「守りたい未来」へと続くエネルギー
の交歓──! ミュージカル『刀剣乱
舞』〜真剣乱舞祭2022〜 公演レポー

2022年5月より総勢33振りが参加、8箇所全28公演を行ったミュージカル『刀剣乱舞』の大型ライブ公演 『真剣乱舞祭2022』が、6月26日(日)国立代々木競技場 第一体育館にて大千穐楽を迎えた。刀剣男士たちと観客によるアリーナサイズの“祭りのひととき”、心踊るスペシャルな時間をもう一度振り返ってみよう。

まずは出演者からおさらい。全ての公演に出演したのは小狐丸(北園 涼)、今剣(大平峻也)、大和守安定(鳥越裕貴)、和泉守兼定(有澤樟太郎)、堀川国広(阪本奨悟)、蜂須賀虎徹(高橋健介)、 長曽祢虎徹(伊万里 有)、蜻蛉切(spi)、明石国行(仲田博喜)、鶴丸国永(岡宮来夢)、桑名江(福井巴也)、松井江(笹森裕貴)、浦島虎徹(糸川耀士郎)、日向正宗(石橋弘毅)、豊前江(立花裕大)、ソハヤノツルキ(中尾暢樹)、 水心子正秀(小西成弥)、源清麿(佐藤信長)、五月雨江(山﨑晶吾)、村雲江(永田聖一朗)、大包平(松島勇之介、小竜景光(長田光平)、南泉一文字(武本悠佑)、肥前忠広(石川凌雅)。そして福井〜宮城公演には千子村正(太田基裕)、福岡〜東京公演には大典太光世(雷太)が加わり、また会場替わりで大倶利伽羅(牧島 輝)、岩融(佐伯大地)、陸奥守吉行(田村 心)、加州清光(佐藤流司)、山姥切国広(加藤大悟)、巴形薙刀(丘山晴己)、篭手切江(田村升吾)が出演。プラス歴史上の人物として榎本武揚(藤田 玲)、平将門(川隅美慎)が全公演に登場している……と、これだけ見ても既に壮観! 本公演のトライアル公演〜最新作『江水散花雪』までの刀剣男士たちがズラリと揃っている。まさに“祭”のタイトルにふさわしい賑やかさだ。

(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
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オープニングは厳かに。正面のメインステージは中央ワイドに大階段をあしらい、屋根には刀剣男士たちの紋を掲げ、社殿にも見えるデザインに。アリーナの中へと延びている花道の先には出島ステージ。そしてそこに忘れ去られたように置かれた一艘の木舟の近くには──物思い顔の水心子正秀が佇んでいる。その場所はおそらく彼岸と此岸のちょうど狭間。“どちらでもない”刹那の場所から時代を思い、世の中を見つめるのは刀剣男士ならではの眼差しなのか……? と、気づけば正面には大きな船を従えた平将門の姿が! 先ほどまでのもやが晴れ、荒々しい波飛沫が上がる。音が生まれる。空気が動く。何かの儀式のような特別な領域が舞台上を支配していく。声が聞こえる。「これは祭りだ! 遊ぼう、今を共に。さあ、遊びの時間の始まりだ」と。

(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
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そこからは一転、躍動感あふれる祭りの世界へ。「どっこいどっこい」「ソイヤソイヤ」と威勢のいい掛け声と共に、祭り衣裳に身を包んだ刀剣男士が次々に登場。祇園祭、ねぶた祭り、阿波踊り、エイサー、よさこい、ソーランと、日本を代表する祭りの歌と踊りのメドレーがビッグウエーブのように客席を飲み込んでいく。山鉾やこんのすけのねぶたの山車を引いた刀剣男士たちが練り歩けば、心は一気にハレの場へ! 太鼓や扇子、団扇や鳴子などを手にした刀剣男士たちが伝統的な振りを取り入れたダンスで跳ね回ったり、現代風なサウンドアレンジに合わせた祭囃子に合わせおきまりの掛け声を弾ませたりと、威勢良く祭りを盛り上げていく。観客はもちろん手元の“光る棒”で加勢。曲によってメインを務める刀剣男士が次々に入れ替わり声を上げる華やかな様子に、まるで自分自身もどこかの大通りで祭りの行列に参加しているような熱い気持ちが呼び起こされ、ステージ上と客席が笑顔でひとつになっていく。このエネルギーの交歓こそ祭りの醍醐味だ。
(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
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祭りパートで一気に場内を温めたら、その先はさらに刀ミュナンバーで構成するライブパートへ突き進む! 毎公演が一期一会、どのステージも“その日だけの祭り”として楽しめるようにとのサービス精神から、ミュージカル公演で披露したメンバーの固定にはこだわらず、パフォーマンスを担う刀剣男士の編成や楽曲のセレクトは会場替わりや日替わりのセットリストで対応という欲張り構成。これまでのライブステージでも繰り返し披露されていた練度の深いナンバーから、最近作でお目見えした鮮度の高いナンバーまで、ライブパートは時間いっぱいまで楽曲を詰め込み、初見のペアや意外なチームの誕生、そしてソロナンバーと、ライブだからこそのシャッフルが連打された。
(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
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パフォーマンスエリアとしては出島にせり上がりの盆がセットされていたほか、アリーナの四隅にぐんぐん上がっていくリフト式ミニステージも。下からはグーッと見上げるほどに、そして上からはまさかの同じ目線での対峙も実現してしまう高さを伴ったスリリングな演出で、場内のどこにいても刀剣男士の存在を間近に感じられる工夫が。衣裳もライブver.、内番 ver.、そして戦闘ver.と多彩なスタイル。刀剣男士たちの魅力を余すことなくステージの上へと乗せていった。
(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
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五穀豊穣、商売繁盛、家内安全、疫病退散……と私たちのために唱え祈るのは、おそらく刀剣男士の本来の在り方だ。そこから発展し「ライブは現代での戦いの形」と出会った頃に言ってくれた刀剣男士たちは今や「戦い」というスタンスを超え、この大きなステージでたくさんの主たちに歌とダンスを届けることを心の底から純粋に楽しんでくれている。そしてその姿を見られることはまた、この場に介した一人ひとりの最大の喜びにもなっている。これはもう“嬉しいの連鎖”だ。

(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
ライブの締めくくりに披露された「問わず語り」は、ゆっくりとクールダウンしながらこの日の思い出を胸にしっかり刻み込むターム。“人生は終わりのない戦い”だという事実は、決して辛いものではない。手のひらの上の独り言のような問わず語りをつかず離れず受け止めてくれる誰かがそこにいれば、生きるのもそう怖くはないよねと抱きしめてくれるようなナンバーだ。刀剣男士全員の合唱の声がゴスペルのような響きで静かにまっすぐ胸に迫ってくる。最後の最後まで刀を抜かず、音楽の力で(それでも確実に何かを断ち切るまでの強さで)戦いきった『真剣乱舞祭』。共に「誉」の文字を抱いての帰路は、確かに“守りたい”未来へと続いていた。
(c)NITRO PLUS・EXNOA LLC/ミュージカル『刀剣乱舞』製作委員会
取材・文=横澤由香
※写真は千葉公演のものです。

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