【八木海莉 インタビュー】
EP全体を見た時に、
歌詞も曲調も“水分”が多いと思った
自分が経験したことや
思ったことを曲にできた
なるほど。そして、配信シングル「Ripe Aster」(2021年12月発表)でデビューされ、今年3月には同曲がCD化、4月には全曲ご自身が作詞作曲されたEP『水気を謳う』をリリースされます。M-1「お茶でも飲んで」はYouTubeにMVがアップされていて、ファンの方にもお馴染みのナンバーですね。
「お茶でも飲んで」は曲作りを始めた頃に作った曲なんです。上京してきて一年は東京に慣れようと思って過ごしてきましたが、高校2年生になって焦り始めていたんですね。その時の気持ちを歌ったのがこの曲です。YouTubeで自分の曲をアップした初めての曲でもあり、大切な曲なので、今回EPに入れました。
曲調的にはすごく軽やかさも感じますね。
“お茶”というテーマがあって、それに関連した言葉も歌詞に入れたんです。YouTubeでアップしたMVのサムネイルはふたりの自分が対峙しているんですけど、曲を作る時にイメージしていた映像を再現できたので、それも本当に良かったです!
この曲は10代のボカロP、皆川 溺さんがアレンジを担当されたんですね。
制作当時、皆川さんは15歳だったんです。皆川さんにアレンジを全てお任せしたんですけど、一緒にレコーディングスタジオに入った時にアレンジのアイディアをササッと出してくださったんですね。その姿を見て“年下なのにすごいなぁ”と圧倒されました(笑)。レコーディングの作業が終わって、空き時間に“私のほうが年上だからしゃべらないと!”と思って。私は人見知りなんですけど、自分なりに頑張って話そうとしたら、逆にすごく皆川さんがしゃべってくださいました。その時も“年下に見えないなぁ”と思って、私も頑張らなきゃなと思いましたね(笑)。
(笑)。そんな皆川さんがアレンジした「お茶でも飲んで」に続き、M-2「SELF HELP」はフルートの音色も心地良いキラキラとした雰囲気の楽曲ですね。
「SELF HELP」は自分自身に“今の生活で満足しているか?”という問いかけをしている曲なんです。別に特別なことをしなくていいのかもしれないけど、私は何かしなきゃいけないと思う時があって。自分がしたいことを探すというより、しなきゃいけないと思って何かを探していることがあるから、その気持ちを曲にしました。
アンニュイな雰囲気のM-3「Sugar morning」は低めのヴォーカルも印象的でした。
これまで“夜”をテーマにした曲が多かったので、“朝の曲を書いてみよう”と思って書いたんです(笑)。嫌なことやつらいことがあった次の日の朝というイメージです。「お茶でも飲んで」のあとぐらいにできたんですけど、家で仮歌を入れる時に、夜だとあまり大きな声を出せないから低めのヴォーカルになってしまいました(笑)。
そして、続く「海が乾く頃は」はどこか漂うような雰囲気のアレンジで。
「海が乾く頃は」は小さい頃に祖父が亡くなった時に、私が7日間祖父に宛てて書いた手紙が出てきて、その手紙を見て作りました。
7日間の手紙ですか?
はい。祖父が亡くなったあとに書いた手紙です。祖父はお好み焼き店を経営していたんですけど、レジのレシートロールが余っていたので、レシートに手紙を書きました。1日目はすごく悲しかったので短い文章で、文字も涙でにじんでいたんですが、7日目には“明日、仏壇が届くよ”みたいなことも書いていて。ちょうど七夕の時期だったから、もし本当に願いが叶うならおじいちゃんが生き返りますようにと願うなぁ…とか、そんなことを書いた手紙です。
悲しい時にこうした手紙を書くことはなかなかできることじゃないと思うので、八木さんのおじいさまへの深い愛情が伝わってきますね。
(笑)。その手紙からどんなふうに着想を得たのですか?
《会って話そうよ/海が乾く頃》というフレーズがあるんですけど、海が乾くことはない…亡くなった人にも会えることはない。その想いから広げていきました。海もしょっぱくて、涙もしょっぱい…だから、もし涙が海なら余計に乾くことはないということを歌っています。この曲は自分の経験をもとにした曲なので、特に思い入れがありますね。アレンジには海の音やカセットテープの音を入れたりしてこだわりました。
「海が乾く頃」が終わるとラストは再びM-1の新アレンジとなる「お茶でも飲んで -Chinese tea ver-」で締め括られます。最初と最後に据えたアレンジの違う「お茶でも飲んで」が、どこか本のプロローグやエピローグのようにも感じさせてくれますね。
そうですね。「お茶でも飲んで -Chinese tea ver-」はピアノの西野恵未さんがアレンジしてくださって、私も初めてギターでレコーディングに参加しました。歌も新しく録り直したので、また違った「お茶でも飲んで」を楽しんでいただけると思います。
通常盤にはボーナストラックとして「ダダリラ」も収録されますね。この曲は新たな八木さんの魅力を感じさせてくれる曲だと思いました。ボカロPのふるーりさんが提供してくださった曲に、八木さんが歌詞をつけられたということですが。
「ダダリラ」はボカロを意識して台詞っぽい歌詞を入れてみたり、漢字の使い方もボカロっぽさを意識しました。曲が先だったので、歌詞を入れるのは難しかったですね。ボカロ曲をちゃんとレコーディングするのが初めてだったから、台詞っぽい部分の自分の声を聴くのが恥ずかしかったです(笑)。
(笑)。ふるーりさんとのやりとりの中で印象深かったことは?
《ダデュラ ダダデュ ダダリラ》の部分はレコーディングの時にまだ歌詞が決まっていなくて悩んでいたんです。そしたら、ふるーりさんがパッと考えてくれて。一聴すると“何だろう?”と思う言葉なんですけど、曲にハマっていてすごいと思いましたね。
初回生産限定盤にはYouTubeでも反響が大きい「お茶でも飲んで」のMVがいよいよパッケージとして収録されますね。撮影時の裏話などはありますか?
コックさんと踊るシーンがあるんですけど、最初あのシーンはなかったんです。コックさん役のの撮影が終わって役者さんが帰るという時に、“すみません、ちょっと踊ってもらえませんか?”と私がお願いして踊っていただいたんです。無茶振りしちゃいましたね(苦笑)。
快く引き受けてくれて良かったですね。
はい。SNSでのオフショット用に自分が撮りたかっただけだったんですが、“その映像、いいね”と言われてMVの本編にも入ったんです(笑)。
そのシーンは観どころになりますね。そして、やっぱりタイトルの“水気を謳う”の由来や意味が気になります。
EP全体や曲ひとつひとつを見た時に、“水分”が多いと思ったんです。例えば「お茶でも飲んで」は自分の“焦り”を歌っている曲なので“汗”だったり、“焦っているならお茶でも飲みなさいよ”という意味も込めている“お茶”だったり。あと「海が乾く頃」の“海”や“涙”だったり。そう感じたのでこのタイトルにしました。
“何だろう?”と思わされる言葉で心惹かれますね。本作をリリースしたあとは、19歳ラストの日である9月4日に初のワンマンライヴ『八木海莉 First One-Man Live -19-』を開催されますが、ライヴ以外にも挑戦したいことはありますか?
ライヴもですが、MVとかでもできることならダンスでの表現もしてみたいと思っています。小さな頃からダンスも習っていたので、ぜひ挑戦してみたいですね。
ダンスをする八木さんの姿を見るのも楽しみです。最後にこうしてEPが完成してみて、手応えはいかがですか?
歌詞も曲も含めて自分が経験したことや思ったことを曲にできて、いい作品になったと思います。大切な曲ばかりが揃っているので、たくさん聴いてほしいです。
取材:齊藤 恵
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EP『水気を謳う』2022年4月27日発売
Ki/oon Music Inc.
- 【初回生産限定盤】(CD+Blu-ray)
- KSCL-3354~5
- ¥2,200(税込)
- 【通常盤】(CD)
- KSCL-3356
- ¥1,650(税込)
『八木海莉 First One-Man Live -19-』
9/04(日) 東京・duo MUSIC EXCHANGE
『八木海莉 First One-Man Live -20-』
9/05(月) 東京・duo MUSIC EXCHANGE
ヤギカイリ:2002年9月5日生まれ。広島県出身。15歳の時、自身の夢を追いかけ単身上京した。自身のYouTubeチャンネルにて弾き語りカバー動画をアップし、注目を集める。21年4月放送TVアニメ『Vivy-Fluorite EyeʼsSong-』にて主人公・ヴィヴィの歌唱を担当し話題を呼び、レコチョク上半期ダウンロード部門新人アーティストランキング1位獲得。歌だけでなく、作詞作曲をはじめギターやダンスと才能を発揮。同年12月に初のオリジナル楽曲「Ripe Aster」を配信リリースしてデビューを果たした。22年3月同曲を含むシングルを発表し、4月に1st EP『水気を謳う』をリリースする。9月には初のワンマンライヴ『First One-Man Live -19-』を開催予定。八木海莉 オフィシャルHP
「SELF HELP」MV
「お茶でも飲んで」MV
♪厄介ね。ねぇ厄介ね。
「YouTube Live:お茶でも飲んで」
ダイジェスト
「Ripe Aster」MV