【Dortmund Moon Sliders
インタビュー】
世の中のネガティブなことから
離れられるような
アルバムを作りたかった
音楽から映像のクリエイティブまで全てセルフプロデュースで活動するDortmund Moon Slidersが、1stアルバム『Life Is Beautiful』を完成させた。同作は温かみや洗練感をまとっていながら、軟弱ではないという彼らならではの魅力を堪能できる。新進気鋭という言葉が似つかわしいメンバー全員のインタビューをお届けしよう。
せめて音楽だけでも明るいものを
聴きたいという気持ちがある
OKMusic初登場ということで、ますはバンドのプロフィールをお聞きしたいです。Dortmund Moon Slidersはどのように結成されたのでしょう?
PETAS
もともと一緒にバンドをやっていたり、音楽でのつながりがあったメンバーなので、なんとなく“新しくバンドをやりたいね”という話をしていたんです。その頃は東京から離れているメンバーもいたんですけど、ちょうど一緒に活動していける環境になったので、2019年の春に結成しました。
結成した時点で目指す音楽性やバンド像なども見えていましたか?
PETAS
音楽性について話し合うことはなくて、僕が好きなように曲を書いて、みんなでかたちにするというやり方をしてきています。最近はコロナ禍の影響もあってみんながDTMを使えるようになり、よりそれぞれの色が出やすくなったというのはありますね。データでやりとりすることで、以前は細かいところまで詰めきれていなかったのが解消されていると思います。
コロナ禍というネガティブを逆手にとって、いい方向に進まれましたね。キャリア初のアルバム『Life Is Beautiful』を作るにあたっては、テーマやコンセプトなどはありましたか?
PETAS
今は暗いニュースが多いじゃないですか。パンデミックがあったり、戦争が起きているし、SNSで他人を中傷したり、やれ暴露だなんだと言って人を蹴落とそうとすることが頻繁に起きているので、せめて音楽だけでも明るいものを聴きたいという気持ちが僕の中にありました。だから、今作は聴いた時に一瞬でも世の中のネガティブなことから離れられるようなものにしたかったんですよね。それをみんなに話すことはしなかったけど、自然とイメージしていた仕上がりになったと思っています。
JIPON
このバンドはいつもそうなんですよ。PETASにテーマを訊くこともあるけど、基本的にはPETASが作った曲を聴いて、“こうしたいんだろうな”と推し量る。それをもとに3パターンくらい考えて、“これが欲しいんだろうけど、自分はこうしたいので一応入れておきます…”みたいな(笑)。そんなやりとりをする中でPETASがイメージしているものがより明確になっていくんですよね。
盲目的にPETASさんの意向に従うのではなく、自分がやりたいこともちゃんと示すというのはいいですね。『Life Is Beautiful』は統一感を持たせたうえで幅広い楽曲が収録されていることも注目です。
PETAS
そこはしっかりやれたことを感じています。今回自分の中でキーになった曲を挙げるとしたら1曲目の「Jubilee」と最後に入っている「Life Is Beautiful」ですね。この2曲は比較的最後にできた曲で、頭と最後に置くことでアルバムの軸になったというか、テーマを統一する曲にはなったと思います。僕はお風呂に入っている時に曲が浮かんでくることが多くて、「Jubilee」もお風呂でコーラスの部分を思いついたんですよ。出てから曲を作り始めたら、それこそ数時間でデモができて。それをメンバーに送って、TATSUがすぐにドラムを入れてくれて、そこからのみんなのリアクションが良かったんですよね。あれよあれよという間にみんなが音を入れてくれて、当初は今の流行りの音楽を意識しているようなところもあって、僕はチャカチャカしたギターをデモに入れていたんですけど、MARUがUK感のあるギターを入れてくれたんです。
MARU
僕はカッティング系はちょっと苦手なんですよ。だから、自分が聴いてきた音楽の匂いを活かすことにしました。僕は中学生くらいの頃はUKやUSのロックだけでなくメタルとかハードコアも大好きだったんです。
えっ、そうなんですか?
MARU
はい(笑)。「Jubilee」にそういう要素を入れたら面白いんじゃないかと思いまして。それに、メインのリフはこういう曲であまり使わなさそうなものをやってみたらハマったんです。そんなふうに自分の個性を活かせたという意味で、この曲は思い入れがありますね。
「Jubilee」は独自の洗練された味わいが光っています。歌詞は“人生を楽しく過ごそう”と歌っていますね。
PETAS
それが今作で伝えたいことだったので。「Jubilee」のデモができた時に、“この曲はアルバムを引っ張っていく曲になる”と確信があったので、そのせいか歌詞が全然書けなくなってしまったんですよね。当日の朝4時くらいに歌詞を書き上げて、スタジオに向かう電車の中でもデモを聴きながら、細かい部分を直して、歌入れ中も直していたので、エンジニアさんに“全然歌い慣れていないよね”と言われました(笑)。そんな苦労もあったけど、納得のいくものに仕上がって良かったです。