【FUNNY THINK インタビュー】
激情型応援歌を掲げる
FUNNY THINKが
完成させた“決意”の1stアルバム
フルアルバムに向かう数カ月で
“きっと”を確信に変えたかった
昨年9月にシングルとしてリリースした「僕らはきっと美しい」はMVの再生回数が36万回を超えるなど、現在ではFUNNY THINKの代表曲として認知されていますが、確信が持てずにいることを思わせる“きっと”を使った“僕らはきっと美しい”から、断言するように“ライフイズビューティフル=人生は美しい”と掲げた今作までの間に大きな心境の変化があったようですね。
金野
「僕らはきっと美しい」のリリース後にツアーで20カ所くらい回ったんですけど、その“きっと”を確信に変えようと思って、各地でライヴをしてきました。この曲を書いた時は、まだ確信できずにいたんです。若さゆえの迷いみたいなものもあって、落ち込む時もあるし、流される時もあるし。流されないように頑張っても、僕らのような20代前半の若者が自分の人生に対して確信を持つって難しい。それで“僕らはきっと美しいんだよ”というニュアンスで曲を書いて、そこからフルアルバムに向かう数カ月間の中で確信に変えていきたい、変えられるようなアルバムにしたいと考えたんです。
なるほど。確信に変わったのはツアーが大きかったのですか?
金野
それもあるんですけど、やっぱり「僕らはきっと美しい」がいろいろなところで評価されたことが大きいです。共感してくれる人が増えてきたことで、曲自体も肯定されたと思えました。
全曲の作詞作曲を金野さんが手がけていますが、社会的なメッセージを歌ったハードコア調の「CHANGE」やファンキーなところもある「(No)minority」など、曲調の振り幅も金野さんが考えているのですか?
金野
そうですね。「CHANGE」はBRAHMANを意識しました。どういう表現をしているにせよ、強いメッセージを持っているバンドが好きで、その中でもBRAHMANは昔から大好きなんです。ひとりのミュージシャンとして、自分もそんな表現をしていきたいと思って作りました。歌詞に関しては人種差別の問題を勉強してから書いたんです。「(No)minority」は「CHANGE」とは逆で遊び心ですね。《生ビールでも飲みに行こう》という歌詞も含め、ちょっとふざけながら自分の素直な気持ちを歌っています。韻を踏んでいるのはヒップホップを意識しました。
ギターのカッティングやベースのスラップも聴きどころだと思いました。その他にも「陽はまた昇る」のエモいと言うか、ちょっと押さえた切ない曲調とか、「夏の記憶」の和メロや、バラードの「カゼノシラセ」、アコースティックギターでの弾き語りの「ライブハウス」なども新たな試みだったのでは?
金野
「陽はまた昇る」はMarcyと僕がかけ合うコーラスも聴きどころだと思うんですけど、Aメロ、Bメロ、サビ、Cメロのすべてのメロディーが同じコード進行で成り立っているんです。それにもかかわらず、同じメロディーが出てこないというちょっと特殊な、自分ではやったことがない作り方をしました。「夏の記憶」はおっしゃるとおり和メロなんですけど、和メロにシンガロングってあまりないと思って、そこにチャレンジしてみたんです。「カゼノシラセ」は初めて3拍子の曲を作ってみたことに加え、昨年2月に亡くなった祖父のことを題材にしつつ、聴く人によっては恋愛の曲にも聴こえるように歌詞を書いてみました。メロディーもすっと耳に入ってくるようなものにできたと思います。「ライブハウス」は個人的にアルバムに弾き語りの曲が入っていると嬉しくなっちゃうので、それを自分でもやってみました。
「夏の記憶」はパートごとにリズムが変わるドラムも聴きどころではないでしょうか?
森
歌を聴かせるためにできるだけドラムはシンプルにしようと考えているんですけど、「夏の記憶」は一番好きな曲だからチャレンジしようと思って、自分の中でハードルを高めに設定してみたんです。聴く人によっては“そこでこれやっちゃうの!?”と思うかもしれないですが、ドラムを始めた頃のいろいろやってみたいという探求心を詰め込んでみました。
演奏面でも新たなチャレンジがあったのですね。
金野
チャレンジと言えば、これまで以上に多いシンガロングですね。昨日もライヴだったんですけど、2曲目の「君への歓声」は曲の半分ぐらい全員で歌っているんですよ。自分たちは体育会系のライヴをするので、過呼吸気味になるというか、シンガロングが多いとしんどいのですが、アドレナリンが出て気持ち良いみたいなところはあります(笑)。8曲目「逆光」の演奏面ではMarcyにリードっぽいフレーズを多めに入れてもらったので、そこも聴きどころです。
Marcy
やっぱり3ピースなのでシンガロングもそうなんですけど、ひとりひとりの役割が大きくて、どれだけ曲に貢献できるのかってところがあって、曲の良さを最大限に引き出すために今回はリードっぽいフレーズを弾くことが多かったですね。
ドラムはいかがでしたか?
森
「夏の記憶」は詰め込みましたけど、新たなチャレンジという意味では歌を聴かせる上でも、いろいろなプレイにチャンレジしてみました。例えば8ビートで普通に聴かせていたところを少し抜いてみたり、キックだけにしてみたり、今までの作品の中ではドラム単体としても聴き応えがあると思います。
無理やり音を詰め込むのではなく、休符を生かした金野さんのギタープレイも印象的でした。
金野
歌を邪魔したくないので、どうすれば歌詞やメロディーが伝わるのかと考えた結果ですね。レコーディングだったら重ねて録れるからパワーコードを弾いても問題はないんですけど、ライヴでやる時に薄っぺらくならないようなコード感を考えて、聴こえ方がちょっと変わるオンコードや開放弦を使ったコードを意識して使っています。
では、アルバムの収録曲の中からフェイバリットソングを挙げるとしたら?
Marcy
僕は「陽はまた昇る」です。まずメロディーがいい。曲の切ない感じも、自分のベースプレイも気に入ってますし、コーラスもきれいにできたと思います。
森
やっぱり、「夏の記憶」ですね。これまでは「(No)minority」だったんですけど、聴きながら情景が浮かんでくる瞬間があったんですよ。これから季節がだんだん夏に近づくにつれ、聴く回数も増えると思います。
金野
僕は「僕らはきっと美しい」ですね。冒頭と最後のシンガロングの歌詞に自分の言いたいことを詰め込めた気がします。同世代の人たちには刺さってくれると思います。
ところで、アルバムのジャケットの着ぐるみの中には、ご自身が入っているのですか?
金野さんは98年生まれだから寅年ですよね?
だから、虎なんだろうなと思ったのですが、森さんは金野さんと同い年でしたよね?
森
あっ、学年は一緒ですけど、99年の早生まれなんですよ。
じゃあ、兎年ですね。そうするとMarcyさんがなぜ牛なのかなって(笑)。
Marcy
僕は辰年なんですけど、龍の着ぐるみがなくて…というか、干支で合わせているわけではないんですよ。
あっ、そうなんですね(笑)。
Marcy
たまたま着ぐるみを選ぶ過程で、一晟さんと森さんはそれぞれの干支になったんですけど、“じゃあ、龍もあるかな?”と思ったらなかったから牛にしました。牛が好きなんです。
なぜ着ぐるみに入ることになったのですか?
金野
僕らのレーベルをやってもらっている盛岡のライヴハウス、ClubChangeの社長のアイディアなんですけど、多様性を表現したかったんです。曲にもそういうところがあると思いますし、単純にレコード店に並んだ時に目立つっていう理由もありました。確かにレコード店に挨拶に行ったら、やたら目立つんですよ。“あっ、変なCDがある”って目に止まって、手に取ってもらえるんじゃないかという期待も込めました。
確かにインパクトがありますね。さて、5月16日からは『FUNNY THINK 1st full album 「ライフイズビューティフル」Release “LIFE IS BEAUTIFUL TOUR”』が始まり、6月4日には『SATANIC CARNIVAL 2022』に出演することも決まりました。ハイスタが始めたレーベル、PIZZA OF DEATH主催のフェスだけに感慨深いものがあるのでは?
金野
発表されるまで実感が湧かなかったんですけど、ラインナップに自分たちの名前が載り、タイムテーブルも公開されて、ようやく楽しみになり、緊張感も湧いてきました。昔から憧れていたフェスにこんなに早い段階で出られるなんて思っていなかったので、もちろん緊張よりも楽しみのほうが大きいんですけど(笑)。
森
あの舞台でやる以上は自信を持って、いいライヴをしなきゃいけないですよね。ライヴバンドとしての意地とプライドを持って臨もうと思ってます。
Marcy
たくさんの人にも観てもらえる機会でもあるので、自信を持って自分たちの音楽を伝えたいです。
取材:山口智男
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アルバム『ライフイズビューティフル』2022年4月20日発売
FIGHT BACK RECORDS
ファニーシンク:岩手県盛岡市在住のロックバンド。盛岡を拠点として精力的にライヴ活動を展開している。2021年9月にリリースしたシングル「僕らはきっと美しい」は、YouTubeで公開したMVの再生回数が39万回を越え、同曲も収録された1stフルアルバム『ライフイズビューティフル』を22年4月にリリース。6月4日に開催されるPIZZA OF DEATH主催の『SATANIC CARNIVAL 2022』への出演も決定している。FUNNY THINK オフィシャルHP
「逆光」MV
「僕らはきっと美しい」