OUTRAGEのスラッシュメタルが
世界標準であることが克明に示された
メジャーデビュー作『Black Clouds』

スリリングな演奏が生む独特の高揚感

M5「Bring Him Back」はいかにもヘヴィメタルといった重いギターリフで始まる。ラウドでアッパーでありながら、どこか不穏な印象があって、シリアストーンなナンバーだ。やはり、間奏でのメロディアスかつオリエンタルな雰囲気のギターが耳を惹き、このバンドのベーシックなスタイルを再認識させられる。M6「Eos」はアコギ1本で綺麗なメロディーが奏でられるインスト。ほぼ1分という短いナンバーで、こういう曲をアルバムに入れていることでも、このバンドが単に勢いだけで迫っていこうとしていないのが分かるはず。

M7「Edge Of Death」のサウンドを重く感じるのは、直前にM6が配されているからかも…と少しだけ思ったりもした。で、そのM7。やはりヘヴィなリフが支配しているのだが、やはりここでもしっかりと抑揚を付けていて、単純なイントロではない。また、2番終わりからテンポアップしていくようにも聴こえる。ドラムはツーバスになり、ギター、ベースも細かいフレーズを弾くので、速くなったように聴こえるだけで、実際のテンポは変わっていないのかもしれないが、いずれにしても、ここもまた決して単調な展開ではないことが確認できるだろう。その後、ギターがアルペジオになることで楽曲はよりドラマチックになっていき、さらにはメロディアスなソロも聴こえてくる。これはもうプログレと呼んでよかろう。しかも、後半のヴォーカルパートにはコール&レスポンスっぽいリフレインもあって、さまざまな要素が多彩に詰め込まれている。聴いていて飽きることなどないと思う。

M8「Peyote」はインスト。テンポは本作の中では最速ではなかろうか。BPMを計ったわけではないので実際のところは分からないけれど、ブラストビートであって体感では最速のように感じる。そんな勢いのあるナンバーでラストが締め括られているというのは何ともいい感じだ。しかしながら、無論この楽曲も決して単に勢いだけで攻めているものではない。メロディアスでちょっとノスタルジックな旋律を奏でるギターは、時にカッティングを駆使したりしながら、楽曲の中心を流麗に闊歩していく。歌がないこともあって、誤解を恐れずに言えば、どこかフュージョンに近い印象が個人的にはある。中盤からはラウドに展開。楽曲全体に独特の抑揚と緊張感を生み出している。とりわけ「Boléro」に似たリズムの中、エレキギターがザクザクと進んでいく箇所はスリリングさの極み。独特の高揚感は聴いていてとても気持ち良い。後半は再びブラストで、力の限りに突っ走ってフィナーレを迎えるような印象でありながら、キレ良くスパッと終わる。清々しい雰囲気すら残す。

久々にOUTRAGEを聴いた興奮のまま、勢いで書き殴ってしまったので、大分主観も入ったようだし、事実との祖語があるかもしれないが、その辺はご容赦いただきたく思う。その熱だけでも伝わってくれれば幸いである。ここまで説明してきたように、1stアルバム『Black Clouds』で、ヘヴィメタル特有のラウドなダイナミズムの中にもメロディアスな要素などを入れ込んで、多彩な展開のある楽曲を示したOUTRAGE。以降、4th『THE FINAL DAY』(1991年)、6th『LIFE UNTIL DEAF』(1995年)と傑作を産み出していく。また、欧米のメタルバンド、ハードコアバンドが来日した際にそのオープニングアクトやツアーに同行。ラウドシーンにおいて日本を代表するバンドと言っても過言ではない存在へと成っていった。それも、1stで示した彼らのポテンシャルを考えれば当然であったと言える。

TEXT:帆苅智之

アルバム『Black Clouds』1988年発表作品
    • <収録曲>
    • 1.Curtain Of History
    • 2.Under Control Of Law
    • 3.Slowly But Surely
    • 4.Black Clouds
    • 5.Bring Him Back
    • 6.Eos
    • 7.Edge Of Death
    • 8.Peyote
『Black Clouds』('88)/OUTRAGE

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着