そんな瞬間にできたらと思います」との言葉の後に始まったのは自身が2012年に発表した「aMazing MusiQue PaRK」。”MusiQue PaRK”という架空のテーマパークを歌った本楽曲は、聴くものの脳内にしっかりと幸せ溢れるテーマパークの光景が思い浮かばせる。その多幸感を具現化したかのように、舞台上に吊り下げられたレースも虹色に輝く。
多幸感はさらに加速する。ミラーボールが光を乱反射させ、その輝かしい光の中で「Girls」が始まり、リズミカルなテンポに会場の誰もが身体を預ける。MARiA自身もリズムに合わせてキュートなダンスを披露、その可愛らしさは見るものの心を奪った。
ここで一度バンドメンバーによるソロ演奏が披露され、舞台上から一度はけたMARiAが新しい衣装に身を包んで帰ってくる。漆黒という言葉がピッタリと似合うドレス。バンド隊もそのアダルトな出立の彼女に触発されたかのように情熱的なサウンドを奏でる「ガラスの鐘」が披露される。
曲終わりに一度照明が消え、再び光ると突如現れた椅子とテーブルにMARiAが腰掛けている。そしてこう僕らに投げかけた。「美味しい飲み物、飲みたいですよね?」と。その口ぶりはどこか含みがあり、そこには何か妖艶な秘め事があるような……。
そのセリフに続いたのは「カフェラテのうた」。MARiAを囲むように黒と白の衣装に身を包んだダンサーが登場。その絡み合うような演舞は混ざり合うコーヒーとミルクのよう。
するとここで会場に立ち込めたアダルトな空気は一転し、力強いサウンドとともにスタートしたのは「Asterisk」。圧倒的な存在感を放つ歌声が響く。先ほどまで舞台上にいたセクシーなMARiAとは全くの別人かと思わせられるほどのギャップに驚く。
ダンサーによるソロダンスが舞台上で繰り広げられると、MARiAは黒から赤のドレスに衣装チェンジ。同時にバンドメンバーも一度はけ、代わりに登場したのはアルバム『Moments』においても楽曲を提供した原田夏樹率いるevening cinema。ここから数曲はMARiAとevening cinemaによるコラボレーションで楽曲を届けられる。
その皮切りになったのはアルバム『Moments』のリード曲「Think Over」。楽しげに歌うMARiAの姿と、そのバックで和気藹々と演奏するevening cinemaの面々。今舞台上の人たちがどれだけ音楽を楽しんでいるのか、それは客席にも確かに伝わってくる。
そして改めてMARiAからevening cinemaの紹介。「Think Over」ではキーボードを弾いていた原田夏樹が舞台前方に登場し、MARiAとのツインボーカル体制に。二人のデュエットで披露したのはevening cinemaの楽曲、「Good Luck」と「summertime」。バンド演奏で奏でられる80’ sサウンド、その懐かしくも新しい音楽体験が聴く者を幸せな気分にする。その至福のひと時を満喫していたのは舞台上の面々も同じなのだろう、そこには笑顔が溢れていた。
「カバー曲を披露しようと思います」MARiAがそう告げて歌ったのは「夜咄ディセイブ」。さらにそこから「おろかものがたり」へと続く。バンド隊が力強い演奏を見せるとMARiAもそれに負けじと力強い歌声を発する。そこから一転してケルト調の音楽が流れ繰り広げられる「pray」。ライブもクライマックスに差し掛かっているのを感じる。
続けて「ハルガレ」を披露すると、そのリズミカルで抑揚のある歌声にあわせて会場中がサイリウムが振られ、ライブはラストナンバーへ。
MARiAが「みんなに笑顔になって帰ってほしい」と話して披露したのは「Long Distance」。
SNSにて「みんな宿題だよーーー!!!」と振り付けを公開していたことで、会場を訪れている全ファンがその振り付けを完璧に記憶してきていたよう。「Long Distance」にあわせ会場中が一体となって振り付けを見せると、舞台後方のレースは虹色に輝いた。会場中に満ちた華やかさを反映しているかのようだった。
ラストナンバーを終え、会場が拍手に包まれる。拍手は直に手拍子へと変わる。そして再びMARiAが舞台上に帰ってくる。ここからはアンコールの時間。
アンコール一曲目に披露したのは「コンコース」。ダンサブルなナンバーを中心に披露してきたこれまでの流れから一転、しっとりとした時間が会場内に流れる。ここまでのライブで既に数多くの表情を見せてきた彼女、それでもまだ見せていない表情があったことに驚かされる。
そして、一曲目を歌い終えるとMARiAはここで自身の胸中を語る。コロナウィルスの感染拡大もあり、歌うことの意味を見失った時もあった、と。だが、話はこんな言葉で締め括られた。「私が歌う理由になってくれてありがとう」。
そして、その想いをまさに歌にした曲「Labyrinth」で本ライブは締めくくられる。ラブソングのように聴こえる本楽曲だが、そこにMARiAはファンへの感謝の気持ちを乗せて歌う。歌詞にある「この手は離さない」という言葉、これこそが今彼女が目の前にいる人たちに届けたい言葉なのだろう。
ここ数年間は全てのアーティストにとって苦しい時期であり、それはMARiAにとっても同じだろう。だが、その中で彼女が選んだのは、辛い表情ではなくハッピーな表情を見せ続けること。だからこそ、彼女は笑顔で歌い続けた。しかし、今だってきっと苦しさと戦い、その上でハッピーな表情を表に出し続けている。だからこそ、この『MUSICLAND2022-Moments-』は多幸感溢れるものになったのだろう。
その力強い彼女のあり方を、ソロのMARiAとGARNiDELiA両方向から追いかけていきたい、そう思った。

SPICEでは本ライブ直前にリリースとなったアルバム『Moments』についてのインタビューも現在掲載中。こちらもチェックしてほしい。
取材・文:一野大悟 撮影:福岡諒祠

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