『レキシ』は
日本音楽史での大発明!
レキシはもはや歴史上の人物である!

遊びの延長で始めたというレキシ

JBが創造し、Slyがそれを昇華させてきたファンクという音楽は海を越え、この日本でも独自の進化を遂げてきた。そこに大きく寄与したアーティストと言えば、久保田利伸や岡村靖幸がそうで、バンドでは米米CLUB、FLYING KIDSの名が挙がるだろうし、あるいはそれより先のJAGATARAという伝説的存在も忘れてはならないだろう。そして、レキシもまたそのひとりであり、上記アーティストに決して見劣りすることのない──いや、まったく見劣りするなんてことはなく、日本におけるファンクミュージックの最大の功労者のひとりと断言していいと思う。

しかしながら…と言うべきか、“日本にファンクを根付かせよう!”とか、そういった気負いのようなものがレキシからほとんど感じられない。そう思うのは筆者だけではなかろう。そもそもレキシはその成り立ちからしてちょっと面白い。池田がメジャーデビューを果たしたのは1997年のこと。SUPER BUTTER DOGのキーボード担当である。同バンドは永積タカシと竹内朋康とによって結成されたものであり、池田は竹内に誘われるかたちで参加している。結成の首謀者ではなかったし、のちに同バンドを振り返って「バンドは楽しかったけれど、職業にしようとは考えなかった」と述べていることから考えても、そもそも彼はプロのミュージシャンとなる意識が乏しかったとも想像できる。

ただ、そうは言っても、その音楽的な素養が放っておかれるわけもなく、デビュー以降は多くのプロデュース作業やライヴサポートを依頼された。2000年には中村一義の3rdアルバム『ERA』のレコーディングに参加し、2004年に中村率いるバンド、100sのメンバーにもなっている。池田はそんなふうにキャリアを積み重ねてきたわけだが、レキシはその最中に生まれたものだ。“トラックに日本史を乗せよう”とSUPER BUTTER DOGのメンバーと遊びの延長で始めたものだという。おそらく1990年代後半のことだろう。その首謀者も永積だったという説もあるし、そこでもまた、はっきりと“自らの音楽でメジャーシーンを驚かそう!”といったような意識は薄かったと思われる。SUPER BUTTER DOGのライヴでもレキシが登場したこともあったそうだが、いつしかメンバーに止められるようになったとも聞く。そんなユニットが、SUPER BUTTER DOG も解散し、100sも活動停止というなった要因もあったとは言え、オリジナルアルバム7作品をリリースするに至り、しかも、そのほとんどがチャート上位にランクイン。何度も全国ツアーを敢行し、日本武道館や横浜アリーナでもライヴを行なうようになるわけだから、世の中、何がどう転ぶか分からない。

そうした変に気負いのないレキシだからなのだろう。コラボレーションを希望するミュージシャンがあとを絶たない。これはこのユニットの大きなアドバンテージとなっているのは間違いなかろう。レキシ公式サイトによれば、いとうせいこう、椎名林檎、斉藤和義、松たか子、持田香織(Every Little Thing)、秦 基博、後藤正文(from ASIAN KUNG-FU GENERATION)、山口 隆(サンボマスター)、Bose、ANI(スチャダラパー)、安藤裕子、Mummy-D(Rhymester)、キュウソネコカミらが参加している。デビュー作『レキシ』にしても、いとうせいこう、ハナレグミ、小谷美紗子、中村一義、原田郁子、スネオヘアーが参加。豪華な客演であるが、メンバーのネームバリュー云々ではなく、気の合うメンバーたちと作り上げたと見るのが正しいと思う(2nd以降はレキシに惹かれたメンバーたちと作り上げていると見ることができよう)。

参加メンバーが豊富になればなるほど、音源においてもライヴにおいても楽曲のバリエーションが増えていくのは当然として、メンバーのテンションも高くなるだろうし、楽曲制作、演奏により熱が入ることも想像に難くない。遊びの延長だったというレキシだが、いい意味でその延長のまま活動を続けていることも想像できる。無論、創作は楽しいことばかりではなく、産みの苦しみがあることも承知しているが、過去に池田のインタビューなどを拝見すると、レキシは上記のようなスタンスをメジャーシーンで継続できているようではある。それは実に素晴らしいことだと思うし、サウンドにはそれがはっきりと注入されているように思う。

OKMusic編集部

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