これが最後のチャンス! ブロードウ
ェイミュージカル『レント』25周年記
念 Farewellツアー来日公演が開幕

ブロードウェイミュージカル『レント』25周年記念 Farewellツアーが、2022年5月18日(水)に渋谷・東急シアターオーブで開幕した。
1996年、ジョナサン・ラーソン(脚本・作曲)とマイケル・グライフ(演出)によりオフ・ブロードウェイで誕生したミュージカル『レント』。本ツアーはアメリカカンパニーによるオリジナル演出版で、作品生誕20周年を記念して2016年にスタートした。コロナ禍の影響による2度の公演中止を経て、今回は実に4年ぶりとなる待望の来日公演だ。タイトルに「Farewell(お別れ)ツアー」とあるように、20周年記念ツアーとしては最後の公演となる。
以下、初日公演と同日に行われたゲネプロの模様をレポートする。
※ゲネプロ公演はトム・コリンズ役をシャフィーク・ヒックス→トーマス・パーヴィス、モーリーン・ジョンソン役をリンディ・モエ→マッケンジー・リベラとそれぞれ代役での上演となった。
プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』に着想を得て作り出された本作は、20世紀末のニューヨーク・イーストヴィレッジを舞台に物語が展開していく。貧困、HIV、ドラッグ依存といった困難に立ち向かいながらも、懸命に生きる若者たちの等身大の姿を描く群像劇だ。
1989年12月24日。イーストヴィレッジの古いロフトで暮らすのは、映像作家志望のマークとミュージシャンのロジャー。せっかくのクリスマスイブだというのに、彼らは家賃(レント)を滞納していたために電気も暖房も止められてしまう。
そこに親友のコリンズから電話がかかってくるのだが、彼は電話中に強盗に襲われてしまう。怪我を負ったコリンズに手を差し伸べたのは、エンジェルと名乗るストリートドラマー。二人はゲイでHIV陽性であるという共通点を持ち、互いに惹かれ合うのに時間はかからなかった。
マークとロジャーの部屋に、再び電話がかかってくる。マークの元恋人モーリーンからだ。パフォーミング・アーティストとして活動する彼女に、まだまだ未練たっぷりな様子のマーク。彼女のお願いでステージの音響を直しに出向くが、その現場でモーリーンの今の恋人・弁護士のジョアンと鉢合わせしてしまう。最初こそ気まずさはあったものの、自由奔放過ぎるモーリーンに振り回される自分たちを慰め合い、友人となる。
一方ロジャーは、ロフトの下の階に住むナイトクラブのダンサー・ミミと出会い、少しずつ距離を縮めていく。しかし、ロジャーは元恋人・エイプリルの自殺をきっかけに殻に閉じこもっており、なかなか素直になれずにいた。
マーク、ロジャー、コリンズ、エンジェル、ミミ、モーリーン、ジョアン。彼らはモーリーンのステージをきっかけにライフ・カフェへ集い、ボヘミアンとしての誇りを「La Vie Bohème」と歌い上げる。
一度は意気投合した彼らだが、時の流れとともにすれ違いを繰り返し、それぞれの道を歩んでいく。いつのまにか季節は移り変わり、ついに出会いから二度目のクリスマスイブを迎える——
若き芸術家たちが己の信念のため、そして愛する人のために必死にもがきながら生きる姿。それらが心揺さぶる珠玉のナンバーと共に、非常にストレートかつエモーショナルに描かれている。
心を閉ざしたロジャーがひとり歌う「One Song Glory」は、死ぬ前にたったひとつの名曲を残したいと願う、彼のアーティストとしての情熱と心の叫びが込められている。ロジャーもまたHIV陽性であり、人生の残された時間は少ない。
太陽のように明るくその名の通り天使のような存在なのは、ドラァグクイーンのエンジェル。彼女はドラムスティックを手に、「Today 4 U」で人並外れたパフォーマンスで客席を魅了する。エンジェルのパワフルな歌とダンスは一瞬たりとも見逃せない。
コリンズとエンジェルが二人で歌う「I'll Cover You」は、相手を思いやる愛に溢れたナンバー。幸せそうな二人の表情を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになってくる。2幕で登場する「I'll Cover You(Reprise)」は涙なくしては見れない。
ミミがロジャーを外に連れ出そうと歌い上げる「Out Tonight」は、髪を振り乱しながら激しい歌とダンスで会場の熱気を一気に上げる。短い人生だからこそ楽しもうと歌うミミは、ロジャーとはまるで対照的だ。
ホームレス立ち退きに対する抗議活動としてモーリーンがパフォーマンスするのは、皮肉たっぷりのナンバー「Over the Moon」。モーリーンの独創的なアイディアや、何をも恐れぬ力強いパフォーマンスからは、彼女のカリスマ性が嫌という程伝わってくる。
ジョアンとモーリーンがちょっとした言い争いから別れ話に発展する「Take Me or Leave Me」も、前奏が聞こえてきた時点でワクワクしてしまう。両者一歩も譲らず、互いに「ありのままの自分を受け入れて」という主張を歌声に乗せる。恋人が対立してしまうナンバーではあるのだが、非常に爽快感のある1曲だ。
数あるミュージカルソングの中でも特に人気を誇り、本作の代名詞とも言える「Seasons of Love」。人種も背景も趣向も異なる登場人物たちが、横一列に並び「あなたは1年をどう数える?」と客席に問いかける。キャスト全員が生み出す七色のハーモニーは、聴く者一人ひとりの胸に染み渡るに違いない。
上演時間は約2時間30分(休憩20分含む)。東急シアターオーブにて、5月29日(日)まで上演予定だ。記事内では紹介しきれなかったが、他にも「Light My Candle」「Life Support」「Without You」「What You Own」など名曲揃いの本作。劇場へ足を運べば、心に残る音楽に必ずや出会えるはずだ。
なお、本公演では最前列10席を「エンジェルシート」として半額の7,000円で毎公演抽選販売しているという。そこには「若者にミュージカルを」と願った作者ジョナサン・ラーソンの遺志が込められている。心揺さぶる『レント』を劇場で体感するラストチャンスを、どうぞお見逃しなく。
キャストコメント
■ロジャー役:コールマン・カミングス
日本に来るのをずっと楽しみにしていました!
コロナ禍でも劇場で待ってくれている皆さんの存在が自分の支えになりました。
皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
■マーク役: J.T.ウッド
2018年以来の日本公演になります。東京に再び戻って来ることができて嬉しいです!
生きることの大切さを謳う『レント』で劇場に戻って来ることができて幸せです。

取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

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