あらき ボカロ曲を軸にしたセットリ
ストで示した多彩な表現力、『ARAKI
LIVE ARK -撃壌之歌-』ファイナル公
演をレポート

ARAKI LIVE ARK -撃壌之歌-

2022.6.25 Zepp DiverCity(TOKYO)
“撃壌”とは、世の中が平和なことを表わす中国の故事。平和で幸せな世の中を楽しめる時が来るように、という願いをツアータイトルに託して、全国6か所を巡る『ARAKI LIVE ARK -撃壌之歌-』を6月に開催したあらき。ファン投票も参考に“歌ってみた”ナンバーを軸にしたセットリストに満ちていたのは、歌、音楽、仲間、ファンへの愛と感謝を胸に己の道を突き進むあらきらしさだ。6月25日に東京・Zepp DiverCity(TOKYO)にて行われた最終公演、そのステージに立っていたのは、無比の存在感で人を惹きつけて止まないかぶき者だった。
バンドメンバーに続き、颯爽とステージに現れたあらき。「さあ、ハジけていきましょう!」という第一声を放つと、4月に動画公開し、『歌ってみた』最大の動画投稿祭『歌ってみたコレクション』で2位に輝いたお祭りロックナンバー「祭りだヘイカモン」へ。お立ち台に乗って煽ればイメージカラーの赤を灯したペンライトが大きく揺れるし、<今は踊るな 今は踊るな>と歌えばいっせいにおとなしくなるし、オーディエンスを意のままに操るあらきに見入ってしまう。
あらき
難しいメロディラインをしなやかになぞり、赤いマイクスタンドに手をかけて歌う姿もきまりすぎな「フォニイ」。6月にして異例の猛暑日となったこの日に集ったオーディエンスに「今日は暑かったですね、ここまでお疲れ様でした」という労いの言葉をかけて歌い出しにつないだ「セカイ再信仰特区」。歌詞そのままに、あらきのライブはやっぱり<最高だ>。
「今日は収録用のカメラが入っていますが、お行儀よくしない方向で臨みますので、みなさまもどうかかしこまらずに!」
ここで投下されたのは、5月に動画公開したお囃子始まりの和ロック「トキヲ・ファンカ」。飛び交うレーザーライト、トレードマークの赤髪、バンドメンバーのテクニカルな演奏と渡り合うハイトーンボイスもラップも、圧倒的。その姿はまさに、天下一のかぶき者だ。
あらき
Supernova」ではアコースティックギターを弾きながら美しく澄んだ歌声を響かせ、アコースティックアレンジで切なさが増し増しになった「少女レイ」からは、あらきとしては珍しいバラードコーナーへ。斉藤和義のカバー「歌うたいのバラッド」は、すっかりあらき色のバラッドになっているではないか。一途な想いと優しく穏やかな歌声が沁みる「きみがすき」にしても然り。「コロナもだいぶ落ち着いてきたとはいえ、先のことはわかりません。もっとたくさんの人と出会えるように、みなさんと一緒に希望ある未来へと連れて行ける箱船となれるように、と思って作った曲です」と前置きした「Ark-strings arrange ver.」にしても然り。ファンの求める多彩なボカロ曲をメインに、影響を受けたJ-POPナンバー、自らが生み出した楽曲もしっかりと届けてくれた今ツアーのセットリストは、さまざまな音楽に出会い、導かれてきたあらきの幅広い表現力と表現欲をあらためて示していたようにも思う。
江畑コーヘー
K.F.J
あらきが今までに投稿したボーカロイド楽曲を対象にリクエスト投票企画が行われ、“ランキング上位3曲を歌唱する”という公約が掲げられていた今ツアー。2位にランクインしたのは、「かっこいいベースから始まります」とあらきが予告した「About me」だ。再び登場の赤いマイクスタンドにしたって、流暢な英語にしたって、かっこいい。
艶と愁いのある低音ボイス、遊び心あるフレーズも中毒性の高い「不埒な喝采」からの、マフラータオルを首に巻いてギアを1段上げた「B.B.F」。バンドメンバーとアイコンタクトしつつ、上手から下手までステージを駆けながら歌った「トコヨトキヨ」。「メンバーさんも個性出していきましょう、我々グルですから」と匂わせてからの「GURU」。目まぐるしい曲展開であらき無双を極めた「神っぽいな」。「このデカい会場をダンスフロアにしちゃいましょう!」と呼びかけた「ARROW」。リクエスト投票1位に輝いた、あらきといえば!の「ヒバナ」。怒濤のたたみかけでもまったくブレないその歌声、強い、強すぎる。
Okamu.
直井弦太
みんな大好きな「いーあるふぁんくらぶ(撃攘之歌 ver.)」で楽しくスタートしたアンコールでは、8月10日にリリースのニューアルバム『IDEA』の収録曲で、6月22日に先行配信されたばかりの「A New Voice」のライブバージョンをお披露目することに。しかも、曲提供してくれた音楽ユニットFAKE TYPE.のMC・TOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.)をゲストに迎えて、である。難易度高すぎるトリッキーなラップのかけ合い、この一夜限りの刺激的なコラボレーションを目撃できた人は、自分も含めて本当にラッキーだ。パフォーマンス後には、「こんなに幸せな空間があるんですね。お招きいただきありがとうございました!」と、笑顔を見せてくれたTOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.)。なにしろ、<共鳴し合う縁>が呼んだ彼のリリックがあぶり出す<This is "ARAKI">、納得でしかない。
あらき、TOPHAMHAT-KYO(FAKE TYPE.)
「人と人との出会いは、人生を豊かにしますよね。活動を始めてからの9年間、つくづくそう感じています。その中には、みなさんとの出会いも含まれていますからね。この場に居合わせてくれて、本当にありがとうございます。最後、心の中で一緒に歌ってくれたら、また次も笑顔で会えるんじゃないでしょうか」
そう言って、「瓦礫の塔」へ。リクエスト投票3位にランクインした、ドラマティックなナンバーだ。エモーショナルな歌声、<また逢おうね>というフレーズに、またまた胸が熱くなった。
あらき
なお、会場チケットがソールドアウトとなった本公演の模様が、7月30日にオンライン配信されることが決定している。視聴チケットは現在発売中、オンラインならではのあらきの表情やパフォーマンスを楽しんでほしい。
活動9周年記念日となる8月10日にリリースされる『IDEA』は、昨年発表したアルバム『UNKNOWN PARADOX』と対をなす作品であり、前作とは曲調をガラッと変えた内容になるのだとか。貪欲に挑戦し続けるあらきが開く新たな扉の先には、想像を超える鮮烈な景色が広がっているに違いない。
『ARAKI LIVE ARK -撃壌之歌-』

文=杉江優花 撮影=堀卓朗(ELENORE)

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