藤原祐規、役の原動力を探り物語を繊
細に紡ぐ!「RAMPO in the DARK」第
三弾で江戸川乱歩の世界へ誘う

江戸川乱歩の耽美な世界観をリーディング公演として上演してきた「RAMPO in the DARK」。その第3弾となる『リーディングシアターVol.3「RAMPO in the DARK」』が6月22日(水)から26日(日)に開催される。「疑惑」「陰獣」の2作を、23名の豪華出演者が、神田明神という日常から離れた空間を舞台に乱歩の世界へと誘う本公演の初日には藤原祐規が登場。2020年開催の初演に続き2回目の参加となる藤原に、公演の見どころや江戸川乱歩が紡ぐ物語の魅力、代永翼、小林ゆうとの共演への期待、タイトル「RAMPO in the DARK」にちなみ「暗闇」にまつわるエピソードを聞いた。

――前回は無観客でしたが、今回は有観客開催です。心境に違いはありますか?
前回はコロナの影響を受けて、無観客の配信のみでした。客席を全部潰して、会場にいるのはカメラとスタッフと僕らだけ。開演前のアナウンスもなければ、お客さんの雑談も聞こえない。そんな中で、「スタンバイお願いします」と促されステージに上がり、揃ったところで「じゃあ、本番参ります」とスタート。映像の仕事をしている感覚でした。お客さんの反応もないので、空気の移り変わりも感じられず、相手役と自分だけでやっていくしかない。逆にすごく新鮮な体験をさせてもらったとは思うのですが、今回は有観客と聞いて、やっぱり心が弾む感じがあります。お客さんの空気が変わるのを感じられるくらい、余裕を持って挑みたい気持ちはありますが、どうなることやら…(笑)。
――観客を前にして、久しぶりの感覚にテンションが上がってしまうなんてことも耳にします。
それはすごくあると思います。僕たちもそうですし、お客さんも「待ちに待った」とテンションが上がると思います。ステージでお客さんの反応を肌で感じられるのが本当に楽しみです。
無観客開催となった初演時の様子も振り返った
――江戸川乱歩の物語にはどのようなイメージを持っていますか?
お恥ずかしいのですが、読書をする習慣があまりなくて、江戸川乱歩というと「名探偵コナン」の中で名前を見たミステリー小説の人というイメージが強くて(笑)。作品に触れたときの第一印象は「こんなに狂っているとは思わなかった」です。一般的には理解されないから狂っていると思われるけれど、本人は別に狂っているとは思っていない。だから役作りが難しいんです。でも、できた時のうれしさは格別で、ハイリスク・ハイリターンな作品でとてもやりがいがあります。
――今回の物語は「疑惑」「陰獣」です。どんな印象がありますか?
前回は「白昼夢」「人間椅子」「赤い部屋」の短編でしたが、今回はやや長めの中編です。前回はキャラクターの異質さを表現することで持っていけた部分もあるのですが、今回は長い分、より繊細に物語を紡いでいかないと、作品が持っている本当の面白さや怖さ、耽美さも含めて伝えるのが難しいと感じています。稽古を大事に、そして稽古から本番までの時間も大事にしたいと思っています。緊張して余裕がなくなる可能性もありますが…。読んだ印象と演じて感じさせるのとは全然違うので、ロジックとしてちゃんと芝居を組み立てていきたい気持ちはあります。
「初日でよかった」と語った藤原。その理由とは?
――江戸川乱歩作品の魅力でもある独特の言い回しや、台詞をどのように感じましたか?
現代劇のストレートプレイなら口語に近いので、自分の経験から引っ張れる情報量が多い。でも、例えばシェイクスピアなどの戯曲になってくると、自分とはかけ離れているので、そのままやってはリアリティの面で欠けてしまう。江戸川乱歩の独特の言い回しは普段使わないから、自分の経験から出してくるのは難しい。なので、テクニックやロジックとして深く作り込むことが必要になると考えています。
――経験から出せないものでも、例えば自分の中にある要素を引っ張ってくるみたいなことはあるのでしょうか?
こんな変態的で狂った部分は持ち合わせていないので(笑)。そういうときは、アプローチとしてこの人の原動力はどこからきているのかを探ります。第一弾の「白昼夢」でもこの人のエネルギーはどこからくるのか、その理由を探りました。その理由が見つかったとて、感じたままをやっても異質さは出にくいんです。舞台だったら、稽古の中でどんどん足していくこともできるけれど、今回のように稽古も本番も1回という公演ではそれができません。相手役との掛け合いでふっと掴める場合もありますが、前回の経験を踏まえると、掛け合いで導き出されるというよりは一人一人が強固な世界観を持ち寄って繋いでいくというイメージ。その場で化学反応が起きるのを期待するというよりも、じっくり煮詰めていく感覚です。
共演予定の代永翼、小林ゆうの印象も明かした
――代永さん、小林さんとの共演への期待をお聞かせください。
二人ともアニメでの共演経験も多くて、よく知る仲。代永くんは共演した『曇天に笑う』や『おおきく振りかぶって~夏の大会編~』など、かわいいキャラクターの印象が強く、「代永くんが乱歩?」みたいな驚きがあります。だからこそ、どうやってくるのかがすごく楽しみですし、彼が何もやってこないはずがない。期待しています。小林ゆうちゃんは、「その切り口でくる?」というイメージが強い女優さん。第二弾でも「ものすごいかまして帰りました」という話を聞いています。なので、今回も絶対何か仕掛けてくるはず。
ただ、かますタイプではなく、原動力を探り、理由を見つけ、詰めていった結果、なにかを仕掛けてくる二人なので、相当怖くもあり楽しみでもあります。僕はなにか仕掛けようという気持ちはないです。あの二人に引っ張られてやってしまったら100%失敗します。深く考えず、自分の信じる道で深く役を掴み、予測不能なものが飛んできていい化学反応が起きればいいな、という気持ちでいます。思いっきり投げて、思いっきり受け止める、そんな感じで挑みます。稽古と同じことはやってこないはずだから(笑)。
――組み合わせによって物語の印象が変わるのもおもしろさのひとつ。前回は2つの組に参加していらっしゃいましたが、藤原さん自身が感じた違いはありましたか?
全然違いました。空気感も受ける印象もまったく別物になるので、もっとやりたいと思いました。同じ組み合わせで深めていくのもいいし、違う組み合わせで新鮮味を味わうのもいい。いろんな何かをバシバシ浴びている感じがして、演じる側もとにかく楽しいし、お客さんも「もっと観たい」という気持ちになると思います。
実は暗闇が好き、なことも明らかに
――初日に登場のプレッシャーはありますか?
正直、気は楽です。例えば千秋楽とかだったら、「あの日の公演の○○さんがすごかった」という情報が入ってきがち。だけど、初日なら「今日から始まります、よろしくお願いします!」という雰囲気でできるので、プレッシャーを感じることなくのびのびやれる気がします。
――規制も徐々に解除され、舞台の世界も徐々にコロナ前に戻りつつある状況下で、多くの舞台に関わる中で藤原さんが感じていることを教えてください。
延期・中止はやっぱり嫌ですよね。でも、そうなってしまったら仕方がないと思えるようになりました。残念な気持ちは消えないけれど、誰も責められないですし。第一弾のような新しい試みができたのも、経験としてよかったと思っています。何より、体調に気をつかうようになりました。手洗い・うがいだけでこんなにも風邪予防になるんだとか。1本の舞台がなくなることで、どれだけ多くの人に影響が出るのかも実感できたし、公演を最後までやって作品を届けられることの素晴らしさ、特別さをより考えるようになりました。
今までは千秋楽になると「このセリフはもう二度と言うことはない」と自分の中で感慨とともに消化する気持ちがあったのですが、コロナ禍では公演が延期や中止になる中で台本を手に「このセリフを二度と言うことはないかもしれない」という気持ちが湧いてきて。台本があること、セリフが言えること、すべてのことにより感謝するようになりました。
アプローチは”原動力”を探ることだそう
――最後に。タイトルにちなみ「暗闇」にまつわるエピソードを伺いたいなと。
明るい光があまり好きではないので、お酒を飲むときは間接照明にしたり、テーブルに豆電球のランタンを置いています。カーテンを開けて夜景が見えるようにするのもポイントです。舞台でも出番前には、集中するためになるべく暗い場所を探して準備をします。暗い役が多いのも理由かもしれないけれど、本番前に役の人生を思う時間を作りたいので、暗闇を探して考えるということはよくやっています。話していて気づきました、僕、暗闇好きです(笑)。
取材・文=タナカシノブ

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