木曽義仲役の青木崇高(左)と巴御前役の秋元才加 (C)NHK

木曽義仲役の青木崇高(左)と巴御前役の秋元才加 (C)NHK

【大河ドラマコラム】「鎌倉殿の13人
」第14回「都の義仲」群像劇としての
魅力を増す木曽義仲の人物描写

 4月10日にNHKで放送された大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第14回「都の義仲」は、平家を追討して京の都に入った木曽義仲(青木崇高)と、これに後れを取った鎌倉の源頼朝(大泉洋)が対立していく過程を軸に物語が展開した。
 その中でポイントになるのは、やはり従来とは一味違う義仲の人物描写だろう。本作では、人間くさい頼朝、自己中心的な“戦ばか”の源義経(菅田将暉)など、既存のイメージを覆す人物像もたびたび話題となっている。
 前回から本格的に活躍し始めた義仲も、今までいわれてきたような“乱暴者”とは異なり、実直で筋の通った一本気な武士として描かれている。
 源氏同士の争いを避けるために嫡男・義高(市川染五郎)を人質に差し出し、平家討伐のために頼朝との共同戦線を計画。京に上ったのも、頼朝と一番乗りを争ったのではなく、襲ってきた平家の追討軍を撃退した勢いに乗って、という形で描かれ、これまでとはだいぶ異なる筋立てになっていた。
 そのため、従来は「都に一番乗りをして、勝手し放題の義仲を、頼朝・義経兄弟が成敗する」という構図が一般的だったが、義仲が単なる悪役ではなくなったことで、それも大きく変化。それぞれに一理ある両者が、さまざまな思惑の中で対立に至る過程を平等な目線で描くことになり、群像劇としての魅力がグッと増した。
 むしろ、“源氏の棟梁“としてのプライドが高く、策を弄(ろう)して後白河法皇(西田敏行)に接近する頼朝よりも、気さくで実直な義仲の方に好感を抱く視聴者も多いのではないだろうか。
 それだけに、都での振る舞い方や常識を知らないばかりに後白河法皇や貴族たちから疎まれてしまう義仲には同情すら覚える。さらに言えば、”疫病神“ともいえる源行家(杉本哲太)を見捨てられない律義さにも…。
 考えてみれば、「歴史は勝者の視点で語られる」と言われるように、当時の歴史を伝える資料「玉葉」や「百錬抄」、「平家物語」(いずれも、本作の公式サイトでエピソードが紹介されているもの)などは、反義仲派の頼朝・義経や公家の視点のものばかり。そのため、“乱暴者”と語られがちだが、義仲の立場になれば、意外と事実はこんなものだったのかもしれないと思えてくる。
 決して悪い人間ではなく、実力もあるのに、うまく立ち回れないばかりに損をしてしまう…。そんな義仲のような人間はどこにでもいそうに思え、800年以上前の出来事が身近に感じられる。
 振り返ってみると、本作はここまで、伊東祐親(浅野和之)にしても大庭景親(國村隼)にしても、頼朝と敵対する者たちを決して一面的な悪者としては描いてこなかった。いずれも、現代語を交えたせりふやユーモアあふれる人物描写(その意図をくんだ俳優陣の名演も含め)を駆使して、どこか人間的な魅力を感じさせるところがあった。
 それが、おのおのが信念を持って生き抜こうとする群雄割拠の時代を描く群像劇としての面白さにつながっているとも言える。普通ならもっと主人公寄りの視点に立ち、敵対する側はより悪役然とした描かれ方をしてもおかしくないところだが、その絶妙なバランス感覚には改めてうならされる。
 そんな物語の中、御家人たちの反乱計画が明らかになった鎌倉の頼朝や義仲および平家討伐に出陣した義経の運命は、これからどのように描かれていくのか? そして、その時代のうねりの中で、八重(新垣結衣)を妻に迎えた主人公・北条義時(小栗旬)はどう生き抜いていくのか。大きく動き出した物語から、ますます目が離せない。
(井上健一)

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