​金属恵比須・高木大地の<青少年の
ためのプログレ入門>第30回 渡辺宙
明、金属恵比須に初の作曲指導!

金属恵比須・高木大地の<青少年のためのプログレ入門>

第30回 渡辺宙明、金属恵比須に初の作曲指導!

渡辺宙明、「青少年のためのプログレ入門」に再登場。『人造人間キカイダー』、『マジンガーZ』、『秘密戦隊ゴレンジャー』に始まる戦隊ヒーローシリーズなどアニメ・特撮の大ヒット作品を音楽で支えたレジェンドである。今年(2022年)8月で97歳を迎える日本最高齢の現役作曲家だ。近頃では『機界戦隊ゼンカイジャー』でも(大石憲一郎氏とともに)音楽を担当し再び注目を集めたのは記憶に新しい。
当連載では、宙明先生の生い立ち(第25回)と、“宙明節”といわれる先生独特の音楽の作曲法(第26回)について語っていただいた。それからすっかり“宙明節”の作曲法に魅せられ、宙明先生の音楽を研究し始めた。筆者にとってリアルタイムの宙明音楽は『大戦隊ゴーグルファイブ』、『宇宙刑事シャイダー』。よって70年代のアニメ・特撮主題歌集や『日活映画音楽大全』を集め、体に染み込ませる。ふと口ずさむ曲は「♪デンジマン、デンジマン」(デンジマン)や「♪我は、地獄のー、帝王バンバ」(キカイダー01)だったり。そんな毎日を送っていたある日、スリーシェルズ(日本作曲家専門レーベル)の西耕一氏から連絡が。
「4日後に宙明先生のアポイントが取れました。作曲指導を受けられるそうです。先生が高木さんの曲を添削します。それまでに1曲作っていただけませんか? 歌詞はあります」
え? 宙明先生が添削? マジか!
当時の日記にはこうある。
「ド緊張。受けて立とう!」
「受けて立とう」とはなんとも失礼な表現だが、とにもかくにもやる気に満ち溢れたのは間違いない。翌日の日記にはこう記されていた。
「プレッシャーで朝4時に目覚め、6時まで眠れず。二つの夢を見る」
夢はともに作曲に関してだった。一つは交差点を歩いていた山田タマル(シンガー・ソングライター、高校の後輩で在学中に彼女のソロ・アルバムに参加した)を呼び止め、楽譜を見せて、「どう? この曲、いいよね? ねえ? どう?」と、タマルの肩を揺さぶりながらひたすら同意を求める夢。苦笑いで困惑するタマル。
そしてもう一つは、当時タマルのソロ・アルバムのプロデューサーのスタジオに行き、デモ・テープを聴かせ、「どう? この曲、いいよね? ねえ? どう?」と、プロデューサーの肩を揺さぶりひたすら同意を求める夢。まあまあ落ち着けと諭すプロデューサー。――かなり弱気だったみたいだ。深層心理で承認欲求が爆発。というかまだ作曲に着手していないし。
夢から覚めてピアノの前に座り、2時間ほどで作曲したのが「星空に消えた少年」だった。前述の通り、歌詞はすでにできているからそれにメロディと和音を組み立ていく。楽譜に起こしコンピュータ上でデモ・テープを作成。金属恵比須のヴォーカル稲益宏美に仮歌を入れてもらい、完成。宙明先生の添削日まであと2日だが、いろいろ手直ししたりするも最初に作ったものに戻る。不安で仕方ないから修正していないと落ち着かないのだ。結局、最初の2時間で作ったもののままで宙明先生にお持ちすることになった。
なお、筆者が連載している『モノ・マガジン』「狂気の楽器塾」との連動企画であり、2022年6月16日発売号には、宙明先生と『ゴレンジャー』の録音秘話を掲載しているので併せてお読みいただければと思う。
それでは宙明先生の対談・作曲指導の始まりである。

――1年ぶりに対談していただきありがとうございます。昨年、宙明先生と私の共通点を語らいました。先生は府立三中(現・都立両国高校)ご出身、金属恵比須の稲益と私は旧・府立十中だった都立西高校出身です。旧制府立中学の大先輩として、当時の音楽の授業を教えていただければ。
渡辺宙明(以下、宙明) 普通の授業は歌を歌うだけだと思いますが、府立三中では「楽典」(音楽の理論書)を使用した音楽理論をひたすら学びました。そちらの高校ではどんな授業をされました?
―― 歌も歌いましたが、一番印象的だったのはシェーンベルクの12音階技法を習ったことでした。誰も理解できず……。
宙明 ちょっといきすぎですね(笑)。
―― ボディ・パーカッションで生徒ひとりひとりが違う拍子で叩いて最小公倍数で合うようなミニマリズムもやったりしましたよ。
宙明 アメリカの作曲家のスティーヴ・ライヒがやってましたね。
―― まさしくそれです。現代音楽はお好きでしたか?
宙明 ある時から好きでしたね。でも最初はクラシックから入りました。特にチャイコフスキーの「悲愴」。これは素晴らしかったですね。
―― いつ頃ですか?
宙明 作曲家になろうとした15歳の頃ですかね。中学3年の時ですね。
―― そうすると太平洋戦争前? 昭和15年(1940年)ですか?
宙明 ですね。その時は「作曲家になれるか」って悩みが多かったですね。
―― その時から作曲家になりたかったのですか?
宙明 はい。作曲家になりたかったからピアノを習い出しました。
―― 演奏者にはなりたいとは思わなかったのですか?
宙明 思いませんでした。楽器を弾くことはとても難しいですから。
―― 先生はピアノがとてもうまくて、発表会で弾いたらみんなが褒めてくれたというエピソードを聞いたことがあります。
宙明 いやいや(笑)。中学の時、シューベルトの「軍隊行進曲」を連弾で弾きました。告知なんてしていないのに15人くらいが見に来ました。先生までも見に来ました。不思議ですね。
―― 宙明ファンがその頃からいたんですね(笑)。それはそうと、作曲家になって活躍している時からファンの方と交流したりしていますよね。これはファンの方から呼ばれて参加することになったのですか?
宙明 京都で「マジンガーZ研究会」というのがあって講演を頼まれましたのです。また、女子高校から『マジンガーZ』についての講演も頼まれました。その頃はファンが勝手に家に遊びにきたりもしましたよ。
―― おおらかな時代でしたね(笑)。作曲家の弟子志望のファンとかいらっしゃいましたか?
宙明 いましたけど、弟子は取りませんでした。作曲を教えたりはしたことはありませんね。
―― 本当ですか? 私は今から作曲指導を受けるのですが初めてのことなのですね。
宙明 はい。今日は特別ということで。聴かせてください。
〜「星空に消えた少年」を流す〜
【動画】金属恵比須『星空に消えた少年』(初披露LIVE ver.)

宙明 曲は悪くないと思います。
―― イントロはプログレ風なものを作ってみました。
宙明 プログレっぽいとは思いませんでしたけど(笑)、いいんじゃないですか。
―― あえて例えるなら何風ですか?
宙明 知りません(笑)。
―― 宙明先生がイントロをつけるとしたらどうなりますか?
宙明 余計なこと聞かないで(笑)。歌のメロディはよく作ってますね。私がこの歌詞で作るならどうするかを考えたのですが、イメージがなかなか湧かなかったんですよ。
―― 印象的になるように力を入れたのは、サビの歌詞「♪銀色のロボット」の部分です。印象的な曲を作り続けている先生だったらどのようなリズムとメロディにされますか?
宙明 それをいっちゃうと僕の曲になっちゃうから(笑)。この歌詞自体に曲をつけるのが難しかったな。よくメロディをつけられましたね。僕は発想を持てませんでした。「ある日届いた一通の手紙」という歌詞の内容だとメロディがつけにくいですね。「♪ある〜ひ〜」(実際に歌ってみせる)みたいな明るい感じにはできないんですね。
――低い声で淡々と?
宙明 語り調で作るのが最善でしょうね。まあまあ曲はいいんじゃないでしょうかね。曲はいいですが、歌にヴィブラートがないんじゃないですか?
稲益 かけるのがあまり得意ではなくて……。
宙明 歌の指導は僕の領域ではないけれども、あえていうならメロディが平凡になってしまうのでヴィブラートはかけた方がいいですね。あと発声練習もしっかりしてください。プログレ・バンドとして存在感のある声を身につけてください。高木さんはリーダーとして歌もしっかり監修してください。
――かしこまりました。宙明先生は今まで歌唱のアドバイスをしたりしていましたか?
宙明 水木一郎さんも堀江美都子さんも正確にそのまま歌うから何もいいません。「ここをこうした方がいいのでは?」とはいいますけど、歌の根本を治すことはありませんね。熟練の技をお持ちですから。
――歌手が歌いにくいから直したいといってくることは?
宙明 ありません。歌手が歌えるように作ってますから。
――ということは、歌手(稲益宏美)がちゃんと歌える曲を作っていないということが、この曲での一番の失敗になりますでしょうか(笑)。
「星空に消えた少年」高木大地自筆譜

後日、宙明先生からコメントをいただいた。最後にそれを掲載したい。
「私は人に指導するようなことはしたことがないのですが、今回、田野倉さんの作詞を高木さんが作曲するということで参加させていただきました。あまり私のやったことのない系統の詞だったもので悩みましたが、詞についても曲についても、屈託のない意見を言わせていただきました。結果、たいへん素晴らしい作品に仕上がったと思っています。金属恵比須の皆さん、お疲れ様でした。この曲が、多くの方に聴いてもらえることを願っています。」(渡辺宙明)

取材協力:
西耕一(スリーシェルズ)
田野倉健之(スリーシェルズ)
稲益宏美(金属恵比須)

参考文献:
『作曲家 渡辺宙明』渡辺宙明述、小林淳編、ワイズ出版、2017年
『スーパーアニソン作曲家 渡辺宙明大全』腹巻猫&宙明サウンド研究会著、辰巳出版、2019

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