今井翼 (スタイリスト:渡邊奈央(Creative GUILD)/ヘアメーク:中谷圭子(AVGVST) (C)エンタメOVO

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今井翼「hideさんが残したものを大切
にしたい」 『TELL ME ~hideと見た
景色~』で映画初主演【インタビュー

 X JAPANのギタリストとして、そしてソロアーティストとして、時代を超えて支持されるロックのカリスマ“hide”。1998年に急逝した後、彼の実弟が意志を継いで仲間たちと困難を乗り越える姿を描いた映画『TELL ME ~hideと見た景色~』が、7月8日から公開される。主人公でhideの弟・松本裕士役を演じるのは、本作が映画初主演となる今井翼。学生時代からX JAPANのファンだったという今井に、本作に挑んだ思いや役作りについて、さらにはhideの魅力を聞いた。
-今井さんにとって、本作は初主演映画となります。出演が決まったときの心境を教えてください。
 2年ほど前に芸能活動を再開させていただいてから、おかげさまで舞台や、映画、ドラマなど、さまざまなキャリアを積ませていただく中で、改めて仕事ができる喜びや、芝居の難しさ、面白さを感じながら40代を迎えることができました。そんな中、今回のお話を頂いて、本当に僕でいいのかなという思いもありましたが、すごく光栄でした。複雑で繊細な役どころを自分なりに意思を持って務めたいと思いました。
-hideさん亡き後の、彼の周りの人々の再生を描いた物語だと知ったときはどう感じましたか。
 映画の原作は、弟の裕士さんが当時のことを記された書籍(『兄弟 追憶のhide』)ですが、今回、僕も原作を読んで知ったことがたくさんありました。伝説のカリスマであり、ファンの方にとっては生きがいだった“hide”という存在が突然亡くなったときの喪失感はものすごく大きかったと思います。映画の中には、当時の報道映像も流れますが、どれだけの人たちが悲しみに暮れたのか分からないほど、ショッキングなことだったと改めて感じました。なので、裕士さんたちが、そこから進んでいくのはとてつもない道のりでした。その険しい道のりを、hideさんが残した大切なものを絶対に守り抜く、ファンに届けるんだという強い思いだけで進むことができたのかなと、胸に迫るものがありました。
-裕士さんという、実在し、現在も活躍している人物を演じることにはどんな思いがありましたか。
 裕士さん役を演じるのは、すごく難しかったです。僕は基本的にはお芝居をする上で、実際に現場に入ったときの空気感や、共にお芝居をする相手の方との呼吸だったり、指揮者である監督の考えを受けて、そこで派生していくものを大切にしています。なので、今回もそうして演じさせていただきました。もちろん、どんなお芝居も生身の人間が演じる以上は、自分のイメージが反映されるものですが、(演じる役と)共通する感情を自分の中からつまみ出して演じることを大事にしています。
-葛藤し続け、悩み続けている裕士さんの役は、重い役どころだったと思います。撮影終了後は、すぐに切り替えができましたか。
 確かに僕は、今回に限らず、ウェートがかかる役を演じている最中やその後は、なかなかその人格が抜けなくなってしまうことがあります。もっといえば、猟奇的な役を演じているときは、なるべく人に会わないようにするぐらい、自分が自分でなくなるほど(役に)入り込んでしまうんです。ただ、今回は、それとはまた違いました。裕士さん役はとても繊細に向き合わなければ滑稽になってしまうと思っていたので、自分の中でどんな思いだったのかを考え、想像し続けながら演じていたように思います。もちろん、実際にあった出来事の重大さを考えると、「よし、これだ!」と簡単に(正解が)見つかるものではなく、毎カット、毎シーン、自分なりに演じながらも、大丈夫かなという不安はあり、とても難しい作業でした。
-そもそも今井さんはX JAPANのファンだったと聞いています。X JAPANやhideさんとはいつ頃、出会いましたか。
 小学校のときに初めてX JAPANに出会って、そこからロックのカッコ良さにくぎ付けになりました。hideさんはもちろんですが、YOSHIKIさんの描くXのスタイルは唯一無二のものだと思いますし、各メンバーの個性、そしてYOSHIKIさんが刻むドラムもピアノも特別なものだと感じています。なので、Xが解散すると発表されたときは、すごくショックでした。当時、渋谷で開催されていたXの写真展に行ったことを今でも覚えています。今でも、Xの音楽もhideさんの音楽もよく聞いていますよ。
-今井さんが一番好きな楽曲は何ですか。
 hideさんの楽曲ならば、やはり「TELL ME」は思い入れが深い曲です。この楽曲は、X時代にすでに発表されていて、それを、劇中にあるように、hide with Spread Beaverで録り直しています。今回、裕士さん役を通して、改めてhideさんと接する時間の中で、僕の中でhideさんに対する原点は「TELL ME」だと感じました。
-hideさんが急逝した当時、今井さんは17歳だったと思いますが、どのような心境でしたか。
 社会現象となるぐらい誰もが驚き、悲しみに暮れた出来事で、この時代を過ごしている方であれば間違いなく記憶していることだと思います。もちろん、僕もそうです。素晴らしい才能を持っている方が旅立ってしまったという悲しみもありましたが、同時に、「何でだよ」というやり切れない思いもあり…。もし、hideさんが今も生き続けて、作品を作り続けていたら、どんな曲が聞けたんだろうと今も思います。ですが、そうした悲しみがあるからこそ、hideさんが残したものを大切にしたいとも思います。きっとhideさんを好きだった人みんながそう思っていると思いますが、裕士さんは、弟だからこそ、その思いがより強かった。絶対に守り抜くんだと感じていたんだと、この作品を通して改めて感じました。
(取材・文・写真/嶋田真己)

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