アルゴナビスの足跡を辿るアコーステ
ィックツアー「アルゴナビス Acoust
ic Tour 2022 -Spring Session- fea
t. Songful days by SPICE」レポート

昨年に引き続き、2022年4月2日からおよそ1ヶ月間をかけ全国各地のライブハウスを行脚してきた春のアコースティックツアーの最終日として、2022年4月23日(土)神奈川県カルッツかわさきにて「アルゴナビス Acoustic Tour 2022 -Spring Session- feat. Songful days by SPICE」が行われた。七星蓮役の伊藤昌弘と五稜結人役の日向大輔を軸に、各地で様々なゲストを迎えて開催されてきたツアーだが、最終日の神奈川公演では昼公演のみ、曙涼役の秋谷啓斗を迎え、また弊メディアSPICEが展開する配信ライブ「Songful days」とのスペシャルコラボ回となった。今回はそんな昼公演の様子をレポートする。Songful daysらしい音楽と朗読で織り成す世界観をとくとご覧いただきたい。

「アルゴナビス Acoustic Tour 2022 -Spring Session- feat. Songful days by SPICE」と非常に長いタイトルが銘打たれた本公演だが、まずはその経緯から説明しておく必要があるだろう。弊メディア『SPICE』が展開する「Songful days」は”迷い込んだ森の奥で見つけた音楽会”というコンセプトの元に人気声優たちのナレーション✕実力派アーティストによるここだけでしか聞けないアコースティックアレンジをお届けする配信限定の公演シリーズで、現時点で4公演を行ってきた。2022年2月3日に開催された通算3回目となる公演では、“with Argonavis”として伊藤・日向のご両人にライブアクトとして出演いただき、またその幕間等では声優の芹澤優にナレーションを担当していただいた訳なのだが、そんな縁からアコースティックツアーを展開していくアルゴナビスからの“逆コラボ”的なオファーから、今回の公演が実現した。
つまり、ただのアコースティックライブだけではなく、幕間でアナザーストーリー的なここだけでしか知り得ないアルゴナビスの物語が紡がれていった訳なのだが、そんな公演とあってキャストの3名はもちろん、会場に居合わせたファンもよく知るキャラの意外な一面を知ることができた貴重な体験になったことであろう。
撮影:敷地沙織
前置きが長くなってしまったが、舞台の幕が上がると、そこには日向と秋谷の姿が。どうやら今回は結人と涼のストーリーが紡がれるらしい。陽気な春の天気に誘われ、街をブラつく涼がふと足を止めた先には楽器店が。そこには偶然、ギターのメンテナンスに訪れていた結人も居合わせており、2人でお茶でもする流れに。「結人くんに聞きたかったことがあるんだ」と涼から改めてアルゴナビスのメンバーとの出会いについて質問されると、結人は「バラバラだった俺たちをひとつにしてくれているのは蓮なんです。あいつの歌や想いがアルゴナビスを繋いでくれてる、そんな気がします。今でもカラオケで聞こえてきたあの歌声が忘れられないです。」と、その出会いを語る。
撮影:敷地沙織
舞台が暗転すると秋谷に変わり伊藤が現れ、そんなカラオケボックスでのひとコマを思い出させる選曲の「超夢宙閃隊<スターファイブ>より愛を込めて」と「ゴールライン」を2曲続けて披露。ギター1本と2人の歌声だけで作り上げてきたこのツアー、舞台上にも華美な装飾は一切なく、2人を照らし出すバックライトと譜面台、そして2人が腰掛けるスツールくらいしかないシンプルなステージだが、それがまた2人が発する声や音によりフォーカスさせる演出となっていたのも事実だ。
撮影:敷地沙織
「こんな話をしていたら、アルゴナビスとの初ライブを思い出しちゃった。」と切り出す涼。まだまだ当時は未熟だった部分も多く、自分を責め立てるような結人に「どうしてそう思うの?」と優しく語りかけていく。「那由多は勝ち負けにこだわるけど、オレはそんなことどうでもいいんだよね。」と2人の価値観をすり合わせていく。「誰かに認めてもらわなくちゃ! ってムキになってた事もありましたけど、凛生にもそんなエゴのための音楽なんてくだらないって言われて、気付きました。」と、そして「オレ、五稜結人はアルゴナビスという船の一員です。迷う事もあるけど、星の海を進み続けます!」と想いを決意に変える。
撮影:敷地沙織
「オレの星まで届くかな?」「届けてみせます」と会話を結ぶと再びアコースティックパートへ。
3曲目の「流星雨」も当然アコースティックverで演奏される。原曲とは異なり、優しく歌い上げていくその様は、まるで涼のおっとりとした語り口のようにも聞こえてくるし、そんな2人の会話と結人の想いを改めて確認した直後に聞くと、その歌詞がダイレクトに心に刺さる。続く「STARTING OVER」ではホット&クールに歌い上げ、また照明に応じるように場内のペンライトも青と赤を交互に繰り返す。「As Is あるがままで」は臆病な自分と戦い続け、その結果あるがままを恐れないという結人そのものだし、結人のソロ弾き語りで披露された「Shining Rain」では即座にオレンジのペンライトで埋め尽くされた。
撮影:敷地沙織
撮影:敷地沙織
「そういえば万浬くんはもう大丈夫?」とシーンは再び喫茶店の中の涼と結人へ。「ディスフェスの時の演奏は素晴らしかったから、話を聞いた時はびっくりしたよ。」とフェスの苦労話や楽しかった思い出が蘇ってくる。「アルゴナビスは導かれてる気がするんだよね、船は漕ぐ人の気持ちを合わせないと前に進まない。きっと5人が出会ったのも、これまでの事も運命なんだよ。」と涼が語りかけると「そうかもしれないですね。あいつらと一緒だったからここまで来れたし、この先にも行けない気がします。」とバンドへの想いの強さを再確認し、翌週のGYROAXIAとの対バンに向けて、互いの健闘を祈り合うも「今日はオレのおごり! ケンケンからお小遣いもらったばかりだし」と気前のいい涼に対して「やっぱり敵情視察なんじゃないですか~?」と結人。まさか対バンの前にこんな微笑ましいエピソードがあったなんて……と思わず顔がほころんでしまう。

撮影:敷地沙織
そんな朗読劇の直後に聞く「Starry Line」は結人のアルゴナビスに対する想いの強さや、蓮との絆を深く感じられた。アコースティックで聞く「VOICE」は5人ではなく2人で歌い上げたわけなのだけれども、だからこそ織り成すように掛け合う2人が互いに語りかけているようにも聞こえ、1本のギターと2人の歌声だけなはずのに奥行きのあるパフォーマンスに思わず聞き惚れてしまった。そして「Pray」では「信じる、またあの場所で会おうよ」と歌う蓮に優しく寄り添うような結人のギターのセッションがもはや尊い。
撮影:敷地沙織
そして時は流れ、最後の朗読パートでは対バン直前の舞台裏へ。「あ、涼さん、今日はよろしくお願いします!」と蓮も登場し「曙さん、先日はごちそうさまでした」「えっ? 結人、涼さんと何かあったの?」「コーヒーをおごらせてもらいました~」と物語が進んでいく。「結人くん、まだ東京のステージは怖い?」と涼はいつも核心を突くような事を聞いてくるが「全然! 宇宙から見たら札幌も東京も同じようなもんですから!」と喫茶店の時とは異なり今度は力強く答える。そして蓮には「いつか見た希望にはたどり着けたかい?」と問う涼に「いいや、俺たちの理想はもっともっと遠くです!」と答える。「オレが許される日はひょっとしたらそう遠くないのかもな。……オレも準備しなきゃ、那由多にまた怒られちゃう」。最後に披露した「リスタート」はまさに幾多の航海を乗り越えてきたアルゴナビスという船、そのものであると強く再認識したのだった。
撮影:敷地沙織
再び舞台上には今日のキャスト3名が揃い、エンドトークへ。「色々あったけど、涼ってケンケンからお小遣いもらってるんだね!」と秋谷が口火を切ると、会場は大盛り上がり。ここまでツアーを一緒に回ってきた日向が、まさか伊藤の名前をド忘れするといったハプニングもありつつ、改めて「Songful days」とのコラボならではのキャラ同士の深掘りに話題は移る。「結人と涼っていう組み合わせが意外だったよね」と日向が話しかけると、カフェ巡りが好きだという秋谷は「2人はどんなカフェに行ったんだろう? ってスゴく気になるんです。カジュアルなお店なのか、純喫茶みたいなところなのか……」と考察に花を咲かせた。いずれにせよ「出会ったことのないキャラに出会えたのが嬉しかった」という言葉がキャスト自身から出てきた事が、今回の公演に意義を持たせてくれたように感じた。1本のギターと3人の声が音となって場に放たれることで物語は広がりを見せる。シンプルなように見えて非常に奥深い、だからこそ創意工夫が映えるし、きっと経験値も多いはずだ。それは演者だけでなく、観客も同じだ。アルゴナビスの足跡を辿るアコースティックツアーは、そこに居合わせたもの全員に更なるコンテンツの奥行きを届けてくれる宙船のような公演だった。
レポート・文:前田勇介 撮影:敷地沙織(c)ARGONAVIS project.

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