SUIREN『Sui彩の景色』

SUIREN『Sui彩の景色』

2020年7月より活動を開始した“水彩画のように淡く儚い音を描くユニット”SUIRENのヴォーカルSuiが、ヴォーカリストSuiになるまでのエピソードを描くコラム連載。Suiを彩るエピソード、モノ、景色をフィルムカメラで切り取った写真に乗せてお届けします。

文・撮影:Sui

先輩後輩という関係は不思議だ。
先に産まれたか後に産まれたかで、敬われる立場と敬う立場が決まってしまうのだから。
そんな不思議な上下関係の世界に僕も足を踏み入れる事になる。

それまで〇〇君とか〇〇ちゃんとか、年齢が離れていても仲が良ければあだ名や呼び捨てで呼んでいた。

ところが小学校を卒業して中学校に入学すると、数年前まで友人の様な関係だった同校生達は完全に〝先輩〟になっていた。
そして、中学では着る物の自由もなかった。
男子は学ラン、女子はブレザーを着なければならず、何故皆似たような格好をして、先輩にビクビクして生活しなければならないのか僕にはよく分からなかった。
僕の小学校の同級生達はそのまま全員同じ中学校に進学し、もう一つ近くの小学校の半数程度の生徒達が入学してきた。
クラスがまた一から作られる事に関しては誰しも期待と不安が入り混じると思うが、
小学校に入った時の逆パターンで今回の僕は多数派だったので、そこに関しては多少気が楽だった。

しかし、そんな上下関係、服装、人関係以上に僕を憂鬱とさせる大きな理由が一つあった。
それは、合唱部が無いことだ。
勿論、軽音部もなかった。
つまり歌える部活が無いという事だ。
自分の一番の特技を活かす事の出来ない中学校生活は、僕にとってフラストレーションが溜まる日々になる事は明白だった。

「何か部活に入りなさい」と親に言われても、
一体自分がこの三年間で何がしたいのか全く分からなかった。
歌が歌いたいと思っていても、それをどう解消すれば良いのか分からなかった。
例えば合唱部を作ろうとか軽音部を作ろうとか、そういった事をするのは余りにも無謀に思えたし、思春期に突入していた僕にとってその動機が「歌が歌いたい。」というのも、なんだか恥ずかしく思えた。

だから、なんでも良かった。
少なくともこの学校生活の中で打ち込める何かを見つけたかった。
いや、もっと言えば言い訳が欲しかったのかもしれない。
何かに打ち込んでいる。努力している。
そう見られたかったのかもしれない。
当たり前の事だが、この頃から急に勉強や進学について親や先生は口うるさくなった。
兄は地元で一番偏差値の高い高校に進学していたし、当然僕もその高校に行くのだと思われていた。
そんな、親や先生に対して自分は頑張ってるんだと思われたかったのだと今では思う。
だから、僕は部活に入ることにした。
そして、すぐレギュラーになれそうだから、それだけの理由でバレーボール部に入部する事になった。
当然練習に身が入るわけもなく。
更にバレーボール未経験の先生が形だけ顧問として存在し、普段の練習を見に来る事もなかった。
いわゆる弱小バレーボール部だった。


まるで抜け殻のようだった。
勉強にも部活にも大きな価値は見出せなかった。
だが、勉強する事も、部活動も、学ランを着る事も、先輩を敬う事も、それが当然だから仕方のないことだった。
それでも、学校では明るく振る舞っていた。
誰しもが心の奥に何かを秘めているものだ。
僕もそうだった。
この憂鬱さをどう説明したら良いのかも分からなかった。
家に帰って、夕食後リビングでテレビを観ることは減り、その代わり部屋に篭ってラジオを聴く時間が増えた。
ラジオは音楽に溢れていた。
「SCHOOL OF LOCK!」が当時特にお気に入りの番組で、当時旬のバンドのメンバーが講師(パーソナリティー)として出演していたし、同じくらいの年頃のリスナーが送ったハガキを講師が読んで、悩みに応えたりエールを送る。
その言葉や、同じような悩みを抱えてる人が他にもいるということ自体に僕は励まされていた。

この頃から音楽への憧れは日増しに強くなっていった。
歌いたいという気持ちが前提としてあって、
どうしたら歌を歌い続けられるのかずっと考えていた。
楽器を弾いて、曲を作って、詩を書いて、プロのミュージシャンにでもなれば、それが歌う理由になるのではないか?
そうなれば、「ただ、歌いたい。」そんな事を言っても許されるのではないか?
そんな事を考えるようになっていた。

悶々とした日々の中でも、楽しい瞬間はあった。
例えば文化祭だ。
文化祭ではクラス対抗の合唱コンクールがある。
だが、思春期特有の恥ずかしさから、合唱が大好きだというような素振りは見せなかったし、「男子ちゃんと歌いなよ!」と女子に言われない程度には真面目にやっていたが、本気で優勝を目指して頑張ろう!とクラスを引っ張っていくような事はしなかった。
結果的に、小学校時代の合唱部で一緒だったリーダーシップの取れる女子がいたので、その子中心にクラスがまとまって一年生の時に学年一位を取ることが出来た。
その時→事は勿論とても嬉しかった。

しかし、それ以上に僕はこの文化祭である重大な光景を目にする。
それは、上級生のバンド演奏だった。
クラスの出し物とは別に、オーディションに合格すれば有志メンバーで全校生徒の前でパフォーマンスが出来るということだった。
この時の先輩の演奏がかっこ良かったとか、上手かったとか、そういう話ではない。

「これだ!!」
そう思った。
歌う場所を作れば良いんだ。
本気で全力で歌える場所を。

文化祭の後、僕はずっと考えていた。
この話をどう切り出すかを。
バレーボール部には小学校の頃からの友達がいて、彼はASIAN KUNG-FU GENERATIONの大ファンで、風の噂によるとギターもベースも弾けるという話だった。
部活が終わって帰り道はいつも一緒だった。
まだ汗ばむ季節だった。
他の奴に聞かれるのはなんとなく嫌だった。
だから、彼と二人きりになれる瞬間を探っていた。
そして、その日はすぐにやってきた。
僕の家は丘の上にあって、その丘を登る坂道の下が友人達との別れ道だった。

いつも通りの別れ際。
話の脈略がどんなだったのかはっきりと思い出せない。
もしかしたら脈略なんてものすら無かったかもしれない。
ただ、今伝えたい事を言わなければ後悔する気がした。

「ねぇ、バンドやろうよ。」

PS
そんな思春期から時は過ぎ2022年。
皆さんいかがお過ごしでしょうか?
TVアニメキングダム第4シリーズ観ましたか?
本当に僕らの音楽がテレビの中から聴こえてきた瞬間、鳥肌が立ちました。
音楽続けてきて良かったな。
Sui彩の景色を書いていてふと、小中学生の頃の自分がこの事を知ったらどんな反応するのかな、なんて考えたりしました。
とはいえ僕達はまだまだ皆さんに聴かせたい曲が沢山あります。
これは、そんな〝これから〟の曲達をマスタリング中のスタジオから一枚。
5/25にSUIREN 1st Single「黎-ray-」がリリースとなります。
全3曲入り。
お楽しみに。
SUIREN プロフィール

スイレン:ヴォーカルのSuiとキーボーディスト&アレンジャーのRenによる、水彩画のように淡く儚い音を描くユニット。2020年7月に最初のオリジナル楽曲「景白-kesiki-」を動画投稿サイトにて公開すると同時に突如現れ、数々の作品を公開し続けている。Suiの独特な歌声から生まれる淡く儚いメロディーと、Renが作り出す美しく洗練されたサウンドが交じり合い、唯一無二の世界を構築している。SUIREN オフィシャルHP

【連載】SUIREN / 『Sui彩の景色』一覧ページ
https://bit.ly/3s4CFC3

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