雑誌「映画秘宝」双葉社からの刊行は残念ながら2022年5月号で中止となっている

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映画秘宝の話題が尽きない:ロマン優
光連載210

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第210回 映画秘宝の話題が尽きない 昨年の「映画秘宝編集長(当時)・岩田和明氏によるDM恫喝事件」(以後、秘宝DM事件と略する)について語られているのを目にする機会が最近増えています。いや、今までも被害者に対する二次加害的発言がされたり、映画秘宝に何かあるたびに、たびたび触れられていたのですが、今回は集中的に映画秘宝関係者と世間的に見なされている人物の二次加害発言が集中的に繰り返された結果、目に入る機会が増えたのだと思います。
 まず、発端はアカデミー賞授賞式でのウィル・スミス氏によるビンタ事件。原因になったクリス・ロックの発言に対して、町山智浩氏が「クリス・ロックが『GIジェーン』じゃなくて「ジェイダの『ブラックパンサー2』が早く観たいよ」といっていたら……。」とツイート。それに対して、秘宝に寄稿していた映画ライターの真魚八重子氏が、町山氏の発言はジェイダ・ピンケット・スミスに対する二次加害であたる可能性があるということ、町山氏が本質を理解していないという指摘をした後に、何故か秘宝DM事件の被害者に対する過去の自分の発言を擁護するかのような発言をし、批判を受けることになったあたりから、秘宝DM事件について再び目に入ることが多くなりました。
 以前、この連載でも触れましたが、真魚氏の当時の発言は被害者に対して配慮することなく、秘宝のジェンダー意識を高めるために真魚氏がやってきたことの成果を被害者が認めてないことに対する憤りだけで被害者のツイートを批判するような、ようするに自分のことだけを考えた発言であり、良くないものでした(当然悪いことなので、当時の原稿ではわざわざ「悪い」と書かなかったら、自分が真魚氏を擁護していると解釈している人がいて驚いた)。それを、自分の発言は二次加害ではなかったみたいなことを言い出したら、普通に批判されます。ただ、この件で氏に対して誹謗中傷レベルのことを言っている人がいたというのも事実ではあり、自分も一人確認できました。
 そういう悪質なアカウントからの被害を真魚氏が訴え、真魚氏に対する加害を批判するツイートをした人が何人かいたのですが、本来の被害者に対する配慮がないように見える発言が多く、さらに批判が拡大。真魚氏は迷走したあげく自身のTwitterのアカウントを削除してしまいました。ご自身もnoteで反省してらっしゃるのですが、本当に気を付けた方がいいと思います。
 もう1つの流れとして現れたのがジャンクハンター吉田氏とその部下の人です。かって、秘宝で営業に携わり、寄稿もしていたが、現在は秘宝とは無関係の吉田氏。事件当時も部下の人と共に、愉快犯などという表現を使い (被害者が愉快犯と誤解されてしまう可能性を指摘しただけだという弁明がなされていますが)、被害者に対して攻撃的にとれる言動をTwitterやYoutubeで繰り返し、秘宝ライター・てらさわホーク氏に厳しく注意をされて、ようやく沈黙することになりました。
 今回、吉田氏たちは自分たちが被害者であるという主張をメインに秘宝DM事件について言及をはじめました。Twitter上で多くの匿名アカウントたちに、自分たちが二次加害を行ったと事実無根のことを言われ誹謗中傷を受けているという主張です。普通に考えて、当時の彼らの言説は被害者に対する攻撃であるととらえられるもので批難されるのも仕方がないものですが、何故か自分たちが被害者になっているのです。批判的な一般のアカウントに対して、訴訟をちらつかせながら恫喝ととらえられるような発言をしていることも、彼らが批判されている要因です。
 さらに、自分たちの正当性を主張するために、被害者に否があった証拠として、被害者の過去の秘宝に関するツイートのスクショを持ち出してきているのですが、そもそも公式アカウントがDMで恫喝した行為が問題になってるので、ツイートの内容ははっきり言えば別にどうでもいいんですよ。ツイートの内容を考慮したとしても、気になるならリプで対話を試みればよかっただけの話でしかなく、それを生死に関わることを弄びながら陰で恫喝するから事件になってしまったわけで、問題が何なのか理解できていないと思います。
 さらに、岩田氏は美人局にあったようなものだという珍見解。被害者は秘宝に対する悪口を繰り返すことで、岩田氏が恫喝DMをだすように誘導したと言ってるようにしか私は理解できませんでした。そんなまわりくどい手段で人を陥れようとしたとかいう陰謀論的な話、無理がありすぎると思いますし、被害者に対する攻撃にしか見えません。被害者を攻撃する意図はないという主張もしていますが、それも無理があると思います。
 これが意図的につくられた主張ではなく、本人たちは本気でそう認識していそうで、何といったらいいのかわからなくなります。サイゼリヤ、4℃に関する話題に対しても、何が批判されていたのかが全く理解できてない様子を部下の人が見せていたり、ホモという単語を未だにガンガン使っていたり、色々なことが本気でわかってない人たちであるのは間違いありません。
 自分たちがなぜ批判されているのか理解できずに被害者意識をひたすら募らせたり、吉田氏の会社が上手くいってないことの原因を自分たちに対する批判に求めたりしている部分もあると思いますが、無理があるようにしか見えません。なぜ、あのように誤った認識をし続けているのか、あまりにも理解できなくて不安な気持ちになります。オフィス秘宝としても迷惑でしかなく再三注意していたらしいですが聞き入れず、最終的に公式アカウントからツイートで批判されるような事態に陥ったわけですが、オフィス秘宝の田野辺氏には謝罪しても、被害者には謝罪していません。
 こういうことが起こっている最中、漫画家・藤本タツキ氏のWEB上で無料公開された読み切り作品「さよなら絵梨」に関しても秘宝DM事件と結びつけるような批判が一部でありました。
 個人的には「技術の高さを見せつけるような悪意に溢れたギャグ漫画であって、色々と見る人がひっかかるようなポイントは仕掛けてあるけど、それ自体に意味はない」という風に思っているのですが、例えば、作品に秘宝と共通するような文化エリート意識を見出だして批判をしたりするようなことは一つの見解として間違ってはないと思います。ただ、主人公が自分の作品が受け入れられなくて批判されたことで死のうとしたことを、岩田氏のDMと結びつけるのは無理があると思うのです。当て付けで自死しようとすることと、あなたのせいで死にたくなりましたと責めていやがらせするのは、さすがに似て非なるものではないでしょうか。後者は、前者の例を相手を責めるための言い訳に利用しているだけなのですから。
 あと、町山氏は真魚氏に対する加害をやめるようによびかけていたのですが、それならばジャンクハンター吉田氏たちにもやめるようによびかけるべきだったのではないでしょうか。Twitter上で色んなことについて言及しすぎて自身のキャパを越えてしまっていて、色々なことに適切に対処できないような状態になっているのかもしれませんが、それならそれでTwitterを控えるべきなのではないかと思います。
 秘宝DM事件に関するあれこれは、問題あるSNSの使い方によって事態を悪化させている側面があるとも思っていて、自分も気をつけなければと感じています。
(隔週金曜連載)

図版:映画秘宝2022年5月号
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【ロマン優光:プロフィール】
ろまんゆうこう…ロマンポルシェ。のディレイ担当。「プンクボイ」名義で、ハードコア活動も行っており、『蠅の王、ソドムの市、その他全て』(Less Than TV)が絶賛発売中。代表的な著書として、『日本人の99.9%はバカ』『間違ったサブカルで「マウンティング」してくるすべてのクズどもに』(コアマガジン刊)『音楽家残酷物語』(ひよこ書房刊)などがある。現在は、里咲りさに夢中とのこと。twitter:@punkuboizz
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