【SpendyMily インタビュー】
もっと大きいところを
目指していきたい
洗練された音楽性が高い評価を得るとともに、インディーズでありながらTVドラマ『シジュウカラ』の主題歌を手がけたことでも注目を集めているSpendyMily。そんな彼ら最新シングル「Distance」が届けられた。より深化しつつ、新たな息吹も感じさせる同曲は必聴と言える。まだまだミステリアスな部分が多い彼らの素顔に迫るべく、今回も全員インタビューを行なった。
聴いてくれている人が
すごく多いということを実感している
今年1月にリリースされた「後悔」はTVドラマ『シジュウカラ』のエンディングテーマに抜擢されていただけに、大きな反響があったと思うのですが。
yukirie
僕はSpotifyを利用させてもらっていてSpotifyだけの話になりますけど、月間リスナー数とかが「雨のリズム」(2021年10月発表の配信シングル)までの人数と比べて大きく増えました。その辺りから、やっぱり聴いてくれている人がすごく多いということを実感しています。
松永
Twitterとかでたまにエゴサーチをすると『シジュウカラ』の「後悔」はいい曲だというようなコメントをよく目にしますね。リリースから時間が経っているのに、今でもそういう声があるんですよ。すごく嬉しいし、より意欲が上がっています。
平井
YouTubeのコメントも中国の方とかからのコメントが結構多いんですよね。ドラマが中国でも放送されていて、その影響で国外からの反応もあるんです。一気に世界が広がった感覚があって、もっと大きいところを目指していきたいと思っています。
yukirie
そうだね。一般の方々にもSpendyMilyの名前が広がったので、自分たちを客観的に見た時にどう感じるのかということを、より意識して曲作りに取り組むようになったのはあります。
「後悔」は大きなターニングポイントになりましたね。また、「後悔」のリリースを機にライヴ活動も始められましたが、ライヴをして感じていることなども話していただけますか。
yukirie
僕とか松永くんはライヴを始めてまだ間がないので、ライヴをして難しさを実感しました。ライヴならではの緊張感や臨場感、楽曲の再現性の難しさといったことを肌で感じたんです。でも、そういう中でもお客さんに曲を聴いてもらうことで、すごく手応えみたいなものは感じています。これからどういうライヴをしていくのかというビジョンはまだ不鮮明なところではあるけど、自分たちが今後目指していく先を考えるきっかけにはなったかなという気がしています。
松永
これまで4回ライヴをして、4回目がすごく楽しかったんですよ。素直に楽しめた感覚が自分の中に大きく残っていて。それまでは緊張が勝ってしまって、ライヴを楽しむ余裕がなかったんです。3回目までは自分に歌わされているような感じだったけど、4回目は楽しんで発信することができて気持ちがすごく盛り上がりましたね。それを、今後も続けていけるといいなと思っています。
平井
私はふたりよりはライヴをしている回数が多いので、4回目でやっとバンドの一体感が出始めたかなという印象です。最初のライヴとかは“何やってんだよ!”みたいな(笑)。“なんでドラムを聴かないの?”って(笑)。それがやっとバンドらしくなってきた感じがありますね。
今後はライヴもより磨きがかかっていくことは間違いないですね。では、続いて5月27日に配信リリースされたニューシングル「Distance」について、いろいろ教えていただければと思います。
yukirie
今回のシングルは“こういうものにしよう”という構想などは特になくて、今の自分たちが純粋にいいと思えるものを提示させてもらいました。「Distance」を書いたのは昨年の10月頃だったかな? その頃に僕が聴いていたものから影響を受けて、自分の中でのトレンドが自然と入っていった気がしますね。最近はThe Weekndやジャスティン・ビーバーが80年代や90年代っぽいサウンド感を重視している印象があったので、僕もそういう音楽をやってみたい気持ちがあったんだと思うんですけど、作っていくうちにだんだんそういう感じになっていったんです。それで、“だったら、ブラスを入れてみよう。ドラムの音色をこういう方向にしよう”というふうになっていきました。その段階で松永くんにデモを送ったんですけど、特に80年代や90年代みたいなことは言わなかったんですよ。だけど、彼はそういう匂いがあるメロディーをつけてくれたんです。
松永
yukirieくんは何も言わずにデモを送ってきたけど、音色が80年代チックなところがあると思ったんです。僕はそういう音楽が結構好きなので、80年代で、なおかつ洋楽寄りのメロディーにしようと思ってメロディーを考えました。
平井
私もデモを聴いた時、80年代っぽくて踊れるような曲なのかなという印象を受けたんです。なので、ドラムは4つ打ちだったり、16分の裏にアクセントを入れたりすることを考えましたし、その頃の私はDALLJUB STEP CLUBにハマッていて。ドラムが結構自由というか、刻みが変則的なバンドなので、それも取り入れたいと思って、刻みは多めに入れました。
細かい刻みを入れていますが、リズム自体はハネていないビートで、ベースが強力にグルーブしているというアレンジも絶妙です。
平井
一歩間違えるとゴチャッとしてしまうかなというのがあったので、ドラムはしっかりしようと思ったんです。それで、ハネないリズムでいくことにしました。
yukirie
この曲のベースは結構すごいことになっていて。ギターの6〜5弦辺りを使って、あとはドロップチューニングにしてみたりしてベースをイメージしてベースに落とし込んだんですけど、生身の人間だったら弾けるかどうかは分からないという(笑)。ただ、“打ち込みです!”というベースは嫌なので、プラグインのソフトで生感を出せるのを使って、スラップとかのニュアンスを意識して打ち込みました。
生身のベーシストが弾けることにこだわる必要がないというSpendyMilyの強みを活かされたんですね。
yukirie
僕らの楽曲はそういうものが多くて。ベースに限らずとりあえずカッコ良いものを作って、あとで“ムズッ!”ってなるみたいな(笑)。でも、生身の人間が再現することを気にすると、そこにひとつ壁ができてしまうじゃないですか。それは避けたいので、作る時はあとのことは考えないようにしています。
そういうスタンスは新しい音楽の魅力を生むことにつながりますね。
yukirie
そう思っています。それに、話が少し戻りますけど、「Distance」は僕の中で80年代や90年代というイメージはあったけど、そこに寄せすぎてしまうのは違うというのがあるから、みんなには80年代ということは言わなかったんです。そういう中で、僕が意図したことをふたりが感じ取ってくれたのが嬉しかったし、その上で単なる80'sの焼き直しや今海外で流行っているもののコピーで終わらなかったのは良かったと思いますね。自分たち独自のところに落とし込めたというのはあります。