INORAN

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【INORAN インタビュー】
“伝えたい、共鳴したい”
という想いが大事なんじゃないかな

実は音楽人としての
自分のキャラが詰まっている

シンディ・ローパーの「Time After Time」のカバーも、傳田さんとのかけ合いを含め最高でした。

たくさんの人がカバーしているスタンダード中のスタンダードで、途切れることなく聴く歌じゃないですか。どの人が歌ってもすごく素晴らしい歌だし、いつか歌ってみたいと思っていて、プレイしてみたかったんですよ。Billboardのライヴではカバー曲もやっているし、今回はこの曲がいいかなと思って選びました。

INORANさんが初めて買ったレコードもシンディ・ローパーの作品でしたよね。

そうですね。シンディ・ローパーのデビューアルバム(『She's So Unusual』)です。

思い入れの深いアーティストだと思いますし、彼女には他にも名曲がありますよね。

うん。「True Colors」とかもあるよね。

「Time After Time」は過去を振り返る視点の、切なさにあふれた歌詞で。この選曲にINORANさんのどんな気持ちが投影されているのか想像を巡らせていました。

自分の曲はポジティブな曲が多めなので、例えば失恋の曲もそれほどないし、歌詞のコントラストとしてはすごくいいと思って。まぁ、やってみた結果ですけどね。

先ほどLUNA SEAのお話も少し出たんですけど、アルバム『CROSS』を携えた波乱万丈の30周年ツアーでは、声帯に不調を抱えていたRYUICHI(Vo)さんをサポートするかたちでINORANさんが相当ヴォーカルを担われていて。歌うことによって人を支えてきた、そんな2年超の時間が反映されているアルバムだと感じたんです。

そうかもね。このために、それをさせられていたのかもしれない。

神が与え賜うた経験だったんでしょうか?

…って、思っちゃうぐらいだよねぇ(笑)。

1997年にソロ第1作『想』を出されて、今年で25周年。20周年以降のこの5年間は、歌に対する向き合い方が特に大きく変わった期間だったのではないかと。世界情勢も激動していますが、まずはヴォーカリストとしての意識、進化という点に絞ってだと、どう感じておられますか? 大きな躍進をされたのではないでしょうか?

自分では分からないですけどね。それは自分以外が思ってくれることなので。“あ、掴めたな”と思ったら逃げていく。逃げていくけど、“あ、また掴めそう”という気がするから追いかける。思うようにいかない恋愛みたいなもんですよ(笑)。

押したり引いたり、駆け引きしなければいけないような?(笑)

まぁ、それが楽しいんだと思うけど(笑)。“歌というのは恋なのかもしれない”と思えたら最高なんですけどね(笑)。でも、ひとつ言えるのは、歌がそんな自分を育ててくれた。ギターだけを弾いていたら、たぶんここまで来られなかったと思う。だから、歌に対して感謝しかないし、お返しもしたいよね。

歌がINORANさんを導いてくれたという感覚ですか?

最初は、やらざるを得なくて…まぁ、今だから言うけど、嫌だったのにやらされて(笑)。でも、やっぱり途中もすごく嫌で。どうしても比較対象が河村隆一だったから…それは自分自身の中でもね。だけど、だからこそ見えた景色もたくさん、本当にたくさんあるし。なので、結果としては良かったです。さっきの話に少し戻るけど、LUNA SEAのライヴではいろんなことがあって…

不調と全身全霊で戦うRYUICHIさんを、INORANさんはまるでセカンドヴォーカリストのようにアシストなさっていました。コロナの感染防止対策でオーディエンスが発声できない状況で、それを補うコーラスもINORANさんが率先してなさっていましたね。

歌える立場の人が歌を躊躇していてはいけないというか…歌いたいのに歌えない人、叫びたいのに叫べない人もいるからこそ、自分はそれをできる立場にいるんだからやらなきゃいけないという想いはありますよね。それは自分の歌う理由のひとつになったし、この2、3年でその想いはより強くなったと思います。“歌えるんだから歌おうよ”と。

そう考えますと、今回のアルバムは“企画モノの作品を一枚作りました”という位置づけに留まらず、INORANさんが歌と向き合ってきた歴史、LUNA SEAの活動も含め、これまでのキャリアをギュッと凝縮して映し出している作品になっている気がします。

そうですね。Billboardでレコーディングするなんて変則的かもしれないと思いながら、意外に“実は音楽人としての自分のキャラが詰まっていたんだ”とは感じるよね。

INORANさんの本心を聴かせてもらっているような温かい作品だとも思いますし。

でも、眠くならない?(笑) 俺、夜に聴いてると必ず寝ちゃうんだよね。最後まで聴けたことがない(笑)。まぁ、夜中でお酒を飲んでるからというのもあるんだけど(笑)。

理由はそれだと思いますよ(笑)。

運転中には絶対に聴かないほうがいいと思う(笑)。

あははは! いえいえドライヴにもぜひ! それだけ気持ちが良いアルバムということだと思います。

そうかな? 97年に最初にソロ作を作った時に言われたんですよ、α波か何か、眠気を誘う何かが出ているから、運転中に聴かないほうがいいって。たぶん歌声とか曲のムードだと思うんだけど。だから、それに反発して『Teardrop』(2011年4月発表のロック色の強いアルバム)を作ったんだよね(笑)。そういうきっかけは大事だったりもするんだけど。

(笑)。これまであまり周年を意識してこられなかった印象のあるINORANさんですが、20周年とはまた違った想いは、この25周年に対してありますか?

やっぱり25周年もそうですし、20周年、30周年というのも強いポイントだし、その周りに付随する物語が最近はドラマチックなので、あとに残っていく周年なんだとは思いますね。何をするとかしないとかは、これから決まっていくことなんですけども。例えばLUNA SEAのツアー延期とか、コロナ禍があったから、Billboardでのセッションをやろうという話も導き出されたんだろうし。なかなか意味のある周年になりそうですね。

時世的にも今は傷ついたり疲れたりしている人が多いと思いますし、今作はそこに染み渡るような作品でもあると感じます。そういった時代性についてはどうお考えですか?

そうですね。そういう“風”を読む音楽人でありたいし、ドンピシャではないかもしれないけど、もちろんそれは心がけて制作するし、進むべき道は意識しますね。

タイトルにある“IN MY OASIS”という言葉はどのタイミングで出てきたのですか?

これをやろうとなった時、“Billboardという場所は自分にとって何だろう?”と考えて。想いを掘り起こしていって、“あっ、この言葉いいな”と辿り着いた言葉です。

砂漠の中の湖のように、大切な場所ということでしょうか。それが初期段階でキーワードとしてあって、プロジェクトが具体的に進んでいったと。

うん。そうですね。

冒頭で申しました「バッハの無伴奏チェロ組曲」のほか、「アヴェ・マリア」、あとは「タイスの瞑想曲」も弦アレンジから個人的には想起したのですが、オペラ『タイス』の砂漠のイメージともリンクします。生楽器によるセッションを空気感ごとパッケージし、生身の人間らしさ、愛、肉体性の尊さを感じとれるアルバムになったのではないでしょうか?

クラシック楽器の響きって…和楽器でもそうなんですけど、替えの効かないものであり、一瞬にしてその世界へ誘ってくれるんですよね。ヴァイオリンもチェロもピアノもそうなんですけど、この間、和楽器のライヴを観に行ったんですよ。琴とか強烈に和を感じて、おせちを食べたくなるみたいな(笑)。胡弓を聴けばパンダが笹を食べているところがすぐ浮かんだり、それってすごいなって。Billboardでそういった弦楽器…替えの効かないパワフルなものの隣で共鳴できるというのは、自分としてはすごく幸せなことだと思います。

ヴァイオリンもピアノも素晴らしいんですけれども、INORANさんの曲はチェロとすごく合うと改めて感じました。

俺の声がローミッドだからね。

その相性の良さもあるのかもしれませんね。

2CHELLOSみたいな感じで僕も弾けたらいいんですけどね(笑)。

(笑)。7月と8月には東横阪のBillboardでライヴをされますね。

あのBillboardの空間だけではなく、そこに向けての布石となるものがこのアルバムで作れたと思うので、まずは家で聴いてもらって。完成させた僕ら自身も、またそこをさらに膨らませていく、そんな想いでやれたら、もっと掛け替えのない時間になるんじゃないかと思っています。

楽しみにしております!

本当に楽しみですね!

取材:大前多恵

アルバム『IN MY OASIS Billboard Session』2022年6月29日発売 KING RECORDS
    • 【通常盤】(CD)
    • KICS-4067
    • ¥3,300(税込)
    • 【完全生産限定盤】(CD+Blu-ray+写真集)
    • NKCD-6974
    • ¥14,300(税込)
    • ※LP SIZE デジパック仕様
    • ※KING e-SHOP 限定販売(e-SHOP限定特典付)

ライヴ情報

『INORAN IN MY OASIS Billboard Session』
7/09(土) 東京・Billboard Live TOKYO
7/10(日) 東京・Billboard Live TOKYO
1stステージ:開場15:30 開演16:30
2ndステージ:開場18:30 開演19:30

7/27(水) 神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
7/28(木) 神奈川・Billboard Live YOKOHAMA
1stステージ:開場16:30 開演17:30
2ndステージ:開場19:30 開演20:30

8/02(火) 大阪・Billboard Live OSAKA
8/03(水) 大阪・Billboard Live OSAKA
1stステージ:開場16:30 開演17:30
2ndステージ:開場19:30 開演20:30

INORAN プロフィール

イノラン:国内にとどまらず、世界に活動の場を拡げるLUNA SEAのギタリスト。1997年よりソロ活動を開始、現在迄にフルアルバム10枚以上をリリースする等精力的な活動を行なっている。LUNA SEA、ソロの他にもTourbillon、Muddy Apes等多岐に渡るプロジェクトで音楽活動を鋭意展開中。ソロ活動20周年を迎えた17年8月にセルフカバーベストアルバム『INTENSE/MELLOW』を、LUNA SEAが活動30周年を迎えた19年8月にはオリジナルフルアルバム『2019』を発表。そして、20年9月に『Libertine Dreams』、21年2月に『Between The World And Me』、同年10月に『ANY DAY NOW』と三部作となるアルバムをリリース。INORAN オフィシャルHP

『IN MY OASIS』Digest Trailer

「PREMIUM ACOUSTIC LIVE
-NO NAME? LIMITED DAY-
2022.03.14 Billboard Live TOKYO」

OKMusic編集部

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