【鈴木このみ インタビュー】
歌っている時は無敵だと思える
“ULTRA”なアルバムになった
“実は大阪人やねんで”という
ところも見せたくて(笑)
続いて、3曲目「ダメージ小でした」。これは今回もっとも話題が集まる楽曲でしょうね。作詞が野性爆弾くっきー!さんですが、どういう経緯だったんですか?
それはみんなに訊かれます(笑)。アルバムのいいところってシングルに収録できないような曲ができることなので、もっと遊びたくなったんですよ(笑)。特にシングル曲は“生きるってどういうことだろう?”というテーマを、アニメ作品や自分を通してすごく真面目に扱ってきたので、めちゃくちゃ遊び倒した曲をやりたいなって。あと、私は大阪出身なので、大阪弁で歌いたいとずっと思っていたんです。しゃべっているとそこまでコテコテの大阪弁は出ないので、“実は大阪人やねんで”というところも見せたくて(笑)。
まずは“大阪弁の曲をやりたい”という気持ちから始まったんですね。
そうです。で、ナチュラルボーンな関西弁で歌詞を書いていただきたいと思ったので、“だったら、お笑い芸人の方とか面白いかも?”と。予想がつかないくらい歌い散らかしたいと思っていたから、これはくっきー!さんしかいない思ってダメもとでお願いしたら、まさかまさかで書いていただけたという。
でね、最初、くっきー!さんが参加されていると聞いた時、やはり氏のテレビのイメージは破天荒なキャラクターだし、かなり振り切った歌詞になっているのではと想像したのですが、「ダメージ小でした」はそこだけに留まっていない。さすがにジェニーハイのメンバーと言うべきか、ご自身のバンドでは楽曲も制作されているだけあってと言うべきか、素晴らしい歌詞になりましたね。
私もくっきー!さんは天才だと思いました。まず一見して“1行目は《ミジンコくらい鬼みみちぃ》から始まるんだ!?”と驚きがあって。普通の人だったらAメロでこの歌詞は出てこないし、そういうびっくりもあったんですが、全部通して見ると“あれ? ちょっと感動させられている”ってなって。意味もしっかりと通っているし、“どうやってこの歌詞を書いたんだろう?”とすごく思いました。
そうなんです。1番のAメロとかは氏のキャラクターどおりではあるんですけど、サビの《なんちゅうか》や《ええし》をすごくポップに使っていますし、先ほど鈴木さんは“シングル曲では生きるということを考えていたので、アルバムではめちゃくちゃ遊び倒した曲をやりたい”とおっしゃっていましたが、この「ダメージ小でした」もちゃんと生きるということをとらえていて。後半は感動的なんですよね。
そうなんです! レコーディングしている時も、最初はみんなで爆笑していたんですけど、最後のほうはみんなで“あれ? 感動してきた?”みたいになってきて、これはすごいマジックをかけていただいたような感じがします。
《そうやって大人になっていくんし/描いてた感じとちゃうし/でも 良しとするしか無いし》とか深いですよね。芸人としても確かなキャリアを重ねてきた、くっきー!さんだからこそ出てきた内容だと思います。ちょっと哲学的ですらありますもんね。
確かに。子供のまま大人になりたかったけど、そうもいかず、“でも、ちっちゃい良いことがいっぱいあったからいいか!”みたいな。何かすごく人生観を感じる曲ですよね。
そこからアルバムを聴き進めていきますと、6曲目「HELLO」に辿り着きます。この「HELLO」にも新鮮な驚きがありました。現行ワールドサイズのコンテポラリR&B! “これがあったか!?”と。決して音数は少なくないんですけど、各音が密集していないからか、いい意味でシンプルに聴こえます。
いつもの鈴木の楽曲と比べるとめちゃくちゃ歌の隙間がしっかりと作ってあるというか、歌がバン!と飛び出て耳に突き刺さってくるというか、そういう印象を自分も受けました。
少しいなたいブラスもあって、かと思えば幻想的なシンセも出て来たりとか、サウンドはいちいち面白いです。ただ、それでいて、しっかりとグルービーでダンサブルになっている。そこが大きなポイントだと思いますね。あと、コーラスの重ね方も面白く聴きました。
私、もともとダンスが好きなんですけど、もっともっと踊れる曲が欲しいと思った時に、“じゃあ、いっそのこと全部振り切っちゃえ!”っていうことでこの曲を作っていただいたんです。ずっとマイクを持っていなくても成立する曲っていうのをやりたいと思って。
とにかく、かつてのシングル曲にはなかったタイプというところでは新鮮ではあります。
ありがとうございます。これは自分の中でも発売後のみんなの反応が気になる曲ですね。たぶん、この鈴木このみは今まであんまり見ていないと思うので。「ダメージ小でした」のほうは歌詞の内容が話題になると思うんですけど、サウンド的なものは過去の鈴木の延長線上に近いものがあると思っていて。でも、こっちは延長線上にもないものだと思うので(笑)。これは一番反応が楽しみです。
ライヴではもちろんダンスを?
もうバリバリ踊ります!(笑) もともとデビュー前はダンスヴォーカルをずっとやっていたから、デビュー10周年を迎えてそれをやりたくなってきて。
というと、ちょっと原点回帰的な意味合いもありますかね?
そうですね。今まで意外とそんなに出せてなかった部分だと思うし。もちろん今までの武器は武器として持ちつつ、「HELLO」みたいなものもアルバムだからこそやってやろうじゃないかという。
その「HELLO」に続く7曲目「PROUD STARS」も新曲ですね。こちらは作詞がhotaruさん、作編曲が半田翼という「Missing Promise」とコンポーザーが一緒で。そう言われると納得の楽曲ではないかと思います。
あははは。少し幻想的でちょっと狂気的なものもはらんでいて。「Missing Promise」は個人的なイメージとしては少し少女っぽくて、声の作りとかもちょっと高めの位置で歌っているというか、少し鼻にかけてるような歌い方をしていたんですけど、「PROUD STARS」のほうはより大人になって、いろんな物事を分かった上で戦っている人という感じなので、年齢を上げめで歌いました。
「PROUD STARS」は「Missing Promise」とコンポーザーが同じだけあって、地続きな感じはあるんですよ。成長した先の姿というか。ですので、これもまたアルバムに収録すべき新曲だとは思いましたね。