鈴木みのり

鈴木みのり

【鈴木みのり インタビュー】
リスナーの背中を押せるような
楽曲になったら嬉しい

2022年第一弾シングルはTVアニメ『勇者、辞めます』のオープニングテーマ「BROKEN IDENTITY」。これまでになくアグレッシブかつ壮大なロックチューンとなっており、鈴木みのりのパブリックイメージを大きく打ち破る“挑戦作”であると同時に“待望作”でもあると言えるだろう。アニソンの王道に則ったナンバーで見せる新たな表情には、若き彼女の可能性があふれている。

自分のアーティスト像は織り交ぜず
完全にアニメに寄り添って歌った

TVアニメ『勇者、辞めます』の公式サイトで“鈴木みのり名義の楽曲を今まで1回でも聴いた事のある方全員がビックリすること間違いないパワフルな曲”とコメントされていたとおり、ここまでハードなロックチューンがくるなんて驚きました。

初めて曲を聴いた時、自分でも“これ、本当に私で合ってるのかなぁ?”ってドキドキしたんですよ(笑)。この曲がオープニングテーマになっている『勇者、辞めます』って、最初は日常系お仕事異世界アニメみたいな感じなんですけど、話が進んでいくにしたがい、苦しくもアツい戦いが待っているような展開になっていくんですね。そこで日常系なイメージから私を選んでいただき、実際の楽曲は後半のシリアスな部分に焦点を当てたものにしていく…ということで、こういう曲になったんです。

つまり、最初から『勇者、辞めます』ありきで作られていった曲なんですね。

はい。アニメの監督が楽曲についてのこだわりをすごく強く持っていらして。より作品に寄り添った楽曲にするため、作曲のMao Yamamotoさんとの間で作っては直し、作っては直しの作業を繰り返しているというお話も制作の段階から聞いていたんです。なので、普段はアニメの要素も踏まえつつ、そこに鈴木みのりとしてのアーティスト像も織り交ぜながら歌うことが多いんですけど、今回はそうではなく。もう完全に『勇者、辞めます』のオープニングテーマとして歌わせていただきました。とはいえ、キャラクターになりきれるのは実際に演じている声優さんだけなので、それはしたくなくて。その気持ちを第三者が代弁するようなスタンスで、主人公の葛藤とか悩むさまを頭の中で思い浮かべながら、どんどんキャラクターが増えていく物語の展開を意識して歌っていったんです。

いわゆる思春期の葛藤や戸惑いが戦いに昇華していくような楽曲って、アニソンには珍しくないと思うんです。ただ、この曲には“託す”という単語が頻出しているのが特徴的で。そこはアニメのストーリーと結びついているところなんでしょうか?

そうですね。主人公ひとりにスポットライトが当てられつつも、その“託す”だったり“握り返せるよ”といった言葉の端々から、他のキャラクターの表情も浮かんでくるんですよ。この歌詞に描かれているような自我の揺らぎは、私たち大人はもちろん、思春期の方は特に強く感じるものでしょうし、そんな切ない気持ちを疾走感に乗せて歌わせていただくことで、リスナーの背中を押せるような楽曲になったら嬉しいなって。

しかし、これだけパワーのいる曲を、いきなり歌うのはハードルが高いですよね。サビ始まりでキーも高いですし、どんなふうに向き合ったんでしょう?

確かに鈴木みのりのアーティスト像的に、こういう曲は歌う機会がないだろうと勝手に思い込んでましたけど、王道アニソンみたいな曲はもともと好きで、声優になる前にはよく歌っていたんです。なので、昔の引き出しを開けてみたり、キャラクターソングでハードな曲を歌わせていただいた時の心持ちを思い出してみたりもして。それでもレコーディングが終わって、スタッフのみなさんに“良かったよ”と言われても、曲が世に出てファンの方の声を聞くまでは、ずっと“本当かな?”って自信のない気持ちでいました。

ファンの方からはどんな声があったんですか?

“曲が強い!”っていう反応をいただいて、すごく嬉しかったです。カッコ良いか可愛いかで言ったら、自分は可愛いほうの声質だと思うので、やっぱり曲に合うのか不安だったんです。でも、そんな心配は何もいらなかったかのように、みなさん受け入れてくださって。特にハードな曲が好きなフラットなアニソンファンの方からは“やっとこういう曲が来たか!”みたいな声もあったので、アニソンフェスとかで私をチラッと見かけるような方とかは嬉しかったのかもしれないです。確かにライヴで盛り上がるような楽曲は、私の曲にあまりなかったですから。

ライヴになったらどうなるんでしょうね。

きっと赤色やオレンジ系のペンライトがクルクルと回るんじゃないかと(笑) まだ人前でフル歌唱したことがないので、“これを歌いきれるんだろうか?”っていう不安もありますけど、頑張りたいですね。《僕が此処に居る意味》で始まるサビの後半は、特に気持ちがアガってくるところで、普通に歌っている時も、MV撮影でグルグル回っている時も、自分自身の葛藤を重ねて力強く歌えている気がするんです。答えが見えなくても、分からなくても、ただ進むだけという歌詞のメッセージが素敵ですし、サウンド自体も激しいので、ある意味ストレス発散みたいな(笑)、爽快感に似たものを感じましたね。

自分自身の葛藤って、例えば?

例えば、私の周りの仲の良い子たちって、みんなコミュニケーション能力の高い、いわゆる陽キャタイプの人たちなんですよ。自分とは違う人生を歩んでいるので、話を聞くだけでも面白いんですけど、その一方で彼らを羨ましく感じたり、自分も他人と仲良くなりたいのに距離の詰め方が分からないと悩んだり…アニメほどシリアスなことでは全然ないですけど、そういう小さなことはあります。

MVのお話が出ましたが、こちらも今までになくカッコ良いですよね。トンネルの中で激しくもがくさまから、“この狭い場所から飛び出したい!”という葛藤が伝わってきました。

そうなんです。“好きに動き回ってみて、もっと激しく!”とか言われて。曲がカッコ良いのと、ロケ場所が絶妙に寒かったので気持ちも入って、結構な光量のライトを浴びながらカッコ良くやれた気が勝手にしています(笑)。

でも、途中で一瞬笑顔になりません?

あれ、たぶん休憩中にふざけていたところを隠し撮られたんですよ! 私もMVが完成して確認した時に、“これ、いつ撮ったの?”ってびっくりして。でも、それも垣間見える日常だと思えばいいのかも(笑)。
鈴木みのり
シングル「BROKEN IDENTITY」【初回限定盤A】(CD+Blu-ray)
シングル「BROKEN IDENTITY」【初回限定盤B】(2CD)
シングル「BROKEN IDENTITY」【通常盤】(CD)

OKMusic編集部

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