Ryu Matsuyama×LIVE HOUSE FEVER“
hands”、Bialystocksを迎えての第二
夜は先鋭的かつ洗練された音に包まれ

Ryu Matsuyama✕LIVE HOUSE FEVER“hands” 2022.6.19 新代田FEVER
Ryu Matsuyamaと新代田FEVERがタッグを組んで5月から行なっている、3ヵ月連続のツーマンライブイベント『hands』。NakamuraEmiを迎えた記念すべき初回に次いで、第2回となる公演が6月19日(日)に開催された。
このたび対バン相手に指名されたのは、Bialystocks。もともと今年2月に新代田FEVERでライブをする予定だった両者だが、Ryu Matsuyamaの新型コロナウイルス罹患によって残念ながら共演が見送りに。今回はそのリベンジの意味も込めたツーマンだ。第1回と同様、MOND And PLANTSが場内の装飾を担当。ステージ前方やフロアの片隅、バーカウンターなどの各所には、さまざまな植物がいい感じに置かれている。
Bialystocks
開演時刻になると、まずはBialystocksがステージへ。映像作家の甫木元空(Vo&Gt)とジャズピアニストの菊池剛(Key)による新進気鋭のバンドは、サポートに朝田拓馬(Gt)、越智俊介(Ba)、小山田和正(Dr)を従えた5人編成で登場。美しいファルセットやメロディが際立つ「花束」、ソウルフルでありながら激情的にも迫る「コーラ・バナナ・ミュージック」など、のっけからRyu Matsuyamaとの共通性もふんだんに感じさせ、集まった大勢のオーディエンスの心を鷲掴みにしていく。
さらに、ジャズボーカル曲の味わいを湛えた優雅なバラード「またたき」、なんでもない日常の尊さを伝えてくれる「ごはん」と、2021年にリリースした1stアルバム『ビアリストックス』からのナンバーをゆるやかに披露。そのフォーキーで奥深いアプローチには、思わずほっこりとした気持ちにさせられ、甫木元が紡ぐ変幻自在の歌声に寄り添う、間を存分に楽しんでいるようなスローテンポのピアノやドラムもたまらない。
Bialystocks
ここまで聴いて、Bialystocksは音源に負けず劣らず、ライブが想像以上に素晴らしいのだということに気付く。ハンドマイクで堂々とした歌いっぷりを見せる甫木元のハイ&ローが十分に出た耳にやさしいボーカルをはじめ、演奏には程よい落ち着きがあって、生ならではのアレンジや熱量もある。結成3年のキャリアとは思えないほど、すでに揺るぎない世界観を確立しているように感じられた。
また、緻密に構築した原曲を同期に頼るのではなく、バンドの人力でパワフルに表現していた点が新鮮だった。その中核を担うのが菊池で、状況に応じて鍵盤の音色を使い分けながら、鉄壁のサポートメンバーを含めて全体をリード。細かいコーラスまで時にエフェクトをかけてはしっかりと歌っていて、ハモリも上手い。そんな彼らの強みが顕著に出ていたのが超絶プログレッシブな代表曲「I Don't Have a Pen」だろう。菊池の流麗なピアノメロに甫木元のスポークンワード的な高速ボーカルが掛け合わされ、フューチャーソウル調の華々しいサウンドスケープが目まぐるしく魔法のように広がれば、もう居ても立っても居られない感じでフロアは大いに沸き上がる。
Bialystocks
Bialystocks
休日のお昼どきにハマりそうな甘い耳当たりの「Over Now」、ポップさと爆発力をもって駆け抜けた「Nevermore」までをノンストップで届け、「我々がRyu Matsuyamaさんを招く形での対バンはできなかったんですけど、今日は逆に呼んでくださって。こうやって無事に開催できて、こんなにたくさんのお客さんに来ていただけて嬉しいです!」と共演の喜びを語った甫木元。「その日は急遽僕らだけで長い尺をやることになってめちゃくちゃ喋らなきゃいけなかったんですが、ありえない感じの空気にしてしまいまして……すみませんでした(笑)」と場を和ませるシーンも。
Bialystocks
「Nevermore」以降は甫木元がエレキギターを弾いて歌う曲も増え、「光のあと」「Winter」をよりエモーショナルに奏でたBialystocks。ラストはドラマ『先生のおとりよせ』のエンディングテーマとしても話題の最新曲「差し色」を温かく聴かせ、大きな拍手を受けて5人はステージを後にした。
Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyamaはいきなり新曲のミッドナンバー「snow」からスタート。淡くオートチューンがかかったRyu(Vo&Pf)のピアノ弾き語りに、やがてJackson(Dr&Cho)がドラム、Tsuru(Ba&Cho)がベースの音を重ね、ゆっくりと丁寧に自分たちの空気を作り上げていく幕開けに、前回の『hands』と同じくホッとさせられる。初めて聴く曲でも絶対的な安心感があるのは、伸びやかな歌声とたおやかなリズムを活かした、この3人ならではのグルーヴのおかげだと思う。
続く「Under the Sea」はライブアレンジを加味しつつ、きりりと締まったアンサンブルで魅了。初回と大幅に変えてきたセットリストにも気合のほどが窺え、Jacksonのきめ細かなビートと5弦ベースに持ち替えたTsuruのスラップ弾きが冴えわたる「Sane Pure Eyes」では、一段とフィジカリティに富んだダイナミックな演奏を見せた。そして、フロアタムの連打から始まった「Crazy」。ここでも向かい合う3人が繰り出すフレーズの絡みがキレッキレで、RyuのボーカルはFEVERの天井を突き抜けていきそうなくらいに瑞々しい。
Ryu Matsuyama
場内を歓喜の渦に巻き込んだあとは、「お待たせしました! Ryu Matsuyama『hands』第2回、念願のBialystocksさんですよ。あのアメリカンというか、ジャズ味を感じさせるような音楽性がもう好きすぎてね……!」と興奮冷めやらぬ様子で話し出すJackson。「ベースの越智くんとは過去に対バンしたこともある」などといつになく饒舌に語る彼に、「ドレッドのおじさんが急に喋り始めてびっくりした(笑)」とRyuが続き、「まずは2月にBialystocksさんの企画に呼んでもらったのに、僕ら3人ともコロナになってしまい、本当に申し訳ございませんでした。そして、今日は出演していただきありがとうございます!」と挨拶した。
「さっきBialystocksさんのステージを観ていて、“こりゃあ売れる”って偉そうに言ってました」(Ryu)、「いっしょに売れよう!」(Jackson)――そんな微笑ましいやり取りを経て届けられたのは、mabanuaをプロデューサーに迎え、ドラマ『オールドファッションカップケーキ』の主題歌として書き下ろした最新曲「blue blur」。初夏の清々しさにハマる、このウキウキと胸躍るポップなラブソングもまた、オーディエンスにヒットの可能性を感じさせてくれた。さらに、同じくmabanuaとの共作曲「Blackout」を併せて披露。アーバンで洗練されたサウンドからは、ジャンルに縛られない彼らの柔軟な姿勢が見えてきたりもする。
Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama
その後も、Ryuのファルセットがひときわ神秘的に響いた「Light」。チェンバーポップ感がありつつ、シガー・ロスなどの北欧系をも彷彿とさせる「That Mad Rad Tale」と、情景が自然と浮かび上がるシネマティックな音像を生み出し続けるRyu Matsuyama。あくまで歌とメロディのよさを軸に、聴く側を清々しいほどナチュラルに惹き付けてくれるのがいい。そうした方向性もBialystocksと共鳴し得るポイントと言えよう。
「本当に大変なときに手を取り合ってきた仲間と、これから作っていくであろう大切な仲間と、この企画を通して手を組んでいきたい想いを『hands』というタイトルに込めました。Bialystocksさんははじめましてなんですけど、僕らとどこか同じような空気を感じています」
本公演の趣旨をRyuがそう告げて、新曲「hands」が奏でられる。曲入り前の凛としたシャウトからグッとくる感じで、人肌の温かみに似た抑揚のあるアンサンブルも胸を打つ。“特別な君と 特別な時間を過ごしていきたい”という歌詞では、かけがえのない存在を深く意識できる渾身のラブバラード。コロナ禍の生活とリンクする内容だけに、音源のリリースが待ち遠しいところだ。
Ryu Matsuyama
3人のハーモニー+ストリングスのサウンドで壮大に彩った「Afterglow」で本編を、フロアからハンドクラップが起こる最高のムードとなった「Footsteps」でアンコールをドラマティックに締め括ったRyu Matsuyamaは、当日の世界観を作ってくれたMOND And PLANTSにあらためて感謝を伝え、「Bialystocksさんとまたやりたいです!」と充実の表情を浮かべた。ネクストブレイクが期待される2組の先鋭的かつ普遍的な音楽性が体感できたという点で、とても意義深いイベントだったのではないかと思う。
Ryu Matsuyama✕新代田FEVERによるツーマンライブイベント『hands』のラストとなる第3回は、7月18日(月・祝)にPolarisを迎えて開催される。

取材・文=田山雄士 撮影=Takeyoshi Maruyama

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