Kroiがシングル「Small World」「Pi
xie」を連続リリース、抗い生み出し
た新たな音楽と共にツアーに挑むーー
「違和感上等」のザワザワとゾクゾク
を体感せよ

ブラックミュージックを背景とする5人、内⽥怜央(Vo)、長谷部悠⽣(G)、関将典(B)、益⽥英知(D)、千葉⼤樹(Key)が集結し、ジャンルレスで新感覚の音楽を放つバンド・Kroi。昨年はメジャーデビューも果たし、さらに勢いを増す彼らは3月2日(水)に「Small World」、5月1日(日)に「Pixie」という新曲を発表し、ワンマンツアーへと乗り出す。そんな大注目のKroiをもっと知るべく、今回は内⽥と関にインタビュー。バンドのこと、シングルのこと、ツアーのことをたっぷりと話してもらった。写真からは想像できない素の2人のトークは笑いも多め。最後に飛び出したツアーのお楽しみは果たして実現なるか? 要チェックだ。
Kroi 内⽥怜央
――最初にプロフィールをおさらいさせてください。内田さんと長谷部さんが中学の同級生で、関さんと益田さんが大学の同級生。2組がInstagramで出会い2018年2月にバンドを結成し、翌年に千葉さんが加入。出会いがInstagramというのが今っぽいですね。
関:楽器を弾いてる動画をあげたりしてたんですけど、お互いカバーしてる曲が同じだったりして、直接的な接点はないけど相互フォロー状態だったんです。で、怜央と悠⽣がやってたバンドのベースが脱退することになって、「ベースを弾いてくれませんか?」というメッセージが自分に届いて。で、こっちも俺と益田が何かやりたいねっていうタイミングで、足りないパートが合致したという。実際に会ったら、聴いてきた音楽の話とかも盛り上がって結成したって感じです。
――メッセージを送ったのは内田さん?
内田:長谷部なんです。自分は知らない人にDMとかできないんですけど、当時、長谷部のコミュニケーション能力が爆発してて「誰とでも話せる!」みたいな謎の自信を持った人間だったんです(笑)。で、長谷部が関さんにDMして、スタジオ入ろうとなってセッションみたいなのをして、そっからすぐ「ライブやっちゃおう!」と。
関:曲もまだ作ってないのに、1か月後にライブを決めて。
内田:そう。それも(言い出したのは)長谷部。
関:それに関しては、益田が俺と2人になった時、「あの長谷部くんって子、大丈夫かな? ちょっと無計画過ぎないか?」と言ってた(笑)。
――長谷部さん、すごい。でも一緒にやることにした決め手は動画で見ていたプレイですよね。
内田:それは間違いないですね。(関が)ダーッとスラップしてる動画を見て、絶対これでしばかれると思ったけど、「会ったらめちゃやさしいやん!」みたいな(笑)。
Kroi
――写真は怖そうですが、今日もお会いすると朗らか(笑)。
内田:俺らギャップでやってるんで。あざとバンドです(笑)。
関:その点、ギターの悠⽣はSNSで見たまんま(笑)。ギター弾く姿に、「俺、イケてるっしょ!」というのが出てたんですけど、会ったら案の定そういうヤツ。でもKroiを結成してからは、どんどん方向性が別軸に進んで、今はちょっとわけわかんないヤツになっちゃた(笑)。
内田:オモシロを突き詰めたくなっちゃったんです。
関:カッコいいよりオモシロの方へ。
内田:怖いんですよね、その執着が(笑)。
関:笑いに対して身を粉にし過ぎなんですよね(笑)。
――長谷部さんの話は尽きませんが(笑)、バンドの話に戻ると内田さんと長谷部さんの2人と、ほかのメンバーにはやや年齢差もありますが、そこは大丈夫でしたか?
関:流行ってる音楽や同世代が聴いてる音楽だけじゃなく、それぞれそれ以外の音楽に影響を受けてるんで話は合いましたね。いわゆるブラックミュージックをがっつりディグってきた人たちだったんで、そういうところでかみ合ったと思います。
内田:あと、みんな楽器が大好きなんですよね。(楽器好きは)最終的にR&Bとかファンクとかフュージョンとかのジャンルにたどり着きやすいんですよ。それもありつつ、単純に跳ねたビートが好きとか、のれる感じが好きとかも。そういうのがでかいですね。こうやって大阪(今回の取材地)とかに来たら、毎回楽器屋に行きたい。
関:明日も行く予定です(笑)。遠征も毎回おいしいご飯と楽器屋さんにしか行かないです。
――楽器オタク的なみなさんのおかげで、楽器の知識や経験がなくてもカッコいい音楽を聴くことができるんですね。ありがたいです。
内田:いや、俺らも先人たちから、わっ。こういう音を出してーな!とか食らってきて、楽器好きになって音楽好きになって……みたいなのがあるので、自分たちもそういうことをやっていきたいっていうのはあります。
関:循環してますよね。自分たちが受けた衝撃を自分たちが発信してリスナーや次の世代につなげていきたいっていうのが、活動理念の根底にあります。
Kroi 関将典
――ところで、結成から活動は順調で昨年6月にはアルバム『LENS』でメジャーデビュー。そのツアーも無事に終え、バンドの現在地をどうとらえていますか? 第〇章とか〇〇期とかありますか?
内田:ちょっと反抗期に差しかかってるのかな? ま、ずっと反抗的ではあるんですけど(笑)。
関:成長過程で例えるなら反抗期かも。
内田:最近の会話で千葉さんが、自分たちの色ができてしまってるから、逆に自分たちがよく使う機材とか手法とかを一回禁止した作品を作ってみようってよく言っていて。
関:新しいことをしたいというのはずっとあるんですけど、最近はいい意味でも悪い意味でも、制作とか活動フローみたいなのが固まってきて。ゆえにそこから逸脱したものを作ることがテーマです。
内田:でもそうやって話してくと最終的に「ドラム使わなくていんじゃね?」とか、「ギター使わなくていんじゃね?」みたいな話になって、それは「何だ? 結局ふざけんのかい!」となる(笑)。
関:あと迷ってんのは、縛りを設けてもOKな曲……みたいになっちゃうとちょっと違う。ちゃんと押しの曲でもそれができるようにしたいよねと。
内田:ちょっとチキって、そんなに人気じゃないデモでやっちゃいそうじゃないですか。そういうとき。
関:試験的なことは、捨て曲じゃないけど、ちょっとこれでやってみようじゃなく、ちゃんとバンッと打ち出す曲でやらないと意味がないなと。今、そこを頑張ってます。
Kroi 内⽥怜央
――アルバム『LENS』、シングル「Small World」、「Pixie」も曲ごとに表現が違い、引き出しの多さを感じると同時につかみどころのなさも感じましたが、理由はそういう試行錯誤にありそうですね。
関:楽曲も、個人でレコーディングに向かうスタイルも、ライブもですけど、同じことをやりたくないという。一度やったことへの嫌悪感がすごい。ライブが2日連続であったらセトリ変えたいなとか。自分たち自身が飽きちゃうし、新しいものを作りたい気持ちがあるので、そういう点がつかみどころのない印象につながるのかな。
内田:ま、絶対2度はやらないということもないんですけど、だんだん枯渇してくるものはあるので。そこに対しては今まで聴いてないジャンルを聴くとか、自分の嫌いな手法とかを研究して、自分が好きな感じで表現できるように変形するみたいなことをしていけば、表現の幅が広がっていきますから。
――さて新曲「Small World」と「Pixie」ですが、まず「Small World」は反抗期らしいアグレッシブな曲。
内田:前のめり。聴いてくれる人たちを驚かせたいのが一番なんですけど……あんま読まれたくない(笑)。「次はこんな感じでくるんじゃね?」みたいなのを、読み合いしたいですね。
関:つかみどころがないというか、「つかませてたまるか」という(笑)。アルバムもかなり幅広く作ってるつもりなので、俺らを好んで聴いてくれるリスナーはいろんなジャンルに寛容な人が多い印象があるし、かつ自分たちとしてもいろんなジャンルや方向性をリスナーの人たちに聴いてほしいし、音楽の価値観みたいなものも広げてほしい。ま、リスナーに刺さるか刺さらないかは別として、「この曲ではこういう音楽もあるよ」という提示がある、そういう(Kroiの姿勢を表す)代名詞的なぶっとんだものができたかなと思います。
内田:自分のなかでは、前にバンッと出したい曲はKroiというバンドのいいところを詰め込みつつ、新しい表現をしようと思っているので、一人ひとりのキャラクターが出るようにすごく考えてます。うまいところ……それぞれのクセみたいなところはやらないと思っても、でも抜けなかったりするというか。だからそのクセは出るんじゃないかなと思って、逆にそこに新しい風を吹かせるように計算するみたいなのは作曲中に考えたりしますね。
Kroi 関将典
――どうしても出てくる個人の長所を予測し、それを新たな魅力になるように考えて曲を書いているんですね。そんな計算のたまものなのか、多彩な表現や展開なのに変な違和感はないですね。
内田:でも逆に違和感、残っちゃってもいいかなという感じなんですよ。人それぞれに言っていただいて、ま、音楽は賛否両論ある方がいいなと。で、やっぱり新しいことをすると、違和感をプラスするということだと思ってて。最初に新しいことをすると、これはよくないみたいなことを言われるじゃないですか。でも結局それが主流になっちゃったり。だから主流とまでいかなくとも、ちょっと賛否を集めるように作れたらいいなと思うんですけどね。
――なるほど。違和感はOKでしたか。
内田:ザワザワさせたいですね。で、一番おいしいところにのっかっていたい(笑)。
――軽やかに話していただいていますが、やはりあざとい(笑)。
内田:軽やかにひねくれてるんですよ(笑)。
――でも、「Small World」と「Pixie」の詞からひねくれは感じませんでした。
内田:最近ひねくれるのをやめたんです。ちょっと前までは、俺の考えはすべて隠して歌詞にして、一枚壁を挟んで伝える……みたいなことをやっていたんですけど、新しい表現を研究していくなかで普通に伝えてみようっていう。ま、普通でもないんですけど(笑)。
――では古い曲の詞はどんな感じですか?
内田:もっと意味がわかんないです(笑)。ま、曲を聴いて考えてほしいんですよね。自分のなかでの曲みたいなのを作ってもらえるようにしようと。
――だからなのか、言い切るような言葉が少なくマイルドですよね。
内田:やっぱり角みたいなのは気にしてて。歌詞で言い切っちゃうとあとで後悔するんですよ。それこそ常に新しい価値観みたいな感覚で表現をやっているので、言い切らないのは自分のためでもあるし、より主観の見えない音楽にするためというか、人それぞれの解釈を重視した音楽になる。
――時代や個人で価値観は変わりますもんね。そう言えば、どなたかが「詞ができるのが遅いので早くほしい」と話していたのを読みました。
関:益田ですね。益田は怜央のリリックを見て、どういうテンションや感情を入れて叩くかを考えたいって。
内田:すごいですよ。レコーディング中に全然違うテーマで、こういう気持ちで叩くわ!みたいなこと言ってくるんですよね。
関:益田がそう言う時は、だいたい誰からも賛同を得られないくらいぶっ飛んでる(笑)。
内田:不思議ちゃんです(笑)。でもそれがいいと思っていて。メンバーそれぞれが曲に感じた思いを表現することが、より主観のない感じになるというか。曲がいろんな視点で見える。それに美徳を感じているバンドです。
Kroi 内⽥怜央
――では「Pixie」についても。この曲はイントロの雄叫びとアウトロのチャイムのキラキラが特徴的。
内田:あれはもう……何でもないです(笑)。
関:ま、最後は妖精(=Pixie)を(表現)。
内田:あの曲もなんですけど、メンバーにデモを出す時にちょっとふざけようと思って入れてるのがそのまま採用になったり、ならなかったり。
――今回は採用。
内田:採用というか、入れたままというか(笑)。
関:前作(2021年11月17日リリースの4th EP「nerd」)に「Juden」っていう曲があるんですけど、その曲のデモはイントロで怜央が適当にぼやいた音源が入っていたんですよ。「(アルバムを経ての)第二章とか言いながら、結局ファンクやるんかい!」みたいなことを。それも音源に入れようとなって(笑)。
――普通に日本語でしゃべっている音声を?
関:そうです。
内田:英語の声のサンプルみたいなのはよく使われるじゃないですか。ちょっとラジオボイス的にしてとか。でも「なんで日本語はないんだろう?」とずっと思ってて。で、それをカッコよく聴かせる研究みたいなのをしてたんで。でも、だいたい歪みとかいっぱいかけときゃ大丈夫です。いや、本当に(笑)。
Kroi 関将典
――でも研究熱心ですよね(笑)。さて話を「Pixie」に戻すと、イントロ・アウトロだけでなく、物語とその情景を想像させる詞や、時にメロディアスな感じなどが、どこか絵本っぽい気もしました。
内田:絵本っぽいはちょっとうれしいですね。主軸のストーリーはポップでかわいいけど、その裏に隠された作者のメッセージがある、大人も子どもも読める絵本があるじゃないですか。ああいうの、すてきだなと思ってて。普通に聴けばポップな曲、だけど深く聴けば奥にあるみたいなのがいいなと。
――メロディは少し妖しげだったりしますね。
内田:でも、意外と楽曲のテンションとは逆の歌詞を書きますね。楽曲が暗かったら明るい歌詞を書く。普通にただ明るい曲に明るい歌詞だとイメージが薄っぺらくなっちゃうんですよ。二面性を持たせることで、悲しい時も聴けるし楽しい時も聴ける。その時のメンタルによって聴こえ方が変わってくる曲ができたら最高じゃないですか。
――そう思います。ただ、メッセージ性が強く多面的ではない曲の方が伝わりやすく、特に若い世代ではここ10年以上はポピュラーだった気がします。
内田:いやもう、逆に逆にですよ(笑)。反骨な育ち方をしたんで。でもまた、これってめぐってくるんですよね。でもそれがいんですよ。
関:それこそ俺らが、さっきからずっと新しいことをしたいって言ってるのもそうだけど、カウンター、カウンターって、あっちがこうなら、こっちはこうだ!みたいな考え方で。もし今の(Kroiが身を置く)音楽シーンがどんどん凝り固まったものになっていったなら、そこから離れたものがやりたくなると思いますし。
内田:めっちゃペラい曲を……(笑)。
関:……うっすい曲を提示するかもしれないです(笑)。それくらい俺らはカウンターで活動していくと思います。そっちの方がゾクゾクしますよね。このご時世に「それやってくるか!」みたいな(笑)。
Kroi 内⽥怜央
Kroi 関将典
――今後が楽しみ過ぎます(笑)。そして大阪・BIGCATでのワンマンを経て、東京・Zepp DiverCityへと向かうツアーも楽しみです。
関:ワンマンではやってこなかったキャパシティの会場になるので、これまでのライブとはまったく違った体験を来てくれたみなさんにしてもらいたいし、俺らもしたいですね。俺らの根底にあるライブというもので楽しんでほしいというのが第一で、さらに、今までよりも多くの人が一緒にライブを体験するので、演出的な面も含め会場が一体になれるようなパフォーマンスが披露できたらいいなと思います。今はメンバーやチームのスタッフさんと、どういう風にしようかっていうのを話し合ってるところですけど、BIGCATを経て、Zeppも必ずいいライブにします。
――ちなみに笑いに貪欲な長谷部さんは、今ツアーに対してどんな意気込みですか?
関:ステージ上での案はまだ出てないですけど、悠⽣はZepp DiverCityのライブまでに10㎏痩せなかったら、体の毛を半分そるっていう約束をしてるんです。あいつコロナ禍で15㎏太ったらしくて。
――毛を半分そる(笑)?
内田:もう……(体を縦に半分にするジェスチャー)。
関:……髪の毛も眉毛もそり落とします(笑)。今のところ一応順調に痩せてはいるみたいですけど。
内田:でも、それは結果発表があるってことだよね?
関:もしかしたらライブで体重計に乗るシーンがあるかもしれない。うしろに数字がバンッ!と出て、その場でそる(笑)。
内田:今、決まったね(笑)。
関:ま、そういう可能性があるかも?ということだけ、今日はお伝えしておきます(笑)。
Kroi
取材・文=服田昌子 撮影=ハヤシマコ

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