山田涼介×内野聖陽インタビュー 『
鋼の錬金術師 完結編』に必要とされ
た、舞台とも異なる想像力と覚悟とは

現在公開中の映画『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』は、荒川弘氏による漫画『鋼の錬金術師』の実写映画化で、『鋼の錬金術師』(2017年)の続編にあたる作品。二部作連続の公開で、シリーズの有終の美を飾ることになる。1作目から、キャスト勢も続投。主人公エドワード・エルリックを演じた山田涼介は、半年間かけて作り上げた肉体を惜しげもなくさらけ出し、見た目から完璧になり切り、物語に命を吹き込んだ。また、『完結編』ではストーリーをさらに盛り上げるべく、新キャストの層も厚い。中でも、ヴァン・ホーエンハイム/お父様の2役をものにした内野聖陽の存在が光る。『最後の錬成』ではエドの前に立ちはだかる大きな壁となり、山田と激しい演技バトルを繰り広げた。山田、内野にとって、本シリーズの出演はどのような経験になったのだろうか。インタビューでたっぷりと語りあってもらった。
『鋼の錬金術師』で必要とされた、舞台とも異なる想像力
(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX(c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
――山田さんは1作目『鋼の錬金術師』出演のとき、並々ならぬ覚悟でエドを引き受けて演じられたと思います。少し時間が経った『完結編』のニ部作でも、エドという役への愛情や自分がやることへの意識を、強く持って臨まれたのでしょうか?
山田:そうですね。1作目のときは、自分が大好きで、しかもこれだけ世界中から愛されている作品なので、オファーをいただいたときは「え、本当にやっていいのかな……?」というとんでもないプレッシャーを感じたんです。エドとして生きる時間が長い分、背負えるのかな、という戸惑いが最初にありました。でも、演じていく中で、監督の熱い思いを受けて僕自身もどんどん熱くなっていったんですね。もっと言えば、1作目で終わるのではなく、最後(『完結編』)までやらないと実写化した意味がないとさえ思ってきて。1作目は原作で言うと序章にあたる部分なので、『完結編』で人間にうずまく汚い部分や、反対にキレイな部分、それぞれが希望に向かって歩いているヒューマンストーリーを描き切りたいという気持ちがありました。エドに対する思いみたいなものは、前作から約5年経ちましたけど、途切れることはなかったです。いつかやると思っていたので、実現できるとなって非常に嬉しかったです。
――曽利文彦監督とは、この5年間で連絡を取ったり、続編に向けてのお話などもされていたんですか?
山田:プロデューサーさんとコンタクトを取って「いつできるだろう」という話はしていました。この作品は本当にいろいろな準備がありますから、やれるかわからないけれど進んでみる、みたいな感じでスタッフさんが動いてくださっていて。監督も準備を少しずつだけど始めているみたいなことを聞いていました。でも、いつGOサインがでるかはわからない状態だったので、ソワソワはしていました。でも(撮影までの)4年は長いようで意外と短かった気もしますし、僕も今年が20代ラストなので、このタイミングでできたことがラッキーだったと思います。
――悔いはない、心残りはない出来だと断言できる感じでしょうか?
山田:そうですね……「心残りがある」と言っちゃうと、困っちゃうんで(笑)。
一同:(笑)。
山田:もう、まったくないです。はい。
内野聖陽 撮影=iwa
――ありがとうございます。内野さんはキーマンとなる役どころを演じられます。オファーはどう受け止められたのでしょうか?
内野:もともとは、原作自体を知らなかったんです。一通り読んでみて「ああ、すごい作品だな」と思いました。とにかく壮大な世界観で、戦いや平和、人種の問題もテーマとしてありますし、大人もものすごく楽しめる作品だと感じましたね。あとは、曽利監督が今の日本のCGの技術を、モニターを使いながら僕にレクチャーしてくださったんですよ。1作目で彼(山田)がただ単に何もないところを走って飛び降りるだけの素材を、どうやってCGに落とし込んだのか、とか。「今のCGはこういうところまできているんですよ!」と見せてもらって、「うわ、すっごいな!」と、現在のCG技術の質の高さを目の当たりにしました。その世界観の中で、役者として徹底的に役を造形できたら、それは非常に心躍る作品になるだろうなと思ったので、受けさせていただきました。
――物語そのものと、監督の作り出す世界観に魅力を感じたということですよね。役としてはいかがでしたか?
内野:2種類をやらせていただけるというのも、「それも楽しそうじゃないか!」と思っていたんです。でも、まあ実際にやってみたら非常に大変で。2種類だけじゃなくて、ほら……黒くなってからも。
山田:全部やられましたもんね。
内野:全部でした。「フラスコの中の小人の声も内野さんで」と言われたから、「えっ、そうなんですか」って。「お父様が黒い一つ目の怪獣みたいになってからも内野さんで」と。僕は怪獣みたいなものをやったのは俳優生活で初めてでしたし(笑)、CGも初めてだし、初めてづくしの作品になりました。
(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX(c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
――本当に、全編ものすごい迫力でした。グリーンバックでやることの面白さ、大変さについてもお聞きしたいです。
山田:グリーンバックでやる面白さって、ないですよね?
内野:いや、俺はあったよ。
山田:えー!(笑)。グリーンバックは想像力を本当に豊かにしないとできないので、現場でみんなで作りあげている感じがあって、その空気感はすごく好きです。それに、できあがったときの感動は、中々味わえないものがそこにはあるかな、と思います。
内野:そうだよね。僕は面白かったし、やっぱり難しかったです。というのは通常、映像の現場に行くと、美術さんがリアルに具象のセットをバン!と立ててくれているので、僕らはそこに没入して感情に嘘をつかなければ、ある程度ラクに芝居はできる部分はあるんです。けど、今回はそういうのが一切ない。緑の幕しかないからね。例えば、大自然が本来あるはずのところに緑幕しかなくても、「ああ、いい眺めだなあ~」と自分の中の想像力や記憶を使ったりしないといけないんですよね。
(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX(c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
――そこが役者としては挑戦どころといいますか。
内野:僕は舞台からきた人間なので、役者がそこでやることでお客さんにシチュエーションを想像していただくものだから、慣れているはずなんですよ。だけど、普段いかに周りの環境に助けられているものかと、まざまざと感じました。今回は「あ、これぞ役者の仕事でしょう」というか。シナリオや原作への理解、監督の世界観への理解をたくさんたくさん自分の中に持っていないと、立っていられないんですよね。そういう意味では鍛えられるし、そここそが、僕には面白さでした。
「山田さんは?涼介ってどこにいる?」と思うくらい、現場にはエドしかいなかった
内野聖陽 撮影=iwa
――今回ご一緒されて、お互いに俳優として刺激を受けた点や、作品や役の向き合い方における気づきなどはありましたか?
内野:こういったCGを使ったSF映画は、ハリウッドとかで盛んじゃないですか。空き時間に話しているとき、彼(山田)はそうした動画を見せてくれるんですよ。「あっちではこんな感じでやっているんですよね!」と熱く語ってくれて。レベルが高いCGだけど、今の日本も遜色ないところまでいっているから、「俺たちも頑張れそうかね!?」みたいな話をさせてもらったんです。彼は共演者の中でもすごく意識が高くて、「CGの映画を作るんだ」という覚悟や気構えが、ほかの役者さんより段違いに高いと感じましたね。そういう意味で、曽利監督のビジョンを信じているところが立派だと思いました。何もないところに出現させるビジョンを信じていなかったら、できたもんじゃないんですよ。それをぐっと覚悟して、意識していたので、すごく勉強になりましたね。
山田:とんでもないです。本当に、難しいじゃないですか。僕も想像しきれなかった部分がたくさんありました。でもやっぱり座長としてじゃないですけど、本当に内野さんはじめ、そうそうたるキャストの皆さんが集まっている中で、絶対に自分はぶれちゃいけない、という思いはありました。監督もひとりひとりに(説明に)いくのは大変だろうから、自分が経験したことで共有できることがあれば、役割分担じゃないですけど、できる限りやろうと思った部分がありました。
内野:それはね、絶対に曽利監督は感謝していると思いますよ。監督(という仕事)はやることがたくさんありすぎて、そういうところまで伝えきれないから、意識の高い方が役者仲間に波紋を大きくしていく、というか。その役割は絶対に大きかったと思うよ。
山田:そうおっしゃっていただけて、嬉しいです。やっぱり1作目と比べても圧倒的にスケールアップしていますし、CGがすべてではないですけれど、CGの部分ではクオリティの上がり方が本当にびっくりするぐらい違いました。2作目を観た方には特に、「早く次が観たい」と思わせてくれるような作品になったと思います。
(c)2022 荒川弘/SQUARE ENIX(c)2022 映画「鋼の錬金術師2&3」製作委員会
――山田さんからご覧になって、内野さんの現場での居方や役作りなどは、どう感じられていましたか?
山田:大先輩ですし、僕なんかが言うのは本当におこがましい話なんですけど。たくさんのお芝居を見させていただいて、現場でのその役への没入の仕方が全然違うんですよね。現場で”お父様”でいるときと”ホーエンハイム”でいるときの、身にまとう空気感が本当に違うんです。お父様でいるときは、「え、なんか怒っているのかな?」みたいな感じで話しかけづらい……(笑)。でも、ホーエンハイムでいるときは、少し楽な気持ちで話しかけられるんです。それこそ、クランクインの前から、親と子の関係性を出すためにコンタクトを取りたい、とおっしゃってくださっていたのもすごく嬉しくて。そんな役への没入感がすごく勉強になりました。あと! 先ほど話されていた、フラスコの中の小人ぼ声もまた全然違うんですよ。
内野:はっはっは(笑)。
山田:僕は内野さんと隣の楽屋だったので、内野さんの発声練習がすごく聞こえてきたんですよ。壁に耳をずっとつけて「やっぱすげぇ……」と思いながら、「このテンション、このテンション……」と、すごく勉強させてもらいました。もちろん難しいところもたくさんあったはずですけど、どうやったら面白おかしくなるんだろうと考えられてやられているのかなと思って。役者としての経験の差をすごく感じました。
内野:そう言いながら、俺からすると、自分(山田)のほうがすげぇ没入している気がするんだけどねえ。
山田:え、本当ですか?
内野:没入というか、役になりきられているんですよ。「山田さんは? 涼介ってどこにいる?」と思うくらい、現場にはエドしかいないし、若いお父様のときだったら若いお父様しかいないし、みたいな感じでした。
内野聖陽 撮影=iwa
――内野さんは、お父様でいるときとホーエンハイムでいるときで、違う居方という区別をして現場にいらしたんですか?
内野:お父様というキャラクターは、非常に口数が少なく、感情を抜いてしまっているようなところがあるんです。そんなキャラクターは、単純に直前にぺらぺら「あのさ、昨日さ、これが美味しくてさ」とやっていたら、入れないんですよね(苦笑)。そんな器用じゃないので。なので、そのキャラクターが持つたたずまい、呼吸感で、どういうものと対峙して戦っているのかとかをイメージしていないと、やっぱり薄っぺらくなっちゃうじゃないですか。だから自然としゃべらなくなっちゃっているだろうし、自然と寄せ付けなくなっちゃっているだけの話なんだと思います、きっと。
――記事掲載時は『復讐者スカー』がもちろん、『最後の錬成』がスタートした直後になります。『完結編』を楽しみにしているファンの皆さんへ、最後にメッセージをお願いします。
山田:『鋼の錬金術師』という作品は、ただのアクション映画ではない部分が、僕は一番推したいところです。ひとりひとりのキャラクターがものすごいクオリティで再現されていますし、バックグラウンドを丁寧に描いています。やっぱり生身の人間が演じることで、人間が持つ冷たさや柔らかさ、優しさなどが出ていると思いますし、希望に向かって歩くひとりひとりの大きい背中を追ってみてください。
内野:この映画はオールCGということで、その部分が特に取り沙汰されてしまうんですけど、架空の世界の話なんですが、そこで描かれているのは平和と戦争の問題や人種間の問題で、まさに今世界で起きていることと重なる部分があると思うんです。そういう意味では、本当に大人も楽しめるファンタジーになっているんじゃないかなと、僕は思っています。山田くんも言ったように、2次元のマンガから3次元の立体的なものにする作業はすごく大変なことですけど、本当にまざまざとそこで生きている人間たちが描かれているのが、この作品の魅力。原作とは違う楽しみ方で楽しめるようになっていると思います。ホムンクルスや人造人間、何百年も生きてしまう化け物みたいなものも出てくるんですけれど、それがゆえに命に限りのある人間の生命の尊さも、僕は非常に感じました。『鋼の錬金術師』が持っている人類愛や、希望の物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。
『鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー/最後の錬成』は上映中。
取材・文=赤山恭子 撮影=iwa

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