「最高の育三郎を体感して」~山崎育
三郎の36年をぎゅっと詰め込んだ全国
ツアー『LIVE TOUR 2022 -ROUTE 36-
』がスタート

⼭崎育三郎の全国ツアー『LIVE TOUR 2022 -ROUTE 36-』が2022年4月22日(金)の相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)での公演を皮切りに開幕する。全国17都市を巡る自身過去最大規模のツアー。どんな思いを込めたのか、本人に思いを聞いた。
山崎育三郎36年の歴史を詰め込んだコンサート
ーー今回ご自身過去最大規模のコンサート開催です。今、どんなお気持ちで挑まれていますか。
今まで5回ツアーを開催させていただき、去年はクラシックのフルオーケストラツアーもやらせていただきました。僕は12歳の寅年でデビューをし、初めて帝劇で主役をやらせてもらったのも24歳の寅年でした。
そして今年も寅年、36歳。育三郎の「36(三郎)イヤー」です。僕自身が2015年から映像の世界、テレビの仕事もさせていただくようになって、7年ぐらい経ちました。ひとつの目標としていた朝の連続テレビ小説や大河ドラマをはじめ、紅白歌合戦に出させていただいたり、東京ドームで国歌独唱させていただいたり、夏の甲子園で開会式に出させていただいたり、ディズニーの声優や主演ドラマ、そしてトーク番組のMCなどたくさんの経験をさせていただきました。
特に2015年からはノンストップで、ほとんど休んだ記憶がないような形で走り抜けてきました。1回ここで立ち止まって、自分の人生を見つめ直すといいますか、振り返るような時間にしたいと思っていた時期でもありました。
それに、今はコロナ禍なので、この状況の中で作り上げるコンサートというと、今までのようにお客様がみんな声を出して、コール&レスポンスだったり、一緒に歌を歌ったり、僕の名前を呼んでくださったり、コンサートの醍醐味である、お客様と交流をしながら進めていくというスタイルがなかなか難しいわけです。
コンサートの稽古場より 
ミュージカルや映画もそうですが、客席に座りながら、声を出さなくても、受け取ることができる。座ってじっくり見てもきちんと心に残るものだったり、受け止められるスタイルというのが、今の時代のコンサートのあり方なのかなというところで、今までのように、みんなを巻き込んで「声出していこう!」と一体感をつくるコンサートではなく、座って見ていただきながら、何かを残せるものというと、やはり“物語”しかないんですね。
今の時代のコンサートのあり方、そして、自分の心境も含めて、僕の自分の物語。36年間の歴史。僕が音楽や歌に出会うところから、ミュージカルなど、いろいろな作品に出会うことをひとつのストーリーとして作り上げたら、新しいエンタメが作れるんじゃないかと思ったんです。
だから今まで自分がやってきたものとも違うと思います。36年しかまだ生きていないですが、それを振り返りたいと思います。
過去最大規模と言っていますが、僕のことを知ってくださったり、興味を持ってくださったり応援してくださってる方って、本当にバラバラなんです。
もちろんミュージカルでデビューしましたので、ミュージカルで好きになってくださった方もたくさんいらっしゃいますし、テレビドラマや映画、ラジオ、雑誌の連載、歌手活動……など、きっかけはさまざまなんです。いろいろなきっかけを持ってきてくださる方に対して、誰も置いていかないコンサートを作りたいと思いましたし、「育三郎ってこういう風に生きてきたんだな」という僕の歴史を感じてもらうことで、より自分を知ってもらいたいと思いもあります。
そして、何より皆さんに直接感謝の言葉を伝えられる場所でもあると思っています。自分の人生を大きく見たときに、この36歳までが第一章のような感じがしていて。ここでひとつ自分の集大成となるようなステージを作り上げて、またこの37歳からの次の自分の人生だったり、自分の歴史をまたスタートさせたいと思っています。
ーーセットリストをつくる中で、何か発見はありましたか。ご自身の歴史を振り返る中で、いろいろなターニングポイントがあったと思いますし、実はこんなところを大切にしてきたんだなと思ったこともあったかと思いますが。
そうですね。自分は舞台で育ったので、12歳から29歳まではお客様の前に立って、パフォーマンス……芝居をしたり歌ったり踊ったりということをずっと続けてきました。やはり自分の原点は、舞台、生のステージだということは改めて感じました。
今はジャンル問わず、朝ドラもディズニーもバラエティ番組もいろいろなことをやらせていただいてますが、自分の挑む気持ちはどれも全部一緒なんだということに今回改めて気づかされました。
舞台だったらお客様がいて、テレビだったら視聴者がいて、雑誌だったら読者がいて、ラジオだったらリスナーがいて。どんな場面でも必ずそこには楽しみに待ってくれている方がいる。その方たちに対して、自分がどんなことを届けられるか。面白がってもらったり、楽しんでもらえるか。その根本の思いは常に一緒ですね。
だから自分が何かを表現するときは、ドラマだろうと映画だろうと声優だろうとミュージカルだろうと、やはりお客様なんです。
そういう意味では、今回のコンサートも、こんな幅広いジャンルで歌うコンサートはないと思うんですよ(笑)。ミュージカルの歌、童謡、ロック、ポップ、クラシック、昭和歌謡……、本当に1人で紅白歌合戦をやっているんじゃないかというくらい(笑)。でも、不思議と自分としてはバラバラなことをやっている感じが全くなくて。山崎育三郎の個性であり、最大の武器は、いろいろなことをやってきていること。違う現場で経験したことがプラスに働いていくんです。
自分にとってはファンの方や応援してくださっている方への意識は、12歳にデビューした頃から変わらないんだなということは感じました。
ーーセットリストは結構悩まれましたか? それともスッと決まりましたか?
携わってきた作品や思い出のある曲を並べると、ものすごい曲数になるので、そこから削っていく作業が大変でした。「これも絶対外せないけど」とか思いながら。結構考えました。
情熱の色、ターコイズグリーンで会場を埋め尽くして
ーーどんなセットリストになるか楽しみです。
はい。1曲、歌う曲を明かすと、『On your side』を歌います。今までの話に繋がるんですが、36年間、自分の歴史を振り返ったときに、一番思い浮かぶのはファンの方々なんです。
本番が終わり、楽屋から出るとファンの方がずっと並んでくださっていて、一人ひとりに挨拶をして、握手したりサインを書いたりして帰るというのがある種ミュージカル界の伝統といいますか、出待ち対応をずっとやらせてもらっていたんです。
初めて『レ・ミゼラブル』でデビューしたときは3人ぐらいの方が「ファンなりました」なんて言ってくれて、まだサインも何もなかったと思うんですけど、自分の名前を書いて。そんなところからスタートして、それが5人になり10人になり、30人、50人になりという形で、どんどん応援してくださる方が増えていった。
本当にお客様がいてできる仕事なんだということ——僕だけではなく舞台俳優・ミュージカル俳優はみんな思っていると思うのですが、お客様がお金を払って、時間を作って、劇場に足を運んで、それで初めて舞台に立てる仕事なんです。
そこに対する感謝は変わらずあるんです。舞台だけではなく、いろいろな仕事させていただいていますけど、やはり1人の力ではないんですよね。ファンの方、スタッフの皆さんに支えられて、やらせていただいている。その中で、自分で歌詞を書きたいと思いまして。感謝の気持ちを言葉にした楽曲が『On your side』。宗本康兵さんが作曲してくださって、このコンサートのために作った曲です。
ーー『On your side』はペンライトを振って応援できる曲でもあるそうですね。
今回のコンサートのテーマカラーは、ターコイズグリーンなので、その色で会場を埋め尽くしたいと思っています。
ターコイズグリーンは「情熱」の色なんです。僕は、ずっと情熱を持ち続けることは、一番難しいことなんじゃないかなと思っているんです。大人になればなるほど、いろいろなことも分かってきて、妥協したりね。でも、子どもの頃のようなキラキラした思い、目標や夢がなくなったら、もうおしまいだなと思っているので、常にそういった思いを持ち続けていたいです。
36年という節目の年に、ここから先も情熱を持って、走り続けたいという思いも込めて、このカラーにしました。だから、みなさんにもペンライト振って、応援していただけたらいいなと思っています。
平 常の人形劇を起用した理由
ーー人形劇の平 常(たいら・じょう)さんの出演が決まっていますが、これはどういう意図があってオファーされたのですか?
平さんは、僕はもう10年以上前から知ってる、友人でもあり、大好きなアーティストの方です。ステージも何度も観に行かせていただいていて、初めて見たのが新国立劇場で『オズの魔法使い』だったかな。
彼はたった1人で何十という人形を操りながら、歌って芝居をしていた。その姿を観た時に、人形劇という概念を超えたんです。人形劇は、勝手に子どものためのパペットというイメージがあったのですが、全くそんなことはなくて。
人形とご本人が芝居をしているような、芸術を見るような気持ちになったんです。1000人近い人を相手に、たった1人で人形と共に芝居を届けていました。
人形劇ってすごい可能性があるなと思いましたし、彼のパフォーマンスがすごく素晴らしくて、いつかご一緒したいなとずっと思っていたんです。それに、僕がまだご一緒したことのないジャンルだったということもあリましたので。
自分の歴史をたどるストーリーにしたときに、僕自身が「自分は子どものときに、こうだったんです」と芝居をしたり語ったりしていくと、少し違うかなと思ったんです。自分の物語だからこそ、もっと客観的に見られたり、見てる方に隙間を与えるようなものは何だろうと思ったときに、平さんの人形が浮かんできた。
人形は表情が変わるわけではないのだけれど、彼の操る人形って、表情が変わって見えてくるんです。人形が演じることによって、観客の皆さんそれぞれに想像してもらう。お客様が想像する隙間を作れるのには、人形劇がぴったりだと思ったので、平さんにオファーしました。
「新しいものを生み出したい」山崎育三郎のこれから
ーーさきほど、今回のコンサートが一つの集大成とおっしゃっていました。まずはこのコンサートの成功だと思いますが、37歳以降の第2章、第3章、ご自身としてはどういう目標や夢を描いてらっしゃるのでしょうか。
今回は僕の歴史をたどっていく構成になっていますが、この先は、歌手・山崎育三郎として、アーティストとしての世界を作っていきたいと考えています。
僕はミュージカル俳優として育ったので、どうしても与えられた楽曲や決まった世界の中でどう自分が表現していくかだったり、台本もあって監督もいて、演出家の先生もいる決まった場所の中でどう表現するかということをずっとやってきました。今後は自分の世界をゼロから生み出すことにも挑戦していきたいなと思っています。
歌手活動をはじめ、ミュージカルに出演することは子どもの頃からの夢で、ずっと『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』、『エリザベート』、『モーツァルト!』という4作品に出演することを目標にしてきました。これからは日本の作品に限らず、日本初演もの、僕が初めてのキャストとして、長く愛される作品を自分で作っていくこともやっていきたい。
ただ、これからはいろいろなことを削ぎ落としていくような感じがしています。今まで休みなく突っ走って、多くの経験をさせていただいていますが、その中で自分が本当にやりたいこと、自分が大事にしていきたいことをテーマに、この先は進んでいきたいなと。新しいものを生み出していきたいなと思っています。
ーー走り続けるために、体力面や健康面で気を使っていらっしゃると思います。ご自身で「これを食べると元気になる」とか「これだけは毎日続けている」とかそういう秘訣があれば是非教えてください。
お肉ですね! 肉を食べれば、大体元気になります。これから始まる全国ツアーに備えて、今はたくさん食べて、体力をつけている最中です。
ーー最後に一言お願いします!
僕が一番輝く場所は舞台の上です。最高の育三郎を体感しにいらしてください。
取材・文=五月女菜穂    撮影=荒川 潤

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