BAD HOP、Awich、PUNPEE、地元神戸の
tofubeatsらが豪華集結、関西ヒップ
ホップ史に刻まれた『KOBE MELLOW C
RUISE 2022』を振り返る

2022年5月28日(土)、5月29日(日)の2日間、神戸メリケンパーク内の特設会場にて、野外音楽フェス『KOBE MELLOW CRUISE 2022』が開催された。「神戸の海風を感じる心地良い空間の中で、音楽、アート、ファッション、フードなど様々なカルチャーをクルージングするように贅沢に楽しむ」をコンセプトに新たに誕生した音楽フェスで、2021年神戸にて初開催される予定だったが、昨年新型コロナウイルスの情勢を鑑みて開催直前に惜しくも開催延期を発表。そして今年、1年越しに開催が実現した。そこで今回は、Spotifyの人気Music+Talk番組『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』(毎週水曜日配信)のナビゲーターを努める竹内琢也が、自由気ままにクルーズした『メロクル』2日間の模様を振り返りレポート! 
関西発の野外音楽フェスにヒップホップシーンから豪華ラインナップ
『KOBE MELLOW CRUISE 2022』 撮影=Shinichi Kotoku
日本では、全国的にみてもロックフェスなどと比べるとまだまだヒップホップのイベントがそこまで多くはありません。関西では特にめずらしく、その中で野外イベントとしてここまでの規模で行われたことがすごい! これだけの規模で、これだけのアーティストが集まることがまずなかなかないので、そういった意味でも『KOBE MELLOW CRUISE 2022』はヒップホップファンにとっても貴重な機会だったなと思います。同時に、これからのヒップホップとイベントの可能性もかなり見えてきたのではないかなと。
『KOBE MELLOW CRUISE 2022』 撮影=Shinichi Kotoku
tofubeatskZmAwichなど、私が担当しているMusic+Talk番組『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』で紹介してきたアーティストも多数ラインナップされていて、野外フェスとしてはもちろん、なかなか関西ではライブが観られないアーティストもたくさん出演していたことが印象的でした。これだけの顔ぶれがそろうと、やはり客演参加が多かったのもならではの魅力ですよね。(ライブについては、この後にピックアップして紹介します!)
『KOBE MELLOW CRUISE 2022』 撮影=Shinichi Kotoku
また、神戸のメリケンパークという立地でこれだけの規模のフェスが開催できるのかというのも驚きでした。過去この場所でこれだけ大規模なフェスが開かれたのは初めてじゃないでしょうか? 天気が良くて暑かったとはいえ、海沿いなので海風があり心地よくて、何より駅からもアクセスがいい。夕焼けや夜景が綺麗だったりするのも都市型イベントとしての魅力だなと感じました。
『KOBE MELLOW CRUISE 2022』 撮影=ヨシモリユウナ
会場内には「マンドリルカレー」や「JESUS PIZZA」「中華とお酒 Marman」といった神戸のお店を中心に、関西のヒップホップカルチャーを語る上では欠かせない重要なお店「タソガレコーヒー」なんかが出店していたりとフードのラインナップにもイベントのコンセプトやこだわりを感じました。会場内には木陰や芝生エリアもあり逃げ場があったので、フードを楽しんだり休憩しやすくなっていたのもポイントですね。個人的に入退場が自由にできたのがよかったなと思っていて、会場の外にはアパレルや古着を販売するお店も並んでいたのでファッションも楽しめました。このマーケットのエリアはチケットがなくてもフリーで楽しめるようになっていたので、通りすがりの人も立ち寄ったりして盛り上がっていたように思います。
tofubeats 撮影=渡邉一生
さて、1日目はOAでSkaaiが出演。URBAN STAGEのトップバッターが、tofubeatsとあって開場後してすぐにたくさんの人が集まっていましたね。バンドのキーホルダーをぶら下げているロックファンも見かけたので、いろいろな音楽好きなお客さんが足を運んでいたのではないでしょうか。地元が神戸のtofubeatsで2日間がスタートするところにも『メロクル』ならではだなと感じました。実際に、tofubeatsは会場から10分ぐらいのところにも住んでいたそうですね。
tofubeats 撮影=渡邉一生
そんな彼のライブを午前中に観られる、というのがまず貴重。それも地元で! そういう意味でも、本人が午前中に披露するのは初めてと言っていた「LONELY NIGHTS」とニューアルバムで中村佳穂とコラボしている「REFLECTION」が印象的でした。「One」ではSTUTSがマイクをとったり、午前中から手拍子ありウェーブありでボルテージがすごく高かったですね。
kojikoji 撮影=ヨシモリユウナ
BIM 撮影=渡邉一生
kojikojiはSEASIDE STAGEに似合う、アコースティックが気持ちいいライブ。芝生エリアでまったりと座りながら聴いている人たちも。それから、BIMはバンド編成で出演。「Skippin' Rock」でBenjazzyが、「Rasen」ではOAのSkaaiが登場したりと大盛り上がり。ちなみに、BIMは2日間通して客演で5回出演していました。2日目出演のSIRUPからは「BIMのイベントだね」なんて言われてました(笑)。客演で登場するたびにBIMの衣装が違っていたところもポイント!
BIM × Benjazzy 撮影=渡邉一生
さて、tofubeatsのステージにも登場していたSTUTSは、1曲1曲しっかりと淡々とライブを進めながら魅せていくステージでした。新曲のインストがプレイされて、暑いので夏の曲でもというMCから「マジックアワー」ではBIMが登場。アッパーではないゆったりとした曲調が、気持ちいい海風ともマッチ。BIMとは仲良しなのでそのまま残って、「新曲よかったね」なんて話しながら「Presence」のイントロが流れて大歓声。松たか子さんのパートでウェーブが起こる盛り上がりから、BIMが去ってラストはバンドセットで「Seasons Pass」で締めくくっていました。
kZm 撮影=ヨシモリユウナ
それから打って変わって、kZmは縦揺れで盛り上がり続けるようなロックなライブに。「TEENAGE VIBE」から始まり、そこからメロウなスタートで、お客さんも声が出せない分、3曲目の「27CLUB」ではジャンプで応えて盛り上がるといったアクションも。そのまま終盤の「Aquarius Heaven」に至るまで、グワーッとテンションが上がってきて、ラストの「One Love」「Dream Chaser」でBIMが登場。「One Love」での客演は、新幹線の移動中に「海でいい曲がある」と思い立って、急遽決まったそうです。これだけのラインナップがそろっているからこその魅力ですよね。
Awich 撮影=渡邉一生
そして、MCのゆりやんレトリィバァの呼び込みで、初日の最高沸点ともいえるAwichのステージ。1曲目の「Queendom」から、人間力の塊をぶつけられているようでとにかくすごかった……。「NEBUTA」ではkZmが客演参加、それからゆりやんがAwichのファンだということで「POISON」で再びステージに。お笑いナシの真剣にラップを披露。「TSUBASA」から沖縄民謡の音色がとりいれられたバラード「Revenge」でじっくりと聴かせ、「Link Up」「GILA GILA」「Remember」「Bad Bad」と一気に畳み掛ける圧巻のステージでした。
Awich × ゆりやんレトリィバァ 撮影=渡邉一生
七尾旅人 撮影=ヨシモリユウナ
個人的に大好きでずっとライブを観てきている七尾旅人、すごくよかった。本人も「物とか投げられるのかと思っていたけど」と仰っていたぐらい、この日の並びでは異彩を放っていたわけですが、実際はすごくハマっていたんですよね。サウンドチェックをしながら、そのままの流れでライブがスタートして、2曲目の「湘南が遠くなっていく」あたりでサンセットタイムになり、日が落ちてきて気温もいい感じになる、時間帯も雰囲気もステージにぴったりの展開に。入管管理局の問題を歌った「入管の歌 (ニッポンの檻)」あたりでお客さんもグッと身構えるシーンがあり、そこから「きみはうつくしい」「Rollin' Rollin'」「サーカスナイト」の合唱したくなる緩急は素晴らしかった。今まで観てきたライブの中でも、本当にいいライブでした。
PUNPEE 撮影=渡邉一生
そしてこの日のトリのPUNPEEでようやく日も落ちきって、真っ暗なロケーションに神戸の街並みがライトアップ。都市型イベントのいいところがより一層際立つ時間帯に。PUNPEEは、とにかくセットリストがかなりすごかったなと思います。とにかく「レアなことが起こった!」というライブでした。「Renaissance」にはじまり「お隣さんより凡人」、「BUDDY」ではBIMが登場。
PUNPEE × BIM 撮影=渡邉一生
「お嫁においで2015」のキラーチューンに、BUDDHA BRANDの「人間発電所」カバーから「タイムマシーンにのって」。そして「Stray Bullets」「かみさま」(PSG)で5lackとGAPPERも登場。さらに、 Original Loveの田島貴男も加わって「 I WISH / 愛してます」。
PUNPEE × 5lack × GAPPER × 田島貴男 撮影=渡邉一生
PUNPEE × 5lack × GAPPER × 田島貴男 撮影=渡邉一生
田島貴男のシャウトのあたりではワッと会場がどよめくような盛り上がりをみせ、「Operation : Doomsday Love」からSTUTSと「夜を使いはたして」で終幕。夜まで待って、ラストにこの曲を届けるところもにくい。この条件がそろって、全員そろって披露されたということはそうそうないと思うので、本当にいいものが観れたなという満足感でいっぱいに。
PUNPEE 撮影=渡邉一生
BAD HOPによる圧巻のステージで終幕! 次回開催に早くも期待

PEAVIS 撮影=ヨシモリユウナ

さて、2日目はOAのPEAVISのステージからスタート。YonYonを客演に迎え、ハッピームード全開で幕開け。
SIRUP 撮影=渡邉一生
トップバッターは、ZEN-LA-ROCKとG.RINA、鎮座DOPENESSのユニット・FNCYで、これまた午前中になかなか見ることができない顔ぶれでしたね。夏をはじめたいというMCから1曲目「NEW DAYS」。のっけから手拍子とウェーブが起こって、煽る、踊る、しゃがんでジャンプという大盛り上がりのステージに。鎮座DOPENESSもすごい踊るから、お客さんもそれに合わせて踊っていて、「AOI夜」を青空の下で披露したことが特に印象的でした。
SIRUP 撮影=渡邉一生
SIRUP 撮影=渡邉一生
そしてバンドセットで登場した2番手のSIRUPの時点でもう会場はパンパンに。「Pool」にはじまり、「『メロクル』なのでメロウに」と4曲目「LOOP」ではイントロからざわめきが起こる展開に。そのまま「Slow Dance」でBIMが登場。日をまたいでの客演とあってすごくフロアも湧いてました。A.G.Oプロデュースの「Superpower」も畳み掛けて、披露されてハンズアップせずにはいられない流れから、会場がダンスフロアに変えてフィニッシュ。バンドがそこまで多くない日に、バンドセットで魅せるステージでしたね。
SIRUP × BIM
梅田サイファー 撮影=Hoshina Ogawa
「サウンドチェックが終わったけど、バイブスチェックや!」とライブ前からバキバキだったのが梅田サイファー。完全に温まりきったSEASIDEステージにあつまったお客さんの多さときたら、2日間通してもトップクラスで注目度の高さがうかがえましたね。関西でずっと活動してきたからこそ、「こんなにもヒップホップが好きな人たちが、いっぱいいてくれてうれしい」という言葉にはグッときました。クラップの音の大きさも相当なので、ラストの「梅田ナイトフィーバー'19」にいたるまですごい熱気に包まれていました。
LEX 撮影=渡邉一生
LEXは、1曲目「なんでも言っちゃって」からものすごい盛り上がりでしたね! JP THE WAVYとのこの曲は、2021年の総括&未来へ繋ぐ100曲からなるSpotifyのプレイリスト『Tiger』でも選ばせてもらっていて、去年から今年を象徴するような曲ともいえます。ダンサーを迎えてのステージで、ラストの「大金持ちのあなたと貧乏な私」まで全13曲、とにかくアツかった。なかなか大阪では観られないLEXのライブだからこそ、フロアの熱量もひときわ高まっていたように感じました。
WILYWNKA 撮影=渡邉一生
それから日も落ちていい感じのマジックアワーに、WILYWNKAが登場。「Everyday」ではみんなジャンプする盛り上がりで、ヒット曲多数のセットリスト。「Merry Go Round」ではハンズアップと一緒に大合唱したくなるシーンもあり。火照ったからだに心地よい「Chill Out」から、ラストは「Our style」も披露。ちなみに、SEASIDE STAGE出演のVIGORMANステージでは、変態紳士クラブの「YOKAZE」も披露していました。
WILYWNKA × VIGORMAN 撮影=渡邉一生
ALI × 梅田サイファー 撮影=Hoshina Ogawa
完全バンドスタイルで、明らかに毛色が違うといえば違う、ALIのステージはこの日のハイライトのひとつ。2日間通しても異色ではあったのですが、しっかりとヒップホップファンの心を鷲づかみにしていました。サポートのドラムは中村達也という強力な編成で、「音楽にジャンルなんて関係ない」といった言葉を体現したようなアツいステージに。「FEELIN' GOOD」で梅田サイファーとコラボ、そのままR-指定が残って「Just begun」、「TEENAGE CITY RIOT」を披露。「LOST IN PARADISE」ではAKLOも参加して、RHYMESTERの曲をサンプリングされていたり、「Funky Nassau」などクラシックカバーも多めでフィジカルの強いステージでしたね。
BAD HOP 撮影=渡邉一生
そして、『メロクル』2日間を締めくくる大トリ。関西でBAD HOPが観られるということで、会場の興奮も沸点に。BAD HOPが神戸のステージにやってきて、そしてそのステージを観るためにあれだけ多くの人が集まって、目の当たりにしているという現象がもう、関西のヒップホップシーンの歴史的な出来事だったのではないでしょうか。「Friends」にはじまり、「Bayside Dream」からラストの「Kawasaki drift」にいたる全14曲、終始フロアは相当な盛り上がりでしたね。イベントを締めくくるにふさわしいステージで、観客もこの瞬間を見逃すまいという熱気に包まれていました。
BAD HOP 撮影=渡邉一生
地元神戸のtofubeatsから、凄まじいステージをみせたラストのBAD HOPまで、振り返ってみてもとにかくラインナップがすごかった『メロクル』。出演していたアーティストもみんな「来年も出られるように頑張ります」と口々に言っていましたが、これからこのイベントを目指す若手がどんどん出てくるんじゃないかなと感じました。
今回が初開催でまだまだ手探りだったところもあったはず。ですが、今後また会場のレイアウトがブラッシュアップされたり、状況も良くなってお酒が思いっきり楽しめたり声が出せるようになったり。はたまた海外アーティストが1組でも出演するようになるとまた雰囲気が違ってくるだろうなとか、今後に期待せずにはいられない、可能性に満ちた2日間だったなと思います。
BAD HOP
冒頭でも伝えたとおり、やはりこれだけの規模のヒップホップカルチャーが集結したイベントが関西でそれも神戸というアクセスもよい美しいロケーションで開かれたこと。そして日をまたいでも客演が連発する、豪華なラインナップが集まってたことがなにより貴重だったなと思います。次回開催はどんなイベントになるのか、今からすごく楽しみです!
取材=竹内琢也 文=大西健斗 写真=オフィシャル提供(渡邉一生、Hoshina Ogawa、ヨシモリユウナ、Shinichi Kotoku)
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『KOBE MELLOW CRUISE 2022』5.28(SAT)
■URBAN STAGE
tofubeats 撮影=渡邉一生
BIM
Original Love 撮影=渡邉一生

STUTS 撮影=渡邉一生

Original Love 撮影=渡邉一生
STUTS 撮影=渡邉一生
Nulbarich 撮影=渡邉一生
Awich 撮影=渡邉一生

PUNPEE 撮影=渡邉一生
PUNPEE × STUTS 撮影=渡邉一生
PUNPEE
AKLO 撮影=渡邉一生
5lack × GAPPER

■SEASIDE STAGE
kojikoji 撮影=ヨシモリユウナ
Shurkn Pap 撮影=ヨシモリユウナ
Shurkn Pap 撮影=ヨシモリユウナ
空音 撮影=ヨシモリユウナ
空音 撮影=ヨシモリユウナ
七尾旅人 撮影=ヨシモリユウナ
『KOBE MELLOW CRUISE 2022』5.29(SUN)
■URBAN STAGE
FNCY 撮影=渡邉一生
FNCY 撮影=ヨシモリユウナ
FNCY 撮影=渡邉一生

SIRUP 撮影=渡邉一生

AKLO × Kvibaba 撮影=渡邉一生

AKLO 撮影=渡邉一生
5lack × GAPPER
5lack 撮影=渡邉一生
5lack 撮影=渡邉一生
LEX 撮影=渡邉一生
LEX 撮影=渡邉一生
LEX 撮影=渡邉一生
WILYWNKA 撮影=渡邉一生
WILYWNKA × VIGORMAN 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP 撮影=渡邉一生
BAD HOP

BAD HOP 撮影=渡邉一生

■SEASIDE STAGE
Kvi Baba 撮影=Hoshina Ogawa
VIGORMAN 撮影=Hoshina Ogawa
VIGORMAN 撮影=Hoshina Ogawa
ゆるふわギャング 撮影=Hoshina Ogawa
ゆるふわギャング × 鎮座DOPENESS 撮影=Hoshina Ogawa
Daichi Yamamoto 撮影=Hoshina Ogawa
Daichi Yamamoto 撮影=Hoshina Ogawa
ALI × R-指定 撮影=Hoshina Ogawa
ALI × AKLO 撮影=Hoshina Ogawa

ALI 撮影=Hoshina Ogawa

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