L→R  仁耶(Gu)、Hiroyuki Ogawa(Ba)、Fuki(Vo)、紫煉(Gu)、FUMIYA(Dr)、Jill(Vn)

L→R  仁耶(Gu)、Hiroyuki Ogawa(Ba)、Fuki(Vo)、紫煉(Gu)、FUMIYA(Dr)、Jill(Vn)

【Unlucky Morpheus インタビュー】
Fukiの歌をいっぱい聴かせたくて
“歌モノ”をテーマに制作を始めた

Unlucky Morpheusならではの
和風テイストのものが作れている

おふたりが挙げてくださった曲以外にも注目すべき曲はたくさんあって、例えば「誰が為に」は和テイストを巧みに活かしているなと。

紫煉
「誰が為に」は今回の制作で一番最後に作った曲ですね。2020年4月に『瀧夜叉姫』というEPを出したのですが、その時は“和風”ということがコンセプトだったんですよ。本当はEPを出したあとに神田明神ホールでライヴもする予定だったけど、新型コロナウイルスの感染拡大防止で延期になってしまって、今もいつやれるか分からない状態になっているんです。いずれライヴを実現させたいとは思っていて、せっかく延期したなら和風の曲をもうちょっと増やしておきたいと、今回のアルバムの最後に入っている「夢幻」という曲を作って。その後、もう一曲、他とは被らない感じのものが欲しいと思って、最後に書いたのが「誰が為に」なんです。昨年の10月1日にやった豊洲PITのライヴが終わってから作ったんですが、そのライヴに向けた準備中に俺はBOØWYをよく聴いていて、その影響が出ていますね。“えっ、BOØWY?”という感じだと思うけど、俺なりのBOØWYです(笑)。ロックな感じの気持ち良いビート感だとか、イントロリフのままAメロに突入する感じとかをUnlucky Morpheusのフィルターを通してかたちにしました。
Fuki
『瀧夜叉姫』を作った時に平 将門をモチーフにした歌詞を3曲書いたんですが、古語辞書とにらめっこしながら書くことになって、すごく時間がかかったんですね。でも、古語を駆使した歌詞はこの世で瞬火さん(陰陽座/Ba)か私にしか書けないと思っていて(笑)、すごくやり甲斐があるんです。だから、今回もそういうものにしたいと思って「誰が為に」の歌詞は書きました。『瀧夜叉姫』は平 将門という重厚なモチーフの歌詞だったけど、「誰が為に」は一曲で完結するということで、もう少しキャッチーにしたいということと、デモを聴いた時に最後に切なく終わる印象があったので、だったらこれは最後に全員死んでしまう内容にしようと。それで、山田風太郎さんの『忍びの卍』という忍者モノの小説をモチーフにして、忍者の悲しい定めみたいなものを歌詞にしました。

陰陽座というワードが出ましたが、Fukiさんのロックシンガーとしてのルーツが陰陽座の黒猫さんということは有名です。そういう中で、和風のものをやることに抵抗などはなかったですか?

紫煉
なかったです。音楽というのはそれまでの流れから独立して突然生まれるものではなくて、必ず誰かが歩んできた道がもとになっていると思うんですよ。陰陽座が提示した和風のメロディーとヘヴィメタルを融合させるというアイディアは素晴らしいですけど、和風のメロディーも、ヘヴィメタルももともとあったものですよね。Unlucky Morpheusのメンバーはみんな日本人だから和感は自然と身体に入っているし、みんなヘヴィメタルが好きというところで、メタルと和感を融合させたものを作ってみたい気持ちになるのは自然なことだと思うんです。それに、和風のメロディーということでは、俺は陰陽座だけに影響を受けたわけじゃなくて、吹奏楽部の時に演奏していた楽曲だったり、久石 譲さんや坂本龍一さんといった人たちが作る楽曲…あとは、ゲーム音楽のメロディーといったところからも影響を受けているんです。それとUnlucky Morpheusのヨーロピアンメタルのサウンドを組み合わせてみたい欲求があって、陰陽座がやっているからってやらないのはもったいないと思うんですよ。だから、そういう曲も作るし、Unlucky Morpheusならでは和風テイストのもが作れていると思います。
Fuki
黒猫さんにすごく影響を受けた人生ではありますけど、持っている声帯が違うし、自分なりの個性を追求してきてもいるので、歌うということに関しては、例え和風の曲であっても陰陽座を意識したことはなかったです。ただ、歌詞に関しては山田風太郎さんの作品をモチーフにするというところで、真似しているように思われるかもしれませんが。でも、好きな作品からインスパイアされるというのは常にやっていることなので、“私も山田風太郎さんは好きだし”というところでモチーフにさせてもらっています。もちろん、『忍びの卍』をモチーフにした曲が陰陽座にないことは念のため調べました。私が補足しきれていないところで先にやられていたら申し訳ないですが…。

安易な気持ちで上辺だけを掬ったりするのではなく、オリジナリティーを追究されていることは聴けば分かりますし、先輩へのリスペクトも感じます。もうひとつ、バイオリニストがいるメタルバンドとなると、和風のものはやりにくい気がするんですね。そういう固定観念に縛られないところも魅力と言えます。

紫煉
そもそも、それを言ったらギターとベースとドラムで和風というのもおかしいじゃないですか(笑)。俺の中には、むしろバイオリンは和風の旋律に合う感覚があって、中国には二胡という民族楽器があるし、弦を擦ることで得られるサウンドというのはアジア的なメロディー感に合うのは間違いないんですよね。だから、自分たちが和風なものをやるというのは自然なことなんです。

メタリックなファストチューンでいながらキャッチーかつ華やかな「“M” Revolution」も独自の魅力を湛えていますね。

紫煉
『Unfinished』に入っている「Top of the “M”」という曲があるんですけど、その曲は麻雀のプロリーグのMリーグを題材にした曲で、自分で歌詞も書いたんですね。リリース後に「Top of the “M”」のMVを作って出したらMリーグの選手だったり、ファンの方だったり、運営の方だったりが結構リアクションしてくれたんです。すごく嬉しいと同時に、「Top of the “M”」は自分の中で心残りがいくつかあって。まず、音楽性が超Unlucky Morpheus的ではないということ。ちょっとラウドロックっぽい曲なので、「Top of the “M”」で初めてUnlucky Morpheusに触れた人にとっては、そういうバンドだと思って他の曲を聴いたら“あれ?”ってなりますよね。あとは、歌詞の中でまったく取り上げなかったチームとかもあるんです。これだけ多くの人に観てもらえるならUnlucky Morpheusの王道路線の音楽で、なおかつ出していない人がいないようにしたいという心残りがあって、それを払拭するために「“M” Revolution」と『evolution』の2曲目に入っている「“M” Anthem」を作ったんです。
Fuki
Unlucky Morpheusでは9割くらいの歌詞を私が書いているんですけど、「Top of the “M”」「“M” Revolution」「“M” Anthem」という、いわゆる“M”シリーズは紫煉が書いています。私も麻雀がすごく好きで、Mリーグは観ているんですけど…。

えっ!? そうなんですか?

Fuki
はい。実は私もすごく好きです(笑)。ただ、紫煉は普通に麻雀がめちゃくちゃ強くて、プロの雀士になれるんじゃないかというくらいなんですよ。だから、麻雀に対する思い入れがすごく強くて、“M”シリーズの歌詞は紫煉がこだわりを持って書きました。私もMリーグの選手名とかチーム名はもちろん分かるので、最初に紫煉に歌詞をもらった時に、“これは●●のことで、これは●●のことだな”とクイズを解くような感覚があって、すごく面白かったです(笑)。

Mリーグを題材にしてはいますが、麻雀などをまったく知らないリスナーも楽しめる曲になっているのもいいですね。

紫煉
それはこだわっているところで、麻雀が分からない人が読んだ時に意味不明になってしまうと、大多数の人を置いてけぼりにしてしまうことになりますよね。そうじゃなくて、麻雀のことが分からない人にとっては音楽に合った歌詞が乗っていると聴いてもらえて、分かる人にはダブルミーニングとして楽しんでもらえるようにするという、ふたつのミッションをクリアーするように頑張って書きました。なので、麻雀を知らない人も楽しめると言ってもらえて良かったです。

OKMusic編集部

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