鈴木康博

鈴木康博

【鈴木康博 インタビュー】
カッコ悪くてもいいから、
その時の自分を
そのまま歌っていきたい

1970年にオフコースのメンバーとしてデビューを果たし、以降多くのリスナーからアツい支持を得続けている鈴木康博。音楽活動50周年を記念して、今年1月15日に東京・葛飾シンフォニーヒルズモーツァルトホールで行なったライヴがDVDでリリースされる。デビューから半世紀を経ても音楽に対する情熱を失わない鈴木をキャッチして、今作を軸に過去と現在、そして未来について語ってもらった。

活動50周年ライヴは
何が何でもやりたかった

今年1月に開催された『鈴木康博LIVE2022 おかげさまで50年+2』を、改めて振り返るといかがですか?

私は1970年にオフコースでデビューして、2020年で活動50周年だったんですね。だから、50周年を記念したライヴはもともと2020年にやる予定だったんですけど、コロナ禍の影響で2年伸びて今年に開催しました。コロナが収束しなくてアニバーサリーライヴを諦めたアーティストの方もたくさんいると思いますけど、50周年は何が何でもやりたかったんです。アニバーサリーライヴとかはあまりやりたくないというか、できればやらない方向で…というタイプではあったんですけど(笑)、やはり50周年というのは大きな節目ですからね。僕の音楽を聴き続けてくれているみなさんと長い間ずっと同じ時代を過ごしてきたことを共有したいという気持ちがあったので、2年過ぎようが、3年過ぎようが、とにかくやろうと決めていました。

それはファンのみなさんも本当に嬉しかったと思います。半世紀にわたって活動されているので持ち曲が膨大にありますが、本公演のセットリストはどのように決めていったのでしょう?

とりあえずデビュー曲はやろうと(笑)。あとは、歌詞で何を歌っているかがはっきりしていて、分かりやすい曲を選ぼうと思いましたね。自分の歩みを振り返ると、オフコースをやって、辞めて、オフコースの名残りで活動して、それが潰れてしまって。そのあとにひとりで音楽を始めて、今はなんとか自分でかたちを掴みつつあり、今後もそれを続けられそうだという状態になっている…そんな道を辿りながら、それぞれの時代を歌にしたような曲を選んだ感じです。ちょっと昔のことを懐かしんだり、“この先もまだあるぞ”ということを感じさせる歌詞の曲ですよね。私の場合、恋愛の曲が少ないし、アニバーサリーの時にラブソングを歌ってもあまり意味がないと思うんですよ。恋愛モノのヒットソングがあればたぶん歌ったと思いますけど、幸いなことにないので(笑)。だから、楽曲は選びやすいと言えば選びやすかったです。

言葉が強く響くライヴだということは、当日に観ながらも感じました。鈴木さんが作られる音楽はリアルな歌詞も大きな魅力になっています。

私たちはいわゆる作詞家の先生が書いた歌詞を聴いて育っているんですよね。作曲家の先生が曲を書いて、作詞家の先生が歌詞をつけるのがあたり前の時代だったから。その結果、言葉の使い方がちょっと均一化されてしまうというか、誰が歌っても同じなんじゃないかという感じになってきたところで、自分の曲を自分の言葉で歌うといった自分の生活をそのまま歌にするというフォークソングの人たちが大勢出てきたんです。松任谷由実さんの《こんな気持ちのままじゃ》(「冷たい雨」)を最初に聴いた時は、“歌詞じゃないじゃん”と思ったけど、先生が書く歌詞とは言葉の響き方が全然違うし、ああいう歌詞じゃないとユーミンが書く意味がない。自分にとってリアルな言葉じゃないと意味がないとだんだん気づいていったんです。特にオフコースの後期から、ひとりになったあたりでそれを強く感じるようになって、日本にただひとりのような価値観で歌詞を書くべきだと思うようになりました。

それがいい結果を生みましたね。

ありがたいことに、そう言ってくださる方はたくさんいらっしゃいます。例えばシングルを作るとなると、やっぱり恋愛の歌でいくことになるんですよね。でも、あまり経験がない中で書かないといけないからうまくいかないんですよ(笑)。みんなそういう状態で書いて、その曲がヒットしているわけだけど、私はそれができなかった。だから、自分が書きたいことを書けるようになるというのが、ずっと続けてきた作業なんです。ただね、とにかく恥ずかしいんですよ、自分が思っていることを歌詞にして、それを読むと(笑)。“なんて情けない奴だ”と自分で思うわけですよ。“この自分が書いた歌詞はどうなのか?”と、いつも問いかけながらやってきている。でも、それが作家としての作業なので、自分の感性やものの見方を捨ててはいけないと思っています。

ずっとそうあってほしいです。もうひとつ、言葉を重視するとメロディーとうまくハマらないことも多いわけですが、それを両立させているのも流石です。

そこに関しては言葉を乗せた時のメロディーとか、リズムの変え方が分からない人が多い気がしますね。自分が作ったメロディーを一回分解して、もとのメロディーに近いかたちで言葉がうまく乗るように作り直す作業をしないといけない。そのためには音楽の知識、特にリズムが分かっていないと、とっ散らかってしまうんですよね。そこはかなり綿密にやっています。
鈴木康博
DVD『鈴木康博LIVE2022 おかげさまで50年+2』

OKMusic編集部

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