Jam Fuzz Kidが新EPから「KABUKI」を
先行配信、海外からも注目を集めるバ
ンドの根底にあるものとは

平均年齢23歳。90’ s UK ロックの影響を強く受け、キャッチーなメロディとラウドな洋楽ロックサウンドを見事に体現するバンド・Jam Fuzz Kidが、2022年7月13日(水)に2nd EP「DANCING IN SWEET ADVERSITY」をリリースする。これに先駆けて、6月8日(水)に「KABUKI」が先行配信された。本作は、これまでに磨き尖らせてきたバンドの個性をさらに突出させながらも、これまでにない新しい一面を覗かせる挑戦的な1曲に。歌詞の通り、時代に流されずに己を貫く気概がスパークして、バンドと楽曲のスケール感は増大。新たなるフェーズへ羽ばたかんとする勢いに心踊らされる。今回は今村 力(Vo)、ヤマザキタイキ(Gt)、John S.Kobatake(Ba)に先行リリースの「KABUKI」が生まれた経緯から、バンドの音作りについて話を訊いた。8月5日(金)東京・Spotify O-Crestからは、名古屋、大阪、福岡と回るバンド初のツアーも決定しているので、ぜひライブで直にその衝撃を体感してみてほしい。
Jam Fuzz Kid
コロナ渦でも「腐らずやるしかない」曲作りこそが、バンドの根底。
ーーまず、今回のリリースまでを少し振り返ってみたいと思うのですが、8月15日で2018年の結成から5年目に突入しますね。しかし、活動スタートからすぐに予期せぬコロナ渦に。
今村:そうですね。大学の同級生でバンドをはじめて、今の編成になって「ようやく曲が出せるぞ!」と1st EP「Chased by the sun」をリリースしたところで新型コロナ渦……。EP出して、2回目の自主企画をしてすぐの今からだというところだったので、正直どうしたらいいかわからなかったですね。同世代の友達もバンドを辞めたり、自分達もメンバーが抜けたりと、みんながやりたいことを続けるのが難しかった時期だったと思います。
ーーそんな中、Jam Fuzz Kidは20年11月に1st フルアルバム『GOAT』をリリース。21年にもデジタルシングルのリリースをコンスタントに行ってきましたよね。また、イープラスが運営する映像配信・収録スタジオ「eplus STUDIO」でXR Liveのプレビューショーに出演するなど、新しい取り組みも。
今村:XR Liveの収録した時はちょうど感染者数が増えたり減ったりしている時だったので、そういうタイミングで新しい形でライブができたのはよかったですね。
John:できあがった映像を見てみるとライブっぽいできあがりでしたが、現場にはライブハウスのような熱が実際にあるわけではないので新鮮でしたね。
ヤマザキ:ちょうど頑張って行こうぜという時だったしね。そこで腐らずやるしかないなという気持ちで、音源もたくさん頑張ってつくってきました。
今村:バンドとして、曲を出すことが根底にあるのがいいなと思っているので。もちろんライブも大事なんですけど、曲がないとできませんから。
ーー曲づくりは、今村さんからスタートするのですか?
今村:どちらかというと俺よりふたり(ヤマザキとJohn)ですね。ふたりの方がセンスがあるので(笑)。
ヤマザキ:みんなで作るのはつくるんですけど、よくあるスタジオでセッションして作る感じではなくて、それぞれががつくりこんだ曲を持ちよって、たくさん集まった中からどれにしようか選んで本格的にバンドの曲にしていく流れになります。
今村:不思議だよね。自然とそうなっていったのかな。俺たち、スタジオで曲つくれないもんね(笑)。だからリモートでつくってるんですよ。自分は弾き語りと鼻歌とかでメロディーをつくったりするんですけど、彼らはサウンドが先にバーっとある。なので、かっこいいなと思ったものに俺が鼻歌でメロディーつけたり、歌詞も同時でつくっていくので、基本的には音が先にできているんです。
Jam Fuzz Kid
ーーそれはすごく意外でした。どの曲も歌詞がすごくメロディーに乗っているので、それぞれでサウンドやメロディもつくっているとなると、気持ちの部分もメンバー同士で一致していないとなかなかガッチリとハマらないのではないかなと。
今村:たしかに。メロディーとかはみんなに意見を聞きながらつくっていくけど、歌詞は英語だし自分もネイティブじゃないところがあるから、メンバーにみせるのがすごく遅いんですよね。
John:僕たちもレコーディングまであんまりよく知らない状態なので、直前まで変えたりしてるからね。なので現場ではじめて知ることが多いんです。
今村:そうなんだよね。ネイティブだったら鼻歌の時点で歌詞も固められるんだけど、その時は口が気持ちいい単語をはめているだけなんです。メロディーが乗ってないとどういう曲にしたいかもわからないから、仮歌をいれて、音が完成して仮歌が消えてさらに構築していくという……。
ーーこういう曲をつくりたいとか、こういうことを曲にしたいしたいということを話したりすることなく?
今村:みんなバラバラだよね? だから曲をつくったひとが中心になって進めていくんです。だいたいそれが、このふたり。
John:ひとりが曲全体をつくってしまうと、その人の個性しかないような曲ができあがってくるので、そこにメンバー誰かの新しい要素が入って、ようやくバンドの色が見えてくるという感じですね。だからなにをするかわかってない方が、新しいエッセンスが入れやすくてぼくたちのバンドっぽくなるんです。
今村:ひとりだけでつくると、その人らしさしかない曲になりますからね。あくまでジャムファズっぽい感じにするには、みんなでつくりながらも、曲によって中心になってつくった人の要素が顕著に出ているところかな。
John:みんなこうした方がいいんじゃないとかは思いつつ、最近はその違いを許容できるようになってきましたね。
今村:俺たちがつくっているのは、全部いいから。結局、誰のアイディアをとるかという話であって、悪いものはひとつもない。なので、つくってきた人を優先するスタイルです。昔は大乱闘でしたけどね(笑)。
John:「いや、違うでしょ」とかね。
ーーそれはいつごろから、その違いも許容できるようになったのですか?
今村:フルアルバムが終わってからだよね? 自然とリスペクトしているからこそ、信じているからこそ任せようと。
絞りに絞って生み出した、隠し球であり必殺技の「KABUKI」
Jam Fuzz Kid - KABUKI (Official Video)
ーーということは、コロナ禍に入ってからもずっといいバランスで制作できているのですね。今回、EP「DANCING IN SWEET ADVERSITY」から先行リリースされた、「KABUKI」でいうとどういった経緯で制作されたのですか?
今村:「KABUKI」は、ふたりがつくった曲が先にあって、それを合体させてできた曲ですね。
ヤマザキ:それぞれ1曲ずつ、つくっていた曲を合わせて編曲はJohnがメインに。特に意図したわけではなく、それぞれたまたま同じような曲を作ってたんですよ。
今村:ちょー似てたよね。
ーーこの時もまた、こういう曲をつくろうと話していた訳ではないんですよね? なのにどうして、似ていたんでしょう。
今村:そういえば、なんでなの?
ヤマザキ:EPを出すにあたって、今までバンドがやってきたことを踏襲しつつ、新しいことをしたいという思いがまずあったんですね。それはきっと各々が新しさを模索していたはずで、たまたま似た箇所があってそれが重なった感じ?
John:今までにない音が、偶然同時に2人から出たということは「やるべきことなんじゃないかな」と思った感じですね。それでその2曲を合わせてみて、提案してみたら……。
今村:「いいじゃん」てね。
John:盛り上がり方がすごかったですよ。
今村:自分達としては、これまで自信のある曲をめちゃくちゃつくってきたので、めちゃくちゃテンションが上がることがもうあんまりないんですよね。そう言っちゃうとロマンがないかもしれないけど。だけど今回は、すごく核心に近い感触があった。なので、絶対にこれはやろうと。
ーーEPの全貌はまだ明かされていませんが、先行になるということはこの曲が核となる?
John:実は、この曲が最後にデモができたんです。
スタッフ:補足すると、30曲ぐらいできた中で今回のEPの4曲になります。
今村:あはは(笑)。俺たち、CDを出す時に30曲から50曲とかつくって、その中から足りなくなるぐらい削りに削っていくんですよ。後もう一押し……というところにあった2曲を合わせたのが、この「KABUKI」です。
ーー絞り出した最後にみつかった、結晶だったのですね!
John:なので、今回の先行は隠し玉を最初に出した感じですね。
今村:バンドとしては、必殺技を最初に出して、出し切ったと思わせて残りも全部必殺技だった!みたいな感じがいいなと思っているんですよ。捨て曲がない、全部いい曲である方がいいに決まっているので。なので、今回のEP「DANCING IN SWEET ADVERSITY」も全部、必殺技みたいな曲になっているはずです。
Jam Fuzz Kid
ーーそれは楽しみです。ちなみに、「KABUKI」はタイトルだけでなく<WABISABI>だったり、歌詞にも日本のフレーズが出てきますよね。今までにはなかったですよね?
今村:レモンサワーとかぐらいでしたね、あっても。
ヤマザキ:これは、僕がつくったデモの名前が「KABUKI」でそれが採用された感じですね。
今村:そうだったね。それがあって、俺もなんとなく念頭に置きつつ、「かぶく=かまそうぜ」という気持ちもあったかな。ジャムファズの曲は、海外の方もたくさん聴いてくれているから「ザ・日本」みたいなフレーズを入れるのもいいかなと思いました。
ーーそれはこのタイミングだからこそできたチャレンジ、ともいえるのでしょうか?
今村:そうかもしれないですね。「日本語を歌詞に入れる」というより、「俺たちは日本人だよ」というアイデンティティーじゃないですけど「日本文化を入れた」イメージですかね。英語詩の中にあっても、おもしろい感じになればいいなと。
ーー海外に向けた日本語となると、「この日本語好きでしょ?」というあざとさが滲むことがよくあると思うんですけど、今作についてはまったくないですよね。曲調も歌詞も全てがバンドのスピリッツに似合っているから全く違和感がない。また同じ繰り返しになりますが、だからこそバラバラに制作したこと、「こうしようぜ」というコンセプトありきでなかったところに驚きました。
今村:コンセプトありきだったら、逆にあざとくなっていたかもしれないですね。いい意味で俺たちの適当さが、偶然に歯車が重なったからよかったのかなと。
ーーデモをつくった段階では、完成した「KABUKI」のような曲になると想像していましたか?
ヤマザキ:曲名すら生かされると思ってなかったし、歌詞に日本語が入るなんて想像してなかったですね。
ーーすごい歯車の合い方ですよね。意識共有もしないんですか? こんなことしたいなぁとか、何気ない話でも。曲を薦めあったりとか。
今村:あんまりないけど、たまに「最近こういう曲を聴いてる」とか話をするよね? 
John:たまにだね。
今村:あ、すみません。「たまに」と言いましたけど、本当にすごくたまにです。ほぼない(笑)。
John:友達より少ないよ。
今村:代わりに俺たちは、バンドのグループラインがあって、誰かが曲をアップすると誰かつくった曲をあげるんですよね。カッコよく言えば、音で語る。バンドあるあるで誰かが投げかけても誰も反応しないとかはなくて、スタジオで曲をつくらないし音楽の話をあまりしない代わりに、ラインでつくった曲をアップしてセッションしている感じ。
ーーおもしろいですね。曲がどんどん生み出せるエネルギーの根源もそれぞれ違うのですか?
今村:俺は悔しがりだからかもしれないですね。ツイートしたりもしてるんですけど、オアシスが好きだけど、彼らは労働者階級出身で。だけど俺は生きてきた中で苦労したことってそこまでなかったりする。けど悔しい思いをすることはたくさんあるから、ハッピーなことより悔しさだとか、認められたいという気持ちから始まっていると思います。
ーーそれがパンクすぎず、グッドメロディーに昇華されているのが素敵ですよね。
今村:怒りが怒りのまま出ることもあると思うんですけどね。だけど悲しい時に聴きたくなったり、自然と涙が出てくるような曲が好きだから、いいメロディーにしたいというところに向かっていて曲に表れているんでしょうね。
ヤマザキ:ぼくはギターをすごく上手に弾ける人になりたい、という気持ちはなくて。自分の曲は、すごく上手に弾きたいと思っているんですね。だからその分、曲づくりはとことん突き詰めていきたい。いい曲をつくって、その曲を弾くことが一番楽しい。ギタリスト的ではないかもしれないですけど、それが根っこにあるかもしれないです。
John:いい意味でプレイヤー目線じゃない、みんなが作曲家目線でできるということはバンドの強みかなと思います。バンドやメンバーの根底がそこにあるから、ぼくもとにかく常に曲をつくりたいと思ってるし、今も帰ってつくりたいと思っているぐらい。
Jam Fuzz Kid
ーー曲作りのアプローチもモチベーションもそれぞれ異なる中で、バンドとしてメンバーをつないでいるものってなんだと思いますか?
今村:それは本当になんでかわかんない。これがわかっていたら、もしかすると今みたいになっていないかもしれないし、よくないバンドだったかもしれないなと思います。音楽好きのお客さんが、ジャムファズのことを知らなかったとしても聴いて好きになってくれるように、すごい何かの理由があるということではないような気がします。そりゃ「売れたい!」とか「テッペンとりたい!」という気持ちはありますけど、「かっけえ」みたいなのが一番大切なのかなと。
ーー「かっけえ」と感じるものがいっしょだと。
John:「かっけえ」がいっしょだけど、みんなの「好き」なものは同じじゃない。そこはいいことだなと思っています。いっしょすぎると、独りよがりになってしまうから、そうじゃないところが僕たちのバンドらしい、いいところだなと思いますね。
ーー「KABUKI」を筆頭にEPがリリースされて、8月からはツアーに。音源とはまた違うフィジカルをともなったどんなライブが繰り広げられるのかすごく楽しみです。
今村:ツアーを回るのは初めてなんで、どんな感じになるのか俺たちも楽しみです。
取材・文=大西健斗 撮影=高村直希

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