the peggies、初の野音で開催した結
成10周年記念ワンマンライブのオフィ
シャルレポート到着

the peggiesが2022年4月24日に日比谷野外大音楽堂で結成10周年記念ワンマンライブを開催した。本記事では同公演のオフィシャルレポートをお届けする。

the peggiesにとっての初の日比谷野外大音楽堂でのワンマンであり結成10周年のお祭りは、小雨が降る中、レインコートを着込んで期待を膨らませるオーディエンスを前に、とびきりポジティブな『ドリーミージャーニー』からスタートした。オーディエンスが勢いよく座席から立ち上がり、ハンドクラップで迎え入れる。元気よく手を振りながら現れた北澤ゆうほ(Vo&G)、石渡マキコ(B)、大貫みく(Dr)の3人。一聴すればすぐに歌える程のキャッチーな曲を1曲目に選んだところに、野外の開放感を味方につけ、みんなで思いきり楽しむ特別なお祭りにするんだという意志を感じる。
勇ましいイントロからの「GLORY」。自然とハンドクラップが起きる。歌の合間に北澤が「よっしゃ」という気合いの声を自然に入れ込む。「何回も 何回も 手を伸ばすんだ」というフレーズのところでオーディエンスもしっかり手を伸ばす。どんどん一体感が増していく。アウトロでは「握りしめた手が僕の強ささ」と歌いながら3人が一斉に力強く右腕を掲げ、この10年切磋琢磨しながら活動してきたからこその誇りを滲ませる。
北澤ゆうほ
「今日は誕生10周年のお祝いです。特別なとびきりのいろんな表情に溢れたとても豊かな時間にしたいと思います」(北澤)。「そうだ、僕らは」へ。バンドクラップが自然と起こり、北澤が満足そうに「完璧。手はもうちょっと上のほうがいいね」と言うと、たくさんのオーディエンスの手が頭上に上げられる。オーディエンスと同じ目線でコミュニケーションし、距離を縮めていく。
北澤は結成当初はライブが苦手だったと明かしている。しかし、思うように成長できていないと自分で感じている状況下でライブに来てくれるお客さんに感謝の気持ちが芽生え、ライブでも楽曲でも聴き手に対し、一対一の気持ちで届ける意識を持ったと。それによってライブで楽曲が完成する感覚を持ち始めたと話していたが、the peggiesのライブの良いところは、すべての曲がライブ仕様になっているということだ。どうしたらオーディエンスと一体となって楽しみ合えるか。それを目指したライブアレンジがところかしこにちりばめられている。
石渡マキコ
北澤が感慨深げに、野音の光景を見つめながら、「今ちょうど私の方から見ると空が少し赤くて。なんだかノスタルジックな景色を見させてもらっているんですが、忘れられない恋だったりに足を引っ張られながらも前に進もうと思って書いた曲です」と話してから「アネモネ」を披露。陽がすっかり落ちた野音の空に、かつての成仏できない思いが昇っていき、どんどん切なさが高まる。
「曲を書くのは、今まで自分だと思ってたものを壊して作っていくみたいな作業。一番私が感じている自分の変化は、最初の頃は自分がいかに辛くて、こういう目線で世界を見ているかっていうことを人に気付いてほしくて書いてた。でもライブに来てくれる人が増えたり、自分の作った曲が自分だけのものじゃないっていう意識が自然と芽生えてからは、みんなとわかりあうためだったり、誰かと支え合うために自分の弱さをさらけだしているということに気が付きました。今は赤裸々な曲に書けば書くほどみんなと近づける気がします」。北澤がこの10年の変化を明かす。
「みんなを肯定するために、私自身を肯定するために、前に進むために歌います」。ありったけの感情を込めた「さよならさ行かなくちゃ」というフレーズから始まる「足跡」をみんなの気持ちも背負って、歌い放つ。パワフルなギターとベースとドラム、三位一体となってグルーヴを高めていく。そのまま「スタンドバイミー」へ。この10年、アンサンブルも劇的に分厚くなった。
大貫みく
北澤に話を振られた大貫がいっぱいの笑顔で「めっちゃ楽しい!」と感情を露わにする。北澤が「野音にはSaucy Dogを観に行ったり、3人でMrs. GREEN APPLEを観に行ったりした」と野音にまつわる思い出話を。the peggiesの前身は今から10年以上前に中学の同級生同士として組んだカバーバンド。「あの頃から比べたら大人になったよね」という話になり、石渡が「今、中一の時のゆうほとみくが頭に思い浮かんで比べたら大人になってる」と言い、「あなたもね」という突っ込みが飛ぶ。
北澤が「私たち、他のバンドの人や音楽業界の人に言われて気付いたけど、だいぶ仲良いらしいよ」と言うと、「高校生の時、ケンカしまくったからもう仲良くなるしかなかった」とか、「毎日100通ぐらいメールしてた」とか思い出話で盛り上がる中、ふと北澤がフロアを見て「すいません。置いていっちゃって(笑)」と謝罪し、場が和む。
「こうやっていろんな人を巻き込みながら、バンドをやって生きることができてすごくありがたい」と感謝の気持ちを伝え、18歳の時に作った「ボーイミーツガール」へ。カウントアップから、3人が向かい合って、楽器を鳴らす。退屈な毎日の中、君に出会って恋をしたというラブソングだが、the peggiesの3人もそんな風に音楽に恋をしてバンドを始めたんだろうなと素直に思える、瑞々しく甘酸っぱいラブソングだ。
ファンクラブで募集したコーラス音源を使用した「マイクロフォン」。「みんなと一緒に歌えないのが当たり前になりかけてしまっているような寂しい思いをしていた。早くこの曲がやりたかった」と北澤。サビではたくさんの声が重なり、それに合わせてオーディエンスも腕を空に突き上げる。たくさんの想いが乗った声が放たれた、コロナ禍の特別な「マイクロフォン」だった。
the peggies
「私は音楽をやっていなかったら人を信じるとか、誰かに信じてもらうっていうことをこんなに感じることができなかったと思う。いろんな人に信じてもらえたからこそ、ここまで歩んでこれた。みんなが平等に特別だし、逆にみんなが平等に特別じゃない。それをポジティブに受け入れて進むのが私には合っていると、the peggiesの活動を通して感じています」(北澤)。軽快なドラムロールが鳴り、「せっかくこれだけステージが横に広いんで」と、ハンドマイクでステージの端まで歩き、自己紹介をしたり感謝を口にしたりして、近い距離でオーディエンスに話しかける。「ハンドクラップでコール&レスポンスして会話したような気分になって、人と人が繋がるのって捨てたもんじゃないなと思ってほしい」と言い、ハンドクラップを促す大貫のドラムソロのコーナーを挟み、自分の意志で選択しながら人生を歩むことの大切さを歌った、最新曲「ハイライト・ハイライト」へ。カジュアルにスピーディーに駆け抜ける曲だ。
アンコールは3人とも今回のオフィシャルTシャツに着替え、「私たちの曲の歌詞には空とか雨とか多いんですけど、その中でもこの夜の日比谷野音に一番ぴったりだと思う曲をやります」と北澤が話し、「スプートニク(2021)」へ。「君に届くように叫ぶよ」と北澤の歌とバンドアンサンブルが野音の空のかなたに消えていく。ミラーボールが回り、すっかり雨のあがった野音を照らす。
the peggies
正真正銘のラストソングは、北澤がすべてを出し切るように「明日が来るたび~」と1フレーズ歌って、「また絶対に会いましょう!!!」とシャウトした「明日」。「また絶対に会おうぜ」と繰り返される、まさに再会を約束する曲だ。途中、「スマホのライト照らしてくれないかな。やってみたかったの」と言うと、たくさんのライトが上がる。「素敵!雨も止んだから。みんなの歌が次に流れます」。そこで事前に募った「明日」の歌の音声が流れる。「最高の1日でした! また絶対会いましょう!」。3人がステージ前に集まり一本締め。名残惜しそうにステージの端から端まで歩いて手を振る。
ステージ上で秋に新作をリリースすることを明かしていたが、これまでの歩みを誠実に振り返り、感謝しながらも、終着点ではなく大きな通過点となる予感に満ちたライブだった。
the peggies

文=小松香里 撮影=河本悠貴

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