【平岡優也 インタビュー】
歌いたいと思っていたことが
ストレートに落とし込めた
“人生初心者”は、
絶対に入れようと思っていたワード
新たな一面を知れました。では、ここからは「ビギナーズ」のサウンドに関してなのですが、アレンジをここまでバンドサウンドに寄せた理由は?
これは、僕が“エレキギターがメインで目立つアレンジにしてほしいです”と言ったんです。僕はどうしてもピアノの弾き語りがメインのシンガーソングライターなので、アルバム『20s』(2021年10月発表)のように聴かせる曲がメインになってしまうんですね。そんな自分に足りないものを考えた時…例えばですけど、車で高速を運転しながら『20s』を聴くのとバンドサウンドの音楽を聴いているのとでは、耳に入ってくる音が違うんですよ。ピアノだからこういう曲、こういうアレンジになってしまうという言い訳はしたくないと思ったし、30歳に向けて“ピアノでもこんなカッコ良い曲、ロックな曲が作れるんだ”という曲を今後はどんどん作っていきたいと思ったんですね。
なるほど。
「春舞」もそれをイメージして?
そうなんです。今までの人生の中で、僕はライヴにおいて歌のピッチを外さないとか、声が裏返らないようにとか、ピアノを間違えないとか、きれいに届けなきゃという部分を20代前半からすごく気をつけてきたんですね。でも、最近の僕のつながりで言ったら同郷の先輩でもある高橋 優さんのライヴに影響を受けて。優さんは“ライヴに来て良かった”という気持ちから、さらに“生きてて良かった”ということまで思わせてくれるようなライヴをやってらっしゃるんですね。それを観た時、僕の中で“ライヴはこうあるべきだ!”ということが新しく見えてきて。ライヴは歌のピッチがどうよりも何をメッセージとして伝えたいのかが重要というか。それを届けるライヴのほうが、シンガーソングライターにとっては絶対大事だと思ったんです。だから、「春舞」も「ビギナーズ」もそういう想いを重視した曲ですね。ライヴでやった時も楽しんでもらえるという部分でアップテンポにして。これまではスローやミドルが多かったので、もうちょっとワイルドな部分を出していこうとも思ったり。
きれいなだけではなく、平岡“ワイルド”優也な一面を曲で出していってもいいんじゃないかと。
そうそう(笑)。繊細なバラードをきれいに歌うだけではなくて、そうやって楽しんでもらうみたいな。それで言うと、小田和正さんのライヴも楽しいですからね。
小田さんはピアノから離れたら、アリーナ席の外周を自転車に乗って歌いながら移動したり、ハイタッチしながら客席を行き来して歌ったりしますからね。
そういう楽しい空間をライヴで作るトリガーとなる楽曲が欲しかったわけですね。
そして、ジャケットに関してもうかがいたいのですが、タイトルロゴの配色には何か意味があるのですか?
これは車の初心者マークの色です。ロゴのデザイン案でカタカナがもっとカチッとした候補もあったんですけど、僕はこの字体が一番しっくりきたんですよね。洗練されていない、この初心者ならではのガタガタ感があるところが良くて。名前の横にちょこんと若葉マークも入っているところも可愛いんです。
平岡さんの人生の若葉マークはとっくに取れていますけどね(笑)。いくつになるんでしたっけ?
続いて歌詞についてなのですが、サビの《僕ら皆 人生初心者》は書いている時にすぐに出てきたフレーズですか?
そうですね。“人生初心者”は絶対に入れようと思っていたワードです。それで“僕ら皆”を作った時点で“一番伝えたいワードを入れるのはここだ!”と思ったんです。有名な話だと、島田紳助さんがテレビ番組で昔おっしゃっていたんですよ。“あの人はまだ人生一回目やから人生初心者や”って。そう思えば、世の中を生きていれば嫌なことはいっぱいありますけど、不思議と許せるんですよね。だから、僕もこのマインドはすごく大事だと思って。この先どうなるか分からないけど、生きているみんなが人生は初心者なんだから、失敗する時もあれば成功する時もあるんだよと。サビで言っているのはそういうことですね。
平岡さんの20代はそういうマインドで生きてきた?
そうだと思います。あと、僕は“面白そう”と思うかどうかも重要ですね。楽しいとか苦しいしいとかよりも、こっちのほうがワクワクして面白そうって。路上ライヴをする場所もそうやって決めています。ワクワクを優先して警察の方に怒られたり、酔っ払いに絡まれたりすることもありますけど、決断しているのは自分ですからね。街のルールを最優先しながらも、それでどうなろうが“面白かったな”と思えればいいという考え方です。
危険もあるかもしれないので気をつけてくださいね。では、MVはどんな仕上がりになりそうですか?
「春舞」の時と同じ監督に今回もお願いしました。前回は役者さんが出演したのですが、今回は僕ひとりで撮影しました。この曲の最後に《君だけを照らす光が差すように》と歌っているんですけど、ジャケット写真が明暗、光と陰がある感じなのは、終わりに向けて光が差していくというのを汲んで、あのジャケットデザインになったと思うんですね。MVも最初は斜めに光が入っているけど他は真っ暗という感じで、暗い部分からスタートするんですよ。初めは暗めな歌詞が徐々に明るくなるから、MVもちょっと光の差し方が変わっていきます。
ピアノを弾くシーンは?
ないんですよね。マイクも持たなかったので、手持ちぶさたでめちゃくちゃ緊張しました(笑)。
そう言えば、この曲にピアノの音は入っているんですか?
よく聴くと分かる感じではありますが、実は入っていますよ。“ピアノが隠れてもいいからエレキをガンガンに鳴らしてください”と僕がお願いしてアレンジしてもらったから、ピアノはこうなっているんですよ。最初に僕が作った音源はイントロのドレミファソラシド〜のところもピアノをオクターブで重ねて入れていたんです。だけど、イントロもエレキに替えてもらいました。そうしたら、アレンジャーさんがデモで入れていたフレーズを“これはキャッチーで耳に残るからそのまま使おう”と言ってくださったんです。その結果、エレキであのフレーズをなぞってくれたんですよね。メインのフレーズはエレキだから、極端なことを言ったらこの曲はライヴでピアノを弾かないでハンドマイクでのパフォーマンスができる。そこまで見越してのアレンジです。「春舞」もそこは同じですね。この先、1,000人とかのキャパの会場でライヴをするようになった時は、MVのようにピアノから離れてのパフォーマンスをやっていきたい。それが目標なんですよ。
それではタイトルに引っかけての質問なのですが、今の平岡さんの“ビギナーズ”なことというのは?
最近はウィスキーですね。30歳になったし、ウィスキーの美味しい呑み方というのをちゃんと勉強しようと思って。まだ入門編ですけどね。でも、本当は焼酎とかのほうが好きなのですが(笑)。
大人な趣味になりそうですね。今作を発売して以降の活動はどうなりますか?
いろんなところで徐々にライヴができるようになってきたから、イベントに出演もしたいし、路上ライヴは東京以外でも精力的にやっていきたいと思っています。
取材:東條祥恵
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配信シングル「ビギナーズ」2022年6月1日(水)配信
ヒラオカユウヤ:1992年10月17日、秋田県秋田市出身のシンガーソングライター。観客が撮影した路上ライヴの動画がYouTubeなどにアップされ、そのうちのひとつの動画が瞬く間に900万回再生に到達し、“通行人が足を止める歌声”と話題に。21年10月に1stアルバム『20s』をリリース。22年3月に配信シングル「春舞」を発表し、4月にワンマンライヴ、5月には東名阪での路上ライヴツアーを開催し、6月に配信シングル「ビギナーズ」を発表した。さらに8月に配信シングル「ソングレター」を発表後、10月にミニアルバム『∞ - infinity -』をリリースし、11月からは東名阪ツアー『Tour 2022「∞ - infinity -」』を開催する。平岡優也 オフィシャルHP
「ビギナーズ 」MV