【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#247
歌手 ナターシャ・グジーの言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

どんなにつらく悲しくても、歌うことに
よって前に立ち向かう力が沸いてくる

より

2022年3月15日、東京・渋谷区のチェコ共和国大使館にて、ウクライナを支援するチャリティーコンサートが開催された。2022年に来日22周年目となるウクライナ出身の歌手でバンドゥーラ奏者でもあるナターシャ・グジー。ウクライナの歌姫とも呼ばれる彼女が母国の平和を願いをこめて、バンドゥーラを使った曲や自身が作詞作曲した楽曲など、合わせて11曲を演奏。

ナターシャは、6歳の時に住んでいたヤノフという村でチェルノブイリ原発事故を経験している。原発からヤノフまでは3.5キロの距離。事故当時、3日間だけの避難を命じられたものの、その後はもう2度と故郷に帰れなくなってしまった。ヤノフは土に埋められ、今も立入禁止区域となっている。

「ウクライナと日本の文化の架け橋になりたい」という思いを持ち、長く日本で生活し、音楽活動を続けるナターシャだが母国への想いは並々ならぬものがある。ロシアの軍事侵攻が続く中、ナターシャの母親はポーランドへ逃れたが、姉の2人は今もウクライナにとどまっているという。ナターシャは、コンサートのラストソングとして日本人の多くが知る歌「ふるさと」を披露。彼女自身が大切に思っているというこの歌をウクライナ語と日本語で歌い「私の心はウクライナと共にある」というメッセージを込めた。そこで語られたのが今回の名言「どんなにつらく悲しくても、歌うことによって前に立ち向かう力が沸いてくる」。

彼女の言葉はリアリティに満ちており、音楽や歌を愛し携わる者は、その力を信じ表現して欲しいと願う。「いつまで大変な状況が続くのか誰にもわかりません。でも、それを乗り越える力をウクライナの人々は持っていると私は信じているので、その心の強さを持ち続けてほしいと思います」というナターシャの祈りが、その透き通った美しい歌声と共に世界に届きますように……。
ナターシャ・グジー(なたーしゃ・ぐじー)
1980年2月4日生まれ、ウクライナ出身。歌手、バンドゥーラ演奏家。1986年、6歳の時にチェルノブイリ原発事故を経験し避難生活の後、首都キエフに移住。1988年、音楽学校にてウクライナの民族楽器バンドゥーラを学ぶ。1996年、チェルノブイリ原発事故で被災した少年少女を中心に結成された民族音楽団チェルボナ・カリーナ(チェルノブイリの赤いカリーナの実)のメンバーとして初来日。全国ツアーで救援コンサートを行う。1998年、チェルボナ・カリーナのメンバーとして再来日。2000年、日本語を学びながら日本を拠点とした本格的な音楽活動を開始。2002年、井上鑑プロデュースによるデビューアルバム『セルツェ・心』をリリース。2005年、ウクライナ大統領ヴィクトル・ユシチェンコ来日の際、小泉純一郎首相主催の首相官邸での夕食会に招かれ演奏を披露。2006年、チェルノブイリ20年救援アルバム『こころに咲く花』と日本語で日本での音楽活動について綴った著作に5曲(「金色の花」「いつも何度でも」「遥かに遠い空」「涙そうそう」「ふるさと」)入り初のCDブック『ふるさと〜伝えたい想い〜』をリリース。2016年、音楽を通じて日本とウクライナの相互理解の促進に対する功績が認められ、日本国外務省から外務大臣表彰を授与。2017年、小椋佳が遺作として書き下ろした渾身の楽曲「命はいつも生きようとしてる」をリリース。2020年、来日20周年記念映像作品集DVD『FILM旅歌人(フィルムコブザーリ)』をリリース。現在、ロシアからのウクライナ侵攻を受けて、収益の一部をウクライナ支援に寄付するチャリティーコンサートを行っている。また、チェルノブイリ救援コンサート、音楽教室や学校での国際理解教室、テレビやラジオ出演など多方面で活躍中。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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