写真左上段より時計回りに、鈴木慶一(Vo&Gu)、鈴木博文(Ba&Gu&Cho)、岡田 徹(Key&Cho)、夏秋文尚(Dr&Cho)、武川雅寛(Violin&Trumpet&Cho)、白井良明(Gu&Sitar&ギタギドラ&Cho)

写真左上段より時計回りに、鈴木慶一(Vo&Gu)、鈴木博文(Ba&Gu&Cho)、岡田 徹(Key&Cho)、夏秋文尚(Dr&Cho)、武川雅寛(Violin&Trumpet&Cho)、白井良明(Gu&Sitar&ギタギドラ&Cho)

【moonriders インタビュー】
起きてしまったあとでは、
もう前には戻れない

老人はアレンジを変えたくなるけど、
若者はオリジナルのように歌う

だから、余計にポップに響くのかもしれませんね。ここまで“世間に対して物申す”系の楽曲の話をさせていただきましたが、『It’s the moooonriders』にはこれだけではなくて。その辺は博文さんの楽曲に顕著だと思いますが、時間が不可逆であることや、刹那といったことが描かれてものもあります。「monorail」と「岸辺のダンス」はそれが色濃いように思いました。こういう歌詞が出てきたことはご自身ではどう分析されるのでしょうか?

博文
“時間を左右できる人はいないんじゃないか?”というのが基本的にあるんだよね。
慶一
新型コロナウイルスの影響でこうなって、コロナがなかった頃に戻りたいと思うでしょ? しかし、“本当に戻れるのだろうか?”という疑いも持つよね。これは不可逆だね。起きてしまったあとでは、もう前には戻れない。ロシアがウクライナを攻めたこともそうで、その前には戻れない。
博文
人類全て愚か者から始まるという。

これらの不可逆を綴った歌詞にはコロナ禍の影響がありますか?

博文
影響はしているでしょうね。でも、「monorail」は羽田に防波堤があって、そこから実際にモノレールが水中に入っていくところが見えるんですよ。昔はそこによく行っていたから、その時の光景ではあるんですけど。

これは私が「monorail」で思ったことなんですけど、時間が不可逆であるということを歌詞だけでなく、サウンドでも表現されているじゃないですか。随所にリバースが入ってますけど、これはまさに音を逆回転させているわけですよね。

博文
そうそう。
慶一
それは素晴らしい解釈だなぁ。

音も喋っている感じと言ったらいいでしょうか。ベテランに向かってこんなことを申し上げるのもあれですけど、こういうところは本当にすごいと思いました。

博文
でも、あれはアイディア一発ですよ。ほとんど自宅でやっちゃってるもんですからね。
慶一
2020年代アートになっちゃったね。スタジオで録音したのは我々の声だけですよ。
博文
だけど、それが画期的で。誰もオケしか聴いてなくて、他人の声は聴いていない。
慶一
面白い録音でね、他人がしゃべっている声を聴かない。自分の声だけが返ってくる。だから、タイミングを合わそうなんてことができない。
白井
ずれちゃってね。そこを狙ってやったんでしょうけど。
博文
メロディーもあんまり関係ない。ピアノに向かって歌っていたよね(笑)。
白井
ピアノに顔を突っ込んで歌っていた(笑)。
慶一
ひとりずつ順番に録ると、どうしても前の人のものを聴いちゃうじゃない? 
博文
だから、全員の声を同時に出してもらった。

「monorail」は不思議な楽曲で、今どの箇所を聴いているのかが分からなくなりますよね。最初から最後までフワフワした感じというか。そういう感じを出したかったんですか?

博文
そう。何も分からないっていう。誰が歌っているかも分からない(笑)。

あと、時間の不可逆で言えば、澤部 渡さんが歌詞を手がけた「三叉路のふたり」の内容も、まさにそれですよね。しかも、不可逆であることをポジティブにとらえているという。

慶一
この歌詞、いいよね。
博文
前向きな歌詞だね。俺たちには書けない(苦笑)。
慶一
うん。もうちょっといろいろとつけ足すか、すごく暴れ回る。こうしてちゃんと“あぁ、そうだよな”っていう歌詞はもはや書けないね。

これは澤部さんに発注されたのでしょうか?

博文
発注ですね。
慶一
歌も歌ってもらうことを前提で。澤部くんとキーボードの佐藤優介くんにはライヴで手伝ってもらっているんだけど、本当に助かる。彼らがmoonridersらしさを引っ張り出してくれる…我々は忘れちゃってるんだよね。ライヴで昔の曲を掘り起こすと、“これはもうできないな”とか思うんだけど、そんな時は彼らに訊くんだよ。“あの曲のメロディーってどうだったっけ?”とか。すると、“ここはこうでした”って。そうやって、30歳をちょっとすぎた人と70歳前後の人が一緒にやるのは、70歳前後の人にとっては非常に助かる。
白井
あと、演奏のフレッシュネスが気持ち良いの。声にしても、ギターの音にしても、何にしても。それに僕は結構感化されたり、刺激を受けていますね。

それも人と一緒にやるバンドならではの醍醐味ですよね。“この人とやるからこそ、こういうサウンドになる”という。

白井
そうですね。最近は我々の演奏は非常に優柔でして、イントロが決まっていなかったり、いつの間にか入っちゃったり、ボブ・ディランが「風に吹かれて」を歌みたいに何を歌っているか分かんないような、そんなふうにやるんですけど(笑)、彼らから“ここは違いますよ”っていうご指摘を受けて直したりもするんです。
慶一
直さない時もある(笑)。
白井
そういう時もある(笑)。で、そういう“曲がどんどん透明になっていってもいいじゃないか”という考えもあって、我々の世代はそう思うんですけど、そこでの共存が楽しいという。
慶一
うん。その中であのふたりはオリジナルっぽくやってくれる。それが混ざっちゃってる。老人はアレンジを変えたくなるけど、若者はオリジナルのように歌う。
白井
どんどん水みたくなっていくから、そこに濃いワインを入れてもらうという(笑)。

OKMusic編集部

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