[Alexandros]川上洋平、敬愛するポー
ル・トーマス・アンダーソン監督の新
作『リコリス・ピザ』について語る【
映画連載:ポップコーン、バター多め
で PART2】

大の映画好きとして知られる[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平の映画連載「ポップコーン、バター多めで PART2」。今回は、川上さんが一番好きな映画だという『マグノリア』で知られるポール・トーマス・アンダーソン監督の新作『リコリス・ピザ』について語ります。
『リコリス・ピザ』
――『リコリス・ピザ』はどうでした?
すごく良かった。淡々と引き込まれていく感覚が心地好いですね。さすがポール・トーマス・アンダーソン。「一番好きな映画は?」と訊かれたら『マグノリア』って答えているので、ファンとしては見逃せない作品でした。話の展開としては、ふと「どういうことやねん……」って思うところはありましたが(笑)、それでも不快感はないというか。ふんわり違和感を出して、華麗に脱線しますよね。
――確かに。
あとこれまでポール監督ってあんまりラブストーリーの印象がなかったかも。『パンチドランク・ラブ』はコメディ要素が強かった気もするし……。
――『リコリス・ピザ』はこれまでの作品の中では一番主軸がラブストーリーですよね。
そう。だから新鮮でした。あと他の作品と比べてより洒落てたな。主役のアラナを演じているのがハイムってバンドのボーカルさんなんだよね。
――そうなんですよね。
ね。映画では観たことない顔だから、最初「新人さんなのかな?」と思ってたんだけど、「雰囲気のある表情や動きするなー」って思って調べて、「普通にこの前ラジオで曲かけてたわ」ってなりました(笑)。
――(笑)アラナはハイム家の三女ですけど、メンバーである姉ふたりとあと両親も出てましたね。
お姉ちゃんだけじゃなく、父ちゃん母ちゃんと一緒に出演するなんて。すごい度胸や。
――ハイムは元々ポール・トーマス・アンダーソンの『ブギーナイツ』が好きで、MVの監督をオファーしたところから付き合いが始まったそうです。
その辺はやっぱり音楽に造詣が深いポール監督って感じですわな。今回の劇伴もジョニー・グリーンウッド(レディオヘッドのギタリスト)が手掛けてるし。繋がってるんやなーと。
――『マグノリア』ではエイミー・マンともタッグを組んでましたし。
そうそう。今回もうひとりの主役のゲイリーを演じてるクーパー・ホフマンは、ポール監督の作品ではお馴染みの故フィリップ・シーモア・ホフマンの息子なんですよね。「なんか見たことあるなー、もしや……」と思ったら当たってた。
『リコリス・ピザ』より
■一筋縄ではいかないんだけど、最終的には爽やかで素敵な気分に浸れる
――15歳と25歳という10歳差の友達以上恋人未満のような関係性のラブストーリーが主軸ですけど、あの関係性はどう見ました?
年上の女性との恋愛って妖美ですよね。15歳と25歳っていうとまあまあな差ですけど、僕は高校生の時に塾の先生と一瞬付き合っていたので。
ーーおお(笑)。
思い出して青春が蘇りました(笑)。
――アラナとゲイリーは、ゲイリーが通う学校のイヤーブックの撮影にカメラマンアシスタントとしてアラナが来たことで出会います。イヤーブックは日本ではあまり馴染みがないですが、川上さんが通ってたインターナショナルスクールではありました?
ありましたね。毎年卒業アルバムの撮影があるようなもんだから、「来年はもっとかっこよく写るぞー!」って気合い入れてたのを思い出しました(笑)。
――そうなんですね(笑)。ゲイリーは俳優業をやりながら、やがて流行りのウォーターベッドビジネスを始め、そこでアラナをアシスタントとして雇います。
あのくだり唐突でしたよね?!(笑)。
――ですね(笑)。
そのビジネスを日本料理のレストランで宣伝してもらおうとするのとか「これはなんのメタファーなの?」って思った。そこですよね。こういうのがしれっと出てくるところ。でもなぜか心地好い。振り回し過ぎない絶妙な演出ですよね。でもショーン・ペンのくだりはさすがにちょっと惑わされた。さすが大量の〇〇〇を空から降らせる男ですよ(笑)(※『マグノリア』のネタバレ)。
――名シーンですね。
だから一筋縄ではいかないんだけど、最終的には爽やかで素敵な気分に浸れるからすごいよね。是非いろんな人に観て欲しいですね。考察するのが楽しいと思う。新鮮だけど実にポール監督“らしい”作品かもとも思った。
『リコリス・ピザ』より
■アラナを面接する役者事務所の年配の女性がちょっと不気味な感じですごく好きでした
――ショーン・ペンもそうですが、他にもブラッドリー・クーパーとかトム・ウェイツとかベニー・サフディとかが癖のある役を演じてましたよね。どのキャラクターが好きでした?
んー……アラナのお父さんかな。
――意外にも。
実際のお父さんが演じてるわけですけど(笑)。ユダヤ教の家庭ってあんまり馴染みがないけど、一昔前の日本家庭ぽさもあるかも?って思った。あ、あと、アラナを面接する役者事務所の年配の女性もすごく好きでした。ちょっと不気味な感じで。そう考えると主人公のふたりが一番まともかも。
――周りの過剰さがふたりの関係性のもどかしさを際立たせてるところもありました。
ね。あの面接する女性は笑い方が魔女っぽくて『千と千尋の神隠し』の湯婆婆を思い出した。あと、僕は 80 年代生まれですけど、70 年代は全く自分が経験していない時代で。それを割とこじんまり描いてるからか、昔の設定という感じがあんまり最初の方はしないんですよね。例えば『ラ・ラ・ランド』は「あー、昔の設定なのかな?」と思いきや現代の話なんだけど、これは逆。
『リコリス・ピザ』より
■『リコリス・ピザ』はポール・トーマス・アンダーソンによる(ほぼ)初のラブストーリー
――ポール・トーマス・アンダーソンのこれまでの作品でおすすめするとしたら?
まずは『マグノリア』と『ブギーナイツ』かな。あと、映画ではないけどトム・ヨークの『ANIMA』も良かった。
――あー、良かったですよね。
『インヒアレント・ヴァイス』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』もその次に観てみるといいかも。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』はアカデミー主演男優賞も取ってるし、一番ヒットしたのかな。というか、こう振り返ってみてもやっぱり『リコリス・ピザ』はポール・トーマス・アンダーソンによる(ほぼ)初のラブストーリーって感じしません?
――しますね。
もし日本でリメイクするなら下北を舞台にしてほしいですね。いや違うな(笑)。
取材・文=小松香里
※本連載や取り上げている作品についての感想等を是非spice_info@eplus.co.jp へお送りください。川上洋平さん共々お待ちしています!

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