Natumi. アニメ『境界戦機』第二部
エンディングテーマ「pARTs」でデビ
ューする現在の想いとシンガーとして
の覚悟

アニメ『境界戦機』第二部のエンディングテーマとなっている、澤野弘之楽曲プロデュースによる「pARTs」で6月1日にCDデビューするNatumi.。ナチュラルでありながら力強い歌声は、幼少期から高い評価を受け、地元・広島県を中心に様々なイベントやテレビにも出演していたという。 “Naturalな自分で”という意味が込められたアーティスト名の通り、音楽の原体験からデビューへの想い、シンガーとしての覚悟を、自然体な言葉で溌剌と語ってくれた。
──ご自身の中で、音楽にまつわる一番古い記憶というと、どんなものになりますか?
両親が共働きだったので、家に帰ってくるまで祖父母が経営しているカラオケ喫茶でいつも待っていました。たぶん、一番古い記憶は……祖父が演歌が好きだったので、北島三郎さんの「まつり」を覚えて、歌っていたことだと思いますね。歌うと、「上手、上手!」って周りの人が褒めてくれるのが嬉しくて、よく歌っていました。
──それは小学校に上がる前とか?
上がる前だったと思います。あとは、カラオケ喫茶が終わった後に、祖父母の家で『Mステ(ミュージックステーション)』とかを祖父と一緒に観たりしたのを覚えてますね。祖父は早くに亡くなってしまったので、話でしか聞いていませんが、演歌の大会とかにも出ていたみたいです。
──音楽が好きな方だったんですね。Natumi.さんとしては、カラオケ喫茶だけじゃなく、学校でも歌ったりしていたんですか?
小学校のときは、友達の前で歌うことはほぼなかったですね。
──歌うのがちょっと恥ずかしかったりとか?
そういう感じでもないですね(苦笑)。活発な子だったとは思います。学校では友達と普通に話していましたけど、休みの日は家族と過ごすことが多かったので、仲の良い友達の家族と一緒に、みたいなことはなかったですし。行事のことで言うと、運動会のときに応援ソングを何にするか、グループごとに話していて、Perfumeさんの楽曲を提案した覚えがあるんですけど、結局それは採用されなかったです。だから、家では本当によく歌っていたのに、友達の前では全然歌ってなかったですね(笑)。たぶん、歌うというのは、音楽が鳴って、マイクを持って、みたいな認識だったのかなと思います。
──資料を拝見すると、小学5年生から中学2年生まで、アクターズスクール広島に通っていたとのことで。どんなきっかけで通い出したんですか?
きっかけをくれたのは父ですね。いろんな習い事をさせてくれていたんですけど、カラオケ喫茶で歌っているのが楽しそうだったから、「こういうのが近くにあるけど、見学しに行ってみる?」って。
──習い事はいろいろやられていたんですね。
そうですね。水泳とか、バトンとか。アクターズスクールに通う前からダンスも習ってました。ピアノも習っていたんですけど、小学2、3年生ぐらいで辞めてしまったので、いまは全然弾けないです(苦笑)。
──アクターズスクールでのレッスンはいかがでした? それまでと一気に環境が変わったと思いますけども。
そうですね。半年に1回、発表会がありました。アクターズスクールに通っている子達の中でグループを組んで、どの曲にするかというのも全部自分たちで決めて、スクール内のオーディションに受かった子たちが出られるんですけど。入ってからの半年間は、みんな同じクラスになるんです。そこには同世代の子だけじゃなくて、小学校1、2年生ぐらいの子から高校生のお姉さんもいましたし、自分よりも歌やダンスがうまい人もいて。そこで今まで見ていた世界が広がった感覚はありましたね。それまでは本当にただ楽しいだけで歌っていたんですけど、ソロでオーディションを受けて、勝ち取って、初めてひとりでステージに立ったときに、自分はアーティストになりたいなって、初めて思いました。
中学1年生のときに見た『ギルティクラウン』が、音楽も物語の一部みたいになっている作品で、主題歌と劇伴にものすごくハマったんです。
──今までは楽しいから歌っていたけど、それこそオーディションに出たり、競い合わないといけない部分も出てきたと思うんですが、そういうところにちょっとした違和感みたいなものを覚えたりすることはありませんでしたか?
当時は、出された課題曲を歌うという感じでした。私は中学生に上がったぐらいから、アニソンとかアニメにハマり始めて、このアーティストさんが好きだなとか、この曲好きだな、みたいなものが出てきたんです。ただ、アクターズスクールでは、基本的にはみなさんの知っている有名な楽曲が課題曲になっていました。あと、私はもともとアップテンポが好きだったので、正直、この曲歌いたくないな……っていうときもあって(苦笑)。
──あくまでも課題曲ですからね。
もちろん歌っていて楽しかったですし、ソロのオーディションで勝ったりしてすごく嬉しかったんですけど、それと同時に、練習が嫌だなと思う時期はありましたね(苦笑)。やっぱりまだ小さい頃だったので。
──楽しくないことはやりたくないというのは、大人になってからも全然あることですし、小さい頃となると余計にありますよね。それでスクールをやめて、ご自身でやっていこうと?
両親と「アクターズスクールに行くのは中学生まで」と決めていたので、そのリミットもありましたし、あとは高校受験もあったので、中学2年生で辞めさせてもらったという感じでした。その後からは地元で活動させていただきましたが、そのときはアクターズスクールでやっていた楽曲も混ぜつつ、自分の歌いたいアニソンを歌わせていただいてました。
──そもそもアニメやアニソンにハマったきっかけというと?
中学1年生のときに見た『ギルティクラウン』ですね。そのアニメが、音楽も物語の一部みたいになっている作品で、主題歌と劇伴にものすごくハマったんです。特にエンディング曲だった「Departures ~あなたにおくるアイの歌~」は、アップテンポばかり歌っていた私が、初めて好きになったスローバラードで。それまでアクターズスクールの発表会で(アニソンは)歌わせてもらえなかったんですけど、初めて先生にOKをもらえて歌えた楽曲でもあるので、すごく思い入れがあります。
──音楽が重要なポイントになっているアニメにハマったというのも、らしいところかもしれないですね。高校生になってからは、地元で活動をし始めたと。
そうです。でも、自転車で事故にあって、口の横を怪我してしまったんですよね。やっぱり顔だから、キレイに治したいというのもあったので、歌うのを控えていた時期もありました。
──どれぐらい控えていたんですか?
高校1年の夏からずっと治療をしていて、ちゃんと治ったのが高校3年生の頃でした。
──ということは、高校時代はほぼ歌えていなかった……?
そうですね。一度治したんですけど、傷跡が結構酷くて、もう一度治療し直していたので。その時期は練習量も減らして、治療してすぐはあまり歌わないようにしていました。
──かなり気分が落ち込みそうですね……。
そのときは、本当に歌を続けたいのか、よくわからないような感じでしたね。その頃にLiSAさんとかAimerさんとかを見て、アーティストになりたいなと思ったりはしていたんですけど、進路を選ぶタイミングと重なっていたので、ここでやめるか、やめないか、みたいな状態でした。でも、治療し終わった後、久々に歌ったらもうとにかく楽しくて! 改めて私は歌うことが好きなんだなって再確認したので、自分の中で期限を決めて、夢を叶えるためにもう一度チャレンジしようって。
──そこから今に繋がっていくわけですね。
夢として頑張るのであれば、絶対に上京したいと思ったんですけど、あまり両親の手を借りたくなかったんです。両親も応援してくれていますが、ちゃんと自分の手で進んでいきたかったので。それで、高校を卒業してからは、アルバイトしながら、地元のイベントにも出させてもらっていて。でも、何の伝手もなく上京するのもなぁと思って、地元にいた頃からいろいろなオーディションを受けていたんです。そのときに受けたスターダストさんから良いお話をいただけて、そのタイミングで上京してきました。
嬉しさと同じぐらいの比率で、不安も同時に押し寄せてきましたね。私で大丈夫かな……、澤野弘之さんの楽曲を歌えるのかな……?って(苦笑)。
──そして、ついにデビューされるわけですが、デビュー曲の「pARTs」は、4月からスタートするアニメ『境界戦機』第二部のエンディング曲。しかも、楽曲をプロデュースされたのが澤野弘之さんという。
私はとにかく澤野さんの大ファンで。それこそ『ギルティクラウン』の劇伴を手がけられていますし、「Bios」というドイツ語の歌詞の曲があるんですけど、耳コピして練習していたぐらい好きでした。あと、『アルドノア・ゼロ』の楽曲もすごく好きなんですけど、それも澤野さんが劇伴を手掛けていらっしゃるんですよね。その主題歌だった[nzk](SawanoHiroyuki[nZk])の楽曲とかもいろいろ聴いていましたが、聴いた瞬間、やっぱり好きだなと思う曲がほとんどなんですよ。だから、私の夢として、アーティストとしてデビューすること、アニメのタイアップをいただくこと、澤野弘之さんに楽曲を提供していただくこと、というのがありました。
──すごいですよね。デビューのタイミングで3つの夢が叶うという。
そうですね。去年の夏ぐらいに、「ちょっと話があるから」と呼ばれて事務所に行ったら、その3つを同時に教えていただいて。びっくりしすぎて頭が真っ白になりました(苦笑)。心の中ではすごく嬉しくて舞い踊っているんですけど、混乱しすぎて表情に出せなくて、家に帰ってようやく自覚できました。
──家でどう喜んだんですか? 叫んだり、飛び跳ねたりとか?
ひとりでニヤニヤしてました(笑)。でも、嬉しさと同じぐらいの比率で、不安も同時に押し寄せてきましたね。私で大丈夫かな……、澤野弘之さんの楽曲を歌えるのかな……?って(苦笑)。
「pARTs」CD Only
これが初めて自分の楽曲になるということもあって、自分らしさをどう出すのかという難しさはありましたが、どう歌うか探るのはすごく楽しかったです。
──そんななかで、今回の「pARTs」を聴いた印象はいかがでした? 壮大で、瑞々しさや清涼感のあるエレクトロサウンドは、澤野さんらしいところでもありますけど。
最初に聴いたときは、すごく壮大な雰囲気があって、アニメのエンディングの映像が流れているんじゃないかって錯覚するぐらい、すごく素敵な楽曲だなと思いました。この曲を出させていただけるんだと思って、すごく嬉しかったですね。
──印象に残った歌詞はありました? かなり韻を踏んでいて、その気持ちよさもありそうですけど。
全体的に抽象的な歌詞ではあるんですけど、私としては、アニメに沿っている《欠けたパズル拾い集めた》とか《組み込んでいくチカラになる》という部分が好きです。そのなかでも、《掠め取られた花 不意に唇が乾く》みたいな、情景が浮かぶような表現もあって、すごく素敵な歌詞だなと思いました。
──その楽曲を受け止めて、どう歌おうと考えましたか?
これまではカバー曲ばかり歌わせていただいていたので、これが初めて自分の楽曲になる曲ということもあって、自分らしさみたいなものをどう出すのかという難しさはありましたが、どう歌うか探っていくのは、すごく楽しかったです。
──特に難しさを感じたところはありましたか?
私自身、難しい楽曲を歌うのが好きなので、そういう楽曲に挑戦したいとか、音域の広い楽曲を歌ってみたいと思っていました。それを汲み取ってくださったのかどうかはわからないんですが、この曲は低音がすごく低いんです。本当に出るか出ないかぐらいのところだったので、どう歌えばいいんだろうと思って(苦笑)。
──難しい曲に挑戦したいと、自分で言ってはみたものの(苦笑)。
はい(笑)。それを澤野さんにご相談したときに、メロディを少し変えてくださったりとか、当日のディレクションで「息を多めに」と言っていただいて、この形になったんですけど、そこは難しかったですね。あと、ずっと歌いっぱなしというのもあって、喉のコントロールが難しかったですが、やっぱり大変さや難しさでいうと、低音と、自分らしさをどう出すかというところでした。
──お話しされていた、サビ前の息を多めに出している低音の部分はすごく印象に残りましたし、そこからサビで一気にひらけてパワフルになるギャップもすごくよかったです。
私の一番の武器は、高音や声量といったところだと思うので、それこそサビの高音部分はすごくキレイに出せたと思います。私としては、CD越しでも映像越しでも届けられるもの、伝わってくるものを表現できるアーティストになりたいと思っていて。その辺りは、Dメロの《掠め取られた花》のところですごく意識して歌った部分でもありますね。
「pARTs」CD+DVD
「ライブを観に行きたい」と思っていただけるアーティストになりたい。自分自身が進化できるように、いろんなことにチャレンジしていきたいです。
──今後のことについてもお聞きしたいんですが。もともとステージに立って歌っていたのもあって、ライブは積極的にやっていきたいと考えていたりします?
そうですね。カラオケ喫茶もアクターズスクールも共通しているのが、「ステージに立って歌う」というところで。私がアーティストになりたいと思ったのも、ソロで歌ったときのステージ上からの景色とか、歌い終わった後の拍手がすごく気持ちよくて、嬉しかったからなんですよね。それもあって、「ライブを観に行きたい」と思っていただけるようなアーティストになりたいと思っていて。今はなかなか難しい時期、状況下ではあるんですが、ライブを思いきり楽しめるようになったら、みなさんと一緒にひとつの空間を作り上げていきたいと思っているので、ライブはどんどんしていきたいですね。
──ちなみに、ライブに出る前のルーティーンとか、決めていることはあります?
最近は、歌う30分前に発声練習を絶対するようにしています。あと、ルーティーンに入るのかは分からないですけど、ご飯は結構喉に直結してくると思うので、なるべく歌う2時間前に食べるようにしてます。たとえば、お昼過ぎのイベントだったら、11時頃に食べて、リハーサルをして、発声練習をして、本番、みたいな感じですね。
──決めている飲み物はあったりしますか?
基本的には水ですね。でも、できるだけステージ上では飲まないほうが、声の調子が良くて。なんか、お腹を使っているせいなのか、どうしてもちょっとあがってきてしまうんですよ(苦笑)。だから、ライブの1時間前ぐらいに水をがぶ飲みして(笑)、できるだけステージ上では飲まないようにしてます。
──ライブ以外でも、今後挑戦してみたいことはありますか? 言ってもここから世に出るわけであって、やりたいことはかなりたくさんあると思うんですが。
そうですね(笑)。大好きなアップテンポの曲も、しっとりしたバラードも歌っていきたいですし、自分の楽曲に振付をつけて、みなさんと一緒に盛り上がったりもしてみたいですし。それと、やっぱり大きいステージに立ってみたいですね。そこに立って、歌って、みんながサイリウムを振っているところを見てみたいなって。ここからもっと自分自身が進化できるように、いろんなことにチャレンジしていきたいです。

取材・文=山口哲生

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