珠城りょう、退団後初のコンサート『
CUORE』開幕、歌やダンスに様々な要
素取り入れ、宝塚初心者までもを虜に
時間旅行へ誘う

史上二番目の早さで宝塚歌劇団月組のトップに立ち(ちなみに一番は天海祐希)、ダイナミックなダンスと繊細な演技力が高く評価されていた珠城りょう。退団後初となるコンサート『CUORE』が、4月30日(土)~5月3日(火・祝)に大阪梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ、5月13日(金)~15日(日)に東京国際フォーラム ホール Cにて開催。4月29日(金)に行われた、大阪公演のゲネプロをレポートする。
※舞台写真は今後追加予定
……などとここまで、まるで訳知り顔のように文章を綴っている筆者だが、実は普段宝塚歌劇団の舞台をあまり観ていない。最後に観劇したのは7〜8年くらい前で、しかも月組の公演ではなかったので、珠城りょうが舞台に立っている姿も、申し訳ないけど未見なのだ。
そんな奴がお金をもらってレポートなんか書いていいのか? と、異議を申し上げたい方もおられるだろう。いやしかし、しかしだ。宝塚時代からの熱心なファンが、ソロとなった彼女の舞台を観て「素敵!」「カッコ良い!」となるのは、至極当然のことだろう。では逆に「宝塚OGのソロコンサートは、宝塚のことを知らない人間も楽しめるのか?」または「この舞台で初めて「珠城りょう」に出会う人は、彼女のどこに魅力を感じるか?」という視点でレポートをするのも、それはそれでありではないだろうか?……などと考えた上で、このゲネプロの場に臨んだ次第である。
前置き(というか言い訳)が長くなってしまって失礼。早速レポートを開始しよう。
舞台上に大きく「CUORE(イタリア語で「心」)」のネオンサインが灯っている舞台。開演時間になると、珠城りょうによるアナウンスが流れるが、公演前の諸注意というよりも、飛行機の搭乗アナウンスのようだ。そう、コンサート第一部のコンセプトは「お客様を、様々な時代へとお連れする」こと。私たち観客(乗客と言うべきか)は、珠城がチーフパーサーを務めるタイムマシンに乗って、過去から未来まで様々な場所をめぐり、その場に合わせた歌やダンスを楽しむ……という趣向だ。
最初にやってきたのは近未来。他のパーサーたちがロボットのようなダンスをする中、パッとスポットライトが当たると、そこには珠城りょうの姿が! 筆者にとってはまさにファーストコンタクトとなったわけだが、率直な感想は「うわー、カッコ良い!」。本当にこれしか言えねえという感じなのだけど、がんばって他の語彙を探すとすれば、近未来的なモノトーンのコートをまとっていたこともあり『マトリックス』のトリニティを思い出した。いかにもクールで強そうだけど、姉御的な温かみも感じる。
オープニングナンバーは、宝塚歌劇団在団中に発売されたBlu-ray BOXでもカバーしていたという、Official髭男dismの「Amazing」。生パフォーマンスは、これが初の機会となるそう。新しい自由な人生へと踏み出す、その決意表明のような力強い内容が、まさにここから俳優、エンターテイナーとして独り立ちする、今の珠城の状況と重なるようだ。
そして噂には聞いていたが、確かにダンスの見ごたえが抜群。男性ダンサーと一緒に踊っても、まったく引けを取らない身躯と迫力があるのに対して、手の動きはとてもたおやか。というか、ものすごい色気を感じる。宝塚時代は、さぞこの手の動きで多くのファンを腰砕けにしたんだろう……などと思ってしまうほどだ。
コンサートという名の時間旅行は、思った以上にあっちこっちに飛んでいく。観客も一緒に振付に参加できるポップなナンバー、ちょっと意外な歌謡曲、さらにはミュージカルの名曲も。ダンスの方も、パントマイムを取り入れたオールドスタイルなものもあれば、雌猫のような妖しい雰囲気にドキドキする振付もあり。今回の構成、演出、振付は、珠城が大ファンだという劇団☆新感線とゆかりの深い川崎悦子が担当しており、ビシッと決める所やファンのツボは的確に押さえつつも、要所要所で抜け感やコントっぽい展開を入れてくる辺り、ちょっと新感線のテイストを意識したのかもしれない。
またこの日のゲネプロは、宝塚歌劇団時代に、所属している組を超えて交流があったという、元雪組の彩凪翔がゲストとして登場。彩凪の大阪弁を交えたナチュラルなトークや、珠城が「在籍中にやってみたかった」という曲のデュエットなど、多分宝塚ファンにとっては夢で、ボーナスのような時間だろう。しかしここまで書いておきながら、彩凪が登場するのは4月30日(土)の公演のみ。ただ東京公演の5月13日(金)、14(土)には、元星組の愛月ひかるのゲスト出演が決まっている。ゲストがいない日は、その分珠城の歌と踊りを倍堪能できる構成になっているそうなので、それを期待していただきたい。
時間旅行はやがて現代に戻ってきて、第二部は元気が出たり、励みになるような曲を立て続けに披露。その間には、上口耕平をはじめとする他のキャストたちを、時間をかけて紹介するシーンもあった。このコンサート全体を観て意外に感じたのは、珠城以外のキャストたちがバックダンサー扱いではなく、全員が対等な立場でステージを盛り上げていたことだ。珠城ひとりを際立たせるのではなく、おそらく彼女が先頭に立ちつつも、全員で楽しい世界を作り上げるというスタイルを意識していたのだろう。だから珠城の歌とダンス以外にも……いや、衣装替えで珠城が不在の場合ですら、隙なく楽しませてくれる場面が多く、珠城を知る知らない関係なく、ちゃんと一つのショーとして楽しめる舞台になっていた。
全体で100分、まるでさわやかな風が吹き抜けるようなコンサート。珠城のことを全然知らなかった私も、すっかりファンに……とまではいかないが、今後が相当気になる役者になったことは確かである。やっぱり期待してしまうのは、「これをきっかけに新感線の舞台に出ないかなー」ということだ。天海祐希がやってた『薔薇とサムライ』のアンヌ・ザ・トルネードみたいな役は、彼女にもかなりハマりそうなんだけど、期待していいだろうか?
いやその前にこのコンサート、大阪も東京もまだチケットの取れる回があるようなので、ちょっと気になった人は足を運んでみては? と呼びかけておきたい。珠城りょうは歌とダンスはもちろん、MCで見せる素の姿もなかなか魅力的だったということも含めて、宝塚を知らない人も、きっと胸が踊る時間を過ごせるはずだ。
そして最後に、珠城りょうからのコメントを紹介する。
「この様な状況下の中、1stコンサート『CUORE』を開催できます事をとても幸せに思います。私の夢、新たな挑戦、様々な思いを演出の川崎悦子先生が何倍にも素敵に膨らませてくださり、完成したステージです。舞台を心から愛するキャスト全員のパフォーマンスをお見逃しなく! そして新たな珠城りょうをお楽しみください。ご覧いただく全ての皆様が笑顔になって頂けますように」
取材・文=吉永美和子

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