タイのポップスターSTAMPに訊く、連
続リリースの楽曲秘話ーーSKY-HIやオ
ーサムら親交のある日本アーティスト
、「黄金期」なT-POP事情も

タイでトップクラスの人気を誇るアーティストSTAMPが、6月22日(水)にリリースされる新作「愛のせいで」のレコーディングのため、来日。大の親日家としても知られる彼にインタビューを行った。折しもこの日はSTAMPの誕生日。彼の好きなアイドルグループの写真集をプレゼントすると、「わー、本当に嬉しい! ありがとうございます。この間本屋さんに寄った時に見つけたけれど、奥さんがいたから買えなくて。でも今日は「スタッフからのプレゼントだ」と言えるから奥さんに許されるぞ(笑)!」と大喜び。フレンドリーな空気の中、「いきましょう!」というSTAMPの掛け声とともにインタビューは幕を開けた。
終始フレンドリーに対応してくれたSTAMP
●日本語版楽曲、タイ版演歌、映画主題歌など連続するリリース●
ーータイドラマ『ラブ・バイ・チャンス/Love By Chance』の挿入歌「It Could Be Love」の日本語版「愛のせいで」を6月22日(水)にリリースすることになった経緯は?
ちょうど先日レコーディングを済ませたところです。日本人リスナーの皆さんが親しみを持って聴いてくれるのではないかと思い、バラードを選曲しました。ドラマを好きな方が聴いたら、ストーリーが浮かんで、より深く物語に入っていけると思います。
ーー確かにドラマの情景が浮かびますね。情景が浮かぶと言えば、先日リリースされた「Chao Arom」で、ルクトゥーン歌手パオワリーとのコラボレーションが話題を呼びました。
ルクトゥーンは、日本風に言えば演歌なのかな。タイでは主流の音楽ジャンルで、メインテーマにあるのは故郷です。タイは、仕事で地方出身者がクルンテープ(バンコク)に上京することが非常に多く、ルクトゥーンを聴くと自分の故郷を思い出し、当時の情景を思い浮かべることがあります。また歌い方も独特で、ほかの国にはないような歌唱方法が魅力です。パオワリーさんの素晴らしい歌声もぜひ堪能してほしいと願っています。
STAMP
ーー素晴らしい楽曲であると同時に、「Chao Arom」のミュージックビデオも魅力的でした。マイ・ダビカとガルフ・カナーウットの美しさに魅了されました。
マイさんを知ってるんですか!? 日本でも有名? 嬉しい! 彼女はタイを代表する素晴らしい女優です。ガルフくんも眼力が強くてチャーミングな俳優ですね。僕は前にミュー(・スパシット)くんとも「It takes two」という曲で共演したことがあります。二人とも素晴らしい人物です。……あ、MVに話を戻しますね(笑)。今回のようにMVに大スターが出演してくれることはあまりなかったのですが、今回はそれが実現しました。僕がモニターをチェックするだけで演技の上手さが伝わる。「気持ちを隠す、感情を隠す」ことが歌詞のテーマになっているのですが、マイさんもガルフさんも眼だけで歌詞のテーマを表現しています。言葉にならない感情を芝居に乗せてくれて感激しました。すごい経験でした。MVを監督したボス・ナルベート(・グーノー)​監督のコンセプトが楽曲にピッタリだったことも功を奏しています。撮影風景を舞台にしているのでスタッフや裏方の姿がよくわかりますよ。その点も今回のMVの見どころだと思います。
ーー映像といえば、バズ・プーンピリヤ​監督を務めている『プアン/友だちと呼ばせて』が日本でも8月5日(金)に公開されます。同作の挿入歌「Nobody Knows」も担当されていますが、この曲はどのようにして生まれたのですか?
バズとは、古くからの友人なんです。彼とニューヨークに旅行した時に、僕はうろ覚えなんだけれど「次作ではSTAMPの曲を採用するよ」、「OK。わかった」と約束していたらしいのです。そんなこと僕はすっかり忘れていて(笑)。ある日、「ウォン・カーウァイのプロデュースで映画を作るプロジェクトがあるんだけれど、あの時の約束、覚えているよね?」とバズから連絡があったんです。それが最初のキッカケですね。それで、曲を作ってウォン・カーウァイさんに聴いてもらって、あの曲が採用されました。映画もニューヨークから物語が始まるし、運命を感じますね。何度も言うけれど、僕はすっかり忘れていたのにね(笑)。
●親日家のSTAMP、日本アーティストのコラボも多数●
STAMP
ーーハハハ(笑)。ところで日本の小説をよく読んでいらっしゃるそうですが、最近読んだ小説は?
(自身のスマホを見せながら)木皿泉さんの『昨夜のカレー、明日のパン』。有名なんですか? 嬉しい(笑)。次は『さざなみのよる』を読もうと思っています。タイ語に翻訳されたものを読んでいますが、すごく親しみのある表現が多くて、リラックスして読めます。世界観が好きで、心地がいいですね。
ーー日本の様々なアーティストとコラボレーションすることが多いSTAMPさん。コラボ楽曲をリリースし、5月15日(日)に開催された『タイフェスティバル2022』主催のコンサート「T-Pop Stage Show:タイフェスティバル in Japan 2022 スペシャルエピソード」​でも共演した、SKY-HIの魅力について教えてください。
SKY-HIの凄いところは、アイドルのような美しい容姿でありながらミュージシャンとしての凄みを持ち合わせている点です。その両面を武器にしているアーティストはそんなに多くない。そこが一番素晴らしいですね。
STAMP
ーーTHE CHARM PARKAwesome City Clubchelmicoら、日本の若手アーティストと精力的にコラボレーションされています。それぞれの魅力をお聞かせください。
THE CHARM PARKは才能溢れるギターリストでありながら、ポップな音楽センスを持ち合わせています。そのバランスが絶妙で、ミュージシャンとしてリスペクトしています。Awesome City Clubは、もともと楽曲が好きで。特に「勿忘」は僕自身本当に好きな曲なんです。J-POPなメロディラインに懐かしく思えるようなサウンドが乗り、絶妙なバランスでミックスされている。非常に魅力的ですね。chelmicoは凄くエネルギッシュなグループで、音楽制作をとても楽しんでいる。彼女たちに触発されて僕も楽しくなるんです。彼女たちとのコラボレーションを思い出すと「楽しい」しか浮かばないくらいです(笑)。
●プロデューサー目線で見るタイの音楽業界事情●
STAMP
ーー『タイフェスティバル』でのコンサートにも出演した4EVEのデビューに大きく関わっていらっしゃいます。アイドルオーディション番組『4EVE Girl Group Star』にも、コーチとして参加されていました。アーティストをプロデュースするときに心がけていることは?
僕自身はアイドルをプロデュースするタイプではないけれど、もしやるとしたら、どういったバックグラウンドがあるかなど、彼や彼女が持っているルーツを理解した上でプロデュースしていきます。人柄を理解することに重きを置きますね。4EVEに関しては本当に驚かされました。タイにもこんなに優秀な素晴らしい子たちがいるんだと感激しましたが、オーディションはとにかく大変でした。人を選ぶという特権的な行為にはとても慎重になります。昔は、容姿だけで選んで後から様々な教育をするという手法がありましたが、今はそのような選び方をしません。彼女たちが既に持ち合わせているポテンシャルを十分に理解する。その点を重視したことが正しかったのでしょう。4EVEは次世代を担うアイドルグループに大きく成長しました。
STAMP
ーーSTAMPさんから見たタイの音楽業界について、ぜひ教えてください。
なんといっても今が黄金期でしょう。今までは大きなレコード会社が大金を使ってアーティストを生み出していました。今はインディペンデント(個人)でレーベルを立ち上げるようなインディーズアーティストがたくさんいます。その変化はものすごい。
ーー確かに10年前とは違い、YouTubeなどから気軽にタイの楽曲が聴ける状況になりましたよね。
そうです。レコード会社から、ラジオ局やテレビ局にアーティストを売り込むという手法から、インターネットやサブスクリプションを使ってバズった曲を、ラジオ局やテレビ局が取り上げる時代になりました。つまり素晴らしい楽曲が純粋にフィーチャーされる時代になったと思っています。これは非常にエキサイティングな経験です。
STAMP
ーーそんなT-POPを牽引するSTAMPさんの、今後のプランをお聞かせください。
今年は9月にタイでコンサートを開催するという、一番大きなイベントが控えています。日本だとドームツアーやアリーナツアーもよくありますが、タイではパブやレストランで開催するライブが多い。でも今回は7年ぶりのコンサートなので大きな会場で開催します。日本のファンの皆さんもタイに観に来てくれたらとても嬉しいです。
ーー日本でもぜひ開催してほしいです。
ありがとうございます。実現できたらいいですね。最近、SNSに日本のファンの方からコメントをいただいたり、ライブを観に来てくれる方が増えたりしています。本当に嬉しく思っています。6月22日(水)に「It Could Be Love」の日本語バージョン「愛のせいで」をリリースします。発音がちょっと違ったりするかも知れませんが大目に見てください(笑)。一生懸命頑張って歌いましたのでぜひ聴いてください。
ーー最後に、もしも音楽家になっていなかったら?
(日本語で食い気味に)アイドルオタク(きっぱり)!!
一同爆笑の中、インタビューは幕を閉じた。「引退したら日本に移住して握手会を回りたい。そういう計画をもう立てています。奥さんにも許可を取っているので、これは公式な引退後のプランです」と笑うSTAMP。才能あふれる彼が引退するのはまだまだ先の話だが、いつかその夢がいますように。
STAMP
取材・文=渋谷のりこ 撮影=大橋祐希

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