3年ぶり『RUSH BALL☆R』Mr.ふぉるて
、SPARK!!SOUND!!SHOW!!ら8組が示し
た、夏への道すじ

『RUSH BALL☆R』2022.5.7(SAT)大阪城音楽堂
5月7日(土)、大阪城音楽堂にて『RUSH BALL☆R』が行われた。本イベントは、関西のイベンター・GREENS主催で夏に開催される大型野外ロックイベント『RUSH BALL』のプレイベントとして、毎年春に大阪城音楽堂で開催されてきた。WANIMACreepy Nutsなど、数々のスターを輩出してきた歴史あるイベントだ。チケット代は破格の828円(税込)なのも嬉しいところ。しかしコロナの影響でここ2年は開催ができず、今回3年ぶりにカムバックすることができた。出演は、鋭児bokula.KUZIRAMr.ふぉるて、NEE、SPARK!!SOUND!!SHOW!!、THE 2、This is LASTの8組。復活した『RUSH BALL☆R』のオフィシャルレポートをお届けしよう。
真っ青な快晴の空が広がったGWの土曜日。この日は厳しい日差しが照りつける気候で、最高気温は28℃の予報。暑いほどの陽気の中、目当てのバンドのTシャツやタオルを身につけたミュージックラバーたちが続々と入場していた。入場時に配布されるポストカードにて、8月27日(土)・28日(日)に泉大津フェニックスで行われる『RUSH BALL 2022』のアクトが発表された。ちなみに今回の出演者の中では、Mr.ふぉるてが1日目の、SPARK!!SOUND!!SHOW!!が2日目のOAをそれぞれつとめることが明らかになった。MCのFM802 DJの大抜卓人は「2022年の『RUSH BALL』が次のフェーズにいっているのは、そのラインナップで感じていただけたんじゃないかなと思います」と期待感を露わに。
鋭児
鋭児
トップバッターは鋭児。渋谷のストリートで出会ったメンバーで2019年に結成、2021年に音源をリリースしたばかりのニュー・カマーだ。菅原寛人(Ba)のベースが低く響き、ジャムセッションでライブはスタート。御厨響一(Vo)のどこまでも伸びていきそうな歌声とグルーヴが心地いい。
鋭児
鋭児

そこから全身が痺れるほどカッコ良い骨太サウンドで、あっという間に虜にさせる。藤田聖史(Key)のキーボードが浮遊感をきかせた「突然変異」では、御厨がフリースタイルでフロウを放り込んでゆく。御厨のかすれたセクシーながなり声と5人のアンサンブルがものすごくエネルギッシュで、圧倒的な存在感を放つ。
鋭児
鋭児
市原太郎(Dr)のタイトなビートから紡がれた「R.I.P」、リズム隊と及川千春(Gt)のギターリフが火を噴いた「$uper $onic」、轟音でトランスしそうな「Fire」。どの曲もど真ん中からガツンと飛び込んでくる。ラストは「銀河」を披露。彼らだから生み出せるデジタルサウンドと生演奏の独自の融合で、新しい音楽体験をしている感覚になった。最高にクールで熱い、生命感溢れるステージでトップを飾った。
鋭児
KUZIRA
KUZIRA
2番手は岐阜発のメロディックパンクバンド・KUZIRA。「来たぜ『RUSH BALL☆R』!」と末武竜之介(Vo.Gt)が叫び、勢いよく「Snatch away」をドロップ。一斉に客席の拳が上がる。間髪入れずシャー:D(Dr)が自身の体が飛び上がるほど力強くリズムを叩き込み「In The Deep」で加速! フロアに散らばったPIZZA OF DEATHのTシャツが小刻みに揺れる。
KUZIRA
KUZIRA
「パンクのライブなんで自分が楽しいように自由に動いてください!」と末武。「Clown」「Muggy」「The Weak」「Sad (Regrets)」を立て続けにぶち込み、パワフルサウンドで駆け抜ける。末武と熊野和也(Ba.Vo)のツインボーカルで魅せる曲もあり、客席はテンションアップ。あどけなさが残る中にも確かな実力が感じられる。メロディアスなギターリフとよく伸びる高い声がとにかく気持ち良く、初見でも一緒に楽しめる力がある。「最高の景色の中で最高の曲たちを演奏できたことを誇りに思います! 『RUSH BALL』の本編当日はもっと気持ち良いのかなあ、出たいなあ(笑)」との末武の言葉にメンバーも笑顔。最後は「Spin」を高くまっすぐ、豪速球で初夏の空に響かせライブを終えた。
KUZIRA
bokula.
bokula.
続いては2019年に広島で結成されたbokula.。「小さなライブハウスから大阪にやってきました。30分よろしくお願いします」とえい(Vo.Gt)が挨拶。「この場所で.」から勢いよく弾ける。自然にクラップが発生、サビでは手が上がり、オーディエンスとの信頼関係が築けていることを伺わせる。
bokula.
メンバーはステージにいる時間を思いきり楽しむように、大きく動きながら「HOPE」「溢れる、溢れる」をプレイ。MCではこの日が初の野外ライブで、結成3周年の記念日だと明かす。加えて「20歳のうちにこんなライブができて良かった」とえい。サポートの三浦光生(Ba)のベースとかじ(Gt)のギターが印象的に響いた「足りない二人」では、何と2羽のアゲハ蝶がステージの前に現れた。一緒に音楽で遊ぶようにヒラヒラと飛び回る様子は、野外ならではの演出。
bokula.
そんな運も味方につけて、日常の鮮やかさや切なさを歌う。ラスト2曲は一気に駆け抜けた。ふじいしゅんすけさん(Dr)がパワフルにビートを叩き込んだ「愛してやまない一生を.」を経て、1分半の「一瞬」をドロップ。はちきれそうなほど瑞々しい等身大のロックを鳴らし、青い余韻を残してステージを去った。
bokula.
NEE
NEE
サウンドチェックを終えると、ステージから捌けずそのままライブを始めたのはNEE。彼らもこの日が初野外。1曲目の「アウトバーン」からくぅ(Gt.Vo)の独特の歌声と、ハッキリわかる演奏力の高さでNEEワールドに引き込まれてゆく。「手挙げて!」とのくぅの言葉に全力で応える客席。かほ(Ba)のコーラスが楽曲に彩りを加える。大樹(Dr)のドラムソロが最高にカッコ良い「九鬼」、くぅがシンセを操った「月曜日の歌」では、夕日(Gt)のギターソロも青空に美しく吸い込まれていった。
NEE
ついつい踊ってしまうお祭り感と、深く潜れる没入感が不思議なバランスだ。MCでは西日が傾きはじめたことで「楽しいですね。眩しいですね」とメンバーが口々に話し和ませる。くぅがゴーグルをつけてハンドマイクでステージを自在に動きまわった「ボキは最強」、訴えるように声を放った「第一次世界」を経て、「不革命前夜」で勢いを加速。
NEE
ラストは3月末にリリースされたばかりの「DINDON」。「初めての野外を素敵な日にしてくれてありがとうございました」とくぅ。疾走感で駆け抜けて、会場全体を凄まじい一体感に導いた。個性的な世界観と存在感のあるサウンドは中毒性がある。またすぐに見たいと感じた、最高の30分だった。
THE 2
THE 2
続いては、半年間の活動休止を経て、2022年2月22日に森夏彦(Ba)と歌川菜穂(Dr)が新加入、バンド名を「2」から改名したTHE 2。新体制での大阪ライブは初めてだ。チャイナ風の壮大なSEをバックにメンバーが登場。1曲目には<友達の彼女に手を出してみたい 親のこと裏切ってしまいたい>という、強烈なインパクトの歌詞から始まる「ルシファー」を投下。シンプルでストレートなロックンロールに古舘佑太郎(Vo)のクリアな歌声が乗り、気持ち良いほど突き抜ける。
THE 2
THE 2
「Family」「ケプラー」「急行電車」と、キャッチーで耳に残る楽曲たちをどんどん披露して会場を魅了する。軽快な加藤綾太(Gt)のギターさばきと、歌川のパワフルなドラムに惚れ惚れしているとあっという間にラストの「恋のジャーナル」へ。「皆さん心の準備はいいですか。どんな野郎が現れようとも微動だにしない心で」と古舘。演奏が始まると、突如ジャケットにも登場している「メガフルタチ」が現れ、会場がどよめく。
THE 2
メガフルタチがかなり気になってしまうのだが(笑)、さすがの演奏力と推進力を存分に見せつけてライブを終えた。西日が差してとても暑かったが、THE 2のおかげで暑さを忘れることができた。
THE 2
This is LAST
This is LAST
涼しい風が吹き抜け始めた頃に登場した、千葉県柏発のThis is LAST。菊池陽報(Gt.Vo)がすうっと息を吸う。1曲目「愛憎」のイントロからアンサンブルを響かせ、圧倒的に透明感のある歌声とグッドメロディで会場を満たしてゆく。「アイムアイ」では自然にクラップが発生、「踊っていこうぜ!」と煽った「恋愛凡人は踊らない」では、さらに加速する。菊池(陽報)のギターの上手さ、そして楽曲と歌声を支える菊池竜静(Ba)と鹿又輝直(Dr)のリズム隊の2人の安定感に舌を巻く。
This is LAST
This is LAST
MCでは竜静が「僕ら、初の野外で憧れてたんですけど、髪の毛が(風で)ぷわっとなって邪魔するんだなと」と野外の苦労を明かして和ませる。アンセム「殺文句」ではオーディエンスが一斉に手をアップ。「いつも通りじゃないこの光景をもっと上げていきませんか!」と陽報が煽ると芝生席までもれなく手が上がり、一体感は最高潮に。
This is LAST
最後の「オムライス」で熱量をさらに引き上げる。陽報が「風が気持ち良いし、あなたに見てもらってすげえ嬉しいし、今日出会えたことを宝物にして柏まで持って帰ります!」と叫ぶ。実はThis is LASTはこの日が結成記念日だったそう。音楽が大好きで仕方がないという想いが伝わる、フレッシュなライブだった。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
トリ前はSPARK!!SOUND!!SHOW!!(以下、スサシ)。サウンドチェックからスサシワールド全開で客席を惹きつけ、「全員野球見せてやるよ今から。よろしくお願いします」とタナカユーキ(Vo.Gt)。のっけから豪速球の「STEAL」と「踊らない」で、絶好調のステージを見せつける。「黒天使」では全員でブンブン! チヨ(Ba)は激しくヘドバンし、タクマ(Syn.Gt)はアンプの上からジャンプ! イチロー(Dr)のリズムで最高速度のグルーヴを作り上げた。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
靴を脱いで投げたりステージ端まで走ったり下ネタをぶち込んだり、縦横無尽に暴れ回りながら、「god speed」「感電!」「HAPPYBIRTH DIE」で一体感を高め、ラベンダーに染まった空を指し「こういう色の空に向かって歌いたかった曲をやります」と「good sleep」をムーディに聴かせる。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
「MARS」では社会情勢や音楽についてタナカがとうとうと想いを吐露。「怒りや痛みを光に変えよう。暗くなり始めたこの大阪城音楽堂から光を放つんだ」という言葉に思わずグッとくる。ラストは「南無」を披露。タナカがステージ後ろの梁によじ登り、逆さまになった状態でマイクを握って歌う。ヤンチャぶりは相変わらずで本能のままに音楽を表現しつつ、どこか貫禄も感じさせたスサシ。『RUSH BALL 2022』ではこれ以上ないほど盛り上がるオープニングを見せてくれるだろうな、と期待が高まった。
SPARK!!SOUND!!SHOW!!
Mr.ふぉるて
Mr.ふぉるて
トリはMr.ふぉるて。待ってました! と言わんばかりの歓迎ムードで迎えられる。「Mr.ふぉるて東京から、トリを任され来ました! どうぞ最後までよろしくお願いします!!」と大声で稲生司(Vo.Gt)が叫ぶ。挨拶代わりの1曲「なぁ、マイフレンド」で心地良いロックンロールを放ち、客席はクラップで応える。緊張しているのかと思いきや、福岡樹(Ba)と阿坂亮平(Gt)は寄り添って笑顔を見せる。
Mr.ふぉるて
Mr.ふぉるて
<初夏の風に吹かれながら>と歌詞を変えて歌った「ジャーニー」、叫ぶように声を張り上げ想いを込めた「さよならPeace」、苦しみを乗り越えてバンドに辿り着いた彼らの歴史や気持ちがしっかり伝わる「オーバーテイク・ミー」で、客席の心を掴んでゆく。MCでは稲生が改めて感謝を述べ「僕が音楽を支えにして生きているように、皆さんにとってそんな音楽が僕らのものであったらと思います」と表現者の矜持を口にして、次々にグッドメロディを披露。
Mr.ふぉるて
Mr.ふぉるて
最後は両思いの願いが込められた「幸せでいてくれよ」。吉河はのん(Dr)の力強いドラムに支えられ、稲生が手を後ろに回し客席をまっすぐ見つめて歌い、「皆さんに歌ってますよ、届いてますかー!」と投げかける。応える客席からは携帯のライトが星空のように灯り、エモーショナルな多幸感に包まれる。噛みしめるように下を向いていた稲生が印象的だった。
アンコールを受けて再びステージに現れたメンバー。「暗い部屋の中、明るいテレビ」を全力で演奏し、Mr.ふぉるてのライブは大団円を迎えた。夏に大舞台を任された彼らの気合と喜びが滲み出た、初々しくも頼もしいステージだった。
Mr.ふぉるて
こうして3年ぶりの『RUSH BALL☆R』は幕を閉じた。偶然なのか必然なのか、この日は結成記念日のバンドと、野外初ライブのバンドが多かった。オーディエンスだけでなく出演者にとっても記憶に残る1日になったのではないだろうか。次は8月27日(土)・28日(日)、泉大津フェニックスの『RUSH BALL 2022』。Mr.ふぉるてによるOpening Actから物語が始まる。今年はどんなストーリーが待っているのか。ATMC出演者についても続報を待ちたい。
取材・文=ERI KUBOTA 写真=オフィシャル提供(小川星奈)

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