SUPER BEAVER ライブハウスからやっ
て来たバンドの矜持を見せつけた、ホ
ールツアー最終日をレポート

『東京』Release Tour 2022~東京ラクダストーリー~

2022.7.5 東京国際フォーラム ホールA
2月23日にリリースしたメジャー再契約後2枚目となるアルバム『東京』をひっさげ、3月26日から全国各地のホールを回ってきた『『東京』Release Tour 2022~東京ラクダストーリー~』が7月5日、東京国際フォーラム ホールAでツアーファイナルを迎えた。これまでオープニングのSEに使っていたアメリカのエモバンド、キャップン・ジャズ(Cap'n Jazz)の「Tokyo」に代えて、街の喧騒を流しながら、オンステージしたSUPER BEAVERの4人は鳴りやまない観客の拍手の中、『東京』のオープニングを飾る「スペシャル」で演奏をスタート。
「東京、準備できてるか!?」と渋谷龍太(Vo)がすでに総立ちの客席に声をかけ、そこから彼らのライブに欠かせないアンセミックなロックナンバー「青い春」に繋げると、Bメロの展開に合わせ、観客が3拍子の手拍子で応えるというお馴染みの交歓の景色が目の前に出現。筆者は、あぁ、今、自分はSUPER BEAVERのライブを観に来ているんだと感動を噛みしめたのだった。その瞬間、観客の気持ちをさらに駆り立てるように「(リアクションをもっと)見せてくれ!」と柳沢亮太(Gt)が上げた声を聞き、筆者は初めて彼らのライブを観た時の衝撃を思い出した。
それは現在もまだ続いている彼らの快進撃の1歩目、いや、2歩目ぐらいのライブだったと思うのだが、それから6年、アリーナツアーを成功させるまでになったSUPER BEAVERのライブを、これだけ大きなホールで見ながら、なぜそんな記憶が蘇ってきたのか。奇しくも「ライブハウスから来ました。SUPER BEAVERです。よろしく!」と渋谷は言ったが、それはきっと「スペシャル」「青い春」の2曲が6年前のバンドの勢いを感じさせたからに違いない。
渋谷龍太(Vo)
「満員御礼、ありがとうございます。4(人)対5,000(人)ではなく、あくまでも1対1でやります。その覚悟で楽しんでください。俺たちだけで鳴らしても成立しない。あなたがいてこそのライブ。最高の時間を一緒に作りたい」
ライブに臨む心構えを語った渋谷の言葉を受け、「1-2!! ハイ! ハイ! ハイ!」と上杉研太(Ba)が上げた声を合図になだれこんだ「人間」、藤原“34才”広明(Dr)のドラムの連打が演奏を加速させ、渋谷と他3人が掛け合う輪唱コーラスが演奏の熱をぐっと上げた「突破口」、そして渋谷が軽やかなステップを踏みながら歌ったロックンロールの「ふらり」とアップテンポのロックナンバーをたたみかけるように繋げ、ライブハウスから来たバンドの矜持を見せつけたバンドの熱演は、「ふらり」からノンストップでなだれこんだ「VS.」でさらに白熱。
「さあ東京! ジャンプ!ジャンプ! もっとやろうぜ! 跳べ!」
激しい照明の中、いつにも増して観客を煽る柳沢が奏でるリフを軸に一丸となったバンドの演奏が放つ、荒れ狂うようなグルーヴに飲み込まれる錯覚を味わいながら、なんだ、ホールツアーのファイナルはライブハウスモードで圧倒しようっていうのか!?と心の中で快哉を叫んだ筆者は、その考えが浅はかだったことを直後に知るのだった。
柳沢亮太(Gt)
次の曲はゴスペル風のハンドクラップを観客に叩いてもらい、一体感を作り上げるライブアンセムの「美しい日」。その曲を演奏する前にSUPER BEAVERが結成から18年目に突入したことに言及した渋谷は、「長く続けることなら誰でもできる。誰のために鳴らしたいのか、誰と鳴らしたいのか、はっきりと見極めた上で積み上げてきた時間に意味がある」と語り、「過去最高を4人で更新したいわけじゃない。あなたと更新したい。一音目から一番でっかい(ハンドクラップの)音やれますか!? あなたと音楽がしたいです!」と《誰かにとって》とアカペラで歌い始めた。それもマイクなしで、だ!
昨年11月、さいたまスーパーアリーナで演奏した「時代」でも冒頭のアカペラを、渋谷はノーマイクで歌ったが、ライブハウスを拠点としてきたバンドの底力を見せつけた「VS.」の直後にホールでやるからこそ、より映える見どころを持ってきたところが心憎い。ホールに響き渡る渋谷の歌声に観客がハンドクラップを重ねたことは言うまでもないが、床が揺れるほど、観客が飛び跳ねたサビも含め、「美しい日」をこの日のハイライトの一つとすることに異論のある人など、1人もいないはずだ。
上杉研太(Ba)
「美しい日完成です。めちゃめちゃすばらしい!」(渋谷)
ある意味、前半は「美しい日」を完成させるための助走だったのかもしれない――と言ったら、言い過ぎかもしれないけれど、ともあれ、ジャジーな曲調をSUPER BEAVERらしい硬派なバンドサウンドに落とし込んだ「318」、メロディアスな「未来の話をしよう」、バラードの「愛しい人」を、演奏にしっかりと熱を込めながらじっくり聴かせた中盤を挟んでからの後半戦となるわけだが、その前に後半戦に突入する前にメンバーそれぞれに語った、ここまでの手応えを記しておきたい。
「(東京国際フォーラム2Daysの)昨日がすごく良かったから、今日、超えられるかちょっと不安だったんだけど、その不安は一瞬で消え去りました」(渋谷)
「ツアーの1本1本、ルールを守りながらその中で、それ以上に楽しもうと言う気持ちが行きかったからこそ、いいツアーになったと思います」(柳沢)
「(コロナ禍の中で)仲間、チーム、音楽に救われた。そういうことが大事なんだと気づかせてもらったのは不幸中の幸いと敢えて言うけど、いい状態でバンドをやらせてもらってます。そんなふうに考えられれば、一人ひとりが幸せになれる。そう思いながら今日はベースを弾かせてもらってます」(上杉)
「ぶーやん(渋谷)は不安だったって言ったけど、3人の背中を見ながら今日も楽しそうだなって思ってました。俺も楽しいよ!」(藤原)
藤原”34才”広明(Dr)
そして、後半戦。「ここからライブハウス開幕です。よろしく!」という渋谷の宣言どおり、「アイラヴユー」「名前を呼ぶよ」「東京流星群」「秘密」と声を出せない観客の代わりに柳沢、上杉、藤原がシンガロングしながらアンプテンポのライブアンセムを繋げ、バンドと観客はさらに大きな盛り上がりを作っていった。「秘密」の前に「過去最高、更新してます。なので、もっとやろうぜ! 東京!」と言った渋谷が、「秘密」を演奏し終え、「過去最高です。一緒に作れた感じしてる?」と問いかけると、観客が大きな拍手で応えたのだった。
「あなたが好きだと言ってくれるバンドだから、俺たちは自分のバンド、音楽が好きです。俺たちの音楽が好きだと思っているあなたは、俺たちから本気で思われてます。その自覚を持ってください。一時もあなたのことを忘れてことはない。それだけ考えて、音楽をやってます。これからも安心してついてきてください」(渋谷)
大きなグルーヴを持つメロディアスでハートウォーミングな「東京」を挟んでから、2時間に及ぶ熱演を締めくくったのは、本編最後の「ロマン」とアンコールの「最前線」。「がんばれって応援歌です」と渋谷が紹介した前者は再会を約束しながら、《それぞれに頑張って》というリフレインの飾らない言葉が胸に染みる、まさしく応援歌だ。一方、自分たちを奮起させるために《行け 行け 行け 最前線を 行け》と歌っているんだとばかり思っていた後者が、実はライブが終わると、それぞれに別の道を歩き始める観客一人ひとりに贈るエールだったことをこの日初めて知った筆者は、その2曲をセトリの最後に持ってきたところに4人に訪れた心境の変化を感じずにいられなかった。
そもそも『東京』というアルバムが、それまで音楽シーンを必死に生き抜きながら自分たちの主張を歌ってきたSUPER BEAVERが初めて、自分たちの音楽が届いて欲しいと思っている人たちに対して、今、こういう言葉を掛けたいと考えながら作ったアルバムだったことは、メンバーたちが複数のインタビューで語っているとおりだが、そのアルバムを完成させたとき、それがどういうふうに届くのか楽しみだと語っていた彼らはその『東京』の曲をツアーで観客に届けながら、同時に聴き手のことを思う気持ちがどんどん膨れ上がっていったようだ。
だからこそ、観客との別れの場面に前述の2曲を選んだのだと思うし、応援歌というちょっと予想外の言葉を使ったんだと思うし、「アイラヴユー」の前に渋谷は「18年目になって、あなたの人生まで背負いたいと思うようになりました」と言ったんだと思う。
それを包容力と言ったら、ありきたりかもしれない。ともあれ、それが山あり谷ありのキャリアを歩き続け、18年目を迎えたSUPER BEAVERの新境地なのだと思う。
そこにバンドの成熟を感じたりもする。だからって、バンドが丸くなってしまったわけではないことは、ライブハウスからやって来たバンドの矜持を見せつけた、この日のスタートダッシュとラストスパート、あるいは「VS.」からも明らかだろう。それに「あなたが決めた未来を後押しする音楽。現実に向き合うエネルギーになる音楽」と渋谷が語ったように自分たちの音楽の意味を改めて見極めたSUPER BEAVERは、それをさらに磨き上げていくはずだ。そういうバンドが丸くなるなんてことはあり得ない。
7月11日からは『都会のラクダSP 行脚 ~ラクダフロムライブハウス~』と掲げた各地でのライブハウス公演が始まる。そして、その後、10月19日からは『都会のラクダSP~東京ラクダストーリービヨンド~』と題した2度目のアリーナツアーが待っている。ファイナルで見せた勢いは衰えるどころか、ますます増していくに違いない。そんな現在の状況を、メンバー自身が誰よりも楽しんでいるところが頼もしい。
18年目を迎えたSUPER BEAVERの、さらなる快進撃を楽しみにしている。
取材・文=山口智男 撮影=青木カズロー

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