近石 涼

近石 涼

【近石 涼 インタビュー】
歌いたい歌があるから、
どんどん言葉があふれ出てきた

“誰かの背中を押したい”
という想いは変わらない

エレキギターを手にし、バンドセットでの経験も踏まえて、望んでいた近石 涼サウンドができつつある感覚があり、「自分なんて捨てられれば」にしっかり表れたのかなと。ジャケット写真も初めてエレキギターを手にしていますしね。でも、楽曲が放つ近石さんのメッセージは変わらない。

はい。音楽的なプラスアルファは大きいですけど、やっぱり根本的には変わらないですね。短い言葉で言えば、僕は“誰かの背中を押したい”という想いは変わらないです。この曲もサビの《自分らしさなんて捨てられれば/生きていくのなんか楽だろうね》というフレーズは、「兄弟 II」を作ったと同時期にもうメモに残していたものだったんです。大学を卒業し、自己実現に向けて歩んでいく同級生がいる中で、僕自身の迷いや葛藤もあったし、もし自分が会社員として働いていたら、みんなと同じように戦うことができるのかなとか、いろいろ考える中で出てきた言葉だったんです。それを今、改めて曲にできたのは、僕の中にずっと変わらない気持ちがあるからだと思います。

確かにこの曲には世代を問わず、もがきや閉塞感から脱却できるきっかけをもらえるような心を打たれるフレーズが本当にたくさんあって。《君が今苦しければ苦しいほど/自分自身を生きている証拠なんだと思うよ》や《自分らしさを見つけ出す途中/それが自分らしさだと気がつく》にも納得ですし、《本当に助けてあげられるのは/他でもない君自身なんだよ》とかもつらい想いをしている人の力になれるフレーズだと思いました。

僕はこの曲を聴いてくれる人の代わりに何かをしてあげることはできないから、どれだけ歌っても現状は変えられないんです。だけど、考え方とか心の持ちようとかで何かしら背中を支えてあげられる曲を歌いたい。歌いたい歌があるから、どんどん言葉があふれ出てきましたね。

そうなんですよね。後半はストレートで疾走感のあるロックチューンに乗せて、めまぐるしい展開で言葉が畳みかけられている、その熱量に圧倒されます。

そこはちょっと自分のルーツみたいなものを思い出したんですよ。ここ2年くらいでさらに活動の場所が広がったことで対バン相手も増えたんです。その中に、昔の自分がやりたかった直球のギターロックバンドがいたり、メンバー全員がサビで同じメロディーをシンガロングするバンドがいたりして、そこにすごい衝撃を受けたんですよね。そういうアツさを僕ももっと持ちたいなって。その影響も大きいと思います。

対バンイベントが増えたり、ゲストを迎えたツアーを経験したことで、いい刺激を受けていると。

そうですね。結構激しいロックをやっているのにすごく難しいコード進行を使っている大阪の年下のバンドを観た時も、“激しささとお洒落さを共存することってできるんだ!?”と気づいて、「自分らしさなんて捨てられれば」の展開にも取り入れさせてもらったりしました。おかげでそこはすごく気に入っていますね。

まさに近石さんの現在を反映し、真っ直ぐ向き合ったロックチューンなんですね。『Chameleon Tour 2022』では、4月中旬にコロナの陽性反応が出て、自身初の広島公演が実現できなかったというアクシデントもありましたが、その経験もきっと近石さんの音楽をより豊かにする糧になっていくのではと思いました。

広島で待っていてくれたみなさん、共演者のみなさん、このツアーにかかわってくれたたくさんのスタッフさん…みなさんには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。いつか出演したいとずっと憧れていた神戸の『トアロード・アコースティック・フェスティバル』も出演キャンセルになってしまったので、僕自身もすごく悔しい気持ちでした。フェスにはまた呼んでいただけるよう、もっと頑張らないといけない。もちろん広島のみなさんにも会いに行きたいので、待っていていただけたら嬉しいです。

東京公演のあと、都内でホテル療養されていたそうですがどんなことを考えました?

一番は“健康って大事やな!”と。感染してすぐは身体が思っていたよりもすごくしんどかったから、何にも考えられなかったんですよ。体調が良くなってからは、することがないからテレビのニュースをよく観ていたんですけど、自分が世界で起こっていることをほんとに知らないことを実感しましたね。しかも、ホテル療養って食事をもらいに行く時くらいしか部屋から出ないし、他の誰かと会ってもみんな無言で規律正しい生活をしているし、ちょっとSFの世界のディストピア感も感じたりしました(笑)。

音楽のことは考えていました?

それは毎日考えていることなので変わりはなかったですね。寝ている時間も長かったから、まどろみの中で浮かんだメロディーをヴォイスメモに録ったり、改めて“自分が出せる最高地点にある音楽って何なんやろう?”っていうことを考えたりして、そのひとつの結論からワンコーラスができた曲があるんです。

それは気になる! ぜひとも完成させてほしいです。

うーん、どうかなぁ(苦笑)。「自分なんて捨てられれば」と同じように、2年後くらいに“実はこのフレーズ、ホテル療養中にできていたんです”って話すことになるかも知れないから待っていてください(笑)。

取材:阿部美香

配信シングル「自分なんて捨てられれば」2022年4月27日配信 lemon syrup/NEW WORLD RECORDS

ライヴ情報

『杉本ラララ× 眞榮田和樹 presents
「真心ナイトフィーバー Day1」』
5/17(火) 大阪・心斎橋 真心場

『Zeela presents.Sound Fiction』
5/20(金) 大阪・梅田Zeela ※バンドセット

『szsy pre.「在るべき邂逅」』
5/22(日) 大阪・阿倍野ROCKTOWN ※バンドセット

近石 涼 プロフィール

チカイシリョウ:1995年12月17日、阪神淡路大震災後の神戸に生まれ、幼少期よりピアノを始める。学生時代にギターを始め、高校生の時からYouTubeにカバー動画をアップしている。初めて作った曲「シンガー」が『COMIN’KOBE16』のオーディションにてグランプリを獲得。20年には関西最大級の音楽コンテスト『eo Music Try 19/20』にて準グランプリを受賞。21年12月にインディーズデビューアルバム『Chameleon』を発売。22年に入り、ワンマンライヴと全国7カ所で『Chameleon Tour 2022』を開催し、配信シングル「自分らしさなんて捨てられれば」「ラベンダー」を発表。同年11月に新曲「馬鹿な女」をリリースした。近石 涼 オフィシャルHP

「自分らしさなんて捨てられれば」
MV

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着