SPICE注目のOSKスター4名、最終回目
前の連載企画に登場ーー『OSK Star
Keisho』【特別編】でトップ楊琳と質
問バトンも繋ぐ

2022年に、創立100周年を迎えたOSK日本歌劇団。1月より桐生麻耶(きりゅうあさや)のインタビューから始まった連載企画『OSK Star Keisho』が早くも最終回となる第6回を迎える。その前に、初めて2月に同劇団の舞台を鑑賞してすっかり虜になったSPICE編集担当が『レビュー 春のおどり』で目を奪われた、スター4名による特別編をお届けしよう。登場するのは、これからの活躍が嘱望される実花(みはな)もも、壱弥(いちや)ゆう、朔矢(さくや)しゅう、そして唯城(ゆしろ)ありすの4人だ。OSKの100年のこと、男役トップスターとして劇団を束ねる楊琳(やんりん)のこと、7月より京都の南座にて始まる『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー in Kyoto」』のことなどをインタビュー。また、楊からそれぞれに向けた質問にも答えてもらった。各インタビューの最後に、それぞれが楊におねだりしたポーズでのツーショットとともに質問バトンを掲載しているのでお見逃しなく。
『OSK Star Keisho』
まずは大阪松竹座、新橋演舞場で行われた『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー 春のおどり」』の第二部「INFINITY」に出演。「花の馬車に乗って」で穂香(ほのか)めぐみとともにレビューガールAを演じ、ラインダンスのセンターで美声も披露した。さらに『レビュー in Kyoto』では蜜虫役を唯城ありすとダブルキャストを勤めるなど、躍動する実花ももからスタート!
実花もも「全てにおいて自分のベストを尽くしたい」
実花もも
――OSKの100年という時間を、どのように受け止めていらっしゃいますか?
私はちょうど90周年のときに初舞台を踏んだのですが、そのときに歴代のトップさんやOGの方がいらっしゃっていて、OSKの歴史を紡いでくださった方がこんなにもいらっしゃるんだと感動しました。こんな素晴らしい劇団に自分がいるんだ……という気持ちになって。95周年、100周年と、まさか自分がここまでいるとも思っていなかったのですが、こんな節目の年に在籍できることが本当に光栄です。
――では、男役トップスターの楊さんについてお聞きします。実花さんからご覧になって、楊さんはどんな先輩ですか?
私は桜花昇ぼる(おうかのぼる)さん、高世麻央(たかせまお)さん、桐生麻耶さん、楊さんと、男役トップスターさんの4つの時代を経験させていただいています。皆さんそれぞれOSKの守り方も違っていたように思いますが、その中で楊さんは学年も一番近く、ずっとお背中を見ていたので、トップさんになられたときは心から嬉しかったです。下級生の私達にもとてもフレンドリーにコミュニケーションを取ってくださって、いつも気取らず、自分自身に向き合って舞台に立っていらっしゃるお姿を見て、「こんなふうに頑張っていらっしゃるのだから、支えたい」と自然と思うようになりました。
――どう支えたいと思われますか?
私は学年が上がるにつれて場面のまとめ役になることも多く、今までたくさんのことを経験させていただきました。トップさんが輝くためにも周りがどれだけその場面を表現するか、お客様に伝えられるかが大切です。そのうえで自分が下級生をまとめて、良い場面にするということが「支える」ことになるのかなと思います。
――楊さんの背中を見てこられたとのことですが、トップになられた時に何かお話をされましたか?
楊さんがトップさんになられたときに一度、お話したことがありました。そのとき、「何事も覚悟」とおっしゃっていて。下級生の私にお話してくださったこともすごく嬉しかったですし、私には完璧なトップさんに見えても、ひとりの人間として戦っていらっしゃるとわかり、私も頑張らなくてはと思いました。
実花もも
――ほかにも先輩方からいただいた印象的なお言葉はありますか?
私は下級生のときから上級生の方にとてもよく面倒を見ていただきました。こう見えて不器用なので、それもわかったうえで皆さんが指導してくださったり、気にかけてくださったりしました。今でもそうなのですが、ここまで来ることができたのは上級生が引き上げてくださったからだと感じています。なのでたくさんありすぎて……。一緒になって悩んでくださったり、つらいことがあったら一緒に泣いてくださったり、笑ってくださったり、本当に温かい上級生ばかりです。ここまで私がやってこれたのは先輩方のおかげだと思っています。時には厳しいお言葉もいただきますが、それも全部自分のものになっています。
――入団からこれまで、ご自身のターニングポイントはありましたか?
入団して10年になりますが、ターニングポイントは学校生のときでした。私は学年のトップをさせていただいていたので、十何人をまとめなくてはいけなかったのです。実習で初めて舞台に出たときには、当時のトップさんの高世さんから数えきれないくらい、たくさんのことを教えていただきました。本音を言うと、しんどい時もあったのですが、そのしんどさを超えて舞台に立ったとき、大変な思いをするからこそお客様に観ていただき、喜びを感じられる。「これが舞台なんだ」と感じました。
「花の馬車に乗って」 (c)松竹
――100周年の『春のおどり』では、第二部の「INFINITY」で「花の馬車に乗って」という伝統ある楽曲を歌われました。
まず、95周年の節目の年にセンターをさせていただいてから、ラインダンスでの出演自体が5年ぶりでした。95周年のときは、「初めての、しかも歴史あるOSKのラインダンスのセンターを私が任せてもらってもいいのだろうか」と、責任感とともに、もう必死でした。そして今回、100周年で再びラインダンスをさせていただけると知り、5年ぶりで不安も大きかったのですが、お稽古をする中で、学校生時代にトップさんから教えていただいた言葉を今の下級生たちに言っていて。そのことに気づいたとき「これが歴史を紡ぐということなんだ」と実感しました。まだまだ力不足ですが、自分が持っているものをできるだけ下級生に渡したいですし、これからの100年も「やっぱりOSKはラインダンスだよね」と言っていただけるようになればいいなと思います。
――では、7月の南座での「INFINITY」の意気込みを教えてください。
南座では初舞台生も参加するので、さらに一致団結して、その時の「花の馬車に乗って」をお見せできたらいいなと思っています。「花の馬車に乗って」からのラインダンスはOSKの歴史を感じられる場面ですので、歴々のOGの方の思いも背負っているという気持ちで、もう一度、腹を括って向き合いたいと思います。
楊琳(左)と実花もも
●楊と実花の質問バトン●
――実花さんへ、楊さんからご質問をいただいております。楊さんからは「舞台に立つ上でのこだわりは?」とのご質問です。
まず、娘役としてはどんなときもキラキラと輝いていたいです。また、お客様はその時のOSKをご覧になっているので、ベストな状態を見ていただきたいといつも思っています。毎日、毎日、コンディションがいいというわけではなく、場面にたくさん出れば出るほどコントロールも難しくなると思いますが、全てにおいて自分のベストを尽くしたいと思います。
――最後に楊さんへのご質問をお願いします。
そうですね……それこそ楊さんが一番気にかけられていることが知りたいです。いつもどんな思いで舞台に立っていらっしゃるんだろうと純粋に気になります。
楊琳より
「お客様に何がなんでも楽しんでいただく!!」と決めて立ってます。そして、先生方、スタッフの皆様含めて「皆」で力を合わせて大切に作り上げた作品を「観て欲しい!」とも思ってます! あとは「集中!!!!!!!」です(笑)。
2ページ目には中性的な声が魅力の男役スター、壱弥ゆうが登場。
壱弥ゆう
●『OSK Star Keisho』
2022年に創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団(以下、OSK)。大きな節目を記念した、スター達に質問の「バトン」を用意してもらい、次のスターへと繋ぐリレー形式のインタビュー連載企画。
第1回:「唯一無二の男役」元トップスターの桐生麻耶が登場

第2回:楊琳、先輩の大貴誠や桐生麻耶からもらったお守りのような言葉とは
第3回:翼和希、「芸事は正解がないからこそ、誰かに認めてもらうと自信に繋がる」
第4回:舞美りらと千咲えみが見せた、互いへの尊敬「OSKは継ぎ足されてきた「秘伝のソース」みたいな劇団」

第5回:椿りょう、頼もしい団員達に囲まれ初の役柄獲得へ、OSKの強みは「何事にも屈しないこと」
続いては、入団8年目の男役スター壱弥ゆう。『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー春のおどり」』第一部「光」第三章「光の巻」では、「月の海」の場面で華月奏(はなづきそう)と共に「瞬きの声」の役を勤めた壱弥。自身の声にはコンプレックスがあったと涙ながらに語ってくれた。
実花もも→こちら
朔矢しゅう→こちら
唯城ありす→こちら
壱弥ゆう「この声は、私の強み」
壱弥ゆう
――まず、OSK100年の時間を、壱弥さんはどういうふうに受け止めていらっしゃいますか?
私はまだ入団8年目なので周年公演への出演経験はありませんでしたが、研修生のときに「90年史」を読んでいました。またOGの方と当時のお話を聞かせていただいた時に、私もそんな歴史ある劇団に所属させてもらっているんだなと、温度感を持って実感しました。
――では、壱弥さんからご覧になって、男役トップスターの楊さんはどんな方ですか?
私がもっと下級生のとき、初めて「ジャストダンス」に出させていただいたのですが、ジャズの曲が難しくて「どうしよう大変だ!」となってしまいました。そんなとき、お稽古で楊さんが椅子の上に立って、指揮者みたいな感じでみんなにダンスを教えてくださいました。みんなの気持ちがどんどん上がっていったのも印象的で。また、今年の大阪松竹座、新橋演舞場での『春のおどり』では、第一部の「光の巻」で楊さんをセンターにした男役7人による群舞の場面にも出させていただきました。たまたま楊さんの近くで踊らせていただくことがあったのですが、楊さんが出される陽の気や、舞台の空気を動かす姿を間近で見ることができて感激でした。
――入団から8年の間に、一番成長したと思う出来事やターニングポイントになったなと思う時期はありますか。
桐生さんの男役トップスターお披露目公演『レビュー春のおどり「春爛漫桐生祝祭/STORM of APPLAUSE」』の、「Cheek To Cheek」という歌で初めて(舞台袖で歌う)影ソロを何小節かいただき、ひとりで歌わせていただきました。しかも録音じゃなく、毎回袖で歌わせていただいたのです。最初に楽譜をいただいたとき、担当する小節に「壱弥」と名前が書いてあって。もうびっくりして、「これはひとりで歌うということですか?」と伺ったら、「そうです」と。後々、編曲をされた先生になぜ私だったのかとお聞きしたとき、「フェアリーな声が欲しかった」、「中性的な声が欲しい」と言っていただけ、本当に「ああ、良かったな」と……(涙)。元々、歌がすごく好きで頑張りたいという気持ちはあったのですが、「もうちょっと男役らしい声は出ないの?」と言われることもあり、無理やり喉をつぶして低い声を作ろうと思っていた時期もありました。でも、「男役でも高いパートが歌えるこの声は強みなのかな」と思えるようになったのは、「Cheek To Cheek」がきっかけだったと思います。
「黒のINFINITY」 (c)松竹
――7月の南座では3度目の「INFINITY」にご出演されます。
大阪松竹座のときよりも新橋演舞場、新橋演舞場のときよりも南座と、どんどんパワーアップしていきたいと思っています。「黒のINFINITY」では、ブラックマンバとして娘役トップスターの舞美(まいみ)りらさんと組ませていただいています。「黒のINFINITY」は、それまでのラテンの明るい曲から急に大人っぽく、セクシーな雰囲気にガラッと変える役割を担っているので、舞美さんがよりきれいに、よりセクシーで魅力的に見えるように表現したいと思っています。自分も色気を出しつつ頑張りたいです。
楊琳(上)と壱弥ゆう (c)松竹
●楊と壱弥の質問バトン●
――では楊さんからのご質問を。壱弥さんへは「男役として舞台上でどうありたいですか」とのことです。
「INFINITY」の振付の先生が「個性は絶対消えないから、他の表現をもっと深めていった方がいい」と言ってくださいました。また、「みんなの中にいて自分がどう見えるか、自分はこの絵面の中にどういるのかを、客観的に見られるようになったらいいよね」ともおっしゃいました。なので、映像を観るときも「この中で自分はどういう役割をしているのかな」と考えるようにしています。
――最後に、楊さんに聞いてみたいことは何ですか?
すごく悩みますね……(笑)。どうしよう。楊さんは指の先までとても綺麗な印象があり、いつも空気を動かして踊っていらっしゃるように思います。それは何か意識をされているのか、それとも思ったままに踊っていらっしゃるなかから出る雰囲気なのか……。いつも不思議だなと思って拝見しているので、「踊られているときに何を考えていらっしゃいますか」と伺ってみたいです。
楊琳より
場面によるかなぁ……基本は舞台上で「すべて末端まで見られている」と気は抜きませんが、思ったままに表現した方が良い場面もあるので、そういう時は「わーーー!」とやっています(笑)。でも言ってくれた通り、指の先や空気を動かしたり、空間を何よりも意識して踊ってます!
3ページ目には身体能力の高さで会場を沸かせる男役スター、朔矢しゅうが登場。
朔矢しゅう
●『OSK Star Keisho』
2022年に創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団(以下、OSK)。大きな節目を記念した、スター達に質問の「バトン」を用意してもらい、次のスターへと繋ぐリレー形式のインタビュー連載企画。
第1回:「唯一無二の男役」元トップスターの桐生麻耶が登場

第2回:楊琳、先輩の大貴誠や桐生麻耶からもらったお守りのような言葉とは
第3回:翼和希、「芸事は正解がないからこそ、誰かに認めてもらうと自信に繋がる」
第4回:舞美りらと千咲えみが見せた、互いへの尊敬「OSKは継ぎ足されてきた「秘伝のソース」みたいな劇団」

第5回:椿りょう、頼もしい団員達に囲まれ初の役柄獲得へ、OSKの強みは「何事にも屈しないこと」
次に登場するのは男役スターの朔矢しゅう。大阪松竹座、新橋演舞場で開催された『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー春のおどり」』の第一部「光」では、歌舞伎に出てくる宙返り「とんぼ」を見せるなど、身体能力の高さでも会場を沸かせ、惹きつけた。
実花もも→こちら
壱弥ゆう→こちら
唯城ありす→こちら
朔矢しゅう、常に意識している「やるしかない」
朔矢しゅう
――まず、OSK100周年の歴史をどのように受け止めていらっしゃいますか?
まさか自分がOSK100周年の舞台に立てると思っていませんでした。今回の『春のおどり』でも、毎回、新しいことに挑戦させてもらい、日舞では歌舞伎舞踊の所作や、洋舞でも荻田浩一先生の新しい作品にたくさん出させてもらい、毎回、新鮮な気持ちにさせてもらいました。毎年、受け継がれている「ジャストダンス」はまだ2回目ですが、伝統といいますか、形や雰囲気など受け継がれているものを教えていただくことがありました。上級生に教えていただいたことを下級生に教えていかなければいけないと思い、OSKの歴史の深さを場面で感じました。
――では、男役トップスターの楊さんの印象を教えてください。
オン、オフのない方だなと思います。お稽古場でも、舞台上でも楊さんは常に明るくて、陽の雰囲気が漂っていて。人間なので落ち込んだり、感情の起伏が出ることもあると思うのですが、そんな楊さんの姿を私は見たことがありません。お稽古ときも、みんなの気持ちがどうやったら上がるかということを大切にしてくださっています。「上級生の方の波に乗って」とよくアドバイスをくださるのですが、「春のおどり」では乗ろうとせずともみんなが楊さんのオーラに包まれている感じがします。舞台でも出そうとしなくても普段から陽の雰囲気が出ているように思います。
「光」
――100周年の『レビュー 春のおどり』の第一部「光」では、歌舞伎の動作であるとんぼを披露されましたが、YouTubeで研究されたそうですね。
お稽古が始まる前にとんぼをきる(前宙返りをする)場面があると伺い、できたらかっこいいんだろうなと思いました。技を先生に見ていただく時間もあると聞いたので、きっとみんなも練習してくると思い、また、できた方が場面も盛り上がるかなと思って挑戦してみたのですが、難しかったですね。
――マットを敷いて練習して?
お稽古場ではマットを用意してくださって、そこで練習させていただきました。家ではお布団を何枚も敷いて。ドンドンと音がするので母にも「何してるの」と言われました(笑)。
――では、上級生の方からいただいた印象的なお言葉はありますか?
「やるしかないね」と愛瀬光(まなせひかる)さんから言っていただき、そのお言葉を常に、どの公演でも自分の中で持っています。詰まってしまうことや、考えてしまうことなどいろいろありますが、本番はいつか来てしまうものなので、「やるしかない」を常に持って挑んでいます。
――愛瀬さんからはいつごろ、いただいたのでしょうか?
2年目のとき、愛瀬さん主演の「レビューカフェ」に出させていただいたときに、「本番はいつか来てしまうから、今がどうであれ、やるしかない」と。「今できなくても、いつかできるから大丈夫」と言ってくださいました。
――この8年、ご自身が成長できたなと思えたような、印象的な出来事はありますか?
常に、どの公演でも自分の中に壁はできるのですが、3年目にまた愛瀬さんの「レビューカフェ」に出させていただいたとき、思うようにできなくて、すごく苦しくて、私の中で一番大変な思いをしました。でも、そのときに愛瀬さんがたくさんご指導してくださって、当時は理解できないこともありましたが、「こういうことを言いたくて、愛瀬さんは言ってくださったんだ」と、今になって気づくことが多くありました。年数を経て、わかってきたといいますか。ただ、そのときはそのときで、訳もわからず頑張っていたので、「今、自分がいるのは、その公演があったからかな」と思います。
楊琳(右)と朔矢しゅう (c)松竹
●楊と朔矢の質問バトン●
――楊さんからご質問いただいております。「今後、どういう男役を目指したいですか」とのことです。
そうですね、OSKは、自分の中の男役は「漢」という漢字のイメージです。上級生の皆さんがそういう感じなので、自分もそうでありたいと思います。OSKらしい、土臭い感じの男役になれたらなと。また、踊りや歌など時代の流れを追いつつも、OSKがもともと持っているものをしっかりと身に着けて、頑張っていけたらなと思っております。
――最後に、楊さんにお聞きしたいことはありますか?
なぜそんなに、常に明るくできるのでしょうか? 普段も舞台に立っている姿そのままなのです。ただ、私が好きなアニメを楊さんも好きだったりして、そういうところを知ると楊さんも人間なんだなと思います(笑)。どこに行っても楊さんのワールドを持っていらっしゃるので、どうしたらそんなオーラを解き放てるんだろうかとお伺いしてみたいです。
楊琳より
そのまんまかなぁ(笑)。起伏は確かにないかもしれないですね、お稽古場……と言いますか「お仕事」しに来ている時、自分の機嫌は皆さんに関係無いので常に一定で在ろうと思っています。好きなアニメはね! 一緒なんだよね(笑)。発見した時とっても嬉しかった(笑)。好きなキャラクターは違うけどね(笑)。私も皆んなと同じ人間です!!(笑) オーラは……出てると良いな(笑)。
4ページ目には堂々たる佇まいで魅了する娘役スター、唯城ありすが登場。
唯城ありす
●『OSK Star Keisho』
2022年に創立100周年を迎えるOSK日本歌劇団(以下、OSK)。大きな節目を記念した、スター達に質問の「バトン」を用意してもらい、次のスターへと繋ぐリレー形式のインタビュー連載企画。
第1回:「唯一無二の男役」元トップスターの桐生麻耶が登場

第2回:楊琳、先輩の大貴誠や桐生麻耶からもらったお守りのような言葉とは
第3回:翼和希、「芸事は正解がないからこそ、誰かに認めてもらうと自信に繋がる」
第4回:舞美りらと千咲えみが見せた、互いへの尊敬「OSKは継ぎ足されてきた「秘伝のソース」みたいな劇団」

第5回:椿りょう、頼もしい団員達に囲まれ初の役柄獲得へ、OSKの強みは「何事にも屈しないこと」
最後を締めくくるのは、娘役スターの唯城ありす。『OSK日本歌劇団創立100周年記念公演「レビュー春のおどり」』の第一部「光」で、翼和希演じる写楽の相手役として、白夜太夫を演じた唯城。その堂々たる佇まいも観客を魅了した。7月から始まる『レビュー in Kyoto』では、実花ももとダブルキャストで蜜虫役を勤めることでも話題を呼んでいる。
実花もも→こちら
壱弥ゆう→こちら
朔矢しゅう→こちら
唯城ありす「会話を意識した公演になった」
唯城ありす
――まず、OSKの100年の歴史をどのように感じていらっしゃいますか?
上級生の方が1年1年、OSKを愛して、OSKの舞台を愛して紡いでくださったからこそある、今この瞬間だと思います。その記念すべき年に在籍できることに、責任感や重み、喜び、感謝の気持ちなどあふれているのですが、一番には今、在籍しているメンバーで、お客様、お世話になった皆様方に、感謝の気持ちをお伝えできたらいいなと思うこの1年です。
――『レビュー 春のおどり』の第一部「光」の「夢の巻」の場面では、白夜太夫を演じられましたね。大きな役を担う責任感など、心境はいかがでしたか?
初めに伺ったときには、不安と驚きが大きすぎて、自分にできるのだろうかという思いが頭を駆け巡りました。でも100周年の『春のおどり』でこのようなお役をさせていただけることに「やるしかない」という気持ちが沸々と湧いてきて、責任感半分、「やるしかない」という気持ち半分、あとは楽しみたいと思いながら、全力で勤めさせていただきました。
白夜太夫を演じる唯城ありす (c)松竹
――唯城さんが壁にぶち当たったときや迷われたときに、上級生の方からいただいた言葉で印象に残っていることはありますか?
百夜太夫を演じる際、城月(きづき)れいさんに「お稽古中から本番まで見てください」とお願いしました。私は結構ひとりで悩むタイプなのですが、城月さんはいつも「会話をしなさい」とおっしゃっていました。なので、100周年の『春のおどり』は意識していろんな方と会話をしてみようと思った公演でした。実は「会話をする」という意味が最初はわかりませんでした。でも、近くにいらっしゃる方に「昨日どういうふうに過ごしたんですか?」とか、「今日はお天気いいですね」とか、ちょっと話しかけてみるだけでお話が広がって、少しずつ絆が深まっていくように思えて、普段の会話がこんなに大事なんだと気づかせていただきました。城月さんの「会話をしなさい」は、私の中でグサッと刺さった一言で、大事な言葉となっています。城月さんにも、たくさんたくさんお話をさせていただきました。
――唯城さんにもご自身のターニングポイントをお伺いしようと思っていたのですが、同じ時期になりますか。
そうですね、私は入団7年目なのですが、今年、白夜太夫を演じたことが大きなターニングポイントになったと思います。悩みながら、葛藤して、自分のコンプレックスや良くない部分にも対峙して、上級生の方や同期にもたくさん助けていただくという経験をさせていただいたのが白夜太夫という役です。自分ひとりでは作り上げられなかったと思います。
――「INFINITY」は、7月の京都の南座でも上演されます。大阪松竹座、新橋演舞場を経て、どのように見せていきたいと思いますか?
100周年ということで、ラテンや「虹色の彼方へ」、「ビバ!OSK」、「ジャストダンス」などOSKの代表的な場面を荻田先生が詰め込んでくださっていて、それだけでとても胸が熱くなります。ただお客様に熱い気持ちを伝えるのが一番だと思いますので、南座では新たに参加する下級生も一緒に引っ張っていけるような存在になっていきたいです。これからの100年も続いていけるように、また初めてご覧になるお客様にも「OSKとは」というものを伝えていきたいです。もちろん、今までOSKを見てくださった方にも「やっぱりOSKはいいね、「ジャストダンス」はいいね」と言っていただけるように、伝統を大切に、ブラッシュアップしたものをお届けしたいなと思っております。
――では、唯城さんにとって楊さんはどんな存在ですか?
100周年の『レビュー 春のおどり』の大阪松竹座での公演は、新型コロナウイルスの影響で3日間しか公演できませんでした。その千穐楽の日に、舞台の緞帳が降りた後、楊さんが天井を見上げて、おひとりで「よしっ」とガッツポーズをしていらっしゃいました。その姿を見たとき、計り知れない不安や葛藤、トップスターさんだからこその思いがあったんだろうなと感じました。普段、お稽古場や本番ではそんな姿をお見せになることはないので、OSKの一員として、少しでも楊さんを支えていけたらと思います。

楊琳(右)と唯城ありす (c)松竹
●楊と唯城の質問バトン●
――そんな楊さんからご質問です。「自分にとって娘役とは何でしょうか」。
娘役とは……。娘役には限らないかもしれませんが、相手の方を思いやる心をすごく大切にしています。男役さんに限らず、今回でしたら実花ももさんと一緒に歌わせていただく場面があったのですが、実花さんはもちろん、一緒にお芝居をされる方、一緒に踊る、歌う方に少しでも「一緒にやってよかった」と思っていただける娘役になりたいと思っています。下級生にも「一緒の公演に出られて良かったです」と言ってもらえるようになりたいです。それが一番の目標で、そのためには城月さんが言ってくださった「会話をしなさい」につながってくると思います。
――最後に、楊さんにお聞きしたいことは何でしょうか。
今年1月、楊さんがお稽古場で窓を開けてお外を眺めていらっしゃったときがあったんですね。その時、とても綺麗な横顔で……(笑)。あの時、どういう思いでお外を眺めてたのかなとすごく気になったのと、先ほどの大阪松竹座の千穐楽でガッツポーズされたときも。楊さんがどんなお気持ちだったのかなと伺いたいです。
楊琳より
なんか凄い角度で質問が来たな(笑)。気持ちかぁ……まずお外を見ている時は、色んな時があるけどもだいたい「気持ちいい、良い天気だなぁー」と思ってます(笑)。ガッツポーズはね、「おわったー!!!」と思ってた(笑)。やはり松竹座公演は創立100周年記念公演の幕開けでしたし、コロナで日数が減ってしまったのもあり、いつにもまして千穐楽を迎えたことが素直に嬉しかったんです!

楊琳(中央)、実花もも(中央右)、壱弥ゆう(中央左)、朔矢しゅう(右)、唯城ありす (c)松竹
取材・文=Iwamoto.K 撮影=高村直希

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